【ニュース・ヘッドライン】
- ノボ、経口GLP-1作動剤の第三相が成功
- Aimmune、ピーナツアレルギー減感作療法薬の第三相が成功
- テムセル、米国試験が成功
- elagolix、子宮筋腫試験も成功
- シャイア、lanadelumabの米国承認が受理
- 2月のCHMP会合の結果
- CHMP諮問グループはClovisのPARP阻害剤に好意的
- クラリスロマイシンを心臓疾患患者に用いるのは要注意
【新薬開発】
ノボ、経口GLP-1作動剤の第三相が成功
(2018年2月22日発表)
ノボ ノルディスクは、OG217SC(semaglutide)の最初の第三相試験が成功したと発表した。他の試験の結果などを待って2019年に承認申請する考え。皮注用製剤やVictoza(liraglutide)との棲み分けをどうするか、マーケティング戦略が注目される。
OG217SCはEmisphere Technologies社のEligen技術を適用して開発した経口投与用の錠剤。SNACというキャリアを結合して、受動的細胞内輸送を利用して吸収されるようにした。第三相では、3mg、7mg、14mgをテストしている。今回の試験では、26週間の投与で、全用量、HbA1cが偽薬比有意に低下した。体重に関しては14mg群だけが偽薬比有意に減少した。
上記は、FDAや統計学者が支持する新しい解析方法に基づくもの。従来と同じ方法、つまり、服用中止・打ち切り例や血糖管理不良により薬剤を追加した患者に関しては最終観測値までのデータしか使わない解析方法では、HbA1cがベースライン値の8.0%から各群0.8%、1.3%、1.5%低下した(偽薬群は0.1%)。体重は88kgから1.7kg、2.5kg、4.1kg減少した(偽薬群は1.5kg)。
GLP-1作用剤の代表的な有害事象である悪心の発生率は5~16%(偽薬群は6%)、有害事象による治験離脱は2~7%(2%)だった。
皮注用製剤は0.5mgまたは1mgを週一回投与する。効果を見比べると、14mg錠は皮注用の二用量の中間くらいに相当しそうだ。
リンク: ノボのプレスリリース
Aimmune、ピーナツアレルギー減感作療法薬の第三相が成功
(2018年2月20日発表)
Aimmune Therapeutics(Nasdaq:AIMT)は、AR101の第三相試験成功を発表した。深刻な有害事象も見られるようなので、リスクと便益のバランスを確認する必要があるだろう。
AR101はピーナツ蛋白を配合する減感作療法用薬。FDAからファースト・トラック指定とブレークスルー・セラピー指定を受けている。昨年10月には、アトピー性皮膚炎治療薬Dupixent(dupilumab)を開発したリジェネロン(Nasdaq:REGN)及びサノフィと、併用法の開発で提携した。
今回の第三相試験では、エントリー時点では30mg超を忍容出来なかった患者499人に1年間投与したところ、600mgに忍容出来た患者の比率が67.2%と、偽薬群の4.0%を有意に上回った。FDAは95%信頼区間の下限が15%を上回ることを求めている由だが、53.0%と楽々クリアした。これらのデータは、主評価項目の解析対象である4~17歳の症例のもの。
案外だったのは薬自体の忍容性。治験完了率は79.6%、有害事象による治験離脱は12.4%。深刻な有害事象の発生率は2.4%(偽薬群は0.8%)で、主として胃腸系や全身性アレルギー性過敏反応。元々、抗体が多い人は深刻なアレルギー反応のリスクがありそうだ。
昨年、神奈川県立こども医療センターで牛乳アレルギー急速免疫療法の外来治療を受けていた患者が重篤な有害事象に見舞われた。重篤なアレルギー発作を防ぐための治療で重篤なアレルギー発作が起きるのでは患者はやり切れない。
AR101は年内に米国で承認申請、その後欧州でも申請される予定だが、実用化の前に、どのような患者が危険なのか、よく調査検討してほしいものだ。
リンク: Aimmuneのプレスリリース
テムセル、米国試験が成功
(2018年2月21日発表)
オーストラリアのMesoblast(ASX:MSB、Nasdaq:MESO)は、MSC-100-IV(remestemcel-L)の第三相試験が成功したと発表した。他家造血幹細胞移植後に急性GVHD(移植片対宿主病)が発生しステロイドが奏功しなかった小児55人を米国の施設で組入れて、4週間に8回投与したところ、26日時点の奏効率が69%と、ヒストリカルコントロールの45%を有意に上回った(p=0.0003)。
完全反応例や無効例は8回で治療を完了し、部分反応例には更に4週間、週一回追加投与して、転機を追跡したところ、100日死亡率は22%となり、ヒストリカルの70%を大きく下回った。Mesoblastは承認申請する考え。
健常ドナーから採取したヒト間葉系幹細胞の細胞性医薬品で、日本ではライセンシーの日本ケミカルリサーチが15年に急性GVHD用薬テムセルHSとして承認取得したが、本家のオサイリス・セラピューティクスは開発が難航し経営が悪化、13年に事業資産をMesoblastに売却した。オサイリスが米国でローリング承認申請を開始したのは09年なので、もう9年も経ったことになる。
リンク: Mesoblastのプレスリリース(Nasdaq GlobalNewswire)
elagolix、子宮筋腫試験も成功
(2018年2月21日発表)
アッヴィは昨年9月にABT-620(elagolix)を子宮内膜症の疼痛治療薬として米国で承認申請し、優先審査を受けているが、子宮筋腫を治療する第三相試験も一本目が成功した。生理出血抑制奏効率が68.5%と偽薬群の8.7%を有意に上回った。
ニューロクリン・バイオサイエンス(Nasdaq:NBIX)からライセンスした経口GnRHアンタゴニストで、メカニズム的には成功しても全く驚きはなく、順調な進捗と言えるだろう。
リンク: アッヴィのプレスリリース
【承認申請】
シャイア、lanadelumabの米国申請が受理
(2018年2月23日発表)
シャイアは、抗血清カリクレイン完全ヒト化抗体lanadelumabをHAE(遺伝性血管浮腫)発作予防薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は8月26日。
臨床試験では2週間に一回の皮注で発作を87%削減した。15年に59億ドルで買収したDyaxのパイプラインで、承認されたら更に6.46億ドルを払うことになる。
リンク: シャイアのプレスリリース
【承認審査・委員会】
2月のCHMP会合の結果
(2018年2月23日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、2月の会合で、下記の新薬や適応拡大の承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
率直に言って、今月の新薬はあまり新味がない。もう一つの特徴は、否定的意見や撤回が多かったこと。
肯定的意見を受けた新薬は、まず、Alpivab(peramivir)。バイオクリスト(Nasdaq:BCRX)の注射用ノイラミニダーゼ阻害剤で、非複雑性インフルエンザの治療に用いる。経口剤に適さない患者には向いているかもしれない。日本は塩野義製薬が導入し2010年にラピアクタ名で承認。米国は2014年にRapivab名で承認された。
リンク: EMAのプレスリリース
ファイザーのMylotarg(gemtuzumab ozogamicin)はCD33陽性AML(急性骨髄性白血病)の新患にdaunorubicin及びcytarabineと併用する。ADC(抗体薬物複合体)の先駆けで、AMLの80~90%が発現するCD33に結合するヒト化抗体と、カリケアマイシンという二重連鎖DNA切断作用を持つ細胞毒を結合したもの。
欧州は未承認だが米国では2000年に、日本でも2005年に承認された経歴を持つ。米国は市販後薬効確認試験で安全性懸念が浮上したためFDAが販売中止を要請。その後、用量用法を変えて研究者主導試験が行われ、EFS(イベント・フリー・サバイバル)がメジアン17.3ヶ月とdaunorubicinとcytarabineの二剤だけの群の9.5ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.56、という良績を上げた。このため、米国は2017年に改めて承認した。
FDAや医学者が傍観していたら、Mylotargの正しい用量用法は発見されず、副作用で死亡する人がもっと多く発生しただろう。日本も見習うべきである。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース(後述のBosulifにも言及)
フランスのAMMTeK社のAmglidiaはポピュラーなSU剤であるglibenclamide(米国の一般名はglyburide)の新製剤・対象年齢拡大。新生児糖尿病治療薬として新たに経口液を開発し、10人の臨床試験で生物学的同等性を確認した。希少疾患用薬指定を受けている。
リンク: EMAのプレスリリース
適応拡大では、Kineret(anakinra)をスチル病に用いることが支持された。遺伝子組換え型IL-1受容体アゴニストで、2000年代始めに欧米でリウマチ性関節炎治療薬として承認されたが、普及せず、アムジェンは08年に関連資産をSwedish Orphan Biovitrum(STO:SOBI)に売却した。
スチル病は全身性若年性特発性関節炎(sJIA)や成人発症性スチル病(AOSD)の総称。Kineretの適応は、中高度活性期の、または非ステロイド抗炎症薬で治療しても疾病活動が継続している、8ヶ月以上の患者となる予定。
リンク: EMAのプレスリリース
ファイザーのBosulif(bosutinib、和名ボシュリフ)を慢性期Ph+(フィラデルフィア染色体転座陽性)CML(慢性骨髄性白血病)の新患に用いることも支持された。abl阻害剤で、欧州では13年に二次治療薬として承認された。
一次治療の開発に当たって、ファイザーはAvillion社に第三相試験を委託。Avillionは費用も負担し、見返りとして、適応拡大達成時に報奨金を獲得できる。
アムジェンのXgeva(denosumab、和名ランマーク)は癌の骨転移治療薬として承認されているが、多発骨髄腫の臨床試験で好ましくない現象がみられたため、欧米では日本と異なり固形癌に限定されていた。その後、ビスフォスフォン酸対照試験で効果が非劣性であることが確認され、米国では今年1月に適応拡大承認。今回、CHMPは、固形癌限定解除を支持した。
リンク: EMAのプレスリリース
アストラゼネカのPARP阻害剤、Lynparza(olaparib)錠を再発性プラチナ感受性卵巣癌の維持療法に用いることも支持された。14年に初承認された時はカプセル剤でBRCA変異型に限定されていたが、錠剤に関しては限定なし。どちらも一日二回服用だが、カプセルは一回に50mgを8個飲むのに対して、錠剤は100mgまたは150mg錠一つで済むので楽。用量が若干違うせいか、CHMPは承認内容を別扱いしており、カプセル剤のBRCA変異限定は維持する考えだ。
リンク: EMAのプレスリリース
Shield Therapeutics(LSE:STX)のFeraccru(ferric maltol)は鉄欠乏性貧血症治療薬。現在は炎症性腸疾患患者限定だが、限定解除が支持された。慢性腎疾患患者の鉄欠乏性貧血症を治療する第三相偽薬対照試験がフェールしたことを2月11日号で取り上げたばかりだが、案に反する結果になった。
一方、否定的意見となったのは、まず、Puma Biotechnology(Nasdaq:PBYI)のNerlynx(neratinib)。日本の施設も参加して実施されたher2陽性早期乳癌の延長アジュバント試験、ExteNETが成功し米国では昨年7月に承認されたが、CHMPは、治験の再現性が不確実であることや下痢の副作用を懸念した。
CHMPの諮問グループの「トレンド・ヴォウト」が否定的な結果であったことをPumaが1月に発表しているためサプライズではない。Pumaは再審査請求する考え。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Pumaのプレスリリース
ファイザーのVEGFR阻害剤、Sutent(sunitinib)を難治性腎細胞腫の摘出術後アジュバント療法に用いる適応拡大も、否定的意見。効果が確信できない由。米国では昨年11月に承認されたが、諮問委員会は賛成6人、反対6人と二分された。反対派は、この用途におけるDFS(無病生存率)の有用性が確立していないこと、延命効果が未確認であること、先行して実施されたASSURE試験がフェールしていること、などの難点を指摘していた。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース
ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)がZydelig(idelalisib)の適応拡大申請を1月に撤回していたことも発表された。難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫や慢性リンパ性白血病に承認されているPI3Kデルタ阻害剤で、今回は、再発性慢性リンパ性白血病にrituximab及びbendamustineと三剤併用する用法を申請したが、CHMPは、臨床試験の追跡期間が短く効果や副作用を十分確認できないとして、承認に懐疑的だった。
リンク: EMAのプレスリリース
CHMP諮問グループはClovisのPARP阻害剤に好意的
(2018年2月21日発表)
Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)は、ファイザーから導入して開発したPARP阻害剤、Rubraca(rucaparib)をBRCA変異陽性卵巣癌の三次治療薬として開発し、16年に米国で承認取得した。欧州は申請が遅れたが、今回、CHMPの諮問機関から好意的な評価を受けたことが公表された。
この機関はInter-Committee Scientific Advisory Group for Oncologyで、CHMPの諮問事項について検討し、Trend Voteと呼ばれる票決を行い、報告する。CHMPは拘束されない。
CHMPは3月の会合で意見をまとめる予定。Rubracaはプラチナ感受性卵巣癌の二次治療後地固め療法としての試験が成功しており、Clovisは、欧州で承認された段階で適応拡大申請する考え。
リンク: Clovisのプレスリリース
【医薬品の安全性】
クラリスロマイシンを心臓疾患患者に用いるのは要注意
(2018年2月22日発表)
FDAは、心臓疾患患者にclarithromycin(クラリスロマイシン)を用いると何年も後に心臓障害や死亡のリスクが高まる可能性があるので、他剤の使用を検討するよう勧告した。米国のレーベルに警告と臨床試験データを掲載した。
きっかけは、安定期冠状心疾患の再発予防としてclarithromycinの2週間コースを施行したCLARICOR試験の長期フォローアップスタディ。1年以上後になって死亡例の増加が見られるようになった(ハザードレシオ1.27、95%信頼区間1.03-1.54)。特に、心血管死が増加した(同1.45、1.09-1.92)。どのような作用機序で死亡が増加するのか不明。
10年間追跡した研究結果が15年に刊行されたが、ここでも全死亡のハザードレシオは1.10だった(95%信頼区間1.00-1.21)。心血管死が増加したのは最初の3年だけだった。
観察的研究も行われた。冠状心疾患に限定していないものも含めて6本のうち、2本では長期的なリスクが見られたが、残りの4本では見られなかった。
CLARICOR試験の長期フォローアップ論文がBMJ誌に刊行されたのは2006年、FDAが警告を発したのは2005年なので、既に広く認知されているリスクだろう。
リンク: FDAの安全性情報
リンク: Jespersenらの臨床試験論文(BMJ 2006;332:22、オープンアクセス)
リンク: Winkelらの長期追跡試験論文(Int J Cardiol. 2015 Mar 1;182:459-65、リンクはPubMed)
今週は以上です。
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