2017年10月8日

2017年10月8日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • aTTP治療薬の第三相が成功 
  • iclaprim、10年を経て再承認申請へ 
  • イグザレルト、ESUS試験はフェール 


【新薬開発】


aTTP治療薬の第三相が成功
(2017年10月2日発表)

ベルギーのAblynx(Euronext Brussels:ABLX)は、ALX-0081(caplacizumab)の第三相試験が成功したと発表した。後天性血栓性血小板減少性紫斑症(aTTP)の急性期治療効果を検討したもので、主評価項目である血小板数正常化までの期間が偽薬比有意に短かった。数値は未発表。

臨床的効能を検証する副次的評価項目は、四項目のうち二項目が成功。aTTP関連死亡・再発・主要血栓塞栓イベントの複合評価項目が偽薬比74%減(主として再発が少なかった)。投与中止後28日間のフォローアップ期間も含めて試験期間中のaTTP再発が67%減少した。

一方、出血性有害事象の発生率は66%と偽薬群の49%を上回ったが、多くは軽中度だった。

aTTPは、フォン・ヴィレブランド(vW)因子を切断するADAMTS13という酵素の機能不全が原因でvW因子の塊ができて毛細血管が狭隘化、赤血球が通過できず破壊される。急性期治療は血漿交換が有効だが、それでも死亡率15%と言われている。

ALX-0081はvW因子を標的とする抗体医薬で、特徴は軽鎖を持たないこと。同社がナノバディと呼ぶ技術で、通常の抗体と比べて分子量が12~15kDaとやや小さく、親和性が高く安定的で、投与方法がフレキシブルとのこと。第三相では、毎日血漿交換療法を行い、免疫抑制剤も使った上で、偽薬またはALX-0081を、初回は10mgをボーラス静注、その後は同量を一日一回、皮注した。

Ablynxは18年に米国で承認申請する計画。EUは今年2月に第二相試験のデータ(血小板数正常化まで3日、偽薬群は4.9日)に基づいて承認申請済み。

リンク: Ablynxのプレスリリース

iclaprim、10年を経て再承認申請へ
(2017年10月4日発表)

Motif Bio(Nasdaq:MTFB)は、MTF-100(iclaprim)の二本目の第三相試験成功を発表した。急性細菌性皮膚皮膚構造感染症(ABSSSI)の治療効果をvancomycinと比較したもので、一本目と同様に、奏効率が米国基準でもEU基準でも非劣性だった。18年第1四半期に欧米で承認申請する計画。

iclaprimはMRSA作用性広スペクトラム抗生剤でグラム陽性菌による感染症の治療に用いる。ロシュが創製、抗生剤分野のスピンアウトであるArpidaが開発して08年に複雑皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認申請したが、FDAも諮問委員会も、EUのCHMPも、承認を認めなかった。

難点は二つあり、一つは非劣性解析の方法。第三相試験は二本とも奏効率がlinezolid比非劣性と判定されたが、非劣性マージン(奏効率の差の95%下限)が12.5%とやや甘く、FDAの基準である10%を用いるとフェールする。第二はQT延長リスク。linezolid群は1~2ミリ秒延びる程度だったが、iclaprim群は6~8ミリ秒延びた。QT延長は必ずしも不整脈につながるとは限りないが、稀だが突然死のリスクを高める可能性があり、回避できるなら回避したほうが良いし、甘受するなら便益を明確にしたい。

Arpidaは開発を断念。その後、iclaprimの開発販売権は転々としたが、最終的にMotif Bioが入手、FDAや諮問委員会の意見に則したデザインで再挑戦。今回の成功につながった。

FDAからABSSSI及びHAP(院内感染肺炎・・・別途、第三相試験中)用途でQIPD(認定感染症治療薬指定)を得ており、承認時には一定期間の市場独占権や換金可能な優先審査バウチャーを獲得できる。大手製薬会社が抗生物質の開発に熱意を喪失したことに危機感を感じて米国議会が導入した制度がよくワークしており、もしインセンティブが無かったらiclaprimはお蔵入りしていたかもしれない。

それはそれとして、承認されるかどうか、売れるかどうかは未だ不透明なところが残っている。最初の第三相と対照薬を変えたのは、FDA諮問委員会の助言も得ているので、おそらく問題はないだろうが、他に何か弱点が見つかった時に減点材料になりかねない。安全性はQT延長リスクが減点だが、腎毒性が小さく腎臓疾患を持つ患者に使いやすいのは加点材料。抗生物質は承認審査の過程で稀だが深刻なリスクが表面化することがしばしばあり、油断を自戒しなければならない。

尚、治療時出現有害事象は、それによる治験離脱は一本はvancomycin群と同程度、もう一本は少ない。深刻例も一本は同程度、もう一本は少なく、死亡例は二本とも試験薬群がゼロ、vancomycin群一例だった。

リンク: Motifのプレスリリース

イグザレルト、ESUS試験はフェール
(2017年10月5日発表)

バイエルとジョンソン・エンド・ジョンソンは、経口Xa阻害剤、Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)のNAVIGATE ESUS試験がフェールしたことを明らかにした。発症後間もない、塞栓源を特定できない塞栓性脳卒中(ESUS)の患者7214人を31ヶ国の施設で組入れて、Xarelto(15mgを一日一回)とアスピリン(100mg一日一回)の二次予防効果を比較したが、独立データ監視委員会が中間解析で無益性を認定した。

効果の面ではアスピリンを有意に上回る確率は極めて低いと判定された。安全性主評価項目である大出血(ISTH基準)は両群とも少なかったが、Xarelto群のほうが多かった。

Xareltoは様々な血栓塞栓性疾患に承認されていて、脳梗塞では心原性脳卒中予防に用いられている。心房細動患者は心臓の血流が滞って血栓ができることがあり、流れて脳血管で詰まると心原性脳梗塞になる。一方、ESUSは検査をしても血栓ができた原因が分からない。虚血性脳卒中の25%が該当すると言われる。塞栓ならXa阻害剤が有効であっても不思議はなかったが、残念な結果になった。

リンク: 両社のプレスリリース





今週は以上です。

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