【ニュース・ヘッドライン】
- JNJ、『第二のイクスタンジ』を承認申請
- イーライリリー、Verzenioの一次治療適応拡大申請と肺癌適応拡大フェール
- 今月のCHMPは新薬なし
- 米国初の遺伝子療法が諮問委員会を通過
- Rhoキナーゼ阻害剤も諮問委員会を通過
【承認申請】
JNJ、『第二のイクスタンジ』を承認申請
(2017年10月11日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンはARN-509(apalutamide)を非転移性去勢抵抗性前立腺癌用薬として米国で承認申請した。この用途で正式に承認されれば初。
ファーザー/アステラス製薬のXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)と同じ学者が創製した高力価アンドロゲン・シグナル・インヒビターで、JNJは13年に開発会社を一時金6.5億ドル、達成報奨金最大3.5億ドルで買収した。
第三相試験は、前立腺癌のアンドロゲン枯渇療法を施行中にPSA値が急上昇し始めた、しかしまだ転移はしていない患者1200人を組入れて、240mgを一日一回経口投与する群と偽薬群の無転移生存期間を比較した。データは今後、学会発表される予定。
前立腺癌の治療は進行段階に応じて細分化されており、XtandiもJNJのZytiga(abiraterone)も一つ一つ、適応を増やしてきた。ARN-509も今後は他剤とバッティングする用途で開発を進めることになる。Zytigaとの併用がどの程度上手く行くかが注目点の一つになりそうだ。
リンク: JNJのプレスリリース
イーライリリー、Verzenioの一次治療適応拡大申請と肺癌適応拡大フェール
(2017年10月12日発表)
イーライリリーのCDK4/6阻害剤、Verzenio(abemaciclib)は9月に米国でホルモン受容体陽性her2陰性乳癌に承認されたところ。内分泌療法歴を持つ患者にFaslodex(fulvestrant、和名フェソロデックス)と、または、内分泌療法と化学療法歴を持つ患者のサルベージに単剤で、用いる。CDK4/6阻害剤の開発・販売はファイザーやノバルティスが先行しているので適応拡大が急務だが、先週は、一次治療適応拡大申請と肺癌の第三相試験フェールが発表された。
一次治療はアロマターゼ阻害剤併用で、PFS(無進行生存期間)がメジアン16.4ヶ月とアロマターゼ阻害剤だけの群の9.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、統計的に有意だった。治療時発現有害事象は好中球減少症や下痢が対照群より多かった。下痢の発生率は他社のCDK4/6阻害剤と見比べてもやや高い。米国で承認申請が受理され、優先審査指定された。
また、欧州や日本で9月に承認申請したことも明らかにされた。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
一方、肺癌適応拡大試験は、変異krasを持つ非小細胞性肺癌の二次・三次治療における効用をロシュのEGFR阻害剤、Tarceva(erlotinib)と比較したが、全生存期間を有意に延長することはできなかった。Tarceva群の成績が過去の治験より良かったとのことだ。データは今後、学会発表される予定。
PFS(無進行生存期間)やORR(客観的反応率)では活性が見られた由だが、盲検ではないので、主観的評価より全生存のような客観性の高いデータのほうを信じるべきだろう。
リンク: イーライリリーのプレスリリース(10/10付け)
【承認審査・委員会】
今月のCHMPは新薬なし
(2017年10月13日発表)
欧州の薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、10月の会議で以下の適応拡大に肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。尚、今月はロシュが多発硬化症用薬として申請した抗CD20ヒト化抗体、Ocrevus(ocrelizumab)の結論が期待されたが意見がまとまらなかったようで、画期的新薬に関する肯定的意見はゼロだった。
リンク: EMAのプレスリリース
まず、ジョンソン・エンド・ジョンソンのテストステロン合成阻害剤、Zytiga(abiraterone)。転移性ホルモン感受性前立腺癌で高リスクの新患にアンドロゲン枯渇療法(ADT)と併用することが支持された。癌の進行の早い段階で用いることができるようになり、対象患者数が広がる。日米でも適応拡大承認審査中。
現在の適応は、ADTがフェールしたが症状は未だない、あるいは軽いため化学療法が適応にならない患者と、ADTも化学療法(docetaxel)も受けたが進行した患者。
リンク: EMAのプレスリリース
次に、中外製薬が創製し海外ではロシュが販売するAlecensa(alectinib)。現在は、同じALK阻害剤であるファイザーのXalkori(crizotinib)がフェールしたALK陽性非小細胞性肺癌に承認されているが、二次治療限定を解除することが支持された。日本で実施されたJ-ALEX試験がエビデンス。
リンク: EMAのプレスリリース
アストラゼネカがBMSから買収したGLP-1作用剤、Bydureon(exenatide、和名ビデュリオン)は二型糖尿病治療薬として承認されているが、基礎インスリンに併用することも支持された。Byetta(exenatideの即放製剤)の開発段階で実施された試験の成績が悪く、インスリンを減らしてGLP-1作用剤で補うのは難しい印象があったが、用量に注意すれば不可能ではないのだろう。
リンク: EMAのプレスリリース
米国初の遺伝子療法が諮問委員会を通過
(2017年10月12日発表)
FDAのCTGT(細胞、組織、遺伝子療法)諮問委員会は、Spark Therapeutics(Nasdaq:ONCE)が承認申請したLuxturna(voretigene neparvovec)の臨床成績を検討し、16人の諮問委員全員が便益がリスクを上回ると判定した。承認審査期限は来年1月12日。Spark社はフィラデルフィア小児病院(CHOP)の遺伝子治療研究を商業化するために設立された会社。遺伝子療法が承認されれば米国初。
適応・効能は、両アレルRPE65調停性遺伝性網膜疾患による視力低下の改善。RPE65は光を感じるのに必要なレチナールのリサイクルに係る遺伝子で、変異があると視力が次第に低下する。患者数は欧州5ヶ国と米国で合わせて3500人と推定されている。Luxturnaはアデノ随伴ウイルスをベクターとしてRPE65遺伝子を網膜下に導入する。臨床試験では一回だけ投与した。
第三相試験ではMLMTという新しい検査方法を用いて薬効を評価した。暗い部屋の中で矢印などに従ってドアまで歩行する能力を様々な光量の下でテストするもので、試験薬群は偽薬群を1.6点上回り、統計的に有意な差があった。偽薬対照試験終了後に偽薬群からクロスオーバーした患者も含めると29人中27人で改善が見られた。視力は偽薬比9文字改善したが統計的に有意ではなかった。臨床試験全体で深刻な有害事象は施術関連中心窩間伐による視力低下と細菌性眼内炎の二例。軽中度の副作用も、専ら、注射に伴うものだった。
FDAは、MLMTで1.6点という治療効果が臨床的に重要であるかどうか、そして、深刻副作用に配慮して対象を限定すべきかどうか(年齢制限や、効果が小さいので進行した患者を除外するなど)を諮問したが、諮問委員の評価は概ね良好だった。
リンク: Sparkのプレスリリース
Rhoキナーゼ阻害剤も諮問委員会を通過
(2017年10月13日発表)
FDA皮膚科眼科用薬諮問委員会は、Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)が承認申請したRhopressa(netarsudil mesylate)を検討し、薬効に関しては10人全員が、便益がリスクを上回るかどうかは9人が、支持した。大きな問題はなさそうなので来年2月28日の審査期限までに承認されるのではないか。
緑内障の治療に用いるRhoキナーゼ阻害剤の点眼液で、一日一回投与で足りることが特徴。効果は完璧ではなく、第三相試験の一本目は降圧作用がtimolol比非劣性ではなかった。サブセグメント分析で眼圧が26mmHg以上の患者(緑内障の新患の2割が該当)の成績が見劣りしたため、二本目の試験の解析対象を20~25mmHgの患者だけに変更したところ、非劣性解析に成功した。従って、26mmHg以上は適応外とされるだろう。
効果がやや弱い場合は増量を考えることになるが、Rhopressaは一日二回投与試験のドロップアウトが多かったので、無理そうだ。18年に米国で承認申請する予定のlatanoprost配合剤は、眼圧が各活性成分だけより2~3mmHg大きく低下するので、高眼圧患者の代替的選択肢になりそうだ。
リンク: Aeria社のプレスリリース
今週は以上です。
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