2017年10月22日

2017年10月22日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • JNJ、抗IL-6抗体と抗CD123抗体でセットバック 
  • セルジーン、クローン病用薬の第三相を中間解析で打ち切り 
  • テバも抗CGRP抗体を承認申請 
  • BMS、オプジーボの黒色腫再発予防を適応拡大申請 
  • アストラゼネカ、抗PD-L1抗体を肺癌維持療法に適応拡大申請 
  • アストラゼネカ、PARP阻害剤を転移性乳癌に適応拡大申請 
  • VEGFR阻害剤が腎細胞腫一次治療に適応拡大申請 
  • FDA諮問委員会がsemaglutideの承認を支持 
  • FDAが第二のCAR-Tを承認 



【新薬開発】


JNJ、抗IL-6抗体と抗CD123抗体でセットバック
(2017年10月17日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗IL-6完全ヒト化抗体のCNTO 136(sirukumab)を中重度リウマチ性関節炎の治療薬として日米欧で承認申請していたが、断念することを決めた。2017年第3四半期決算に関するプレスリリースの中で公表したもの。

8月に開催されたFDA関節炎諮問委員会では13人の委員のうち12人が承認に反対した。臨床試験で100人年当りの死亡率が50mg群(4週毎皮注)で0.5、100mg群(2週毎皮注)で0.8と、偽薬群の0.2を大きく上回ったため。類薬が既に存在することもあり、FDAは安全性の確認が不十分と判定、審査完了通知を送付した。

CNTO 136はグラクソ・スミスクラインが共同開発していたが、今年7月に、パイプラインの選択と集中戦略に基づいて権利を返還した。

IL-6や受容体を標的とする抗体医薬は中外/ロシュのActemra(tocilizumab)が代表格で、リジェネロン/サノフィのKevzara(sarilumab)も今年、欧米で承認された。JNJも抗IL-6キメラ抗体のSylvant(siltuximab)が多発骨髄腫用薬として欧米で14年に承認されている。

JNJは、JNJ-56022473/CSL362(talacotuzumab)の臨床試験中止も発表した。オーストラリアのCSLがXencor(Nasdaq:XNCR)の固定領域改変技術を用いて創製しヤンセンにライセンスした抗CD123抗体で、急性骨髄性白血病のP2/3段階だった。理由は開示されていないが、CD3とCD123に結合するバイスペシフィック抗体のJNJ-63709178は、昨年、クリニカルホールドになった。

CD123を標的とする抗体医薬では、協和発酵キリンのポテリジェント抗体、KHK2823も第一相段階。

リンク: JNJのプレスリリース

セルジーン、クローン病の第三相を中間解析で打ち切り
(2017年10月19日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)はGED-0301(mongersen)の第三相クローン病試験を中止すると発表した。データ監視委員会が中間無益性評価に基づき勧告したもの。安全性に関しては群間の大きな偏りは見られなかったとのこと。二本目の第三相試験の開始は見送りになった。セルジーンは第二相潰瘍性大腸炎試験の全分析結果を待って次の方策を決定する考え。

GED-0301は、免疫抑制的サイトカインであるTGF-ベータ1の細胞内シグナル伝達を阻害するSMAD7を標的とする、核酸アンチセンス薬。アイルランドのNogra Pharmaから頭金7.1億ドルと開発販売目標達成金最大18.65億ドルで世界独占開発販売権を取得したもの。NEJMに論文刊行された第二相試験は良さそうな結果だったが、意外な転帰になった。

リンク: セルジーンのプレスリリース


【承認申請】


テバも抗CGRP抗体を承認申請
(2017年10月17日発表)

テバ(NYSE:TEVA)は米国でTEV-48125(fremanezumab)を片頭痛予防薬として承認申請したことを発表した。アムジェンを皮切りに各社が続々と承認申請する見込みの抗CGRP抗体の一つで、偏頭痛発作時に増加し鎮静化すると減少する、片頭痛に関与している可能性のあるcalcitonin gene-related peptideを標的としている。

ジェネンテックの中枢神経系スピンアウトであるRinatがRN-307として開発していたもので、Rinatを買収したファイザーが導出した企業をテバが14年に頭金2億ドルと後発債務6.25憶ドルで買収し入手した。

リンク: テバのプレスリリース

BMS、オプジーボの黒色腫再発予防を適応拡大申請
(2017年10月16日発表)

BMSはOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の適応拡大をFDAに申請し、受理されたことを明らかにした。ステージIIIbからIVまでの黒色腫の完全切除後に、高リスク患者の再発予防に用いる。エビデンスとなるCheckMate-238試験は中間解析で目的を達成。対照薬であるYervoyと比べて、無再発生存のハザードレシオが0.65と有意に優れていた。有害事象による治験離脱率は9.7%とYervoy群の42.6%を下回り、症例数906人のうち、治療関連の死亡はゼロだった(Yervoy群は2人)。

優先審査を受ける。審査期限は公表されていない。

リンク: BMSのプレスリリース

アストラゼネカ、抗PD-L1抗体を肺癌維持療法に適応拡大申請
(2017年10月17日発表)

アストラゼネカはImfinzi(durvalumab)を切除不能非小細胞性肺癌で化学放射線療法後の維持療法に用いる適応拡大を米国で承認申請し受理された。優先審査を受ける。審査期限は公表されていない。

承認申請の根拠となった第三相試験(日本の施設も参加)は、ステージIIIの非扁平上皮非小細胞性肺癌で白金薬レジメンによる一次治療と放射線療法を受けて疾病安定化あるいは部分・完全反応だった患者をImfinzi群と偽薬群に無作為化割付した。PD-L1発現は不問。結果は、Imfinzi群のPFS(無進行生存期間)がメジアン16.8ヶ月、偽薬群は5.6ヶ月となり、ハザードレシオは0.52、統計的に有意だった。共同主評価項目である全生存の解析は今後、行われる。

この用途で承認されればPD-L1/PD-1を標的とする抗体医薬では初めて。既に腫瘍学領域の代表的なガイドラインであるNCCNガイドラインには9月に採用されたとのこと。MSDのKeytruda(pembrolizumab)は一次治療に承認されているが適応はPD-L1高発現だけ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

アストラゼネカ、PARP阻害剤を転移性乳癌に適応拡大申請
(2017年10月18日発表)

アストラゼネカは、Lynparza(olaparib)を転移性乳癌に用いる適応拡大申請をFDAに行い、受理された。優先審査を受ける。審査期限は来年第1四半期。切除後再発予防または転移後にアンスラサイクリン系とタクサン系の薬による前治療歴を持ち(ホルモン陽性癌の場合はホルモン療法も)、生殖細胞系BRCA1/2変異がありher2陰性の転移性乳癌が適応になる。

第三相試験(日本も参加)では第三者査読後のメジアンPFS(無進行生存期間)が7.0ヶ月と化学療法群(capecitabine、vinorelbineまたはeribulin)の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.58、統計的に有意だった。全生存の解析は元々検出力不足で、ハザードレシオ0.90、95%信頼区間0.63-1.29となっている。有害事象による治験離脱は4.9%対7.7%でやや下回り、G3以上の有害事象の発生率も36.6%対50.5%で低かった。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

VEGFR阻害剤が腎細胞腫一次治療に適応拡大申請
(2017年10月16日発表)

Exelixis(Nasdaq:EXEL)はCabometyx(cabozantinib)を腎細胞腫一次治療に用いる適応拡大をFDAに承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は来年2月15日。

承認申請の根拠となった中高度リスクの転移性腎細胞腫を組入れた第二相試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が8.2ヶ月と一次治療の標準療法であるファイザーのSutent(sunitinib)の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.69、統計的に有意だった。全生存期間の解析は未成熟だがメジアン30.3ヶ月対21.8ヶ月、ハザードレシオ0.80、95%信頼区間0.50~1.26だった。

リンク: Exelixisのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がsemaglutideの承認を支持
(2017年10月18日発表)

FDA内分泌学代謝学薬諮問委員会は、ノボ ノルディスクが二型糖尿病治療薬として承認申請したNN9535(semaglutide)の臨床成績を検討し、17人の委員のうち16人が便益がリスクを上回ると判定した。一人は棄権したが、網膜安全性をもっと検討すべきという見解のようだ。

NN9535は週一回投与型のGLP-1作用剤で、血糖値だけでなく体重も減少する。3297人を組入れた心血管アウトカム試験では、MACE(主要有害心血管イベント)の発生率が6.6%と対照群(8.9%)比で非劣性だった。ポストホック分析だが優越性解析も成功。主として非致死的脳卒中と非致死的心筋梗塞が少なかった。

意外なのは糖尿病性合併症(硝子体出血、失明、治療など)の発生率が3.0%と対照群の1.8%を上回ったこと。特に、治験開始前から糖尿病性網膜症だった患者の発生率が8.2%対5.2%と増加した。

FDAの分析によると血糖値が短期間に上昇あるいは低下すると網膜に悪影響が出る。糖尿病の代表的なアウトカム試験の一つであるDCCTでも、血糖値の強化治療(今日の標準療法)を行った群は当時の標準療法群よりも網膜症が多く発生したが、3年目以降は逆転したとのことだ。網膜合併症の判定方法が必ずしも厳格でなかったこともあり、FDAは重要視していないようだ。他の新薬の心血管アウトカム試験では見られなかった現象なので釈然としないが、一般的に、FDAの判断は信憑性が高い。

ノボはEmisphere TechnologiesのEligen技術を用いてsemaglutideを錠剤化、第三相試験を実施している。GLP-1作用剤の経口剤は初めてなので注目される。

リンク: ノボのプレスリリース


【承認】


FDAが第二のCAR-Tを承認
(2017年10月18日発表)

FDAはYescarta(axicabtagene ciloleucel)を大細胞型B細胞リンパ腫の三次治療薬として承認した。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、転換濾胞性リンパ腫(TFL)、そして原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)が適応になる。

ギリアド・サイエンシズが8月に119億ドルで買収したKite Pharmaが承認申請したCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法で、患者からアフェレーシスで採取したT細胞に、B細胞リンパ腫で発現するCD19とT細胞活性化副刺激因子であるCD3ゼータやCD28などを繋げた遺伝子を導入し、患者の体内に戻すと、B細胞を攻撃する。8月に急性リンパ性白血病に承認されたノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel)に次ぐCAR-Tの第二号。

報道によると価格は37.3万ドルで、企業買収プレミアム(市場価格に対する上乗せ)を転嫁したのか、想定より高い。Kymriahは47.5万ドルだが白血球アフェレーシスの費用を含んでいて、また、治療に反応しなかったら無料という成果報酬制を医療保険などに提案している。

第二相試験では完全寛解率が51%と、既存のサルベージ療法が5%に留まるのと比べて良い成果を上げた。深刻な有害事象はサイトカイン放出症候群や神経学的毒性。第二相では治療時発現有害事象による死亡が3例あったが、早期に発見して中外/ロシュのActemra(tocilizumab)や抗癲癇薬levetiracetam(UCBのイーケプラの活性成分)で治療するプロトコルを導入した後は改善した模様だ。

日本は今年1月に第一三共が製造開発販売権を取得している。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ギリアドのプレスリリース







今週は以上です。

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