2017年8月27日

2017年8月27日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • Darzalex、多発骨髄腫一次治療試験が成功 
  • GNEミオパチーのシアル酸補充療法試験はフェール 
  • 成人X染色体遺伝性低リン血症治療薬が米国でも承認申請 
  • 中外の血友病薬が米国でも承認申請 
  • Alkermes、抗うつ剤の承認申請に着手 
  • ビクトーザ、心血管リスク削減効果がレーベル記載 
  • アストラゼネカ、PARP阻害剤の適応拡大が承認 
  • パーキンソン病のジスキネジア治療薬が米国で初承認(?) 
  • 狂犬病用免疫グロブリンが米国で承認 
  • クラドリビンが遂に欧州で承認 
  • ノバルティスのCDK4/6阻害剤、欧州でも承認 
  • ソリリスがEUで重症筋無力症に適応拡大 


【新薬開発】


Darzalex、多発骨髄腫一次治療試験が成功
(2017年8月24日発表)

デンマークのジェンマブは、Darzalex(daratumumab)の第三相ALCYONE試験が成功したと発表した。適応拡大申請に向けてライセンシーのジョンソン・エンド・ジョンソンが承認審査機関と相談する見込み。

多発骨髄腫の細胞に過剰発現するCD38を標的とする抗体医薬で、15年にサルベージ用途、16年には二次治療三剤併用がFDAに承認されている。ALCYONE試験はASCT(自家幹細胞移植)不適新患多発骨髄腫の標準療法の一つであるVMP(Velcade、melphalan、prednisone)に更に併用する効果を検討したもの。

事前に計画されていた中間解析でPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.50(95%信頼区間0.38-0.65)、p<0.0001となり、独立監視委員会が成功と認定、盲検解除を勧告した。尚、PFSのメジアン値は四剤併用群は未達、VMP群は18.1ヶ月と推定された。

多発骨髄腫は98年に米国でサリドマイドが承認されるまでは有効な薬が少なく、患者の余命を決めるのは承認されている薬の数だと言われていた。21世紀に入り、Velcade(bortezomib)やRevlimid(lenalidomide)など新薬が続々と登場。再発に備えて薬を取っておく必要性が低下し、一次治療から複数の薬を併用するレジメンが活発に探索されるようになった。三剤併用は既に標準療法なので、今後は四剤併用が焦点になりそうだ。

リンク: ジェンマブのプレスリリース

GNEミオパチーのシアル酸補充療法試験はフェール
(2017年8月22日発表)

米国カリフォルニア州の希少疾患用薬開発会社であるUltragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)は、Kepnetic(aceneuramic acid、開発コードUX001)の第三相GNEミオパチー治療試験がフェールし、開発を中止すると発表した。

第二相試験の結果は今一つで、EUは承認申請を受理したがCHMPが昨年11月に否定的意見を出し、申請撤回となった。それだけに、第三相試験が成功する期待も小さかったと言えるだろう。

GNEミオパチーはシアル酸の産生に必要なGNE遺伝子の欠損に起因する常染色体性劣性遺伝疾患で、DMRV(遠位型ミオパチー縁取り空胞型)やHIBM(遺伝性封入体ミオパチー)を包括する病名。患者数は世界で2000人、うち日本は400人と推定されている。

日本が研究を先導しており、シアル酸の一種であるaceneuramic acidの開発も、日本で行われたモデルマウスにシアル酸を補充する試験に立脚している。Ultragenyxがノーベルファーマから日本や東アジア以外の権利を取得して海外で臨床試験を行い、並行して日本でも東北大学などが臨床試験を行ったが、残念な結果になった。

リンク: Ultregenyxのプレスリリース

【承認申請】


成人X染色体遺伝性低リン血症治療薬が米国でも承認申請
(2017年8月24日発表)

協和発酵キリンとライセンシーであるUltragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)は、KRN23(burosumab)を米国で成人X染色体遺伝性低リン血症(XLH)の治療薬として承認申請したと発表した。EUでも1月に承認申請が受理されている。

FGF23(fibroblast growth factor 23)に結合する完全ヒト化抗体で、XLH患者で過剰産生され低リン血症を誘発するFGF23をブロックする。両社は13年に共同開発提携。米国でブレークスルーセラピー指定などを受けている。

リンク: Ultragenyxのプレスリリース

中外の血友病薬が米国でも承認申請
(2017年8月24日発表)

ロシュは、子会社である中外製薬が開発したACE910(emicizumab、ロシュの開発コードはRG6013やRO5534262)をインヒビターを持つA型血友病の成人小児の治療薬として米国で承認申請し、受理されたと発表した。審査期限は来年2月23日。日本では7月に、欧州でも8月に承認申請されている。

A型血友病は血液凝固第XIII因子の補充療法が有効だが、やがてインヒビター(抗体)ができて応答しなくなることが少なくない。活性型第VII因子(ノボのNovoseven)や血漿由来の活性化プロトロンビン複合体製剤(シャイアのFEIBA)などで治療するが、出血リスクが高く予防的ルーチン投与を必要とする患者には、作用が長く投与が簡便な薬の方が好ましい。

ACE910は第IX因子と第X因子に結合する二重特異性のヒト化抗体で、活性型第VIII因子に代わって第IX因子による第X因子の活性化を調停、血液凝固カスケードを進行させる。皮注用薬で、ルーチン予防の場合は週一回投与で足りる。第三相試験では既存薬と比べても見栄えのする出血予防効果を示した。

安全性面では、深刻出血時にFEIBAを追加投与した患者などでTMA(血栓性微小血管障害症)や血栓塞栓性疾患が発生、一名が死亡した。止血薬の宿命であり止むを得ないように感じられるが、FEIBAを含めて、併用禁忌或いは同時使用時の用量調整などを検討すべきだろう。

インヒビター患者は新薬のニーズが強いので承認のハードルはそれほど高くないだろうが、第VIII因子などとバッティングする分野で普及するためには安全性の吟味が必要なのではないか。

リンク: ロシュのプレスリリース

Alkermes、抗うつ剤の承認申請に着手
(2017年8月21日発表)

Alkermes(Nasdaq:ALKS)はALKS 5461のローリング承認申請を米国で開始したと発表した。承認申請に必要な三種類の書類を、完成したものから逐次提出して審査を受ける制度で、年内に完了する予定。

鬱病治療に用いる一日一回服用型経口剤で、非依存的ミュー・オピオイド受容体拮抗剤のALKS 33(samidorphan)と、ミュー・オピオイド受容体アゴニスト/カッパ・オピオイド受容体アンタゴニストのbuprenorphineの合剤。ミュー受容体に対する作用が相殺されカッパ受容体拮抗作用だけが残る計算になる。第三相試験の結果は完璧ではなかったが、抗鬱剤の開発を止める会社が増えている中、粘り強く開発を進めてほしいものだ。

リンク: Alkermesのプレスリリース


【承認】


ビクトーザ、心血管リスク削減効果がレーベル記載
(2017年8月25日発表)

ノボ ノルディスクは、Victoza(liraglutide、和名ビクトーザ)の米国のレーベルに心血管疾患リスクを削減する効能が記載されたことを発表した。二型糖尿病の血糖治療薬ではSGLT2阻害剤のInvokana(canagliflozin)やJardiance(empagliflozin)に次ぐ三番目。米国の医学者のオピニオンリーダーや当局の要請に応えてメーカーがきちんとした臨床試験を行ったことが大きな収穫を生んだ。

血糖治療薬はいずれも一長一短だが、心血管リスクを削減するエビデンスのない薬や、癌や骨折のリスクを高める疑いのある薬の処方を正当化するのは容易でなくなるだろう。

Victozaは一日一回皮注型GLP-1作用剤。胃腸ホルモンのGLP-1を改変して作用を長期化したもので、血糖値上昇時にインスリン分泌を刺激し、グルカゴンの分泌抑制や胃から腸への食物移動を促し、食欲を抑制する。

今回の承認は、二型糖尿病でHbA1cが7%以上、年齢50歳以上の心血管リスクが高い患者を組入れたLEADER試験に基づくもの。Victoza群はそれ以外の薬を使った群と比べてMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクが13%小さく、主評価項目である非劣性解析が成功した。副次的に実施された優越性解析も成功。有害事象では、膵炎や悪性新生物は特に増えはしなかった。但し、膵臓腫瘍は0.3%(13人)と対照群の0.1%(5人)より数値上、多かった。

リンク: ノボのプレスリリース

アストラゼネカ、PARP阻害剤の適応拡大が承認
(2017年8月17日発表)

アストラゼネカと共同開発パートナーのMSDは、FDAがLynparza(olaparib)の適応拡大などを承認したと発表した。

PARP阻害剤で14年に欧州でBRCA変異型卵巣癌の化学療法奏功後維持療法として承認されたが、米国では諮問委員会も反対が大きく上回り、結局、当初の適応とは異なるBRCA変異型卵巣癌の四次治療薬として承認された経緯がある。アストラゼネカは第三相試験成功を待って改めて維持療法を申請し、今回、承認取得した。BRCA変異を持たない患者に使うことも認められており、Clovis社のRubraca(rucaparib)と肩を並べた。

このほかに、従来のカプセル製剤(50mg、8カプセルを一日二回服用)に加えて錠剤(150mg、二錠を一日回服用)も承認された。また、類似した用途で延命効果に準じる効能が確認されたため、生殖細胞性BRCA変異を持つ患者の四次治療という最初の承認が加速承認から本承認に切り替わった。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

パーキンソン病のジスキネジア治療薬が米国で初承認(?)
(2017年8月24日発表)

米国カリフォルニア州の新興製薬会社、Adamas Pharmaceuticals(Nasdaq:ADMS)は、Gocovri(amantadine徐放製剤)がFDAに承認されたと発表した。レボドパを服用しているパーキンソン病患者のジスキネジア(不随意運動)を治療する薬がFDAに承認されたのは初めてとのこと。

amantadineはオフレーベルで広く用いられているので新鮮味はない。それでも、今日のスタンダードに即したキチッとした臨床試験で効能や安全性を確認したことは価値があるだろう。但し、物事には釣り合いというものがあるので価格には細心の注意が必要だ。一部の新興会社のような理不尽なプライシングをすると何時まで経っても即放製剤のGE薬のシェアを奪えないだろう。

リンク: Adamasのプレスリリース

狂犬病用免疫グロブリンが米国で承認
(2017年8月25日発表)

イスラエルのKamada Ltd(Nasdaq:KMDA)とイタリアのKedrion Biopharmaは、FDAがKedrabを狂犬病の曝露後予防用途で承認したと発表した。狂犬病の恐れのある動物と接触した直後に、狂犬病ワクチンとともに、投与する。

Kedrabはヒト血漿由来の免疫グロブリンで、06年の発売以来、欧州などで140万バイアルの販売実績がある。類似製品が既に存在するが供給が安定的ではない模様。米国販売を担当するKedrion社は、年1億ドルの市場で大きなシェアを取る考え。

リンク: 両社のプレスリリース

クラドリビンが遂に欧州で承認
(2017年8月25日発表)

プリン・アナログのcladribineはジョンソン・エンド・ジョンソンが93年に米国で有毛細胞性白血病用薬Leustatinとして承認を取得した。研究者主導試験で多発性硬化症に効果を示したためIvax社が経口剤を開発、セラノがインライセンスして臨床開発した。Ivaxは06年にテバに買収され、セラノも同年にドイツのメルクに買収されたがプロジェクトは生き残り、09年に欧米で承認申請された。

その後の足取りは重かったが、足掛け8年、やっと欧州で承認された。ブランド名はMavenclad。リンパ球減少症や悪性良性新生物など、重篤な副作用の懸念があるため、適応は再発性多発硬化症のうち高度活性型に限定された。第三相のCLARITY試験の事後的解析で、再発頻度が偽薬比67%少なく、EDSSスコアの進行リスクが82%小さかった。

9月に独英二国からロールアウトを開始する予定。米国などでも承認申請する考え。

リンク: メルクのプレスリリース

ノバルティスのCDK4/6阻害剤、欧州でも承認
(2017年8月24日発表)

ノバルティスは、Kisqali(ribociclib)がEUに承認されたと発表した。細胞周期進行に係るCDK4やCDK6を阻害する経口剤で、ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後転移性乳癌の一次治療としてアロマターゼ阻害剤(同社のFemaraなど)と併用する。

Kisqaliは大塚製薬が13年に買収したAstex Pharmaceuticalsと行った細胞周期コントロールに関する共同研究の成果。米国では3月に承認され、Femaraを同梱した製品がKisqaliと同じ価格で上市された。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ソリリスがEUで重症筋無力症に適応拡大
(2017年8月21日発表)

アレクシオン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、Soliris(eculizumab、和名ソリリス)の適応拡大がEUで承認されたと発表した。難治性の全身性重症筋無力症のうち、アセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体を持つ患者が適応になる。

抗AChR抗体は神経筋接合部のAChRに結合して補体系を活性化、神経筋接合部を破壊する。SolirisはC5に結合して補体カスケードの進行をブロックする抗体医薬。これまでに、PNH(発作性夜間血色素尿症)やHUS(非定型溶血性尿毒症症候群)の治療薬として承認されている。

重症筋無力症といえば、抗PD-1抗体の稀だが重篤な副作用の一つで、日本の研究によると、オプジーボの1万人弱の投与症例のうち12人が発症、うち6人が深刻で2人は死亡した。通常の重症筋無力症と比べて筋細胞の炎症が更新している由だが、ソラリスは使えないのだろうか?

リンク: アレクシオン社のプレスリリース




今週は以上です。

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2017年8月20日

2017年8月20日


【ニュース・ヘッドライン】

  • ノボ、GLP-1作用剤の直接比較試験で好成績 
  • BMS、オプジーボ併用試験は微妙な結果に 
  • リジェネロン、RSV予防薬の開発を中止 
  • ファイザーの前駆B白血病用薬が米国で承認 


【新薬開発】


ノボ、GLP-1作用剤の直接比較試験で好成績
(2017年8月16日発表)

ノボ ノルディスクは、日米欧で二型糖尿病治療薬として承認申請中のNN9535(semaglutide)の直接比較試験が成功したと発表した。同じ週一回皮注型長期作用性GLP-1作用剤であるイーライリリーのTrulicity(dulaglutide)と比べて、血糖治療効果でも体重削減効果でも有意に優れていた。

このSUSTAIN 7試験は後期第三相試験という位置づけで、承認申請ではなく承認取得後の販促支援を意図して実施したもの。二型糖尿病患者約1200人を4群に割付けて、低用量同士(NN9535の0.5mgとTrulicityの0.75mg)そして高用量同士(各1mgと1.5mg)のHbA1c治療効果を40週間に亘って比較した。ベースライン値はHbA1cが8.2%、体重は95kg、BMIは33.5kg/m2。体重を見ても分かるように、グローバル試験で米国だけでなく欧州やアジアの施設も参加した。

結果は、低用量二群はHbA1cが各1.5%と1.1%低下し、NN9535の効果が有意に上回った。高用量も各1.8%と1.4%低下で有意に上回った。同様に、体重低下は低用量が4.6kg対2.3kg、高用量は6.5kg対3kgとなり、どちらも有意に上回った。

GLP-1作用剤の代表的な副作用である悪心嘔吐は用量相関するので効果の高い薬は悪心嘔吐が増えないか心配になるが、この試験では両剤とも大差なかったようだ。NN9535は心血管アウトカム試験でポストホック分析とはいえ主要有害心血管イベントが偽薬比有意に少なく注目されたが、一方で、網膜症性合併症が増加した。今回の試験では両剤とも大差なかった(4例対5例)。

心血管アウトカム試験が好成績であったことだけでも他のGLP-1作用剤と十分に差別化できるが、直接比較試験の裏付けができたことで販促が更にやりやすくなった。

リンク: ノボのプレスリリース

BMS、オプジーボ併用試験は微妙な結果に
(2017年8月15日発表)

BMSはOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)の併用療法を様々な癌でテストしているが、腎細胞腫一次治療の第三相、CheckMate-214試験は微妙な結果になった。

試験薬群はOpdivoは3mg/kg、Yervoyは1mg/kgを三週間毎に4回投与し、その後はOpdivoだけを二週間毎。標準療法群はファイザーのSutent(sunitinib)を承認されている用量・スケジュールで投与した。薬効解析対象は被験者の75%を占める中重度リスク患者。主評価項目は三つあり、まず、ORR(客観的反応率)は各群41.6%と26.5%となり、有意に上回った。メジアン反応持続期間は併用群は未達、標準療法群は18.1ヶ月だった。

次に、PFS(無進行生存期間)はメジアン11.56ヶ月と8.38ヶ月、ハザードレシオ0.82、95%信頼区間0.64~1.05で有意差はなかった。第三の主評価項目である全生存の解析はまだ機が熟していない。

FDAは一次治療薬の承認に際してORRだけでなく延命又はそれに準じる効果のエビデンスを求めることが多い。癌が一時的に縮小しても、抵抗性変異を経て、より速いペースで成長するようになる現象が見られることや、副作用で死亡するリスクを正当化するためにはそれ以上の生存率改善効果が必要だからだ。従って、全生存の解析が成功するまで承認されないというのが標準シナリオだろう。

但し、今回の試験には斟酌の余地がある。まず、実薬対照試験であること。広く用いられているSutentと遜色ないなら悪くない。第二に、BMSのプレスリリースによると、この試験のアルファの大半は全生存の解析に配布されている。具体的な数値はわからないが、PFS解析のハードルが通常の試験より高いことになる。フェールしたのは主評価項目を三つも設定した欲張りな治験デザインのせいかもしれないのだ。

とはいえ、薬効の挙証責任はBMSにある。高価な新薬の併用なのだからそれに見合ったエビデンスを提供すべきである。抗PD-1抗体もYervoyもはこれまでの化学療法薬と異なった、特有の副作用を持ち、命に係ることもある。併用すればリスクも高まるだろう。これらのことから、延命効果の検討は慎重かつ徹底的であるべきだ。

リンク: BMSのプレスリリース

リジェネロン、RSV予防薬の開発を中止
(2017年8月14日発表)

リジェネロン・ファーマスーティカルズ(REGN)は、REGN2222(suptavumab)の開発を中止する考えであることを明らかにした。36週前に生まれた健康な早産児1149人を組入れてRSV感染による入院や治療を予防する効果を検討する第三相試験を実施したが、フェールした。

REGN2222はRSV(respiratory syncytial virus)のF蛋白に対する抗体医薬。同種の薬であるアストラゼネカの子会社のメディミューンのSynagis(palivizumab、日本では大日本住友が販売するシナジス)が米国で承認されたのは19年前。メディミューンは力価の高いNumax(motavizumab)を開発したが過敏反応リスクがボトルネックでFDAに承認されず、2010年に開発中止となった。

リジェネロンは第二相をスキップして第三相にチャレンジしたが、果たせなかった。

リンク: リジェネロンのプレスリリース(pdfファイル)

【承認】


ファイザーの前駆B白血病用薬が米国で承認
(2017年8月17日発表)

FDAはファイザーのBesponsa(inotuzumab ozogamicin)を再発性難治性前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病用薬として承認した。ファイザーが09年に買収したワイスが、UCBが04年に子会社化したセルテックと共同開発したADC(抗体薬物複合体)で、抗体部分が前駆B細胞のCD22に結合し内部に侵入、calicheamicin部分がリリースされ癌細胞を攻撃する。

第三相試験では、CR(完全寛解率)が35.8%と化学療法を施行した対照群の17.4%を有意に上回った。CR持続期間の中央値は各8.0ヶ月と4.9ヶ月だった。全生存期間のメジアン値は7.7ヶ月で化学療法群の6.2ヶ月を上回ったが差は小さく有意ではなかった。

主な有害事象は骨髄抑制やQT延長など。枠付き警告は静脈閉塞疾患(14%で発生)などの肝毒性と、造血幹細胞移植(HSCT)後に再発以外の理由で死亡するリスク。上記試験では48%(79人)の患者がHSCTに進んだが、うち31人は無再発のまま死亡した。化学療法群は22%(35人)と8人なので、治癒的治療方法であるHSCTを施行できる患者が増えるので良い薬とは言い切れないところがある。

EUは6月に承認。日本は今年5月に承認申請された。

リンク: FDAのリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年8月13日

2017年8月13日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗CTGF抗体が特発性肺線維症に効果 
  • ゼルボラフをエルドハイム・チェスター病に適応拡大申請 
  • スチバーガ、EUでも肝細胞腫に適応拡大 


【新薬開発】


抗CTGF抗体が特発性肺線維症に効果
(2017年8月7日発表)

米国サンフランシスコのFibroGen(Nasdaq:FGEN)は、FG-019(pamrevlumab)の第二相特発性肺線維症(IPF)試験が成功したと発表した。第三相試験に向けて当局と相談する考え。提携交渉もアジェンダに上がっている様子だ。

FG-019は、組織のリモデリングや線維化に関与するCTGF(connective tissue growth factor)を標的とする抗体。今回の二重盲検偽薬対照試験は103人を組入れて48週間治療したところ、偽薬群のFVC %予測値が7.17%低下したのに対して試験薬群は4.33%の低下に留まり、治療効果は4.33%だった。FVCは各群129mLと308mL低下したので、治療効果は180mL程度ということになる。

IPF治療薬として承認されているロシュのEsbriet(pirfenidone、日本では塩野義のピレスパ)の試験ではFVC治療効果が150~235mL、ベーリンガー・インゲルハイムのOfev(nintedanib)は94~131mLだったので、見劣りしない。この試験は安全性サブスタディとしてEsbrietやOfevを服用している患者を57人組み入れており、もしアドオンでも単剤投与と同程度の進行抑制作用上乗せ効果があるようならば、効用が高まる。

リンク: FibroGenのプレスリリース


【承認申請】


ゼルボラフをエルドハイム・チェスター病に適応拡大申請
(2017年8月7日発表)

ロシュ・グループのジェネンテックは、Zelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ錠)をBRAF V600E変異陽性のエルドハイム・チェスター病に用いる適応拡大申請を米国で行い、受理されたと発表した。優先審査で審査期限は12月7日。

エルドハイム・チェスター病は白血球の一種である組織球が異常増殖する希少疾患で、1930年以来、世界で500例が文献報告されている。5割程度の患者がBRAF V600E変異を持っている由だ。

ZelborafはBRAF阻害剤。2011年にBRAF V600E変異陽性悪性黒色腫用薬として米国で承認された。今回の適応拡大申請は、BRAF V600変異を持つ様々な癌に対する効果を検討したVE-BASKET試験に基づくとのこと。検索してもヒットしないが、おそらく、New England Journal of Medicine誌に治験論文が掲載された、NCT01524978試験のことだろう。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース
リンク: Hymanらの治験論文(New England Journal of Medicine、2015年)

【承認】


スチバーガ、EUでも肝細胞腫に適応拡大
(2017年8月7日発表)

バイエルは、Stivarga(regorafenib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。切除不能で同社のNexavar(sorafenib)に反応しなくなった患者の二次治療に用いるもので、米国では今年4月に、日本でも6月に、承認されている。

NexavarはVEGF受容体阻害剤でBRAFやCRAFも阻害する。Stivargaはsorafenibの一部を置換したもの。VEGFR阻害剤は数多いが肝細胞腫に効果を示したものは少ない。

リンク: バイエルのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年8月6日

2017年8月6日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イーライリリー、片頭痛治療薬の二本目の第三相も成功 
  • アレセンサ、米国でも一次治療を申請 
  • Kite、欧州でCAR-Tを承認申請 
  • FDA諮問委員会、ゼルヤンツの乾癬性関節炎適応拡大を支持 
  • FDA諮問委員会、JNJの抗IL-6抗体は支持せず 
  • Dynavax、B型肝炎ワクチンの承認が遅延へ 
  • IDH2変異型AML用薬が米国で承認 
  • 二次性AML用新製剤が米国で承認 
  • Kalydeco、対象患者がまた拡大 
  • C型肝炎治療の決定版が米国で承認 
  • イムブルビ、今度はGvHDに承認 
  • オプジーボもdMMR/MSI-Hに適応拡大


【新薬開発】


イーライリリー、片頭痛治療薬の二本目の第三相も成功
(2017年8月4日発表)

イーライリリーはlasmiditanの二本目の第三相片頭痛治療試験も成功したと発表した。今回は50g群を設定し、100mg、200mgと合わせて3用量をテストしたところ、2時間後に片頭痛が解消していた患者の比率が各28.6%、31.4%、38.8%と偽薬群の21.3%を有意に上回った。夫々の患者が最も煩わしいと特定した症状の解消率も40.8%、44.2%、48.7%と偽薬群の33.5%を有意に上回った。治療関連有害事象は眩暈、知覚異常、傾眠、疲労、悪心、無気力など。

lasmiditanは今年3月に9.6億ドルで買収したCoLucid PharmaceuticalsがCOL-144として開発したものだが、オリジンはイーライリリー。三叉神経系に発現する5-HT1F受容体を選択的に作動するファースト・イン・クラス。経口剤。トリプタン(5HT1D受容体作動剤)と異なり血管収縮作用を持たないので心血管安全性が高い可能性がある。第三相試験二本では心血管疾患高リスクを除外条件にしていないが、リスクは高まらなかったようだ。

イーライリリーは長期安全性確認試験を経て18年下期に承認申請する考え。第三相試験の治験登録には米国の施設しか記載されていない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


【承認申請】


アレセンサ、米国でも一次治療を申請
(2017年8月3日発表)

ロシュはAlecensa(alectinib、和名アレセンサ)をALK変異陽性の局所進行性・転移性非小細胞性肺癌の一次治療に用いる適応拡大申請を米国でも行い、受理されたと発表した。審査期限は11月30日。

日本で実施されたJ-ALEX試験とグローバルのALEX試験に基づくもので、PFS(無進行生存期間)がALK阻害剤のファースト・イン・クラスであるXalkoriより有意に長かった。脳転移に対する効果も優れていた。

オリジンは中外製薬で14年に日本で初承認。一次治療は欧州で3月に承認申請が受理された。

リンク: ロシュのプレスリリース

Kite、欧州でCAR-Tを承認申請
(2017年7月31日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は欧州薬品庁(EMA)にKTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の販売承認申請を行った。欧州でCAR-T(キメラ抗体受容体-T細胞療法)が承認申請されるのは初。適応は、再発性難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、転換濾胞性リンパ腫(TFL)、原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)の自家造血幹細胞移植不適例。

リンク: Kiteのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、ゼルヤンツの乾癬性関節炎適応拡大を支持
(2017年8月3日発表)

FDAの関節炎諮問委員会はファイザーのXeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)を乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大を検討し、賛成10人、反対一人で多数が支持した。

Xeljanzはインターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJanus Kinaseを阻害する経口剤で、リウマチ性関節炎の治療薬として12年に米国で、13年に日本で、17年にはEUでも承認された。元々は臓器移植後の拒絶反応防止薬として開発されたくらい強力な免疫抑制作用を持つが、細菌・ウイルス感染や腫瘍などのリスクも見られる。EUで承認が遅れたり、米国で乾癬の適応拡大が認められなかったのは、便益と危険のバランスがボトルネックと推測される。

乾癬性関節炎は乾癬の合併症。考え方としては、ここまで重い症状が出てきたら最早使用を躊躇すべきではないということなのだろう。用量はリウマチ性関節炎と同じ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

FDA諮問委員会、JNJの抗IL-6抗体は支持せず
(2017年8月2日発表)

FDA関節炎諮問委員会は、ジョンソン・エンド・ジョンソンが軽中度リウマチ性関節炎の治療薬として承認申請した抗IL-6完全ヒト化抗体、CNTO 136(sirukumab)を検討し、反対12人、賛成一人で圧倒的に反対となった。臨床試験で死亡リスクが見られたため。

百人年当り死亡率は50mgを4週毎に投与した群が0.5、100mg2週毎群が0.8と偽薬群の0.2を倍以上、上回った。原因としては心血管イベントや感染症、腫瘍など。ノイズの可能性もありそうだが、原因は感染症や癌は免疫抑制剤にありがちなものであり、心血管イベントはIL-6受容体は心臓にも分布しているので関係ないとも言い切れない。

薬との関連性を考える上で安心材料になるのは、抗IL-6受容体のロシュのActemra(tocilizumab)やリジェネロン/サノフィのKevzara(sarilumab)ではこのようなリスクが見られないこと。標的がレガンドか受容体かという違いがあるが、IL-6受容体はIL-6と結合して血中に分布しているものもあるので、大差ないかもしれない。

しかし、この二剤は承認の当否を考える上では悪材料に転じる。類似した作用機序の薬が既に二剤も存在するのだから急ぐ必要はない。追加試験を行うなり何なりして無垢が立証されるまで承認を待つのは健全な考え方だ。

日本では昨年10月に承認申請された。

CNTO 136は開発販売パートナーのグラクソ・スミスクラインが今年7月に研究開発の選択と集中を決定、権利を返還した。死亡リスクに偏りがあったことと関係があるのかは不明。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

Dynavax、B型肝炎ワクチンの承認が遅延へ
(2017年8月3日発表)

Dynavax Technologies(Nasdaq:DVAX)は2012年にHEPLISAV-Bを米国で承認申請、今年7月に諮問委員会の支持を獲得し承認まであと一歩となったが、審査期限の8月10日までには承認されない見込みであることが公表された。

このB型肝炎ワクチンは臨床試験で心血管疾患に群間の偏りが見られた。諮問委員会はHEPLISAV群が多いというより対照群が偶々少なかったと判定、安全性を支持したが、市販後薬物監視試験をキチンと行うよう求めた。計画案を作成しFDAの内諾を得て提出し審査を受けるには時間がかかるので、承認遅延は止むを得ない。諮問委員会が審査期限の前月に開催されると発表された段階で予想されたシナリオの一つである。

今週中に提出したとすると審査期限は3ヶ月延期で11月10日となる。発売は元々18年の予定であったため、Dynavaxはスケジュールに変更はない、と記している。

リンク: Dynavaxのプレスリリース


【承認】


IDH2変異型AML用薬が米国で承認
(2017年8月1日発表)

FDAはセルジーン(Nasdaq:CELG)のIDHIFAR(enasidenib)を承認した。同時に承認されたアボットのRealTime IDH2アッセイでIDH2変異陽性と判定された再発性難治性AML(急性骨髄性白血病)の成人に用いる。

血液癌は症状や進行などに応じて大まかに分類されるが、同じAMLでも細胞遺伝学的態様は様々だ。細かく分類すると症例数が少なくなり共通項を見つけるのが難しくなり、また分類が増えても研究者数や予算は追い付けないが、それでも、一歩一歩、前進はしている。

今回のIDH2陽性型はAMLの8~19%が該当する。臨床試験では100mgを一日一回、経口投与したところ、完全寛解率が19%となり、メジアン8.2ヶ月持続した。輸血依存患者の34%が不要になった。

IDHIFARはセルジーンが2010~2014年にAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)と行った癌・代謝領域の戦略的協業の成果で、セルジーンが全世界の開発商業化権を持ち、Agiosは達成報奨金や売上ロイヤルティを得る。

リンク: FDAのリリース
リンク: 両社のプレスリリース

二次性AML用新製剤が米国で承認
(2017年8月3日発表)

新薬ではないが、Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq: JAZZ)のVyxeosもAMLの一部の患者向けにFDAに承認された。cytarabineとdaunorubicinのリポソーム合剤で、新患t-AML(治療関連AML)やAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)に用いる。Jazzによると米国のAML患者の最大40%が該当するとのことだ。

60~75歳の高齢者を対象とした第三相試験では、cytarabineとdaunorubicinの代表的な併用法である7-3療法と比べて全生存のハザードレシオが0.69、ログランクp値は0.005、メジアン生存期間は9.6ヶ月対5.9ヶ月で上回った。造血幹細胞移植を施行できた患者の比率も34%対25%と良い結果が出ている。致死的な有害事象の発生率は両群6%だった。尚、FDAは適応を高齢者に限定していない。

t-AMLは血液癌の放射線療法や化学療法の合併症で、治療後平均5年以内に8~10%の患者で発生する由だ。AML-MRCは骨髄異形成症候群と診断されるほどではなかったが類似した状況の患者のAMLというイメージのようだ。どちらも予後が悪いとされる。

第三相でこの二タイプに絞り込んだのは第二相試験のサブグループ分析に基づく。一般に抗癌剤のサブグループ分析は当てにならないことを考えれば、他のタイプの癌に効果があっても不思議はない。今後の検討対象になるかもしれない。

Vyxeosは昨年7月に15憶ドルで買収したCelator Pharmaceuticalsの開発品。

リンク: FDAのリリース
リンク: ジャズのプレスリリース

Kalydeco、対象患者がまた拡大
(2017年8月1日発表)

ヴァーテックス・ファーマスーティカル(Nasdaq:VRTX)は、嚢胞性線維症用薬Kalydeco(ivacaftor)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。CFTRの遺伝子変異が原因であることが多いが、様々な変異型があるため、ヴァーテックスは一つ一つ効果を検証している。今回は、機能がある程度残存している、スプライシング欠陥をもたらす5種類の変異型を保有する2歳以上の患者が追加された。米国で600人超が該当する由。これで、合計58種類の変異型に用いることが可能になった。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

C型肝炎治療の決定版が米国で承認
(2017年8月3日発表)

FDAはアッヴィ(NYSE:ABBV)のMavyretを承認した。EUでは7月にMaviret名で承認された慢性C型肝炎治療薬で、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤のglecaprevirとNS5A複製複合体阻害剤のpibrentasvirの合剤。一日一回、三錠を服用する。

遺伝子型1型から6型まで幅広いウイルスに有効で、肝硬変を合併していない初めて治療を受ける患者なら8週間の治療で9割以上が完治(SVR12)する。同じ作用機序の薬は多いので二次治療の有効性も重要なチェックポイントだが、Mavyretは遺伝子型1型でNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とNS5A複製複合体のうちどちらがフェールした患者にも有効だ。

重度肝疾患は禁忌、中度も非推奨だが、軽度なら使用可能で腎疾患は透析期でも可。肝臓酵素やトランスポーター相互作用があり、atazanavir(Mavyretの濃度上昇)やrifampin(低下)が併用禁忌。

適応の広さや治療期間の短さを考えると、慢性C型肝炎治療薬の決定版と言えるだろう。価格もギリアドやアッヴィ自身の既存薬の半値、MSDが昨年発売したZepatier(grazoprevir、elbasvir)の7掛けで販売される模様だ。

慢性C型肝炎は完治が可能になったため一次治療薬の市場は縮小していくだろう。米国の民間医療保険は入札で一番安い薬を優先的に使うシステムになっており、承認されたばかりの新薬は不利だ。このため、薬として優れているだけでは足りず、価格訴求力を持たせてできるだけ早く、普及させなければならない。

リンク: FDAのリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース

イムブルビ、今度はGvHDに承認
(2017年8月2日発表)

FDAはアッヴィの子会社であるPharmacyclicsのImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビ)を慢性GvHD(移植片対宿主病)の二次治療薬として承認した。一次治療はステロイドが用いられるが、フェールした後の二次治療に有効な薬が承認されたのは初。

ImbruvicaはB細胞のアポトーシス、細胞接着、組織移行・帰還に関わるBrutonチロシン・キナーゼを阻害する経口剤。13年に慢性リンパ性白血病用薬として初承認された。

今回の適応拡大は第二相試験に基づくもの。ORR(客観的反応率)は67%、完全反応は21%だった。24%の患者は有害事象が原因で治験離脱した。

一次治療の第三相試験も進行中。

リンク: FDAのリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース

オプジーボもdMMR/MSI-Hに適応拡大
(2017年8月1日発表)

BMSは、FDAがOpdivo(nivolumab)をdMMR/MSI-Hの転移性結腸直腸癌のサルベージ療法として使う適応拡大を承認したと発表した。MSDのKeytruda(pemblorizumab)の5月の適応拡大のほうが対象が多いが、新しい切り口なので、二社が競争しながら宣伝するのが普及には一番だろう。

dMMR(mismatch repair deficient)はDNA複製ミスを修復するメカニズムに欠陥がある。MSI-H(microsatellite instability-high)は同じ塩基配列が繰り返されていて複製ミスが生じやすい箇所の繰返し回数が腫瘍細胞と正常細胞で異なる。後者は前者を発見するための手法という意味合いがあり、同じような現象を異なった切り口で定義している。元々はリンチ症候群患者の大腸癌の研究から発見された。化学療法抵抗性結腸直腸癌の5%程度が該当する。

dMMR/MSI-Hは内膜腫や胃癌、そして頻度は低いが乳癌や前立腺癌、膀胱癌、甲状腺癌でも見られ、Keytrudaは発生部位の制約はないが、Opdivoは結腸直腸癌だけ。他の薬をすべて経験した難治性患者限定である点は同じ。

CheckMate-142試験ではORR(客観的奏効率)が53人中15人、28%だった。

リンク: BMSのプレスリリース







今週は以上です。

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