【ニュース・ヘッドライン】
- イーライリリー、片頭痛治療薬の二本目の第三相も成功
- アレセンサ、米国でも一次治療を申請
- Kite、欧州でCAR-Tを承認申請
- FDA諮問委員会、ゼルヤンツの乾癬性関節炎適応拡大を支持
- FDA諮問委員会、JNJの抗IL-6抗体は支持せず
- Dynavax、B型肝炎ワクチンの承認が遅延へ
- IDH2変異型AML用薬が米国で承認
- 二次性AML用新製剤が米国で承認
- Kalydeco、対象患者がまた拡大
- C型肝炎治療の決定版が米国で承認
- イムブルビ、今度はGvHDに承認
- オプジーボもdMMR/MSI-Hに適応拡大
【新薬開発】
イーライリリー、片頭痛治療薬の二本目の第三相も成功
(2017年8月4日発表)
イーライリリーはlasmiditanの二本目の第三相片頭痛治療試験も成功したと発表した。今回は50g群を設定し、100mg、200mgと合わせて3用量をテストしたところ、2時間後に片頭痛が解消していた患者の比率が各28.6%、31.4%、38.8%と偽薬群の21.3%を有意に上回った。夫々の患者が最も煩わしいと特定した症状の解消率も40.8%、44.2%、48.7%と偽薬群の33.5%を有意に上回った。治療関連有害事象は眩暈、知覚異常、傾眠、疲労、悪心、無気力など。
lasmiditanは今年3月に9.6億ドルで買収したCoLucid PharmaceuticalsがCOL-144として開発したものだが、オリジンはイーライリリー。三叉神経系に発現する5-HT1F受容体を選択的に作動するファースト・イン・クラス。経口剤。トリプタン(5HT1D受容体作動剤)と異なり血管収縮作用を持たないので心血管安全性が高い可能性がある。第三相試験二本では心血管疾患高リスクを除外条件にしていないが、リスクは高まらなかったようだ。
イーライリリーは長期安全性確認試験を経て18年下期に承認申請する考え。第三相試験の治験登録には米国の施設しか記載されていない。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
【承認申請】
アレセンサ、米国でも一次治療を申請
(2017年8月3日発表)
ロシュはAlecensa(alectinib、和名アレセンサ)をALK変異陽性の局所進行性・転移性非小細胞性肺癌の一次治療に用いる適応拡大申請を米国でも行い、受理されたと発表した。審査期限は11月30日。
日本で実施されたJ-ALEX試験とグローバルのALEX試験に基づくもので、PFS(無進行生存期間)がALK阻害剤のファースト・イン・クラスであるXalkoriより有意に長かった。脳転移に対する効果も優れていた。
オリジンは中外製薬で14年に日本で初承認。一次治療は欧州で3月に承認申請が受理された。
リンク: ロシュのプレスリリース
Kite、欧州でCAR-Tを承認申請
(2017年7月31日発表)
Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は欧州薬品庁(EMA)にKTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の販売承認申請を行った。欧州でCAR-T(キメラ抗体受容体-T細胞療法)が承認申請されるのは初。適応は、再発性難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、転換濾胞性リンパ腫(TFL)、原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)の自家造血幹細胞移植不適例。
リンク: Kiteのプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA諮問委員会、ゼルヤンツの乾癬性関節炎適応拡大を支持
(2017年8月3日発表)
FDAの関節炎諮問委員会はファイザーのXeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)を乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大を検討し、賛成10人、反対一人で多数が支持した。
Xeljanzはインターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJanus Kinaseを阻害する経口剤で、リウマチ性関節炎の治療薬として12年に米国で、13年に日本で、17年にはEUでも承認された。元々は臓器移植後の拒絶反応防止薬として開発されたくらい強力な免疫抑制作用を持つが、細菌・ウイルス感染や腫瘍などのリスクも見られる。EUで承認が遅れたり、米国で乾癬の適応拡大が認められなかったのは、便益と危険のバランスがボトルネックと推測される。
乾癬性関節炎は乾癬の合併症。考え方としては、ここまで重い症状が出てきたら最早使用を躊躇すべきではないということなのだろう。用量はリウマチ性関節炎と同じ。
リンク: ファイザーのプレスリリース
FDA諮問委員会、JNJの抗IL-6抗体は支持せず
(2017年8月2日発表)
FDA関節炎諮問委員会は、ジョンソン・エンド・ジョンソンが軽中度リウマチ性関節炎の治療薬として承認申請した抗IL-6完全ヒト化抗体、CNTO 136(sirukumab)を検討し、反対12人、賛成一人で圧倒的に反対となった。臨床試験で死亡リスクが見られたため。
百人年当り死亡率は50mgを4週毎に投与した群が0.5、100mg2週毎群が0.8と偽薬群の0.2を倍以上、上回った。原因としては心血管イベントや感染症、腫瘍など。ノイズの可能性もありそうだが、原因は感染症や癌は免疫抑制剤にありがちなものであり、心血管イベントはIL-6受容体は心臓にも分布しているので関係ないとも言い切れない。
薬との関連性を考える上で安心材料になるのは、抗IL-6受容体のロシュのActemra(tocilizumab)やリジェネロン/サノフィのKevzara(sarilumab)ではこのようなリスクが見られないこと。標的がレガンドか受容体かという違いがあるが、IL-6受容体はIL-6と結合して血中に分布しているものもあるので、大差ないかもしれない。
しかし、この二剤は承認の当否を考える上では悪材料に転じる。類似した作用機序の薬が既に二剤も存在するのだから急ぐ必要はない。追加試験を行うなり何なりして無垢が立証されるまで承認を待つのは健全な考え方だ。
日本では昨年10月に承認申請された。
CNTO 136は開発販売パートナーのグラクソ・スミスクラインが今年7月に研究開発の選択と集中を決定、権利を返還した。死亡リスクに偏りがあったことと関係があるのかは不明。
リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)
Dynavax、B型肝炎ワクチンの承認が遅延へ
(2017年8月3日発表)
Dynavax Technologies(Nasdaq:DVAX)は2012年にHEPLISAV-Bを米国で承認申請、今年7月に諮問委員会の支持を獲得し承認まであと一歩となったが、審査期限の8月10日までには承認されない見込みであることが公表された。
このB型肝炎ワクチンは臨床試験で心血管疾患に群間の偏りが見られた。諮問委員会はHEPLISAV群が多いというより対照群が偶々少なかったと判定、安全性を支持したが、市販後薬物監視試験をキチンと行うよう求めた。計画案を作成しFDAの内諾を得て提出し審査を受けるには時間がかかるので、承認遅延は止むを得ない。諮問委員会が審査期限の前月に開催されると発表された段階で予想されたシナリオの一つである。
今週中に提出したとすると審査期限は3ヶ月延期で11月10日となる。発売は元々18年の予定であったため、Dynavaxはスケジュールに変更はない、と記している。
リンク: Dynavaxのプレスリリース
【承認】
IDH2変異型AML用薬が米国で承認
(2017年8月1日発表)
FDAはセルジーン(Nasdaq:CELG)のIDHIFAR(enasidenib)を承認した。同時に承認されたアボットのRealTime IDH2アッセイでIDH2変異陽性と判定された再発性難治性AML(急性骨髄性白血病)の成人に用いる。
血液癌は症状や進行などに応じて大まかに分類されるが、同じAMLでも細胞遺伝学的態様は様々だ。細かく分類すると症例数が少なくなり共通項を見つけるのが難しくなり、また分類が増えても研究者数や予算は追い付けないが、それでも、一歩一歩、前進はしている。
今回のIDH2陽性型はAMLの8~19%が該当する。臨床試験では100mgを一日一回、経口投与したところ、完全寛解率が19%となり、メジアン8.2ヶ月持続した。輸血依存患者の34%が不要になった。
IDHIFARはセルジーンが2010~2014年にAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)と行った癌・代謝領域の戦略的協業の成果で、セルジーンが全世界の開発商業化権を持ち、Agiosは達成報奨金や売上ロイヤルティを得る。
リンク: FDAのリリース
リンク: 両社のプレスリリース
二次性AML用新製剤が米国で承認
(2017年8月3日発表)
新薬ではないが、Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq: JAZZ)のVyxeosもAMLの一部の患者向けにFDAに承認された。cytarabineとdaunorubicinのリポソーム合剤で、新患t-AML(治療関連AML)やAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)に用いる。Jazzによると米国のAML患者の最大40%が該当するとのことだ。
60~75歳の高齢者を対象とした第三相試験では、cytarabineとdaunorubicinの代表的な併用法である7-3療法と比べて全生存のハザードレシオが0.69、ログランクp値は0.005、メジアン生存期間は9.6ヶ月対5.9ヶ月で上回った。造血幹細胞移植を施行できた患者の比率も34%対25%と良い結果が出ている。致死的な有害事象の発生率は両群6%だった。尚、FDAは適応を高齢者に限定していない。
t-AMLは血液癌の放射線療法や化学療法の合併症で、治療後平均5年以内に8~10%の患者で発生する由だ。AML-MRCは骨髄異形成症候群と診断されるほどではなかったが類似した状況の患者のAMLというイメージのようだ。どちらも予後が悪いとされる。
第三相でこの二タイプに絞り込んだのは第二相試験のサブグループ分析に基づく。一般に抗癌剤のサブグループ分析は当てにならないことを考えれば、他のタイプの癌に効果があっても不思議はない。今後の検討対象になるかもしれない。
Vyxeosは昨年7月に15憶ドルで買収したCelator Pharmaceuticalsの開発品。
リンク: FDAのリリース
リンク: ジャズのプレスリリース
Kalydeco、対象患者がまた拡大
(2017年8月1日発表)
ヴァーテックス・ファーマスーティカル(Nasdaq:VRTX)は、嚢胞性線維症用薬Kalydeco(ivacaftor)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。CFTRの遺伝子変異が原因であることが多いが、様々な変異型があるため、ヴァーテックスは一つ一つ効果を検証している。今回は、機能がある程度残存している、スプライシング欠陥をもたらす5種類の変異型を保有する2歳以上の患者が追加された。米国で600人超が該当する由。これで、合計58種類の変異型に用いることが可能になった。
リンク: ヴァーテックスのプレスリリース
C型肝炎治療の決定版が米国で承認
(2017年8月3日発表)
FDAはアッヴィ(NYSE:ABBV)のMavyretを承認した。EUでは7月にMaviret名で承認された慢性C型肝炎治療薬で、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤のglecaprevirとNS5A複製複合体阻害剤のpibrentasvirの合剤。一日一回、三錠を服用する。
遺伝子型1型から6型まで幅広いウイルスに有効で、肝硬変を合併していない初めて治療を受ける患者なら8週間の治療で9割以上が完治(SVR12)する。同じ作用機序の薬は多いので二次治療の有効性も重要なチェックポイントだが、Mavyretは遺伝子型1型でNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とNS5A複製複合体のうちどちらがフェールした患者にも有効だ。
重度肝疾患は禁忌、中度も非推奨だが、軽度なら使用可能で腎疾患は透析期でも可。肝臓酵素やトランスポーター相互作用があり、atazanavir(Mavyretの濃度上昇)やrifampin(低下)が併用禁忌。
適応の広さや治療期間の短さを考えると、慢性C型肝炎治療薬の決定版と言えるだろう。価格もギリアドやアッヴィ自身の既存薬の半値、MSDが昨年発売したZepatier(grazoprevir、elbasvir)の7掛けで販売される模様だ。
慢性C型肝炎は完治が可能になったため一次治療薬の市場は縮小していくだろう。米国の民間医療保険は入札で一番安い薬を優先的に使うシステムになっており、承認されたばかりの新薬は不利だ。このため、薬として優れているだけでは足りず、価格訴求力を持たせてできるだけ早く、普及させなければならない。
リンク: FDAのリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース
イムブルビ、今度はGvHDに承認
(2017年8月2日発表)
FDAはアッヴィの子会社であるPharmacyclicsのImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビ)を慢性GvHD(移植片対宿主病)の二次治療薬として承認した。一次治療はステロイドが用いられるが、フェールした後の二次治療に有効な薬が承認されたのは初。
ImbruvicaはB細胞のアポトーシス、細胞接着、組織移行・帰還に関わるBrutonチロシン・キナーゼを阻害する経口剤。13年に慢性リンパ性白血病用薬として初承認された。
今回の適応拡大は第二相試験に基づくもの。ORR(客観的反応率)は67%、完全反応は21%だった。24%の患者は有害事象が原因で治験離脱した。
一次治療の第三相試験も進行中。
リンク: FDAのリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース
オプジーボもdMMR/MSI-Hに適応拡大
(2017年8月1日発表)
BMSは、FDAがOpdivo(nivolumab)をdMMR/MSI-Hの転移性結腸直腸癌のサルベージ療法として使う適応拡大を承認したと発表した。MSDのKeytruda(pemblorizumab)の5月の適応拡大のほうが対象が多いが、新しい切り口なので、二社が競争しながら宣伝するのが普及には一番だろう。
dMMR(mismatch repair deficient)はDNA複製ミスを修復するメカニズムに欠陥がある。MSI-H(microsatellite instability-high)は同じ塩基配列が繰り返されていて複製ミスが生じやすい箇所の繰返し回数が腫瘍細胞と正常細胞で異なる。後者は前者を発見するための手法という意味合いがあり、同じような現象を異なった切り口で定義している。元々はリンチ症候群患者の大腸癌の研究から発見された。化学療法抵抗性結腸直腸癌の5%程度が該当する。
dMMR/MSI-Hは内膜腫や胃癌、そして頻度は低いが乳癌や前立腺癌、膀胱癌、甲状腺癌でも見られ、Keytrudaは発生部位の制約はないが、Opdivoは結腸直腸癌だけ。他の薬をすべて経験した難治性患者限定である点は同じ。
CheckMate-142試験ではORR(客観的奏効率)が53人中15人、28%だった。
リンク: BMSのプレスリリース
今週は以上です。
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