2017年8月20日

2017年8月20日


【ニュース・ヘッドライン】

  • ノボ、GLP-1作用剤の直接比較試験で好成績 
  • BMS、オプジーボ併用試験は微妙な結果に 
  • リジェネロン、RSV予防薬の開発を中止 
  • ファイザーの前駆B白血病用薬が米国で承認 


【新薬開発】


ノボ、GLP-1作用剤の直接比較試験で好成績
(2017年8月16日発表)

ノボ ノルディスクは、日米欧で二型糖尿病治療薬として承認申請中のNN9535(semaglutide)の直接比較試験が成功したと発表した。同じ週一回皮注型長期作用性GLP-1作用剤であるイーライリリーのTrulicity(dulaglutide)と比べて、血糖治療効果でも体重削減効果でも有意に優れていた。

このSUSTAIN 7試験は後期第三相試験という位置づけで、承認申請ではなく承認取得後の販促支援を意図して実施したもの。二型糖尿病患者約1200人を4群に割付けて、低用量同士(NN9535の0.5mgとTrulicityの0.75mg)そして高用量同士(各1mgと1.5mg)のHbA1c治療効果を40週間に亘って比較した。ベースライン値はHbA1cが8.2%、体重は95kg、BMIは33.5kg/m2。体重を見ても分かるように、グローバル試験で米国だけでなく欧州やアジアの施設も参加した。

結果は、低用量二群はHbA1cが各1.5%と1.1%低下し、NN9535の効果が有意に上回った。高用量も各1.8%と1.4%低下で有意に上回った。同様に、体重低下は低用量が4.6kg対2.3kg、高用量は6.5kg対3kgとなり、どちらも有意に上回った。

GLP-1作用剤の代表的な副作用である悪心嘔吐は用量相関するので効果の高い薬は悪心嘔吐が増えないか心配になるが、この試験では両剤とも大差なかったようだ。NN9535は心血管アウトカム試験でポストホック分析とはいえ主要有害心血管イベントが偽薬比有意に少なく注目されたが、一方で、網膜症性合併症が増加した。今回の試験では両剤とも大差なかった(4例対5例)。

心血管アウトカム試験が好成績であったことだけでも他のGLP-1作用剤と十分に差別化できるが、直接比較試験の裏付けができたことで販促が更にやりやすくなった。

リンク: ノボのプレスリリース

BMS、オプジーボ併用試験は微妙な結果に
(2017年8月15日発表)

BMSはOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)の併用療法を様々な癌でテストしているが、腎細胞腫一次治療の第三相、CheckMate-214試験は微妙な結果になった。

試験薬群はOpdivoは3mg/kg、Yervoyは1mg/kgを三週間毎に4回投与し、その後はOpdivoだけを二週間毎。標準療法群はファイザーのSutent(sunitinib)を承認されている用量・スケジュールで投与した。薬効解析対象は被験者の75%を占める中重度リスク患者。主評価項目は三つあり、まず、ORR(客観的反応率)は各群41.6%と26.5%となり、有意に上回った。メジアン反応持続期間は併用群は未達、標準療法群は18.1ヶ月だった。

次に、PFS(無進行生存期間)はメジアン11.56ヶ月と8.38ヶ月、ハザードレシオ0.82、95%信頼区間0.64~1.05で有意差はなかった。第三の主評価項目である全生存の解析はまだ機が熟していない。

FDAは一次治療薬の承認に際してORRだけでなく延命又はそれに準じる効果のエビデンスを求めることが多い。癌が一時的に縮小しても、抵抗性変異を経て、より速いペースで成長するようになる現象が見られることや、副作用で死亡するリスクを正当化するためにはそれ以上の生存率改善効果が必要だからだ。従って、全生存の解析が成功するまで承認されないというのが標準シナリオだろう。

但し、今回の試験には斟酌の余地がある。まず、実薬対照試験であること。広く用いられているSutentと遜色ないなら悪くない。第二に、BMSのプレスリリースによると、この試験のアルファの大半は全生存の解析に配布されている。具体的な数値はわからないが、PFS解析のハードルが通常の試験より高いことになる。フェールしたのは主評価項目を三つも設定した欲張りな治験デザインのせいかもしれないのだ。

とはいえ、薬効の挙証責任はBMSにある。高価な新薬の併用なのだからそれに見合ったエビデンスを提供すべきである。抗PD-1抗体もYervoyもはこれまでの化学療法薬と異なった、特有の副作用を持ち、命に係ることもある。併用すればリスクも高まるだろう。これらのことから、延命効果の検討は慎重かつ徹底的であるべきだ。

リンク: BMSのプレスリリース

リジェネロン、RSV予防薬の開発を中止
(2017年8月14日発表)

リジェネロン・ファーマスーティカルズ(REGN)は、REGN2222(suptavumab)の開発を中止する考えであることを明らかにした。36週前に生まれた健康な早産児1149人を組入れてRSV感染による入院や治療を予防する効果を検討する第三相試験を実施したが、フェールした。

REGN2222はRSV(respiratory syncytial virus)のF蛋白に対する抗体医薬。同種の薬であるアストラゼネカの子会社のメディミューンのSynagis(palivizumab、日本では大日本住友が販売するシナジス)が米国で承認されたのは19年前。メディミューンは力価の高いNumax(motavizumab)を開発したが過敏反応リスクがボトルネックでFDAに承認されず、2010年に開発中止となった。

リジェネロンは第二相をスキップして第三相にチャレンジしたが、果たせなかった。

リンク: リジェネロンのプレスリリース(pdfファイル)

【承認】


ファイザーの前駆B白血病用薬が米国で承認
(2017年8月17日発表)

FDAはファイザーのBesponsa(inotuzumab ozogamicin)を再発性難治性前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病用薬として承認した。ファイザーが09年に買収したワイスが、UCBが04年に子会社化したセルテックと共同開発したADC(抗体薬物複合体)で、抗体部分が前駆B細胞のCD22に結合し内部に侵入、calicheamicin部分がリリースされ癌細胞を攻撃する。

第三相試験では、CR(完全寛解率)が35.8%と化学療法を施行した対照群の17.4%を有意に上回った。CR持続期間の中央値は各8.0ヶ月と4.9ヶ月だった。全生存期間のメジアン値は7.7ヶ月で化学療法群の6.2ヶ月を上回ったが差は小さく有意ではなかった。

主な有害事象は骨髄抑制やQT延長など。枠付き警告は静脈閉塞疾患(14%で発生)などの肝毒性と、造血幹細胞移植(HSCT)後に再発以外の理由で死亡するリスク。上記試験では48%(79人)の患者がHSCTに進んだが、うち31人は無再発のまま死亡した。化学療法群は22%(35人)と8人なので、治癒的治療方法であるHSCTを施行できる患者が増えるので良い薬とは言い切れないところがある。

EUは6月に承認。日本は今年5月に承認申請された。

リンク: FDAのリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース






今週は以上です。

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