2024年11月23日

第1082回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 次期厚生省長官の挑戦状 
  • SGLT阻害剤の一型糖尿病承認が遅延、リストラへ 
  • 破産したワクチン・メーカーが自主回収に着手 
  • CETP阻害剤の第3相、二本目も成功 
  • 抗CD40L抗体のSLE試験が成功 
  • GSK、iBAT阻害剤のPBC掻痒緩和試験が成功 
  • 経口IL-23受容体拮抗剤の第3相が成功 
  • トレムフィア皮下注用を導入療法にも申請 
  • Arrowhead社、家族性カイロミクロン血症のRNA介入薬を承認申請 
  • FDA諮問委員会、Xa阻害剤中和薬の功罪を検討 
  • Jazzのher2陽性胆道癌用薬が承認 
  • ビンゼレックスが米国でも化膿性汗腺炎に適応拡大 
  • 初のメニン阻害剤が承認 
  • 諮問委員会、クロザピンのREMS緩和を支持 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


次期厚生省長官の挑戦状
(2024年10月26日書き込み)

『FDAの公衆衛生戦争は間もなく終わる。サイケデリックやペプチド、幹細胞、生乳、高気圧酸素療法、キレート化合物、イベルメクチン、ヒドロキシクロロキン、ビタミン、クリーン・フード(加工度の低い食品)、日射、エクササイズ、ニュートラシューティカルズなどに対する強力な抑圧のことだ。人々の健康を推進するものだが、製薬会社が特許を取得できない。もし諸君がFDAで現在のシステムの一部として働いているならば、二つのメッセージを送りたい。1、君たちの記録を保管せよ。2、荷物を鞄に詰めよ。』

(大統領はワクチンに慎重。FDA長官有力候補はCOVID-19にワクチンは不要と主張したことがある。レイマンズ・コントロールは民主主義の根幹と学校で習ったが、分業の効用も習った。)

リンク: Robert F. Kennedy Jr.のXにおける書き込み


SGLT阻害剤の一型糖尿病承認が遅延、リストラへ
(2024年11月22日発表)

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)は、心不全治療薬Inpefa(sotagliflozin)の販売部隊をリストラし、臨床開発に注力すると発表した。既存患者向けの製造販売は継続する。肥大性心筋症の第3相や他のコンパウンドの開発は続行する。

19年に米国で心不全や心血管リスク因子を持つ二型糖尿病や慢性腎疾患の合併症リスクを抑制する薬として承認されたが、元々の目標適応症である一型糖尿病用途は19年に審査完了通知を受領し、二回目のチャレンジも、12月のPDUFAデートを前にして、FDAから申請に欠陥があるため承認審査の最終段階であるレーベルの内容や市販後コミットメントに関する協議に進むことができないという通知を受領した。一型糖尿病では特にケトアシドーシスのリスクが高まることが難点。19年にFDA諮問委員会では8対8で賛否が分かれたが、今年10月の諮問委員会では3対11で反対が大勢を占めた。今回も審査完了に終わると決まったわけではないが、営業体制を維持しても無駄に終わる可能性があると考えたのだろう。

欧州では19年に一型糖尿病の血糖治療薬として承認されたが、認可保有者であるGuidehouse Germany GmbHの要請に基づき、22年に取消された。

リンク: 同社のプレスリリース

破産したワクチン・メーカーが自主回収に着手
(2024年11月15日発表)

米国マサチューセッツ州のVBI Vaccinesは、B型肝炎ワクチンPreHevbrioの自主回収を開始すると発表した。直ちに流通や使用を中止しなければならない。臨床試験で抗体陽転率がGSKのEngerix-Bと非劣性であることを確認し21年に米国で、22年にはEUでも承認を取得したが、23年の売上高が310万ドルと低迷、今年7月にカナダで債務整理法の適用を、米国でも破産法第15章の適用を、申請した。身売りなどの戦略的オプションを検討しているはずだが、なけなしの製品を自主回収するということは、供給継続を諦めたのだろうか?尚、Nasdaqは8月に上場廃止になっている。

リンク: 同社のプレスリリース

【新薬開発】


CETP阻害剤の第3相、二本目も成功
(2024年11月20日発表)

オランダのNewAmsterdam Pharma(Nasdaq:NAMS)は、CETP阻害剤obicetrapibとNPC1L1阻害剤ezetimibeの固定用量合剤(FTC)のLDL-C低下作用を検討した第3相試験で主目的を達成したと発表した。単剤の試験は既に一本が成功、もう一本は年内に開票予定で、25年に承認申請に向かいそうだ。

このTANDEM試験は米国の施設でヘテロ接合型家族性高脂血症やアテローム硬化性心血管疾患及び高リスク患者で最大忍容量のコレステロール治療薬を服用してもLDL-C値が70mg/dL以上の患者407人を、偽薬、ezetimibe 10mg、obicetrapib 10mg、FDC 10/10mgの4群に無作為化割付けして12週間投与し、LDL-C低下作用を比較した。偽薬調整後低下率は各群20.7%、31.9%、48.6%となり、FDCは偽薬群や各単剤投与群を有意に上回った。共同主評価項目であるobicetrapib単剤群と偽薬群の比較も成功した。薬物関連治療時発現有害事象やそれに伴う投与中止はobicetrapib単剤投与群だけやや高いが、イベント数が一桁と少ないため、ノイズの可能性も否定できないだろう。

一本目のBROOKLYN試験では偽薬調整後で36.3%低下した。HDL-Cは同138.7%増、スタチンが殆ど作用しないLp(a)は同45.9%低下した。薬物関連治療時発現有害事象の発生率は6.8%(偽薬群は4.3%)、同深刻有害事象は6.8%(同5.6%)、同投与中止は14.4%(7.6%)でいずれも偽薬群より低かった。

日本の施設も参加する心血管アウトカム試験、PREVAILは26年頃の開票の見込み。

obicetrapibは2013年にDezima Pharmaが田辺三菱製薬から導入。Dezimaは15年にアムジェンが買収し後期第2相試験を実施したが、類薬の第3相がフェールしたせいか、20年にNewAmsterdamに売却した。

リンク: NewAmsterdamのプレスリリース


抗CD40L抗体のSLE試験が成功
(2024年11月19日発表)

UCBとバイオジェンは、CDP7657(dapirolizumab pegol)が第3相SLE(全身性エリテマトーデス)試験で主目的を達成したと発表した。もう一本開始して、成功なら承認申請する考え。

CD40Lに結合する、PEG化抗体フラグメント。このPHOENYCS GO試験は中重度活性期SLE患者321人を組入れて偽薬または試験薬を48週間投与した。主評価項目は複合評価奏効率で、BILAG(British Isles Lupus Assessment Group) Disease Activity Index 2004が改善し、悪化した臓器がなく、SLEDAI-2000やPGAに基づく評価が悪化しなければ奏効と判定した。結果は49.5%と偽薬群の34.6%を有意に上回った。

副次的評価項目の筆頭であるBICLA奏効率は46.6%対38.3%で有意差なし。SRI-4やSLEDAI-2Kでは高度な有意差が見られたが、上位解析がフェールしたため統計学的に有意とは言えなくなってしまった。

治療時発現有害事象は各群82.6%と75.0%。日和見感染症の発生率は各2.8%と0.9%。血栓塞栓症の有無には言及されていない。

バイオジェンとその前身企業はBG-9588(ruplizumab)とIDEC-131/E6040(toralizumab)の二種類の抗CD40L抗体を開発したことがあるが、血栓塞栓リスクで開発中止となり、2003年にUCBから上記の共同開発権を取得した。承認申請に手が掛かるまでずいぶん時間がかかった。

リンク: 両社のプレスリリース


GSK、iBAT阻害剤のPBC掻痒緩和試験が成功
(2024年11月19日発表)

GSKは、GSK2330672(linerixibat)の第3相GLISTEN試験が成功したと発表した。米日ポーランドなどの施設で中重度胆汁鬱滞性掻痒症を伴う原発性胆汁性胆管炎(PBC)の成人238人を組入れて24週後の月間掻痒尺度(0~10、大きいほど重い)を偽薬と比較したところ、統計的に有意な差があった。数値は学会などで発表する考え。尚、最近よく見る、臨床的に意味のある、という文言は記されていない。

類薬ではAlbireo Pharma(Nasdaq:ALBO)のBylvay(odevixibat)が21年に米欧で承認されたが、適応は進行性家族性肝内胆汁鬱滞症(PFIC)で、同一ではない。PBC用薬は承認取消が危惧されるIntercept PharmaceuticalsのOcaliva(obeticholic acid)以外に、PPARアゴニストであるGenfit(Nasdaq:GNFT)のIqirvo(elafibranor)が今年6月に米国で、9月にはEUでも、承認され、CymaBay Therapeutics(Nasdaq:CBAY)のLivdelzi(seladelpar)も今年8月に米国で承認されたが、効能はアルカリフォスファターゼ(ALP)の減少で掻痒緩和効果は見られない。

リンク: GSKのプレスリリース


経口IL-23受容体拮抗剤の第3相が成功
(2024年11月18日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ-2113(icotrokinra)の最初の第3相プラク乾癬試験二本で目的を達成したと発表した。実薬対照試験も進行中で25年上期に開票する見込み。前後して承認申請されるのではないか。

米国カリフォルニア州のProtagonist Therapeutics((Nasdaq:PTGX)からライセンスした、経口IL-23受容体拮抗ペプチド。STAT3リン酸化やインターフェロン・ガンマの生成を抑制し、炎症を緩和する。二本のうちICONIC-LEAD試験は12歳以上の中重度プラク乾癬患者を組入れて一日一回、16週間投与した。共同主評価項目のうち、PASI90(Psoriasis Area and Severity Indexが90%以上改善)達成率は偽薬群の4.4%を上回る49.6%だった。IGA奏効率(医師による全般的評価スコア(レンジは0~5点)が0または1に改善し、かつ、ベースライン比2点以上改善)は各群8.3%と64.7%だった。第24週には更に上昇した。治療時発現有害事象は各群同程度だった。

もう一本のICONIC-TOTALは特定の部位(頭皮、生殖器、手掌、足裏)に中等度以上の患部があるプラク乾癬に対する効果を検討した。主評価項目が罹患部位ごとに異なるせいか、IGAベースの解析が偽薬比有意だったことだけ公表された。

残りの第3相試験、ICONIC-ADVANCEの1と2は、中重度プラク乾癬の偽薬対照試験だが、副次的評価項目としてブリストル マイヤーズ スクイブのTYK阻害剤Sotyktu(deucravacitinib)との比較も行っている。25年には乾癬性関節炎の第3相も開始する予定。

リンク: JNJのプレスリリース

【承認申請】


トレムフィア皮下注用を導入療法にも申請
(2024年11月22日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗IL-23p19サブユニット抗体Tremfya(guselkumab)の皮下注用製剤を成人の中重度活性期潰瘍性大腸炎の導入療法として用法追加申請した。400mgを第0、4、8週に投与する。ASTRO試験で第12週寛解率が偽薬比で統計的に有意に、且つ臨床的に意義のある差で、上回った。

Tremfyaは米国で成人の中重度活性期乾癬、活性期乾癬性関節炎、中重度活性期潰瘍性大腸炎の治療薬として承認され、中重度活性期クローン病に適応拡大申請中。このうち、潰瘍性大腸炎は導入療法として点滴静注用製剤を200mgずつ、第0、4、8週に投与し、維持療法で皮下注用製剤を100mg8週毎、または200mg4週毎、投与する用法。今回の申請が承認されれば、最初から皮下注で治療できることになる。

ライフ・サイクル・マネジメントを兼ねて皮下注用新製剤を上市する例が増えているが、Tremfyaはヒアルロン酸分解酵素を添加する技術を用いていない。

ところで、なぜ最初から導入も維持も皮下注で承認申請しなかったのだろうか?また、他の適応では使えないのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


Arrowhead社、家族性カイロミクロン血症のRNA介入薬を承認申請
(2024年11月18日発表)

米国カリフォルニア州のArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR) は、ARO-APOC3(plozasiran)を家族性カイロミクロン血症用薬としてFDAに承認申請したと発表した。25年に他の地域でも申請する考え。

カイロミクロン症では、VLDLなどが保持するトリグリセライド(TG)の分解がアポリポ蛋白C-IIIにより妨げられ、TG値などが上昇する。急性膵炎などのリスク因子。plozasiranはこのアポC-IIIを『沈黙』させるRNA介入薬。第3相試験で25mgまたは50mgを3ヶ月毎皮下注したところ、第10月の空腹時TG値が偽薬比で夫々メジアン80%と78%低下した。二群のプール分析で急性膵炎のリスクも有意に抑制した。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、Xa阻害剤中和薬の功罪を検討
(2024年12月21日報道)

FDAはCTGTAC(細胞、組織、遺伝子療法諮問委員会)を招集し、アストラゼネカが市販後コミットメントを充足するために提出した、AndexXa(不活化凝固因子Xa(遺伝子組換え)-zhzo)のANNEXA-1試験について意見を聞いた。票決が行われなかったためコンセンサスは不明だが各種報道によると、適応対象を抑え気味にすることを好む意見が多かったようだ。

AndexXaはXa阻害剤の中和薬。Xa阻害剤は血栓塞栓性疾患のリスクを抑制するが、止血も抑制するため、出血事故時には作用を止める必要がある。AndexXaは血液凝固第Xa因子の類縁体で、rivaroxabanやapixabanを服用している患者が命に係わる/管理不能な出血を被った時の中和薬として米国で加速承認、EUで条件付き承認、日本(エドキサバントシル酸塩水和物の中和も含む)で承認されている。第3相ANNEXA-4単群試験で評価可能47人中79%が12時間内に止血に成功した。一方で、67人中18%で血栓性事故が発生した。

ANNEXA-1試験は上記2剤を服用してから15時間内に脳内出血を発症した成人452人を組入れて臨床的便益と危険を偽薬と比較したもの。主評価項目の止血奏効率(複合評価項目)は67%と通常医療群の53%を有意に上回ったが、内訳を見ると、便益は専ら血腫の増加抑制で、神経学的、機能的評価尺度に基づく臨床的評価は大差なかった。危険面では30日血栓性イベント発生率が14.6%と対照群の6.9%を大きく上回り(New England Journal of Medicine誌に掲載された論文抄録の数値より大きい)、血栓関連死亡率も2.5%対0.9%で上回った。

加速承認を受けた製薬会社は市販後薬効確認試験を実施して便益と危険を確認する責務があり、通常は、その結果に基づき加速承認が本承認に切り替わる。しかし、今回は、加速承認取消の当否は諮問対象外だった。

Xa阻害剤は血栓塞栓を抑制するが出血事故のリスクが高まる。当然、中和すると出血を抑制できるが血栓塞栓のリスクが高まる。ワン・サイズ・フィット・オールではないので、医師と患者が相談して裁量することが望まれる。しかし、基準も示さずに丸投げするのは無責任の誹りを免れない。着地点を見つけるのは難行だ。

リンク: MedPage Todayの報道

【承認】


Jazzのher2陽性胆道癌用薬が承認
(2024年11月20日発表)

FDAは、Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)のZiihera(zanidatamab-hrii)を治療歴のある切除不能/転移her2陽性胆道癌用薬として加速承認した。IHC法のher2発現検査で3+なら適応になる。

抗her2抗体はtrastuzumab系とpertuzumabで結合するエピトープが異なるが、Ziiheraは夫々のエピトープに結合する部位を持つ二重特異的抗体。第2相HERIZON-BTC-01試験でgemcitabineによる治療歴を持ちher2標的薬歴のないher2陽性(IHC法で2+と3+)胆道癌80人(うち52人はアジア人種)に20mg/kgを2週毎点滴静注したところ、cORR(確認客観的反応率、独立中央評価)が41.3%、メジアン反応期間は12.9ヶ月だった。her2発現度に基づく事後的解析で、3+におけるcORRは51.6%、メジアン反応持続期間は14.9ヶ月だったが、2+では各5.6%(達成は1名のみ)と7.5ヶ月で、後者は組入れが少ないとはいえ、物足りないものだった。そのせいか、FDAは3+のみを適応とした。

尚、第一三共/アストラゼネカの抗her2抗体薬物複合体Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)もher2発現が3+の固形癌で他に適切な治療法がない場合に用いることが承認されており、このうち胆道癌における治験成績はcORR(独立中央評価、n=22)が45.5%だった。

zanidatamabはZymeworks(NYSE:ZYME)が創製、Jazzが米欧日などの、BeiGeneが中韓豪新の、開発商業化権を取得して共同開発している。

リンク: FDAのプレスリリース


ビンゼレックスが米国でも化膿性汗腺炎に適応拡大
(2024年11月20日発表)

UCBはBimzelx(bimekizumab-bkzx)が米国で中重度化膿性汗腺炎に適応拡大したと発表した。EUでは4月に、日本では9月に、承認されている。Bimzelxの用量はプラク乾癬が320mg、乾癬性関節炎などには160mgと二種類あるが、化膿性汗腺炎は前者。初承認当時は160mg製剤しかなかったため乾癬では一度に二回、皮下注する必要があったが、10月に320mgのシリンジとオートインジェクターが米国でも承認されている。

リンク: UCBのプレスリリース


初のメニン阻害剤が承認
(2024年11月15日発表)

FDAは、米国マサチューセッツ州のSyndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)が申請したRevuforj(revumenib)を承認したと発表した。menin阻害剤の第1号で、KMT2A(リジン・メチルトランスフェラーゼ2A)遺伝子転座のある1歳以上の難治/再発急性白血病に用いる。第1/2相AUGMENT-101試験で奏効率(完全寛解、但し血液学的回復が部分的な症例も含む)が21.2%、メジアン反応持続期間は6.4ヶ月だった。警告事項は致死例もある分化症候群。警告・事前注意事項は更にQT延長と胚胎毒性。

投与量は体重やCYP3A4強阻害薬の同時使用の有無に応じて決定する。25mg、110mg、160mgの3種類の錠剤が承認されたが、体重40kg未満に用いる25mg錠は発売が25年に遅れるため、それまではexpanded access programを通じて入手する。

同社はUCBからライセンスして慢性移植片対宿主病治療薬として開発したNiktimvo(axatilimab-csfr)も8月に米国で承認されており、新興企業の中でも著しい成果を挙げた。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


諮問委員会、クロザピンのREMS緩和を支持
(2024年11月19日開催)

FDAは精神薬理学薬諮問委員会と薬品安全性リスク管理諮問委員会の共催会議を開き、統合失調症用薬clozapineに関するREMS(リスク評価緩和戦略)プログラムについて意見を聞いた。ANC(好中球絶対数)検査結果を処方者が薬局に頻繁に連絡しなければならない現行規制に関して、15人の委員のうち14人が不必要と回答した。検査自体は従来通り、頻繁に実施しなければならない。

clozapineは米国では1989年に承認され、治療抵抗性統合失調症の貴重な選択肢になった。退役軍人会からも強い後押しを受け、連邦議員が価格に文句を付けたこともあった。好中球減少症は最も重要な副作用で、当初から様々な警告や対策が導入されていたが、2015年にFDAがREMSを導入すると、内容に厳しさに処方をためらう動きもみられるようになった。21年にメーカー各社のシステムが統合された時には、患者情報が継承されないなどのトラブルが頻発、APA(米国心理学会)が懸念を表明する事態に至った。今日ではclozapineのREMSのアクティブ登録者数が処方側35,000人超、薬局27,000超、患者149,000人超の規模に達しているが、適応になる患者は100万人前後と推測されており、REMSを逃れて治療を受けている患者も40,000人前後いると推測されている。

今回、規制継続の是非が問われたのは、ANC検査義務に関する医療従事者研修と、ANC検査成績を医師が処方時に連絡・システム登録し薬剤師が調剤時に確認する責務。規制緩和の理由づけは好中球減少症に関する意識の向上と対処法の普及だが、導入当初から厳格に順守しなくても容認されていた模様なので、現状追認という面もあるのだろう。ANCリスクが低下したわけではなく、従来通り、開始当初は週一回、半年経ったら二週毎、さらに半年経ったら月一回のANC検査を行う必要がある。

リンク: FDAの諮問委員会関連情報
リンク: MedPageTodayの報道(11/20付)

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24/11推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
24/11/28Applied TherapeuticsのAT-007(govorestat、ガラクトース血症)
24/11/29BridgeBio Pharmaのacoramidis(ATTR心筋症)
24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群
24年12月推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)
24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)




今週は以上です。

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