2024年9月22日

第1073回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • アセンディス、週一回型軟骨骨無形成症用薬を承認申請へ 
  • ESMO: ニュベクオのmHSPC二剤併用試験が成功 
  • ESMO:カボザンチニブのmCRPC試験で延命効果は確認されず 
  • ESMO:イミフィンジが筋層浸潤膀胱癌の術前術後に有効 
  • ESMO:キイトルーダの第3相試験三本 
  • ESMO:インサイト、抗PD-1抗体が肛門がんに有効 
  • ESMO:taletrectinibを年内に承認申請へ 
  • Vandaのtradipitantはやはり承認されず 
  • CHMP、卵巣癌用抗体薬物複合体などの承認を支持 
  • 米国初のニーマン・ピック病C型用薬が承認 
  • フルミストの自己点鼻が承認 
  • サークリサが一次治療に適応拡大 
  • ヤンセンのアミバンタマブが適応拡大 
  • ファセンラもEGPAに適応拡大 
  • ノバルティスのCDK4/6阻害剤が早期乳癌に承認 
  • キイトルーダが悪性胸膜中皮腫に承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


アセンディス、週一回型軟骨骨無形成症用薬を承認申請へ
(2024年9月16日発表)

デンマークのアセンディス・ファーマ(Nasdaq:ASND)はTransCon CNP(navepegritide)のApproaCH試験で主目的を達成したと発表した。2~11歳の軟骨無形成症患者84人を100mcg/kgを週一回皮下注する群と偽薬群に2対1割付けしてAGV(身長の年率成長ベロシティ)を比較したところ、試験薬群は5.89cm/年、偽薬群は4.41cm/年となり、群間差は1.49cm/年、p<0.0001だった。この年代の人たちの平均成長速度を上回る、キャッチアップ現象が見られたようだ。5歳未満では群間差が1.02cm、5歳以上では1.78cmだった。忍容性は注射箇所反応が0.41/人年の率で発生したがそれほど多くはない。血圧低下作用は見られなかった由。

同社は天然のペプチドの半減期を延長するMPEG(methoxypolyethylene glycol)化技術を開発、これまでに成長ホルモン薬と副腎皮質ホルモン薬を実用化した。軟骨無形成症治療薬はバイオマリンの一日一回皮下注用CNP(C型ナトリウム利尿ペプチド)、Voxzogo(vosoritide)が21~22年に欧米日で承認されたが、アセンディスの開発品はMPEG化CNPを一週間分まとめて皮下注できる。効果は大きな違いがあるようには見えない。

Voxzogoの適応年齢はEUは2歳以上だが米国では制限がなく、レーベルには体重3kg時の用量も記載されている。投与実績下限は4.4ヶ月児のようだ。TransConも米国で年齢制限が課されないか、注目される。

リンク: 同社のプレスリリース


ESMO: ニュベクオのmHSPC二剤併用試験が成功
(2024年9月16日発表)

ESMOでバイエルの非ステロイド系アンドロゲン受容体アンタゴニスト、Nubeqa(darolutamide)の第3相ARANOTE試験の成績が発表された。アンドロゲン枯渇療法を受けるmHSPC(転移性ホルモン感受前立腺癌)の新患669人を600mgまたは偽薬を一日二回経口投与する群に2対1割付けしてrPFS(無進行生存期間、放射線学的評価)を比較したところ、ハザードレシオが0.54と有意なリスク抑制効果が確認された。全生存期間の解析は未成熟だがハザードレシオは0.81と望ましい方向を指している。治療時発現有害事象による治験の離脱率は各群9%と6.1%だった。用法追加申請に向かう考え。

Nubeqaは米欧日でnmCRPC(非転移性去勢抵抗性前立腺癌)や新患mHSPCにアンドロゲン枯渇療法だけでなくdocetaxelも併用する用法に承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


ESMO:カボザンチニブのmCRPC試験で延命効果は確認されず
(2024年9月15日発表)

ESMOでExelixis(Nasdaq:EXEL)のVEGFR拮抗剤Cabometyx(cabozantinib)とロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)を骨盤外軟部組織疾患を伴うmCRPC(転移去勢抵抗性前立腺癌)の治療に用いたCONTACT-02試験の最終全生存解析の結果が発表された。近年の新しいアンドロゲン受容体アンタゴニスト(abiraterone、apalutamide、darolutamideまたはenzalutamide)のうち一剤による治療歴を持つ患者を組入れて、上記二剤の併用群とabirateroneまたはenzalutamideにスイッチする群の効果を比較したところ、共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.64で有意、各群のメジアン値は6.3ヶ月と4.2ヶ月、となった。しかし、全生存期間のハザードレシオは0.89、p=0.30、メジアン値は14.8ヶ月と15.0ヶ月、となりフェ―ルした。G3/4治療時発現有害事象が各群48%と23%の患者で発生したことや費用を考えると、実薬と同程度なら悪くない、とは言い難い。

両社は提携して複数の併用試験をロンチしたが、これまでのところ、思わしい成果は上がっていない。今回の成績はプロにとっても微妙なようで、Exelixisは適応拡大申請する考えを明らかにしたが、欧州などの権利を持つイプセンは見送ると発表した。

リンク: Exelixis のプレスリリース
リンク: イプセンのプレスリリース


ESMO:イミフィンジが筋層浸潤膀胱癌の術前術後に有効
(2024年9月15日発表)

アストラゼネカの抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相NIAGARA試験の成績がESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表された。筋層浸潤膀胱癌の全摘出術の前にgemcitabine及びcisplatinのレジメンに追加し、術後に単剤投与する効果を検討したオープン・レーベル試験で、主評価項目のEFS(無イベント生存期間)のハザード・レシオが0.68、統計的に有意、メジアン値は未達だが2年EFS率推定値は67.8%とgemcitabine及びcisplatinだけの群の59.8%を上回った。副次的評価項目の全生存期間はハザード・レシオ0.75、有意、2年生存率推定値82.2%と75.2%だった。

この適応ではOpdivo(nivolumab)を術後に投与することが欧米などで承認されている。臨床試験ではDFS(無病生存期間)のハザード・レシオが0.70、PD-L1陽性(≧1%)のサブグループでは0.55だった。また、Keytruda(pembrolizumab)の第3相AMBASSADOR/KEYNOTE-123試験も昨年10月に共同主評価項目のうちDFSの中間解析が成功した。但し、全生存期間の数値は未成熟とは言え好ましくないほうを向いている。

単純なアジュバント試験と比べるとNIAGARA試験は考え方は単純だが解釈は複雑で、むやみに投与することが過剰治療にならないか、議論の余地がある。術後投与だけでは足りないのか?pCR(病理学的完全反応)を達成した患者にも術後投与すべきか?pCRを達成しなかった患者に術後投与するのは如何なものか?それともpCRにはあまり拘らないほうが良いのか、などなどである。

今後開票するであろう他の抗PD-(L)1抗体のデータと見比べて悩み続ける必要がありそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース


ESMO:キイトルーダの第3相試験三本
(2024年9月14、15日発表)

ESMOでMSDのKeytruda(pembrolizumab)の第3相試験成績が幾つか発表されたが、三本だけ取り上げる。一つはエーザイとの共同開発提携プロジェクトの一つ、LEAP-012試験。切除不能非転移性肝細胞腫のTACE(経動脈化学塞栓術)に際してKeytrudaとエーザイのVEGFR拮抗剤Lenvima(lenvatinib)を併用する便益を検討した無作為化割付け偽薬対照二重盲検試験で、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が14.6ヶ月と偽薬二剤併用群の10.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.66で統計的に有意だった。共同主評価項目の全生存期間は未成熟だが、ハザードレシオ0.8、p=0.0867と好ましい方向を指している。忍容性面ではG3以上の治療時発現有害事象の発生率が71.3%対31.1%と大きく増加し、うち試験薬群は4人(1.7%)、偽薬群は1人(0.4%)が死亡した、

リンク: MSDとエーザイのプレスリリース(9/14付)

KEYNOTE-811試験はher2陽性の進行胃/胃食道接合部腺腫の一次治療として化学療法と抗her2抗体trastuzumabのレジメンにKeytrudaを追加する便益を検討したもので、今回、全生存期間の解析結果が公表された。Intent-to-treatベースではハザードレシオ0.80、p=0.004、メジアン値は20.0ヶ月対16.8ヶ月、PD-L1陽性(CPS≧1)サブグループでは各0.79、20.1ヶ月、15.7ヶ月だった。

米国では、この試験のORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が中間解析で74%と偽薬追加群の52%を上回り反応の持続性も良好であったため、21年に加速承認された。しかし、その後、PD-L1陽性(CPS≧1)のみに適応縮小され、EUでもこの範囲しか承認されなかった。主評価項目のPFS解析でPD-L1陽性にしか便益が見られず、陰性例ではハザードレシオ1.4と好ましくない方向を指していたためだ。陰性は症例数が少ないので誤差範囲が広く、全生存期間の解析がどうなるか注目されたが、プレスリリースでは言及されていない。

リンク: MSDのプレスリリース(9/14付)

KEYNOTE-522試験は未治療の高リスク早期トリプル・ネガティブ乳癌における術前化学療法レジメンにKeytrudaを追加し、術後にも9回、単剤投与する効果を偽薬と比較したもので、主評価項目のpCR(病理学的完全反応率)とEFS(無イベント生存期間)を達成、21~22年に米欧で適応拡大が認められた。今回、全生存期間のアップデートが行われた。メジアン75ヶ月追跡で、ハザードレシオ0.66(95%信頼区間0.50-0.87)、5年生存率推定値は86.6%対81.7%で5ポイント程度上回った。PD-L1発現を問わず便益が見られた。

リンク: MSDのプレスリリース(9/15付)


ESMO:インサイト、抗PD-1抗体が肛門がんに有効
(2024年9月14日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は抗PD-1抗体Zynyz(retifanlimab-dlwr)の第3相3POD1UM-303/InterAACT2の結果をESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表した。全身性化学療法歴のない手術不能局所再発/転移性の肛門管扁平上皮癌(SCAC)を組入れて、carboplatinとpaclitaxelの標準的療法にZynyzを追加する群と偽薬追加群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較したところ、ハザードレシオ0.63、p=0.0006、メジアン値は各群9.3ヶ月と7.4ヶ月となった。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だがハザードレシオ0.70、メジアン値は29.2ヶ月と23.0ヶ月で好ましい方向を向いている。年内に適応追加申請する考え。

SCACは元々、Zynyzのリード・インディケーションで、21年に二次治療向けに加速承認を申請したが、第2相試験のORR(客観的反応率)だけでは挙証不十分と判定され、審査完了通知を受領。EUでも同様な評価を受け、条件付き承認の申請を撤回した経緯がある。その後、23~24年に、米欧で転移/難治局所進行メルケル細胞腫用薬として加速/条件付き承認された。

リンク: 同社のプレスリリース


ESMO:taletrectinibを年内に承認申請へ
(2024年9月14日発表)

Nuvation Bio(NYSE:NUVB)はESMOでROS1/NTRK阻害剤taletrectinibの第2相ROS1融合陽性進行非小細胞性肺癌試験二本のプール分析結果を発表した。中台の権利を導出したInnovent Biologicsの中国試験、TRUST-Iと日韓中米などの施設で実施したTRUST-IIの合計で、チロシン・キナーゼ治療歴のない160人ではcORR(確認無進行生存期間、独立放射線学的評価)が89%、メジアン反応持続期間は44.2ヶ月、crizotinibまたはentrectinibによる治療歴を持つ113人では各56%と16.6ヶ月だった。同薬は中枢神経浸透性を持ち、脳転移のある32人中66%で頭蓋内cORRが認められた。

G3以上の有害事象は肝機能検査値異常や下痢、悪心など。治療時発現有害事象による離脱は7%、用量減量は29%で発生した。

同薬は同社が3月に子会社化したAnHeart Therapeuticsが18年に第一三共から権利を取得して開発を進めたもの。TRUST-I試験に基づき中国で昨年11月に承認申請された。日本市場は日本化薬が昨年10月にライセンスした。

リンク: Nuvationのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Vandaのtradipitantはやはり承認されず
(2024年9月19日発表)

Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)はNK1阻害剤tradipitantを胃麻痺治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。追加試験を求められた模様だ。第3相はフェールしたので意外ではない。

イーライリリーから2012年にライセンスし、NK1阻害剤の典型的な用途である化学療法誘導性悪心嘔吐の治療・予防とは異なった疾患にPOC試験を進めてきた。胃麻痺は第2相で85mgを一日二回、4週間に亘って経口投与したところ悪心の重症度スコアに偽薬比有意な差が見られ、第3相に進んだが、薬効確認期間が4週間ではなく12週間であることを除けば似たようなデザインなのに主評価項目も、副次的評価項目の無悪心日数も、フェールした。会社側は、コンプライアンスに基づく修正値などの解析に着目して承認申請を断行したが、今回も、FDAの審査を批判するプレスリリースを出す結果になった。

リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)


CHMP、卵巣癌用抗体薬物複合体などの承認を支持
(2024年9月20日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

アッヴィのElahere(mirvetuximab soravtansine)は葉酸受容体に結合する抗体とDM4微小管阻害剤をリンカーで結合した抗体薬物複合体(ADC)。1~3次の全身性治療歴を持つ成人の葉酸受容体アルファ陽性、白金抵抗性のハイグレード漿液上皮性卵巣癌、卵管癌、原発性腹膜癌に単剤投与する。MIRASOL試験でPFS(無進行生存期間、治験医評価)のメジアン値が5.6ヶ月と医師が選んだ薬(paclitaxelなど)を投与した群の3.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.65だった。副次的評価項目の全生存期間もメジアン16.4ヶ月対12.7ヶ月、ハザードレシオ0.67だった。米国では22年に加速承認、今年3月に本承認。

2月にImmunoGenを企業価値ベース101億ドルで買収して入手した。日本は武田薬品が昨年8月に権利取得。

リンク: EMAのプレスリリース

中国のShanghai Henlius Biotech(2696.HK)のHetronifly(serplulimab)は抗PD-1抗体。 初めて全身性治療を受ける成人の進展型小細胞性肺癌にcarboplatin及びetoposideと併用する。中国など6ヶ国で585人を組入れたASTRUM-005試験の中間解析でメジアン生存期間が15.4ヶ月と偽薬を併用した群の10.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.63だった。G3以上の治療関連有害事象の発生率は各群33.2%と27.6%。

中国では4適応症で承認。米国で同疾患の既存薬ブリッジング試験中。グローバル転移結腸癌直腸癌試験も進行中で日本でも治験認可が下りた。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのHympavzi(marstacimab)は抗TFPI(tissue factor pathway inhibitor)抗体。年齢12歳以上、体重35kg以上の小児と成人の、インヒビターを持たないA型・B型血友病のルーチン出血予防に用いる。米日でも承認申請中。類薬ではノボ ノルディスクのアレモ(コンシズマブ
持)が日本でインヒビターの有無を問わず承認されているが、米国は、昨年、審査完了通知を受領した。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのPenbrayaは5価髄膜炎菌ワクチン。10歳以上の人のA、B、C、W、Y群髄膜炎菌による侵襲性疾患を予防する。ABWY群とC群のワクチンはあるが5価ワクチンは初。米国では昨年10月に承認。

リンク: EMAのプレスリリース

Eckert & Ziegler Radiopharma GmbHのTheralugand(lutetium (177Lu) chloride)は放射性核種。EMAのプレスリリースには適応が明記されていない。

リンク: EMAのプレスリリース

以下の適応拡大も肯定的意見を得た(対象年齢拡大は割愛)。

  • Janssen-Cilag InternationalのDarzalex(daratumumab、hyaluronidase):自家造血幹細胞移植適合のフロントライン多発骨髄腫にbortezomib、lenalidomide、dexamethasoneと併用。欧州では点滴静注用製剤も皮下注用製剤も同一商品名なので分かり難いが、ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリースによると、皮下注用製剤に関わるもの。

  • アストラゼネカのFasenra(benralizumab):成人の再発/難治EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)。米国では今月承認(下記)。

  • MSDのKeytruda(pembrolizumab):再発リスクの高い新患子宮頸癌の同時化学放射線療法に追加と、原発性進行/難治内膜腫の一次治療に追加。米国では各、今年1月と6月に承認。

  • また、24/25年シーズン向けCOVID-19 mRNAワクチンも肯定的意見を得てEMAに承認された。モデルナのSpikevaxはJN.1系統、Comirnatyは6月のJN.1系統に続きKP.2系統ワクチンも支持された。尚、この二製品はこれまで一般名が付与されていたが、少なくともSpikevax(JN.1)の添付文書には記されておらず、いちいち命名しない方針に変わったのかもしれない。

    否定的意見となったのはApellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)が加齢性黄斑変性による地図状萎縮の治療薬として承認申請したSyfovre(pegcetacoplan)。今年1月にCHMPが否定的意見を纏めたが、3月に欧州司法裁判所控訴審が別件(注1)に関して示した判断を受けて審査やり直しとなり、6月に再び否定的意見、再審査を経て再び否定的意見を纏めた。臨床試験で病変の拡大を抑制したが日常生活機能を改善する効果が確立していないことや安全性などが理由。米国では21年に承認された。臨床的な便益が確立していないこと

    (注1:EMAがHopveus(sodium oxybate)をアルコール依存治療薬として承認しなかったためフランスのDebrégeas et associés Pharma SASが提訴した事案で、上訴審が原審を覆し、科学的諮問グループのメンバーの利益相反に関するEMAの判断などを手続法違反と認定した。その後、EMAは他の該当する案件もやり直したため、Syfovraのほかにエーザイ/バイオジェンのアルツハイマー病用薬Leqembi(lecanemab)やPTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)のデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬Translarna(ataluren)の審査手続きが遅延した。)

    CHMPが懐疑的で申請撤回に至ったのは二件。アッヴィのDurysta(bimatoprost)は開放隅角緑内障治療薬をインプラント化したもの。CHMPは不可逆的な角膜上皮細胞喪失のリスクや、インプラントは生分解性だが5年経っても完全消失しないこと、薬剤の品質などを危惧していた。

    ロシュはIMbrave050試験に基づき早期肝細胞腫の治癒的切除/焼灼術後補助療法としてTecentriq(atezolizumab)とbevacizumabを併用する適応拡大申請を行ったが、撤回した。死亡者数が観察群をやや上回ったことがネックとなった。全生存期間の解析が成熟しハザードレシオが1を上回らなくなれば、再申請の可能性もあるだろう。

    【承認】


    米国初のニーマン・ピック病C型用薬が承認
    (2024年9月20日発表)

    FDAはZevra Therapeutics(NasdaqGS:ZVRA)のMiplyffa(arimoclomol)を2歳以上のニーマン・ピック病C型(NPC)患者における神経学的症状の治療薬として承認した。miglustatと併用する。

    ヒート・ショック・プロテイン増幅作用を持つがNPCにおける作用機序は明確ではない。デンマークのOrphazyme社が第2/3相試験に2~19歳の患者50人を組入れてNPC CSS(Niemann-Pick Disease Type C Clinical Severity Scale)のうち歩行、構語、認知、微細運動、咀嚼の5ドメインの悪化抑制を試みたがフェールした。20年に承認申請を断行したが、米国では審査完了通知を受領、EUではCHMPが否定的意見を出しそうになり申請を撤回、経営破綻に至った。Zevraは事業を買収してFDAと相談を進め、上記5ドメインのうちノイズの影響を受けやすい認知を除外し咀嚼を調整した4ドメインの再分析や4年安全性データなどを用いて昨年12月に再申請した。今年8月には新設されたGeMDAC(遺伝性代謝性疾患用薬諮問委員会)で16人中11人が便益があると判定した。FDAは被験者の8割弱を占めたmiglustat服用サブグループに限定して承認した。

    治験成績は、miglustat服用サブグループの4ドメインNPC CSSがベースライン値の8.9点から1年後に0.2点低下、偽薬群は7点から1.9点増加したため、治療効果は-2.2点で統計的に有意。主な有害事象は過敏反応や胎毒性。

    尚、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤miglustatはアクテリオンがゴーシェ病用薬Zavescaとして発売し、日欧でNPCに適応拡大したが米国では承認されず断念した。つまり、Miplyffaは未承認薬と併用する苦心の用法となっている。

    リンク: FDAのプレスリリース


    フルミストの自己点鼻が承認
    (2024年9月20日発表)

    アストラゼネカはFDAが医療従事者以外がFluMistを投与することを承認したと発表した。オンラインで購入し、18~49歳は自分自身で、2~17歳は保護者や介護者が、点鼻投与する。米国はワクチンも保険還付の対象となっており、薬局で接種できる場合もあるためハードルが低いが、更に下がることになる。

    Flumistはインフルエンザの低温適合弱毒生ワクチン。米国で03年に、EUでは11年に、日本では23年に承認された。

    リンク: 同社のプレスリリース


    サークリサが一次治療に適応拡大
    (2024年9月20日発表)

    FDAはサノフィの抗CD38抗体Sarclisa(isatuximab-irfc)を成人の移植不適な新患多発骨髄腫に適応拡大した。bortezomib、lenalidomide、及びdexamethasoneと4剤併用する。PFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)をSarclisa以外の3剤併用と比較したIMROZ試験の中間解析で、ハザードレシオが0.60、統計的に有意だった。G5治療時発現有害事象の頻度は11.0%と対照群の5.5%を上回ったが、曝露期間が長いことを補正した値はむしろ若干低かった。日欧でも適応拡大申請中。

    リンク: FDAのプレスリリース


    ヤンセンのアミバンタマブが適応拡大
    (2024年9月19日発表)

    FDAはジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen BiotechのRybrevant(amivantamab-vmjw)をEGFRにエクソン19欠損またはエクソン21 L858R置換を持つ局所進行性/転移非小細胞性肺癌の治療に適応拡大した。EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤による治療歴を持つ患者にcarboplatin及びpemetrexedと3剤併用する。Tagrisso(osimertinib)歴を持つ患者を組入れたMARIPOSA-2試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン6.3ヶ月とcarboplatin及びpemetrexedだけを投与した群の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.48、p<0.0001だった。副次的評価項目の全生存期間は第2次中間解析でメジアン17.7ヶ月、対照群は15.3ヶ月、ハザードレシオは0.73で名目p値は0.039。

    この試験では同社のEGFRチロシン・キナーゼ阻害剤Lacluze(lazertinib)と4剤併用する群も設定され、メジアンPFSは8.3ヶ月、2剤併用対照群比ハザードレシオは0.44と良好な成績を上げたが、承認申請はされていないようだ。昨年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表された全生存期間のハザードレシオが0.96(95%信頼区間0.67-1.35)とパッとしなかったことが影響したのかもしれない。尚、同時点の3剤併用群のハザードレシオは0.77(同0.49-1.21)と、第2次中間と大差ない水準に収まっている。

    RybrevantはEGFRとMETに結合する二重特異性抗体。これまでの適応は、EGFRにエクソン19欠損またはエクソン21 L858R置換を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌では一次治療にLacluze(lazertinib)と2剤併用、EGFRエクソン20挿入変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌では一次治療にcarboplatin及びpemetrexedと併用または白金ベース化学療法に不応再発後に単剤投与。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: JNJのプレスリリース


    ファセンラもEGPAに適応拡大
    (2024年9月18日発表)

    アストラゼネカはFDAがFasenra(benralizumab)を難治再発性EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)に適応拡大したと発表した。IL-5受容体アルファ鎖を標的とするポテリジェント抗体で、この適応取得は類薬であるGSKのNucala(mepolizumab)に次ぐ二番手。直接比較試験で喘息症も併発する、経口コルチコステロイドに応答不十分な患者を組入れた試験で、寛解率(36週と42週にステロイドの用量がprednisolone/prednisone換算で4mg/日以下、且つ、BVAS(Birmingham Vasculitis Activity Score)がゼロ)が59%となりmepolizumab群の57%と非劣性だった。また、41%の患者がステロイドを中止できた(mepolizumab群は26%)。この試験でFasenraは30mg/mLを4週毎皮下注した。mepolizumabは100mg/mLの3回皮下注を4週毎に反復した。

    Fasenraは17~18年に米日欧で重度好酸球性喘息症用薬として承認された。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ノバルティスのCDK4/6阻害剤が早期乳癌に承認
    (2024年9月17日発表)

    FDAはノバルティスのCDK4/6阻害剤Kisqali(ribociclib)を再発リスクの高いホルモン受容体陽性、her2陰性のステージII/III乳癌のアジュバント療法に承認した。アロマターゼ阻害剤と併用する。第3相NATALEE試験で一日一回経口投与を21日間繰り返し7日間休むスケジュールで最大3年間治療したところ、iDFS(無侵襲性疾患生存期間)のハザードレシオが0.749(95%信頼区間0.628-0.892)、3年iDFS率推定値は90.7%で内分泌療法薬だけの群の87.6%を上回った。特徴的な有害事象は好中球減少症、肝臓関連有害事象、QT間隔延長、間質性肺疾患/肺臓炎など。

    類薬ではイーライリリーのVerzenio(abemaciclib)も同様な早期乳癌に承認されているが、Kisqaliはリンパ節転移の無い患者も適応になっている。

    Kisqaliは17年に米欧でホルモン受容体陽性、her2陰性閉経後転移性乳癌に承認された、日本での開発は中止されたようだ。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: ノバルティスのプレスリリース


    キイトルーダが悪性胸膜中皮腫に承認
    (2024年9月17日発表)

    FDAはMSDのKeytruda(pembrolizumab)を切除不能進行/転移悪性胸膜中皮腫に適応拡大したと発表した。化学療法による一次治療に追加した第2/3相KEYNOTE-483試験でメジアン生存期間が17.3ヶ月と化学療法だけの群の16.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.79、p値はレーベルによると0.0162、Lancetに掲載された治験論文によると0.0324(両側)だった。事前に計画された探索的サブグループ分析によると、上皮型345人のハザードレシオが0.89であったのに対して、非上皮型95人では0.57(95%信頼区間0.36-0.89)、メジアン生存期間は12.3ヶ月と8.2ヶ月だった。

    リンク: FDAのプレスリリース


    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24/9/24IntraBioのIB1001(ニーマン・ピック病C型)
    24/9/26Karuna Therapeutics(BMS)のKarXT(xanomelineとtrospium、統合失調症)
    24/9/27リジェネロンのDupixent(dupilumab、好酸球性COPDを追加)
    24/10推ファイザーのmarstacimab(血友病)
    24/10推CSLのCSL312(garadacimab、遺伝性血管浮腫)
    24/10/6Merusのzenocutuzumab(NRG1融合陽性のNSCLCと膵癌)
    24/10/8BMSのOpdivo(nivolumab、非小細胞性肺癌術前術後療法)
    24/10/15Alfasigma(Intercept Pharmaceuticals)のOcaliva(obeticholic acid、アウトカム試験)
    24/10/17アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌)
    24/10/25Iterum Therapeuticsのsulopenem etzadroxilとprobenecid(単純尿路感染症)
    諮問委員会
    24/9/26ODAC:抗PD-1抗体の胃/食道癌における適応範囲(PD-L1陽性限定の当否)
    24/10/10CRDAC:Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)
    24/10/31EMDAC:Lexiconのsotagliflozin(CKDを伴う一型糖尿病)



    今週は以上です。

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