2024年7月20日

第1064回

【ニュース・ヘッドライン】

  • Nuzyraの市販後薬効確認試験が成功 
  • バイエル、ニュベクオの新併用法試験が成功 
  • アッヴィ、リンヴォックでまたまた適応追加申請 
  • 小野の子会社がTGCT用薬を承認申請 
  • 欧州でオプジーボとヤーボイを未治療肝細胞腫に申請 
  • EMAが6年前に却下した承認申請を再検討へ 
  • アメリカン・タケキャブが非びらん性GERDに適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


Nuzyraの市販後薬効確認試験が成功
(2024年7月18日発表)

米国のケンブリッジのParatek Pharmaceuticalsは、Nuzyra(omadacycline)の第3相OPTIC-2試験で主評価項目と副次的評価項目を達成したと発表した。死亡率に偏りはなかった。FDAとレーベル変更について相談する考え。エビデンスが二本になったため欧州申請の可能性もあるのではないか。

テトラサイクリン系の抗菌剤でテトラサイクリン耐性菌などにも活性を持つ。18年に米国で急性細菌性皮膚・皮膚構造感染症(ABSSSI)と地域感染細菌性肺炎(CABP)の治療薬として静注用と経口剤が承認された(加速承認ではない)。EUでも申請されたが、他の選択肢もある中、CABPの薬効確認試験を一本しかやっていないことがネックとなり、申請撤回に至った。

今回の試験は一本目と同様なデザインで、intent-to-treatベースのECR(治療開始の72-120時間後における早期臨床的応答率)をmoxifloxacinと比較した。結果は89.6%対87.7%で非劣性検定が成功した(信頼区間は未公表)。一本目の試験では81.1%対82.7%、群間差の95%下限は-7.1で非劣性だった。

治療時発現有害事象発生率は27.7%対23.5%で上回ったが薬品関連に限定すると2.7%対6.9%で下回り、治療時発現有害事象による治験離脱率は両群2.7%だった。一本目の試験は全死亡率が2.1%対1.0%と偏りが見られ、原因は区々で対照群の死亡率が過去の試験より低かったことも影響した可能性があるが、レーベルに明記される結果になった。今回の試験では両群とも1.8%(6人)だった。おそらく、これが今回の試験の最大の収穫だろう。

プレスリリースでは本試験はpost marketing studyと記されている。フェーズIVコミットメントなのか7月20日朝に確認を試みたが、FDAのDrug@FDAデータベースがアクセス不能となっていた(FDA Internet Application Site (Accessdata) Errorと表示)。今話題の、CrowdStrikeのFalconセンサーのバグの影響なのだろうか?サイト全体の検索は可能だった。
 
(追記:7月22日朝時点ではアクセス可能だった。)

リンク: 同社のプレスリリース


バイエル、ニュベクオの新併用法試験が成功
(2024年7月17日発表)

バイエルはNubeqa(和名ニュベクオ、darolutamide)の第3相ARANOTE試験で主目的を達成したと発表した。転移ホルモン感受性前立腺癌の患者にアンドロゲン枯渇療法と並行して600mgまたは偽薬を一日二回経口投与したもので、放射線学的PFS(無進行生存期間)に有意な差があった。データは今後発表する。承認申請に向かうのではないか。

Nubeqaは非ステロイド系アンドロゲン受容体アンタゴニスト。米日欧で、ホルモン抵抗性だが未転移の前立腺癌にゴナドトロピン放出ホルモン剤と併用、あるいは、転移ホルモン感受前立腺癌に化学療法及びアンドロゲン枯渇療法と併用、することが承認されている。今回は後者の適応において化学療法を除外したレジメンの有効性を確認したことになる。化学療法による副作用が緩和されるので受け入れやすいかもしれない。

同様な適応・用法ではファイザー/アステラス製薬のXtandi(enzalutamide)が19~21年に米日欧で適応拡大している。

リンク: バイエルのプレスリリース

【承認申請】


アッヴィ、リンヴォックでまたまた適応追加申請
(2024年7月12日発表)

アッヴィは欧米でRinvoq(upadacitinib)を巨細胞動脈炎に適応追加申請した。第3相SELECT-GCA試験で標準療法であるコルチコステロイド治療を受けている患者を組入れて、Rinvoq(7.5mgまたは15mgを一日一回経口投与)または偽薬を追加しステロイドは用量漸減する手法を検討したところ、15mg群の第12~52週の持続的寛解率が46%と偽薬追加群の29%を有意に上回った。有害事象による中止率は15%対21%で増加せず、深刻有害事象発現率は23%対21%と若干の上昇に留まった。

リンク: 同社のプレスリリース


小野の子会社がTGCT用薬を承認申請
(2024年7月19日発表)

小野薬品は、6月に企業価値ベース24億ドルで買収したDeciphera Pharmaceuticalsが欧州でDCC-3014(vimseltinib)を腱滑膜巨細胞腫(TGCT)用薬として承認申請し受理されたことを公表した。米国で先に申請する予定だったので、おそらく既に申請済みで待期期間中(FDAが申請に不備がないか予備的検討を行う)なのだろう。

TGCT発症のトリガーとなるCSF1遺伝子転座を標的とする、CSF1受容体阻害剤。手術不適のTGCT患者を組入れて30mgを一日二回、経口投与した第3相MOTION試験で、ORR(客観的反応率、独立放射線学的評価)が40%と偽薬群の0%を有意に上回った。類薬は19年に米国で第一三共のTuralio(pexidartinib)が初のTGCT用薬として承認されているが、vimseltinibは肝毒性が見られず枠付き警告を回避できるかもしれない。

リンク: 小野のプレスリリース(和文)


欧州でオプジーボとヤーボイを未治療肝細胞腫に申請
(2024年7月19日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、切除不能肝細胞腫の初めての全身性治療としてOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を併用する効能・用法追加をEUに申請し受理されたと発表した。CheckMate-9DW試験で全生存期間を医師がsorafenibまたはlenvatinibから選んで投与する群と比較したところ、ハザードレシオが0.79、p=0.018、メジアン生存期間は各群23.7ヶ月と20.6ヶ月と、統計的に高度に有意な訳ではないが、意味のある延命効果が示された。グレード3/4の治療関連有害事象発生率は41%と42%で大差なかった。

この併用は20年に米国でsorafenib歴を持つ肝細胞腫向けに加速承認された。今回の試験が市販後薬効確認試験なので、米国では本承認切替と適応拡大を申請することになるだろう(既に申請済みだろう)。欧州では肝細胞腫は未承認。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


EMAが6年前に却下した承認申請を再検討へ
(2024年7月8日発表)

スペインの製薬会社PharmaMar(MSE:PHM)は、欧州委員会から、Aplidin(plitidepsin)の承認申請に関するEMA(欧州薬品庁)の却下決定を無効化した旨の通知を受けたと発表した。6年前の評価が覆るかもしれない、異例の事態だ。Hopveus判決の余波かもしれない。

同社は16年に難治/再発多発骨髄腫の4次治療薬としてEUに承認申請したが、CHMPはPFSが1ヶ月伸びる程度で延命効果に繋がるかどうか不確かであることや、深刻副作用が増加することなどから、否定的に評価し、承認されなかった。同社は専門家委員会における一部の委員の利益相反やエビデンス評価の不備を主張して欧州裁判所に提訴し、20年にEU一般裁判所(General Court)が承認拒否を無効決定したものの、(欧州委員会ではなく)エストニアやドイツが上訴、23年に欧州司法裁判所(European Court of Justice)が原審破棄・差戻しを決定した。今回、再び、振り子が大きく振れたことになる。

欧州委員会が再審査を要求したのは、審査に関与した専門家の一部がAplidinと競合する可能性のある開発品の開発に携わっていたことが主因である模様。今更なぜと思うが、欧州裁判所のHopveus判決の余波かもしれない。EMAがHopveus(sodium oxybate)をアルコール依存治療薬として承認しなかったためフランスのDebrégeas et associés Pharma SASが提訴した判例で、上訴審が原審を覆し、利益相反に関するEMAの判断などを手続法違反と認定したもの。その後、EMAは、今年3月に予定されていたエーザイ/バイオジェンのアルツハイマー病用薬Leqembi(lecanemab)に関する質疑を先送りしたり、PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)のデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬Translarna(ataluren)の条件付き承認を更新しないよう勧告したCHMP審査の再審査を決定したり、異変が続いている。

PharmaMarは海洋生物由来の抗癌剤、Yondelis(trabectedin)の開発 ・実用化で知られる。Aplidinも地中海の尾索動物由来の成分を製品化したもの。各地で中外製薬などと提携して開発したが、今のところ承認されたという話は聞かない。エビデンスが盤石ならほかの国で承認されるだろうし、自信があれば他の用途用法の臨床開発も進めているだろうから、今回の件で承認に一歩近づいたかどうかは明らかではない。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


アメリカン・タケキャブが非びらん性GERDに適応拡大
(2024年7月18日発表)

Phathom Pharmaceuticals(Nasdaq:PHAT)は、FDAがVoquezna(vonoprazan)を非びらん性胃食道逆流症(GERD)による胸やけの治療に適応拡大したと発表した。第3相試験で胸やけを経験しなかった日数が観察期間の46%と偽薬群の27%を有意に上回った。

武田薬品からライセンスしたカリウムイオン競合型アシッド・ブロッカー。日本で14年に胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ピロリ菌除菌用薬タケキャブとして承認され、米国では22年にピロリ菌除菌用抗生剤同梱製品が承認。その後、ニトロソアミン問題で開発承認が遅延したものの、昨年11月にびらん性GERDの治療に適応拡大が認められた。びらん性では20mgを一日一回、最大8週間治療した後、必要に応じて10mg一日一回の維持療法を施行する。非びらん性では10mg一日一回を最大4週間治療する。薬価は10mgも20mgも同じ、治療期間は非びらん性のほうが短いが処方薬による治療を受けている米国の患者数は約1500万人と、びらん性の700万人の倍。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年7月推JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw、osimertinib歴のあるex19del/L858R NSCLCに適応追加)
24年7月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、未治療食道扁平上皮腫追加)
24年8月推Sun Pharmaceuticalのdeuruxolitinib(円形脱毛症)
24年8月推ガルデルマのnemolizumab(結節性掻痒とアトピー性皮膚炎)
24年8月推ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント)
24年8月推JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw)とlazertinib(ex19del/L858R NSCLC)
24/8/4Adaptimmuneのafamitresgene autolecel(滑膜肉腫)
24/8/10Humacyteの人無細胞性血管(緊急動脈再建術)
24/8/11Lykos Therapeuticsのmidomafetamine(PTSD)・・・旧社名MAPS
24/8/13Citius Pharmaceuticalsのdenileukin diftitox(再発皮膚T細胞リンパ腫)
24/8/14CymaBay/ギリアドのseladelpar(原発性胆管炎)
24/8/14アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症)
24/8/20セルヴィエのvorasidenib(グリオーマ)
24/8/22Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫)
24/8/23GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、内膜腫フロントライン)
24/8/28Incyteのaxatilimab(慢性GvHD3L)
24年9月推JNJのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、HSCT補助療法)
24年9月ロシュのOcrevus皮下注(ocrelizumab、hyaluronidase、多発性硬化症)
24/9/5Travere TherapeuticsのFilspari(sparsentan、IgA腎症本承認切替)
24/9/18Vanda PharmaceuticalsのVLY-686(tradipitant、胃麻痺)
24/9/21Zevra Therapeuticsのarimoclomol(ニーマン・ピック病C型)
24/9/24IntraBioのIB1001(ニーマン・ピック病C型)
24/9/26Karuna Therapeutics(BMS)のKarXT(xanomelineとtrospium、統合失調症)
24/9/26Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病)
24/9/27リジェネロンのDupixent(dupilumab、好酸球性COPDを追加)・・・3か月延期
24/9/27サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、未治療多発骨髄腫4剤併用)
諮問委員会
24/7/25ODAC:アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、非小細胞性肺癌術前術後補助療法の追加)
24/8/2GeMDAC:Zevra Therapeuticsのarimoclomol(ニーマン・ピック病C型)



今週は以上です。

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