【ニュース・ヘッドライン】
- LAG-3融合蛋白がPD-L1陰性癌にも良績
- ハンチントン病の遺伝子療法
- アウィクリは米国では承認されず
- 局所性PDE4阻害剤がアトピーにも承認
- PRAC、GLP-1作用剤とグラチラマー酢酸塩の注意事項を追加
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
LAG-3融合蛋白がPD-L1陰性癌にも良績
(2024年7月12日発表)
オーストラリアのLAG-3薬開発会社、Immutep(ASX:IMM)はIMP321(eftilagimod alpha)の後期第2相頭頚部扁平上皮腫(HNSCC)試験、TACTI-003/KeyNote-PNC-34のコフォートBの結果をESMO(欧州臨床腫瘍学会)の7月のVirtual Plenariesで公表した。CPS(腫瘍や腫瘍浸潤T細胞におけるPD-L1発現度の指標)が1未満、つまり陰性の難治/進行HNSCCの一次治療にMSDのKeytruda(pembrolizumab)と併用したところ、ORR(客観的反応率、RECIST1.1ベース、n=31)が35.5%、完全反応率は9.7%だった。進行したら投与を打ち切るプロトコルだが、応答者の過半は半年以上、投与を続けている由。CPS陰性例における抗PD-L1抗体のORRは5.4%程度なので良好な成績だ。G3以上の治療時発現有害事象の発生率は15.2%だった。当局と承認申請に向けた道筋を相談する考え。
同社はLAG-3を発見したFrédéric Triebelが2001年に設立、現在もCSOを務めている。IMP321、別名LAG-3IgはLAG-3の四つの細胞外ドメインをIgG1のFc領域と結合した融合蛋白で、抗原提示細胞のMHCクラスIIの一部に結合・アゴニズムして細胞性免疫を活性化させる。
上記試験のコフォートCでは二次治療におけるORR(RECIST1.1ベース、n=37)が24%だった。このコフォートのメインの解析であるiRECISTベースのORRは30%で、CPS≧20の症例では60%、20未満では12%だった。このほかに、CPSが1以上の一次治療患者のコフォートAも進行中。また、her2陰性/低発現またはトリプル・ネガティブの転移乳癌における化学療法併用第2/3相試験なども実施中。
リンク: 同社のプレスリリース
ハンチントン病の遺伝子療法
(2024年7月9日発表)
uniQure biopharma(Nasdaq:QURE)は早期ハンチントン病の遺伝子療法であるAMT-130の第1/2相試験の中間解析結果をプレスリリース等で公表した。加速承認の申請に向けてFDAと相談する考え。もっと大規模かつ長期の試験を求められた場合は共同開発パートナーを探す考え。
AMT-130はハンチントン病に関わる変異遺伝子のエクソン1をmicroRNAで沈黙させる、AAV5ベクター遺伝子療法。MRIでモニタリングしながら線条体に持続陽圧下投与する。第1/2相は米国と欧州で別々に、低量群(6x10^12vg)、高量群(6x10^13vg)、偽手術群に割付け、術後の経過を観察している。今回公表されたのは、欧米の試験の合計39人(低量12人、高量17人、偽手術10人)の24ヶ月cUHDRS(複合ハンチントン病疾病評価尺度)。cUHDRSはハンチントン病の確立した評価尺度であるUHDRSを改変して、疾病進行との相関性を高めたもので、疾病装飾薬の効果を検討するのに適するとされる。
結果は、低量群が-0.7、高量群は-0.2、外部対照群である傾向加重自然歴群(154人)は-1.0で、高量群の低下は対照群比有意に小さかった(p=0.007)。
新しい尺度なので0.8という治療効果がどの程度有難いのか良く分からない。文献検索でヒットしたTrundellらの学会発表抄録では1.2の違いは臨床的に意味があると述べているが、例えばアルツハイマー病のアセチルコリン・エステラーゼ阻害剤も、効果は医学者が臨床的に意味があると評価した水準より低かった。FDAは、当時から、アルツハイマー病薬に関しては統計的に有意なら臨床的な意味は問わないと言われていたが、近年は、難病治療薬の承認基準を緩和する姿勢を更に明確にしており、この程度でも加速承認される可能性がありそうだ。
リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Dylan TrundellらのAAN抄録(Neurology、2019年)
【承認審査・委員会】
アウィクリは米国では承認されず
(2024年7月11日発表)
ノボ ノルディスクは週一回皮下注用インスリン、Awiqli(insulin icodec)を糖尿病薬として開発し、今年5~6月にEUと日本で承認を取得したが、米国は審査期間延長を経て審査完了通知を受領した。製造プロセスと一型糖尿病に関する追加情報を求められたが、年内の対応はできない見通しだ。
ヒト・インスリンのアミノ酸配列を一部装飾し脂肪酸を結合することで終末半減期を196時間と大きく伸ばした。特に、多忙だったり旅行中だったりする時の利便性が、向上する。弱点は血中濃度の安定性がTresiba(insulin degludec)のような一日一回皮下注用インスリンほどではないこと。一型糖尿病のONWARDS 6試験では中重度低血糖の発生率が人年当り17.0件とTresiba群の9.2件の1.8倍だった。二型糖尿病のONWARDS 2試験でも0.73件対0.27件で大きく上回った。
FDAは5月に内分泌代謝学薬諮問委員会を招集して、一型糖尿病に関して意見を求めたが、11人の委員中7人が便益が危険を上回るとは言えないと判定した。
欧日は承認したが、特に一型糖尿病に用いる場合は低血糖リスクを十分に検討するよう求めている。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
局所性PDE4阻害剤がアトピーにも承認
(2024年7月9日発表)
Arcutis Biotherapeutics(Nasdaq:ARQT)はFDAがZoryve 0.15%クリームを6歳以上の軽中度アトピー性皮膚炎用薬として承認したと発表した。一日一回塗布した第3相試験二本で、奏効率(第4週に疾病評価尺度が0(クリア)または1(ほぼクリア)となり、且つ、ベースライン比2段階以上改善)が一本では32.0%(偽薬群は15.2%)、もう一本では28.9%(同12.0%)だった。
アストラゼネカからライセンスしたPDE4阻害剤の局所性製剤で、0.3%クリームが22年に米国で12歳以上のプラク乾癬に、毛の生えている部位にも塗りやすい0.3%フォーム製剤が同じく23年に9歳以上の中重度脂漏性皮膚炎に、承認されている。日本は佐藤製薬が両製剤の開発販売権を取得した。
リンク: Arcutis社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
PRAC、GLP-1作用剤とグラチラマー酢酸塩の注意事項を追加
(2024年7月12日発表)
EMA(欧州薬品庁)のPRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)は、7月の会議で、GLP-1作用剤やglatiramer acetateの有害事象を添付文書に追加するよう勧告した。正式採用されたらメーカーが改訂を行う。
GLP-1作用剤は食物の胃排出を遅らせ空腹感を感じにくくする作用も持っているが、滞留した消化物が逆流し胃食道逆流症を齎す副作用も知られている。今回、手術のために全身麻酔や深い鎮静を行うと逆流による誤嚥や誤嚥性肺炎を招きかねないため、胃が空ではない可能性に留意するよう注意を促す。薬との因果関係は確立していない模様だ。
glatiramer acetateは多発性硬化症の治療薬でオリジネイターのテバはCopaxone名で販売している。アナフィラキシー反応のリスクが知られているが、今回、治療を開始してから何ヶ月も経ってから発現することがあり、致死例もあることを添付文書に記載するとともに、Dear Healthcare Professional Letterを発出することを勧告した。症状が注射関連反応とオーバーラップするので診断が遅れる懸念があるようだ。発現したら投与を止める。
リンク: EMAのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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24年7月推 | JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw、osimertinib歴のあるex19del/L858R NSCLCに適応追加) |
24年7月 | BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、未治療食道扁平上皮腫追加) |
24/7/19 | Phathom PharmaceuticalsのVoquezna(vonoprazan、症候性非びらん性胃食道逆流症を追加) |
24年8月推 | Sun Pharmaceuticalのdeuruxolitinib(円形脱毛症) |
24年8月推 | ガルデルマのnemolizumab(結節性掻痒とアトピー性皮膚炎) |
24年8月推 | ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント) |
24年8月推 | JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw)とlazertinib(ex19del/L858R NSCLC) |
24/8/4 | Adaptimmuneのafamitresgene autolecel(滑膜肉腫) |
24/8/10 | Humacyteの人無細胞性血管(緊急動脈再建術) |
24/8/11 | Lykos Therapeuticsのmidomafetamine(PTSD)・・・旧社名MAPS |
24/8/13 | Citius Pharmaceuticalsのdenileukin diftitox(再発皮膚T細胞リンパ腫) |
24/8/14 | CymaBay/ギリアドのseladelpar(原発性胆管炎) |
24/8/14 | アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症) |
24/8/20 | セルヴィエのvorasidenib(グリオーマ) |
24/8/22 | Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫) |
24/8/23 | GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、内膜腫フロントライン) |
24/8/28 | Incyteのaxatilimab(慢性GvHD3L) |
24年9月推 | JNJのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、HSCT補助療法) |
24年9月 | ロシュのOcrevus皮下注(ocrelizumab、hyaluronidase、多発性硬化症) |
24/9/5 | Travere TherapeuticsのFilspari(sparsentan、IgA腎症本承認切替) |
24/9/18 | Vanda PharmaceuticalsのVLY-686(tradipitant、胃麻痺) |
24/9/21 | Zevra Therapeuticsのarimoclomol(ニーマン・ピック病C型) |
24/9/24 | IntraBioのIB1001(ニーマン・ピック病C型) |
24/9/26 | Karuna Therapeutics(BMS)のKarXT(xanomelineとtrospium、統合失調症) |
24/9/26 | Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病) |
24/9/27 | リジェネロンのDupixent(dupilumab、好酸球性COPDを追加)・・・3か月延期 |
24/9/27 | サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、未治療多発骨髄腫4剤併用) |
諮問委員会 | |
24/7/25 | ODAC:アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、非小細胞性肺癌術前術後補助療法の追加) |
今週は以上です。
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