2023年7月16日

第1111回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗CD20抗体の皮下注試験が成功 
  • オプジーボも膀胱癌一次治療試験が成功 
  • 抗CD19抗体薬物複合体の第2相で7人が死亡 
  • 武田、米国ではデング熱ワクチンの承認申請を撤回 
  • OTC避妊薬が米国で初承認 


【新薬開発】


抗CD20抗体の皮下注試験が成功
(2023年7月13日発表)

ロシュはOcrevus(ocrelizumab)の皮下注用新製剤が第3相OCARINA II試験で主目的と副次的目的を達成したと発表した。再発型あるいは一次進行型の多発性硬化症を対象に、6ヶ月毎に10分間皮下注する群と、17~18年に米欧で承認された点滴用製剤を6ヶ月毎に2時間以上かけて静注する群の薬物動態やMRIによる疾患活動性を比較したところ、非劣性だった。実用化されれば患者の拘束時間が大きく減少することになる。但し、Ocrevusは点滴投与後に1時間以上、副作用が発生しないか密接に監視することが求められており、皮下注用製剤も同じだろうから、実質的な拘束時間は3時間超から1時間超に、7割前後減るだけで、また、おそらく、自己注は認められないだろう。

リンク: 同社のプレスリリース


オプジーボも膀胱癌一次治療試験が成功
(2023年7月11日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブはOpdivo(nivolumab)のCheckMate-901試験のサブスタディが最終解析で主目的を達成したと発表した。901試験は切除不能/転移尿路上皮腫の一次治療試験で、メイン・スタディはYervoy(ipilimumab)と併用する便益をgemcitabineと白金薬を併用する標準療法と比較したが、主評価項目の一つであるPD-L1陽性サブグループにおける全生存期間がフェールした。一方、サブスタディはcisplatinが適応になる患者を対象に、cisplatin及びgemcitabineの標準療法にOpdivoを追加する便益を検討したところ、共同主評価項目の全生存期間とPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が有意に向上した。

Opdivoは二次治療以降に単剤投与することが欧米で承認されているが、一次治療に適応拡大申請することになりそうだ。

抗PD-1/PD-L1抗体ではメルクのBavencio(avelumab)がgemcitabine及び白金薬の併用一次治療に反応/疾病安定化した患者の維持療法として米欧日で承認されている。901試験は維持療法だけではなく最初から用いているのでデータを直接比較できないが、効果が高く忍容性がそれほど悪くないならば、早い段階で用いるようになるかもしれない。

リンク: BMSのプレスリリース


抗CD19抗体薬物複合体の第2相で7人が死亡
(2023年7月11日発表)

スイスのADC Therapeutics(NYSE:ADCT)は、21~22年に米欧で難治再発LBCL(大細胞型B細胞リンパ腫)の三次治療薬として承認された抗体薬物複合体、Zynlonta(loncastuximab tesirine-lpyl)の第2相試験の中間解析で呼吸器関連の治療時発現有害事象が多発し、7人が死亡、G3/4も5例あったことから、組入れを自発的に中断したと発表した。死亡した一名以外は薬物との関連はなさそうと判定された。第3相市販後薬効確認試験の進行や期待に与える影響が気になるところだが、会社側によると、今回の試験の対象は第3相には組入れられないような患者層とのことだ。

この第2相LOTIS-9試験は、R-CHOP療法に不適なびまん性LBCLの一次治療にrituximabと併用する効果や安全性を検討した。中間安全性解析の対象は40人なので死亡率は2割近いことになる。12人全員がCOPDなどの呼吸器疾患や最近のCOVID-19罹患歴を持ち、年齢は80歳以上とのことなので、元々死亡リスクが高かった可能性もある。

米国で加速承認された時のフェーズIVコミットメントである第3相LOTIS-5試験は、治療歴のある難治再発びまん性LBCLを対象に、rituximabと併用する効果をR-GemOXレジメンと比較している。25年に成否判明する見込み。治験登録によると、病気や状態に基づき医師が不適と判断した患者は除外されるので、LOTIS-9試験の被験者はこの条件に引っかかるのかもしれない。

Zynlontaは日本では田辺三菱製薬が、欧州などはSwedish Orphan Biovitrumが、ライセンスしている。

リンク: ADC社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


武田、米国ではデング熱ワクチンの承認申請を撤回
(2023年7月11日発表)

武田薬品は13年にInviragenを買収して入手した4価弱毒化デング熱ワクチンの第3相試験を成功させ、インドネシアを皮切りにEUやブラジルなどで承認を取得したが、米国は申請撤回に至った。過去の臨床試験で収集対象とならなかったデータをFDAに求められ、タイムリーに提出することができないため。

デング熱はアフリカやアジアの一部地域の風土病。医薬品の承認審査体制を持たない国はEUや米国、日本の審査結果を参照することになるが、EUはEU域内だけでなくそのようなニーズのある国向けにも承認しているので、米国が承認しなくても大勢に影響はない。申請撤回の影響を受けるのは流行地域に渡航する米国居住者と、プエルトリコなどデング熱が散見される地域の住人だ。

リンク: 武田の声明

【承認】


OTC避妊薬が米国で初承認
(2023年7月13日発表)

FDAはHRA PharmaのOpill(norgestrel)を承認した。英国では同社のHana(desogestrel)が21年にOTCスイッチされたが、米国でOTC避妊薬が承認されたのは初。

norgestrelは1973年に医薬品Ovretteとして承認されたが2005年に安全性や有効性以外の理由により販売中止となった。HRAはOTC薬に求められるレーベル理解度試験を行い昨年6月に承認申請、諮問委員会で17人の委員全員の支持を獲得した。避妊薬の効果は100%ではなく副作用リスクもある。レーベル理解度試験では癌の罹患歴を持つ人は医師に相談すべきという注意書きが見過ごされたり、過剰服用したりする症例が少なくなかった。一方で、米国では年610万件の妊娠の半分は意図せぬ妊娠とのことだ。このような妊娠は好ましくない結果に繋がるリスクが高まるため、OTC薬の登場は社会的意義があると評価された。

乳癌や罹患歴は禁忌。他の癌の罹患歴がある人は事前に医師と相談する。他の避妊薬の併用は禁忌。妊娠が確認されたら服用を止める。

価格は未定。米国でも英国でも処方薬は保険がカバーし自己負担は小さい模様だが、英国のHanaは有償。

HRAはOTCスイッチ申請する直前の昨年5月にアイルランド籍のOTC薬大手、Perrigo(NYSE:PRGO)に18億ポンドで買収された。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Perrigoのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA:
  • 23年6~8月推 ファイザーのPF-06863135(elranatama、多発骨髄腫)
  • 23年7月推 アストラゼネカのBeyfortus(nirsevimab、0歳児等のRSV下部気道感染症予防)
  • 23/7/23  Verrica PharmaceuticalsのVP-102(cantharidin、伝染性軟属腫)
  • 23/7/24  第一三共のVanflyta(quizartinib、FLT3-ITD陽性AML1L導入・地固め)
  • 23/7/28  Citius PharmaceuticalsのI/ONTAK(持続性難治性CTCL)
  • 23年8月推 ファイザーのTalzenna(talazoparib、転移ホルモン抵抗性前立腺癌に適応拡大)
  • 23年8~10月推 ファイザーのetrasimod(中重度潰瘍性大腸炎)
  • 23/8/2   MesoblastのProchymal(remestemcel-L、小児急性移植片宿主病)
  • 23/8/5   Sage TherapeuticsのSAGE-217(zuranolone、鬱病、産後鬱)
  • 23/8/9   Galera TherapeuticsのGC4419(avasopasem manganese、頭頚部癌放射線療法における口腔粘膜炎の抑制)
  • 23/8/13  大鵬薬品のLonsurf(trifluridine、tipiracil、結腸直腸癌におけるbevacizumab併用を追加)
  • 23/8/16  イプセンのSohonos(palovarotene、骨化性線維異形成症)
  • 23/8/19  アステラス製薬のZimura(avacincaptad pegol、加齢性黄斑変性による地図状萎縮)
  • 23/8/20  Regeneron PharmaceuticalsのREGN-3918(pozelimab、CHAPLE症候群)
  • 23/8/20  Neurocrine Biosciencesのvalbenazine(ハンチントン病適応拡大)
  • 23/8/21  ファイザーのPF-06928316(妊婦接種用新生児RSV予防ワクチン)
  • 23/8/25  Tarsus PharmaceuticalsのTP-03(lotilaner、ニキビダニ眼瞼炎)
  • 23/8/28  BMSのReblozyl(luspatercept-aamt、MDSにおけるESA不応不耐限定解除)
  • 23/8末    ValnevaのVLA1553(チクングニア熱ワクチン)


諮問委員会:
  • 23/8/13 ODAC:Mesoblastのremestemcel-L(ステロイド難治急性移植片宿主病)



今週は以上です。

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