2023年4月29日

第1100回

【ニュース・ヘッドライン】

  • リリー、GLP-1/GLP-1作動剤は2DM・肥満合併患者にも有効 
  • AAN:アストラゼネカのATTR-PN用アンチセンス薬 
  • 上海君実の抗PD-1抗体、中国の肺癌アジュバント試験が成功 
  • Applied社、ガラクトース血症用薬の承認申請を断行する構え 
  • テセントリクのTNBCアジュバント試験が無益認定 
  • ブルーバード、鎌状赤血球症の遺伝子療法を承認申請 
  • GSK、抗PD-1抗体を適応拡大申請 
  • リムパーザの前立腺癌適応はBRCA変異に限定すべし 
  • EU、高齢者用RSVワクチンなどの承認を支持 
  • レーバー遺伝性視神経症用薬の欧州承認申請を撤回 
  • 20価プレベナーが幼小児にも承認 
  • 2ヶ月持続するエビリファイが承認 
  • 経口マイクロバイオーム療法薬が承認 
  • SOD1型ALS用薬が承認 


【新薬開発】


リリー、GLP-1/GLP-1作動剤は2DM・肥満合併患者にも有効
(2023年4月27日発表)

イーライリリーは二型糖尿病(以下、2DM)用薬Mounjaro(tirzepatide)を肥満症/オーバーウェイトの患者向けにも開発している。2DM以外のリスク因子を持つ患者を組入れた第3相に続いて、2DM合併患者の第3相、SURMOUNT-2試験の結果が公表された。過去の他剤の試験と同様に、減量効果が非2DM試験より小さかったが、それでも、15%と大きな成果を上げた。治験離脱率の低さも注目できる。

この試験はアメリカ、アルゼンチン、ブラジル、インド、日本、プエルトルコ、ロシア、台湾の施設で938人を偽薬群、10mg群、または15mg群に無作為化割付けして週一回皮下注し、72週間の体重変化を比較した。悪心嘔吐や下痢などを抑制するため、2.5mgで開始して4週毎に2.5mgずつ漸増した。主評価項目の一つである体重減少率は各群3.3%、13.4%、15.7%となり二用量とも偽薬を有意に上回った。言うまでもなく、もう一つの5%減量成功率も有意に上回った。

治験を離脱した患者のデータも継続追跡するTreatment-regimen estimandベースでも体重減少率が各群3.2%、12.8%、14.7%と、大きくは変わらない結果になった。各群の治験離脱率が15%、9%、14%と大差なかったからだろう。尚、有害事象による離脱率も各群4%、4%、7%とそれほど変わらなかった。悪心や下痢の発生率は約2割、嘔吐は約1割だった。

2DM以外を組入れたSURMOUNT-1試験では偽薬群、10mg群、15mg群の体重減少率が2.4%、21.4%、22.5%だった。今回の治療効果は半分だが、水準としては他社のGLP-1作用剤を若干上回っている。

米国ではローリング承認申請中。

リンク: 同社のプレスリリース


AAN:アストラゼネカのATTR-PN用アンチセンス薬
(2023年4月24日発表)

アストラゼネカはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスしたトランスサイレチン標的アンチセンス薬、eplontersenを遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症(ATTR-PN)治療薬として米国で承認申請中だが、第3相試験成績をAAN(米国神経学会)で公表した。4週毎皮下注で66週後に血清トランスサイレチン濃度がベースライン比81%減少し、偽薬群の11%減を有意に上回った。mNIS+7(ニューロパチーの障害尺度)は0.28点の増加に抑えられた(偽薬群は25点増加)。先行薬であるIonisのTegsedi(inotersen)やアルナイラム・ファーマシューティカルズのsiRNA介入薬Amvuttra(vutrisiran)と比べて勝るとも劣らない、高い効果が示唆された。尚、本試験の偽薬群はTegsediの第3相試験における偽薬群のデータを外挿している。

先行薬は多いが自己注の余地がある点が長所。

リンク: 同社のプレスリリース


上海君実の抗PD-1抗体、中国の肺癌アジュバント試験が成功
(2023年4月21日発表)

Junshi Biosciences(HKSE:1877)はtoripalimabの第3相非小細胞性肺癌術前術後補助療法試験の成績をASCO(米国臨床腫瘍学会)の学会で発表した。中国の施設だけで実施されたので米国申請は無理だろうが、この用途で成功した薬はまだ少ないので注目される。

18年に中国で悪性黒色腫用薬として承認された、価格優位を武器に同国市場を席巻している中華抗PD-1抗体の第一号。今回の第3相Neotorch試験はステージII/IIIの非小細胞性肺癌を組入れて、化学療法と併用で術前に3サイクル、術後に1サイクル施行し、更に地固め療法としてtoripalimabだけを3週毎に最大13サイクル投与する群と、toripalimabの代わりに偽薬を投与する群の主要病理学的反応率とEFS(無イベント生存率、担当医評価)を比較した。解析対象はステージIIIだけと全体のニ種類が設定されたが、前者が中間解析で成功認定された。主要病理学的反応率は各群48.5%と8.4%、EFSのハザードレシオは0.40でメジアン値は未達と15.1ヶ月。PD-L1陽性/陰性を問わず便益が見られた。全生存期間の解析はハザードレシオ0.62と良好だが未だ有意水準には到達していない。

toripalimabは米国でライセンシーのCoherus BioSciences(Nasdaq:CHRS)が上咽頭癌用薬として承認申請しているが渡航規制の影響で中国施設の査察ができなかったため遅れている。EUでも上咽頭癌と食道扁平上皮腫に申請中。

リンク: Junshiのプレスリリース(Globe Newswire)
リンク: LuらのASCO抄録


Applied社、ガラクトース血症用薬の承認申請を断行する構え
(2023年4月24日発表)

Applied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はAT-007(govorestat)の第3相ACTION-Galactosemia Kids試験の結果を明らかにした。主評価項目で有意差が見られなかったが、一部の指標で有効性が示唆されたことから、承認申請に向けてFDAと協議する考え。FDAは希少疾患用薬の承認ハードルを下げたように感じられるので、可能性がないでもないだろう。

本剤の対象疾患であるガラクトース血症は常染色体性劣性遺伝性疾患で、ガラクトースをグルコースに分解するために必要な一連の酵素の一部が欠乏、ガラクチトールなどの毒性代謝物が蓄積し、発達障害などをもたらす。米国ではGALT(ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)欠損型の古典的患者が3000人程度いる模様だ。AT-007は中枢神経浸透性選択的アルドース還元酵素阻害剤。ガラクチトールの生成を妨げる。同社は血漿ガラクチトール減少作用に基づく承認申請を企図したが、FDAが臨床的転帰を検討するよう求めた経緯がある。

今回の試験は2~17歳の古典的ガラクトース血症患者47人を組入れて、パートAで年齢毎の至適用量を決定し、パートBで仮説検定した。主評価項目はOWLS(口頭筆記言語尺度)の口頭表現と聴解、及びBASC(子供の行動評価システム)の行動症状と日常生活動作のサブスケールの合成尺度。フェールしたが、日常生活動作や行動、認知、適応行動などの項目で改善が見られたようだ。発語は改善しなかったが、発語セラピーの影響か偽薬群でも悪化しなかったことが影響したとのこと。治療関連深刻有害事象は発生しなかった。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: 治験登録(ClinicalTrials.gov、23年2月24日最終更新)


テセントリクのTNBCアジュバント試験が無益認定
(2023年4月26日発表)

ロシュは、23年第1四半期の業況報告に際して、Tecentriq(atezolizumab)の第3相IMpassion030試験が無益認定されたことを明らかにした。ステージII/IIIのトリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)の切除後アジュバント療法としてtaxanesなどの化学療法に追加する便益を検討したもの。他の抗PD-1/PD-L1抗体同様、TNBCの治験成績はパッとしない。

TecentriqはIC≧1%(腫瘍浸透免疫細胞におけるPD-L1発現が腫瘍領域の1%以上で見られる)の切除不能局所進行/転移TNBCの一次治療にnab-paclitaxelと併用することが19年に米欧日で承認されたが、市販後薬効確認試験がフェールしたことなどから、21年に米国の加速承認を自主返上した。また、早期TNBCの術前ネオアジュバント試験が成功し欧州で適応拡大申請したが、21年に撤回している。

リンク: 上記試験の治験登録(ClinicalTrials.gov)

【承認申請】


ブルーバード、鎌状赤血球症の遺伝子療法を承認申請
(2023年4月24日発表)

bluebird bio(Nasdaq:BLUE)はbb1111(lovotibeglogene autotemcel、略称lovo-cel)を血管閉塞性イベント歴を持つ12歳以上の鎌状赤血球症の治療薬として米国で承認申請した。ベータ・グロブリンの遺伝子を導入した自家造血幹細胞を移植する遺伝子療法で、エビデンスは36人をメジアン32ヶ月追跡した第1/2相試験など。

似たような薬はCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)がVertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)と共同開発したCTX001(exagamglogene autotemcel、略称exa-cel)を昨年12月にEUで、今月は米国でも、鎌状赤血球症と輸血依存ベータ・サラセミアに承認申請している。

リンク: bluebirdのプレスリリース


GSK、抗PD-1抗体を適応拡大申請
(2023年4月25日発表)

GSKは抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)の適応拡大をEUに申請し受理されたと発表した。dMMR(相同組換え修復不全)またはMSI-H(マイクロサテライト不安定高)の原発性進行/難治内膜腫に用いることが承認されているが、化学療法併用を追加する考え。第3相RUVY試験でcarboplatinとpaclitaxelの併用レジメンに追加し6週毎維持療法も施行したところ、PFS(無進行生存期間、担当医評価)のハザードレシオが偽薬追加群比0.28、24ヶ月PFS率は61.4%対15.7%と良好な結果になった。全生存期間は未だ有意差が出ていないがハザードレシオは0.30なので悪くない。dMMR/MSI-Hではないサブグループの数値も良さそうだったが、少なくとも今回は申請しなかったようだ。米国でも申請した模様で上期中の審査開始を予想している由。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認審査・委員会】


リムパーザの前立腺癌適応はBRCA変異に限定すべし
(2023年4月28日発表)

FDAは腫瘍学諮問委員会を招集し、アストラゼネカのLynparza(olaparib)の適応拡大申請について意見を聞いた。化学療法未施行の転移性去勢抵抗性前立腺癌にabiraterone及びprednisone(prednisolone)と併用する用途用法に関するもので、第3相PROpel試験が中間解析で目的達成したが、FDAは、便益を受けたのは、専ら、被験者の1割程度に過ぎないBRCA変異サブグループだけであることを指摘。諮問委員も13人中11人がBRCA変異型に限定して承認することに賛成した(他は反対1人、棄権1人)。

FDAの解析によると、腫瘍組織またはctDNA(血中循環腫瘍DNA)の検査で陽性と判定されたサブグループ(被験者の11%)では主評価項目のPFS(放射線学的無進行生存期間)のハザードレシオがLynparzaの代わりに偽薬を併用した群と比べて0.24だったが、両方で陰性だったサブグループ(同54%)では0.85、両方不明、あるいは片方が不明でもう片方が陰性だった不確定サブグループ(35%)では0.66と、かなり異なっていた。全生存期間におけるハザードレシオは各0.30、1.06、0.73と、両方陰性サブグループでは死亡リスクが高まる可能性すら浮上した。

他のPARP阻害剤の同様な臨床試験でもBRCA変異のない患者に対する便益は小さく、Lynparzaだけが違うと考える理由もない。また、PARP阻害剤はPFS延長が延命に繋がらないことがあり、主評価項目ではなく事前に設定された解析でもないとはいえ、BRCA陰性患者の死亡リスクが1.06倍という点推定値は軽視できない。

尤も、適応範囲の細かいところをどのように決めるかは承認審査機関の裁量次第という面もある。実際、EUは、化学療法不適という条件が付くもののBRCAステータスは不問で昨年12月に承認している。FDAは抗PD-1抗体など他の抗癌剤に関してはサブグループ分析で便益が小さい可能性が浮上していても無視することがあるが、PARP阻害剤は話が別ということなのだろう。


BRCA変異検査結果(単位:人)
 腫瘍組織標本検査:
陽性陰性不明合計
ctDNA検査:
 陽性34181769
 陰性12427226665
 不明4401862
 合計50485261796

出所:FDAブリーフィング資料

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


EU、高齢者用RSVワクチンなどの承認を支持
(2023年4月26日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

GSKのArexvyは60歳以上を対象とするRSウイルス・ワクチン。一回筋注でRSVによる下部気道感染症を83%予防する。翌年のシーズンにおける効果は未だ明らかではない。欧州ではRSVに感染し入院中に死亡する65歳以上の患者が年17000人いるとのことだが、今までワクチンがなかった。米国でも5月3日までに承認される見込み。今秋は高齢者はインフルエンザ・ワクチン、COVID-19ワクチンと合わせて三本打つことになりそうだ。

リンク: EMAのプレスリリース

ブリストル マイヤーズ スクイブのCamzyos(mavacamten)は成人の症候性閉塞性肥大性心筋症の治療薬。臨床試験の一つではNYHAステージの改善且つ又心肺運動負荷試験におけるpVO2(最大酸素摂取量)の改善が見られ、別の試験ではSRT(中隔縮小治療)をしなくてすむ患者が増加した。

心臓ミオシン選択的可逆的アロステリック・インヒビターで、米国では昨年、前者の効能で承認され、後者の効能は審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

ロシュのColumvi(glofitamab)はB細胞のCD20とT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。成人の再発難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療以降に用いる。第2相試験で108人中35%が完全反応した(NEJM論文では155人中39%)。サイトカイン放出症候群を抑制するために抗CD20抗体obinutuzumab(Gazyva)でプリトリートしてから投与する。上記試験で64%の患者で発現したが60%はG1/2だった。米国でも承認審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

イーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib)は可逆的BTK阻害剤。他のBTK阻害剤による治療歴を持つ成人の難治再発マントル細胞腫に用いる条件付き承認が支持された。第1/2相試験で120人中60人が反応し、メジアン持続期間は8.3ヶ月だった。米国で1月に加速承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

大鵬薬品のLytgobi(futibatinib)は汎FGFR阻害剤。FGFR2融合/再編成のある局所進行/転移胆管癌の二次治療に単剤投与する条件付き承認が支持された。臨床試験で客観的反応率が42%、メジアン反応持続期間は9.7ヶ月だった。米国は昨年9月に加速承認、日本でも申請中。類薬はIncyteのPemazyre(pemigatinib)が米欧日で、BridgeBioのTruseltiq(infigrtnib)が米国で、承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース

アミカス・セラピューティクスのOpfolda(miglustat)は、3月に肯定的意見を得た同社のポンペ病酵素補充療法、Pombiliti(cipaglucosidase alfa)と併用する。後者に結合し安定化することによって活性や持続性を増強する。活性成分はアクテリオンがガウシェ病3型やニーマンピック病C型の治療薬Zavescaとして商品化しているが、Opfoldaは100mgではなく65mgのハードカプセルで、投与頻度は100~200mg一日二回ではなく195~260mgをPombilitiと同じ二週毎に投与する。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では以下などが肯定的意見を得た。

UCBのBimzelx(bimekizumab):成人の従来治療に応答不十分または不耐の活性期強直性脊椎炎と成人のCRP検査やMRIで炎症の兆候が見られNSAIDsに応答不十分または不耐の活性期nr-axSpA(X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)。

ノバルティスのCosentyx(secukinumab):成人の従来治療に応答不十分な活性期中重度化膿性汗腺炎。

武田薬品のRevestive(teduglutide):適応年齢の下限を生後1歳から修正妊娠年齢4ヶ月に変更(低出生体重児における適応下限が元々の予定日の4ヶ月後であることが明確になる)。


レーバー遺伝性視神経症用薬の欧州承認申請を撤回
(2023年4月20日発表)

フランスのGenSight Biologics(Euronext:SIGHT)はLumevoq(lenadogene nolparvovec)を15歳以上のND4遺伝子変異を持つレーバー遺伝性視神経症(LHON)の視力治療薬としてEUで承認申請していたが、撤回した。ND4のcDNAをアデノ随伴ウイルス2型ベクターで硝子体に届ける遺伝子療法薬だが、便益の裏付けが不十分であることなどから、CAT(EMAの先端医療委員会)が承認に前向きでなかった。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: EMAのプレスリリース

【承認】


20価プレベナーが幼小児にも承認
(2023年4月27日発表)

ファイザーは、FDAがPrevnar 20を幼小児の侵襲性肺炎球菌疾患と肺炎球菌性中耳炎の予防に用いることを承認したと発表した。生後6週から17歳までが対象で、臨床試験では、Prevnar 13などと同様に、生後2、4、6ヶ月時点と、12~15ヶ月の間に、合わせて4回筋注した。

Prevnar 13がカバーする13株に加えて8、10A、11A、12F、15BC、22F、33Fの7株を追加したもので、この7株は5歳以下の小児における肺炎球菌疾患の37%を占めるとのことだ。尚、中耳炎予防に関してはカバレッジは7株でPrevnar 13と同じ。

Prevnar 20は21年に米国で、翌年にはEUでも、成人用肺炎球菌ワクチンとして承認された。競合する新ワクチンがMSDの15価ワクチンVaxneuvanceで、成人向けは21年に、幼小児向けは22年に、欧米で承認された。胸膜ポリサッカライドワクチンPneumovaxの23価には未だ追いついていないが、MSDなどが21価ワクチンなどを第3相に進めている。

リンク: ファイザーのプレスリリース


2ヶ月持続するエビリファイが承認
(2023年4月27日発表)

大塚製薬とルンドベックは、FDAがAbilify Asimtufii(aripiprazole)を成人の統合失調症や双極障害I型の維持療法として承認したと発表した。2ヶ月に一回、臀部に筋注する。

Abilifyは月一回筋注用のAbilify Maintenaがラインアップされているが、Asimtufiiの960mgはMaintenaの400mg月一回投与と薬物動態が類似していた。

Maintenaと異なり三角筋注射は不可。添加物はマンニトールに代えてポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、そしてポビドンが加わっている。

薬を嫌がる患者や受診に来ない患者もいるので長期持効性製剤は重要だ。aripiprazoleではAlkermes(Nasdaq:ALKS)のAristada(aripiprazole lauroxil)が15年に毎月/二ヶ月毎筋注で承認されている。非定型向精神薬ではジョンソン・エンド・ジョンソンのInvega Hafyeraが半年に一回の投与で足りる。

リンク: 両社のプレスリリース

経口マイクロバイオーム療法薬が承認
(2023年4月26日発表)

FDAはSeres Therapeutics(Nasdaq:MCRB)のVowst(fecal microbiota spores, live-brpk)を難治クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)感染症の成人の再発予防薬として承認した。ネスレの医療関連製品子会社と共同販売する。

CDは他の細菌が抗生剤治療などにより衰退すると代わりに勢力を伸ばす。マイクロバイオーム療法は再発を繰り返すCD感染症患者の腸に健常者の糞便に含まれる非病原性細菌を移植してCDを牽制させるもの。Vowstはファーミキューテス門腸内細菌芽胞を精製、エタノール処理したもので、抗生剤による治療を完了した患者に、カプセル4個を一日一回、3日連続投与する。臨床試験では、過去12ヶ月間に3回以上の発症歴を持つ患者320人を組入れて投与後8週間観察したところ、再発率が12%と偽薬群の40%を有意に下回った。24週追跡でも21.3%台47.3%で有意差を維持した。

有害事象は腹部膨張や便秘、悪寒、下痢など。感染性病原体や食物アレルゲンの検査を行っているがリスクがないとは断定できない由。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 両社のプレスリリース


SOD1型ALS用薬が承認
(2023年4月25日発表)

FDAはバイオジェンのQalsody(tofersen)をSOD1(スーパーオキシドディスムターゼ1)変異型筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬として加速承認した。ALS機能評価尺度(改訂版)の悪化を遅らせる効果を検討した臨床試験はフェールしたが、サロゲート・マーカーである血漿ニューロフィラメント軽鎖が55%減と偽薬群の12%増を大きく下回ったことから、臨床的便益を合理的に推測できると判断した。偽薬群の患者は28週間の試験終了後に試験薬にスイッチしたが、累計52週間後の群間差が3.5点と28週時点の1.16点から拡大したことも評価されたのかもしれない(ベースライン値は36)。

フェーズIVコミットメントとして、発症前のSOD1変異型ALSを組み入れるATLAS試験で便益を確認する。

ALSの殆どは孤発型だが一部は家族性でその更に一部は活性酸素分解酵素SOD1の遺伝子に機能獲得変異などが見られる。QalsodyはSOD1の発現を妨げるアンチセンス・オリゴヌクレオチド。Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした。ALS用薬では昨年9月に米国でAmylyx(Nasdaq:AMLX)の神経変性経路阻害剤合剤、Relyvrio(sodium phenylbutyrate、taurursodiol)も特定のタイプに限定なしで承認された。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: バイオジェンのプレスリリース


【主なFDA審査期限、諮問委員会(23年4~5月)】


    PDUFA:
  • 23年5月推 ファイザーのPF-06651600(ritlecitinib、12歳以上の円形脱毛症)
  • 23年5月 ファイザーのPF-06928316(60歳以上のRSVワクチン)
  • 23年5月 Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、心不全)
  • 23/5/1 Gamida CellのNiCord(omidubicel、血液癌他家造血幹細胞移植における好中球生着促進)
  • 23/5/3 GSKのGSK3844766A(60歳以上のRSVワクチン)
  • 23/5/10 大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、アルツハイマー型認知症のアジテーションに適応拡大)
  • 23/5/12 ByondisのSYD985(vic-trastuzumab duocarmazine、her2陽性乳癌)
  • 23/5/19 Krystal BiotechのVyjuvek(beremagene geperpavec、栄養障害型表皮水疱症)
  • 23/5/21 アッヴィのepcoritamab(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫3次治療)
  • 23/5/22 アステラス製薬のESN364(fezolinetant、閉経期血管運動神経症状)
  • 23/5/22 Blueprint MedicinesのAyvakit(avapritinib、緩徐全身性肥大細胞腫に適応拡大)
  • 23/5/23 ImmunityBioのAnktiva(BCG不応ハイグレード筋層非浸潤性膀胱癌)
  • 23/5/29 Sarepta TherapeuticsのSRP-9001(delandistrogene moxeparvovec、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)

諮問委員会:
  • 23/5/9-10 NPDAC・ORUDAC共同会議:Perrigoの避妊薬Opill(norgestrel)のOTCスイッチ
  • 23/5/11 PADAC:ARS Pharmaceuticalsのエピネフィリン点鼻スプレイ(アナフィラキシー治療薬)
  • 23/5/12 CTGTAC:Sarepta TherapeuticsのSRP-9001(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)
  • 23/5/18 VRBPAC:ファイザーのAbrysvo(妊婦接種による新生児RSV予防用ワクチン)
  • 23/5/19 GIDAC:Intercept Pharmaceuticalsのobeticholic acid(NASH)



今週は以上です。

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