【ニュース・ヘッドライン】
- カービクティの学会抄録が誤って公開?
- 百済神州、抗PD-1抗体の胃癌一次治療試験が成功
- AACR:早期肝癌を切除した後はテセントリク・アバスチン療法が有効
- AACR:キイトルーダも胆道癌試験が成功
- AACR:イミフィンジもNSCLCの術前術後療法に有益
- GSK、単純性尿路感染症の画期的新薬を承認申請へ
- ロンサーフのベバシズマブ併用を米国で一変申請
- アベクマを3次治療に適応拡大申請
- ヴァンフリタの一次治療承認が米国で遅延
- FDA諮問委員会、多剤耐性アシネトバクタ―感染症用薬の承認を支持
- ポライビーが米国でもやっと一次治療に承認
- イスラエル発の臍帯血細胞療法が承認
- アッヴィ、経口CGRP受容体拮抗剤が慢性片頭痛に適応拡大
- 前立腺癌用ニラパリブ配合剤がEUで世界初承認
【今週の話題】
カービクティの学会抄録が誤って公開?
(2023年4月19日報道)
中国系バイオ企業Legend Biotech(Nasdaq:LEGN)と共同開発販売パートナーのジョンソン・エンド・ジョンソンは1月にBCMA標的CAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)、Carvykti(ciltacabtagene autoleucel)の第3相CARTITUDE-4試験が中間解析で主目的を達成したことを明らかにしたが、学会発表の抄録が誤って公開された模様だ。各種報道によると、5月にASCO(米国臨床腫瘍学会)とEHA(欧州血液学会)で結果発表される予定だが、後者の抄録を読んだ複数の証券アナリストが投資家向けレポートで報告・評価した。
Carvyktiは成人の難治再発多発骨髄腫の、米国では5次治療薬、欧日では4次治療薬として承認されている。代表的な治療薬である免疫調停剤(lenalidomideなど)、プロテアソーム阻害剤(bortezomibなど)、抗CD38モノクローナル抗体(daratumumab)すべてによる治療を受けた患者が適応になる。CARTITUDE-4はlenalidomideによる治療に応答しなかった成人の2~4次治療試験で、PFS(無進行生存期間)をPVdレジメンまたはDPdレジメンを施行する群と比較した。報道によると、ハザードレシオは0.26と大変良いものだった。完全反応率は各群73%と22%、微小残存病変も消失は61%と16%だった。
米国が5次治療しか承認しなかったのは第3相試験における4次治療患者の組入れ数が多くなかったことが原因のようだ。今回は2次治療の症例数が十分以上である模様。アナリスト達は1次治療への将来展望にも期待しているようだ。
【新薬開発】
百済神州、抗PD-1抗体の胃癌一次治療試験が成功
(2023年4月20日発表)
中国のBeiGene(Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)は、抗PD-1抗体BGB-A317(tislelizumab)のグローバル第3相胃癌一次治療試験、RATIONAL 302がPD-L1陽性以外も含むintent-to-treatベースでもポジティブな結果になったと発表した。昨年、PD-L1陽性(VENTANA SP263 アッセイでPD-L1≧5%)サブグループの中間解析が成功し中国で適応拡大が認められたが、今回の成功で先行するBMSのOpdivo(nivolumab)と肩を並べることになる。但し、データは未発表なのでどの程度の意義があるのかは明らかではない。
tislelizumは中国での開発が先行し、19年以降、10の適応症が認められた。中国外の権利はセルジーンがライセンスしたが、BMSに買収されたため返還され、新たに、ノバルティスがライセンスした。食道扁平上皮腫用薬として欧米で承認審査中だが、米国は中国工場の査察がCOVID-19対応の渡航規制で不可能だったことなどから、審査が長引いている。やっと第2四半期に実施される予定になったが、治験実施施設の査察はまだ確定していない模様だ。尚、上海君実(Junshi Biosciences、HKSE:1877)の抗PD-1抗体toripalimabも中国渡航制限により上咽頭癌におけるFDA審査が長引いているが、第2四半期に予定が決まったようだ。
今回の試験は中国、日本、韓国、欧米ロシアなどの施設で局所進行性切除不能/転移性の胃/胃食道接合部腺腫の一次治療を受ける患者997人を組入れて、fluoropyrimidine系と白金系の併用レジメンに追加する効果を偽薬追加と比較した。主評価項目であるPD-L1≧5%のサブグループ546人の全生存期間は中間解析でハザードレシオ0.74、メジアン17.2ヶ月対12.6ヶ月となり、目的達成。シーケンシャルな(先行解析が成功した時だけ意味を持つ)主評価項目である全患者の解析も今回成功した。
BMSのOpdivoの試験はPD-L1判定手法がやや異なるが、CPS≧5のサブグループにおける全生存期間のハザードレシオは0.71で有意、全体の解析も0.80で有意だったが、CPS<5のサブグループは0.94、メジアン値は12.4ヶ月で偽薬追加群の12.3ヶ月と大差なかった。米国ではPD-L1不問で承認されているがEUではCPS≧5に限定された。
Keytruda(pembrolizumab)は同じ用途で米国で加速承認されているがORR(客観的反応率)に基づくもの。承認後薬効確認試験はフェールしたが、KeyNote-859試験が中間解析で成功した。全生存期間のハザードレシオは0.78で有意な差があったが、PD-L1陰性サブグループは0.92に留まった。先行二剤がこうなのだから、tislelizumabも、全体の解析が成功したという情報だけでは不十分だ。
リンク: BeiGeneのプレスリリース
AACR:早期肝癌を切除した後はテセントリク・アバスチン療法が有効
(2023年4月16日発表)
ロシュは1月に早期肝細胞腫の治癒的切除術/焼灼術を受けた患者を組入れた第3相IMbrave050試験の成功を明らかにしたが、データをAACR(米国癌研究学会)とプレスリリースで公表した。Tecentriq(atezolizumab)とAvastin(bavacizumab)の併用により再発を抑制することができた。同社は適応拡大申請する予定だが、全生存期間の解析が成熟して好ましい方向に向くまで承認されないのではないか。
この試験は再発リスクの高い患者668人を併用群(Tecentriqは1200mg、Avastinは15mg/kgを3週毎に最大12ヶ月間投与)と積極的観察群に無作為化割付けした非盲検試験。主評価項目はRFS(無再発生存期間、第3者独立評価)。ハザードレシオ0.72、p=0.012と良好な結果が出た。
全生存期間はハザードレシオ1.42と好ましくないが、死亡者が47人とまだ少ないため、信頼性は高くない。報道によると、併用群が27人、観察群は20人で、癌の進行によるものは17人対16人で大差なく、治療時発現有害事象によるものが6人対1人と上回った。
この併用法は切除不能肝細胞腫の一次治療に米日欧で承認されている。
リンク: ロシュのプレスリリース
AACR:キイトルーダも胆道癌試験が成功
(2023年4月16日発表)
MSDは1月にKeytruda(pembrolizumab)の第3相胆道癌化学療法併用試験がポジティブな結果になったことを明らかにしたが、データをAACRとLancet誌で公表した。アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)に続いて適応拡大が認められるのではないか。但し、どちらも限界効用はそれほど大きくなさそうだ。
このKeyNote-966試験は進行/切除不能胆道癌の一次治療を受ける患者1069人を組み入れて、gemcitabineとcisplatinの標準療法に200mg3週毎投与を追加する便益を検討した。メジアン生存期間は試験薬群が12.7ヶ月、偽薬追加群が10.9ヶ月でハザードレシオは0.83、p=0.0034となり、成功した。2年生存率は各群24.9%と18.1%だった。G3/4治療関連有害事象の発生率は70%と69%。治療関連有害事象による死亡率は1.5%と0.56%だった。
ImfinziのTopaz-1試験ではメジアン生存期間が各12.8ヶ月と11.5ヶ月、ハザードレシオ0.80、2年生存率は25%と10%で、概ね似たような結果になっている。
リンク: MSDのプレスリリース
AACR:イミフィンジもNSCLCの術前術後療法に有益
(2023年4月16日発表)
アストラゼネカはAACRでImfinzi(durvalumab)の非小細胞性肺癌術前術後アジュバント療法試験のEFS(無イベント生存期間)中間解析結果を発表した。MSDに続いて適応拡大申請するのではないか。
この第3相AEGEAN試験はステージIIAからIIIBまでの切除可能非小細胞性肺癌を対象に、化学療法による術前ネオアジュバント療法にTecentriq(3週毎)を追加し、術後にもアジュバント療法を4週毎に最長12ヶ月間施行する効果を偽薬追加と比較した。ネオアジュバントにおける主評価項目であるpCR(病理学的完全反応率)は試験薬群17.2%、偽薬群4.3%と有意な差があり、肝心のEFSもハザードレシオ0.68、p=0.004、メジアンは未達と25.9ヶ月となり、成功した。
MSDのKeytuda(pembrolizumab)は類似したデザインのKeyNote-671試験が成功、米国で適応拡大申請し、審査期限は10月16日。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
GSK、単純性尿路感染症の画期的新薬を承認申請へ
(2023年4月15日発表)
GSKはECCMID(欧州臨床微生物感染症学会)でGSK2140944(gepotidacin)の第3相単純性尿路感染症試験二本の結果を公表した。どちらも非劣性解析が成功し、一本は優越性解析も成功した。第3四半期に承認申請する予定。
試験薬群は750mg錠二錠を一日二回、実薬対照群はnitrofurantoinを100mgずつ一日二回、どちらも5日間服用した。主評価項目は第10~13日における臨床的・細菌学的複合奏効率。一本は各群50.6%と47.0%、もう一本は58.5%対43.6%となり、後者は有意に上回った。
細菌の複製に係わる二種類のトポイソメラーゼを阻害する、ファースト・イン・クラスの抗生剤で、フルオロキノロン耐性菌などにも活性が見られる。抗生剤は新薬を開発してもやがて耐性菌が生まれてキリがないため殆どの大手製薬会社が関心を失ったが、GSKは例外で、米国政府の支援を受けながら開発を進めている。単純性淋病でも第3相中。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
ロンサーフのベバシズマブ併用を米国で一変申請
(2023年4月19日発表)
大塚ホールディング・グループの大鵬薬品はLonsurf(trifluridine、tipiracil)と抗VEGF抗体bevacizumabを転移結腸直腸癌のサルベージ療法として併用する用法追加をFDAに申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は8月13日。
欧州などでの権利を持つセルビエと共に実施した第3相SUNLIGHT試験で、Lonsurfは28日サイクルで最初の2週間に一日二回、5日連続服用し2日休むスケジュールで投与し、bevacizumabは2週毎投与したところ、メジアン生存期間が10.8ヶ月となり、この適応で承認されているLonsurfだけを投与した対照群の7.5ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.61、統計的に有意だった。有害事象発生率は大きくは変わらなかった。
リンク: 大鵬のプレスリリース
アベクマを3次治療に適応拡大申請
(2023年4月17日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブと2seventy bio(Nasdaq:TSVT)は、日米欧でAbecma(idecabtagene vicleucel)を難治多発骨髄腫の3次治療に適応追加申請した。米国の審査期限は12月26日。KarMMa-3実薬対照試験に基づくもの。多発骨髄腫は過去四半世紀に続々と新薬が登場し、一次、二次治療で多剤併用することも可能になった。今回の申請が承認されれば、Abecmaの出番も早まることになる。
骨髄腫で高発現するBCMAを標的とする抗体の可変領域をCD8やCD3、4-1BBなどと結合したキメラ抗原受容体-T細胞(CAR-T)。ニューロンのシグナル伝達速度(時速270マイル)を上回るスピードで革新的な治療アイディアを実行に移すことを狙う、2seventy bioが創製し米欧日で代表的な薬を使い終えた難治性・再発性多発骨髄腫向けに承認されている。適応範囲は若干異なっており、米国は抗CD38抗体を含む代表的な4種類の薬全てによる4次以上の治療歴を持つ患者、EUは代表的な3種類全てによる3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の患者となっている。
KarMMa-3試験の対象は、代表的な3種類の薬全てによる2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の多発骨髄腫。PFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)を代表的な5種類の併用レジメンの何れかを使う群と比較した。ハザードレシオは0.49、メジアン値は13.3ヶ月と4.4ヶ月だった。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
ヴァンフリタの一次治療承認が米国で遅延
(2023年4月21日発表)
第一三共はFTL3チロシンキナーゼ阻害剤quizartinibをFLT3-ITD変異のある急性骨髄性白血病(AML)用薬として開発、19年に日本で救援用法薬ヴァンフリタとして承認を取得したが、欧米では認められなかった。メジアン生存期間が1.5ヶ月延長するだけで効果が限定的であり、臨床試験の解析方法や実施内容が万全ではなく、副作用を正当化できるほどではないことなどがネックとなった。その後、FLT3-ITD変異陽性AMLの一次治療化学療法併用試験が成功し、日米欧で申請したが、米国は審査期限が4月24日から7月24日に延期された。REMS(副作用リスクを緩和するための施策)の見直しに伴うもののようだ。有効性や安全性に関する追加データは提出していないとのことなので、新期限前に承認される可能性もあるのではないか。
承認申請は第3相QuANTUM-First試験に基づくもの。標準的な寛解導入療法と奏効時の地固め療法に追加するとともに、その後の維持療法としても単剤投与する便益を検討したところ、メジアン生存期間が31.9ヶ月と偽薬追加群の15.1ヶ月より大きく伸び、ハザードレシオ0.776、p=0.0324だった。但し、カプラン・マイヤー・カーブを見ると、最初の半年程度は試験薬群のほうが死亡者が多い。致死的治療時発現有害事象が11.3%と対照群の9.7%を上回っており、感染症などのリスクが影を落としているのではないかと思われる。
副次的評価項目を見ると完全寛解率は55%程度で両群大差なく、無イベント生存期間は0.03ヶ月と0.71ヶ月でほとんど意味がない。最初から併用するのではなく、地固め、あるいは維持療法に限定することで便益危険バランスを改善できたらいいのになと感じられる。先に承認されたノバルティスのRydapt(midostaurin)も全生存期間は延びるが完全寛解率は54%が59%に上がる程度で有意差は出ていない。
リンク: 同社のプレスリリース(和文、pdfファイル)
FDA諮問委員会、多剤耐性アシネトバクタ―感染症用薬の承認を支持
(2023年4月17日発表)
FDA抗微生物薬諮問委員会は、Entasis Therapeuticsがアシネトバクター・バウマンニ-カルコアセティカス(ABC)複合体による院内感染細菌性肺炎/人工呼吸器関連細菌性肺炎のサルベージ治療薬として承認申請したETX2514SULを検討し、12人の委員全員が便益が危険を上回ると判定した。審査期限は5月29日。
ABC複合体感染症は危機的状態にある患者が感染すると重体化しやすい日和見感染症の一つで、多剤耐性菌が増加してきている。ETX2514SULは新開発のクラスA、C、Dベータラクタマーゼ阻害剤sulbactamとベータラクタムsulvactamの固定用量合剤。6時間おきに3時間点滴静注する。第3相ATTACK試験でimipenemとcilastatinのレジメンに併用したところ、カルバペネム抵抗ABC複合体感染が確認された約60人における28日全死亡率が19.0%となり、左記二剤とcolistinを併用した群の32.3%と非劣性だった(差の95%信頼区間は-30.0、3.5)。副次的評価項目の臨床的治癒率は68.3%対41.9%だった(差の95%信頼区間は7.9、44.7)。
腎毒性発現率は13.2%対37.6%で有意に低かった。薬物関連有害事象発生率は12.1%対30.2%。薬物関連深刻有害事象はアナフィラキシーが1例発生した。
ATTACK試験ではcolistin抵抗性患者は無作為化割付けせずパートBとして試験薬レジメンを投与したが、28人における28日全死亡率は17.9%とパートAの試験薬群と似たような結果だった。
Entasisは15年にアストラゼネカが抗生剤開発事業をスピンアウトして設立した。22年にInoviva(Nasdaq:INVA、旧称Theravance)が完全子会社化した。ETX2514SULの日本を含むアジア太平洋地域の開発販売権は中国のZai Lab(Nasdaq:ZLAB)が保有している。
リンク: Inovivaのプレスリリース
【承認】
ポライビーが米国でもやっと一次治療に承認
(2023年4月19日発表)
FDAはPolivy(polatuzumab vedotin-piiq)を未治療のDLBCL NOS(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非特異型)またはHGBL(高悪性度B細胞リンパ腫)に用いる適応拡大を承認した。IPI(国際予後指標)が2以上の高リスク患者に、R-CHP(rituximab、cyclophosphamide、doxorubicin、prednisone)レジメンと併用する。EUでは昨年5月に、日本でも8月に適応拡大が認められたが、FDAは実薬対照試験において延命効果が見られなかったことなどに疑問を感じた模様で、申請も承認も遅れた。
Seagenの技術を利用して開発したCD79bを標的とする抗体薬物複合体。19年に造血幹細胞移植不適の難治再発DLBCLの3次治療としてbendamustineおよびrituximabと併用することが米国で加速承認されたが、今回、本承認に切り替えられた。
一次治療における効用を検討したPOLARIX試験では、代表的な併用法であるR-CHOPのうちvincristineを省きPolivyを加えたレジメンのPFSをR-CHOP群と比較した。結果はハザードレシオ0.73と良好で、G3/4有害事象発現率は57.7%対57.5%、致死的有害事象発現率は3.0%対2.3%と大差なかった。
だが、副次的評価項目の全生存期間は最終解析でもハザードレシオ0.94で有意差がなく、2年生存率は両群とも88.7%だった。DLBCLは様々なタイプの寄せ集めだが、大半を占めるNOS(『その他』)型ではPFSのハザードレシオは0.75と良好も全生存期間は1.02で大差なかった。
FDAは3月に諮問委員会を招集し意見を聞いたところ、13人の委員中11人と多数がFDAの肩を押した。審査期限になっても承認発表されなかったので危惧していたが、まあ順当な結果になった。
NCCNのガイドラインは既にステージIIの一部とIII、IVのDLBCL NOSの一次治療としてPolivy-R-CHPレジメンとR-CHOPの両方をpreferred regimensに採用している。
リンク: ロシュのプレスリリース
イスラエル発の臍帯血細胞療法が承認
(2023年4月17日発表)
Gamida Cell(Nasdaq:GMDA)はOmisirge(omidubicel-onlv)がFDAに承認されたと発表した。12歳以上の血液癌の他家造血幹細胞移植に用いる臍帯血由来の細胞療法で、標準的な臍帯血と比べて好中球の生着が早く、感染症のリスクが小さい。同社は戦略的パートナーを探索中。
臍帯血は採取が比較的容易だが細胞数が少ないのが難点。同社はニコチンアミドを用いて造血幹細胞の培養を増強する技術を持っており、ボランティアの臍帯血をイスラエルの工場で30日かけて精製培養する。125人の患者を組み入れた第3相試験では好中球生着がメジアン12日と、標準的な臍帯血の22日より有意に早く、100日間の感染症合併率は各群39%と60%だった。
枠付き警告は点滴反応、移植片宿主病、生着症候群、生着不全。
リンク: 同社のプレスリリース
アッヴィ、経口CGRP受容体拮抗剤が慢性片頭痛に適応拡大
(2023年4月17日発表)
アッヴィはFDAがQulipta(atogepant)を慢性片頭痛の治療に適応拡大したと発表した。CGRP受容体拮抗剤の一つで経口錠であることが特徴。21年に米国で反復性片頭痛に承認され、欧州でも両適応症で申請中。
月15日以上の片頭痛が1年以上続く患者を組入れた第3相では、月間片頭痛日数がベースライン値の19日から6.9日減少した。偽薬群の減少は5.1日で、統計的に有意な差があった。片頭痛頻度が半減した患者の比率も41%対26%で有意差があった。尚、片頭痛を月4~14日経験する反復性患者の一日一回用量は10mg、30mg、60mgの中から選べるが慢性片頭痛は60mgのみ。
リンク: 同社のプレスリリース
前立腺癌用ニラパリブ配合剤がEUで世界初承認
(2023年4月21日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Pharmaceuticalは、Akeega(niraparib、abiraterone acetate)がEUで転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)用薬として承認されたと発表した。BRCAに生殖細胞性/体細胞性変異を持ち、化学療法が適応にならない成人患者に用いる。米国でも承認申請中。
エビデンスとなる臨床試験の主評価項目は相同組換え修復不全サブグループのPFS(無進行生存期間、盲検中央放射線学的評価)。ハザードレシオ0.73、p=0.022となったが、効果の中心はBRCA変異型で、延命効果のトレンドが見られたのもBRCA変異型だった。そのせいか、米国でもこのタイプだけに承認申請している。申請時期が今年2月と遅れたのは、FDAがPARP阻害剤のPFSデータに疑義を持っていて、検出力があろうがなかろうが全生存期間のデータが出るのを待ちたがるせいだろう。
リンク: JNJのプレスリリース
【主なFDA審査期限、諮問委員会(23年4-5月)】
PDUFA:
諮問委員会:
今週は以上です。
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