【ニュース・ヘッドライン】
- 危機的COVID-19の治療法を尋ねてみた!
- イミフィンジの卵巣癌試験が成功
- 速筋トロポニン活性化剤の第3相が中止に
- キイトルーダ・レンビマ併用試験が二本フェール
- ファイザーも希少型NSCLCに二剤併用を承認申請
- 遺伝子編集技術薬を承認申請
- 和黄医薬、VEGFR阻害剤を米国でも申請
- TransCon PTHの承認は遅延へ
- CHMP、オンボーなどの承認を支持
- 危機的COVID-19の救命薬がEUA
- パドセブ・キイトルーダ併用で尿路上皮腫に承認
- FDAが17-OHPCの承認を取消
- イムブルビカのMCLとMZL適応を自主返上へ
【今週の話題】
危機的COVID-19の治療法を尋ねてみた!
(2023年4月6日作成)
Gohibic(vilobelimab)のEUA(後述)を期に、他の治療法について尋ねたところ、以下の回答を得た。
コロナウイルス感染症に罹患した患者が危機的な状態に陥った場合、以下の治療が必要となります。
1. 酸素療法:重症化した患者は、肺炎によって酸素不足が起こります。そのため、酸素療法が必要となります。酸素マスクや酸素吸入器、人工呼吸器などが使用されます。
2. 抗炎症療法:COVID-19は炎症を引き起こすため、ステロイド薬や抗体製剤などの抗炎症療法が行われることがあります。ただし、患者の状態や治療のタイミングによっては、効果が限定的であることもあります。
3. 血液浄化療法:血液浄化療法は、血液中に含まれる炎症性物質を除去するために使用されます。ECMO(人工心肺装置)やCRRT(連続的腎代替療法)などの方法があります。
4. 抗ウイルス療法:抗ウイルス薬のうち、レムデシビルやマレンピラビルなどが使用されることがあります。
5. 血漿療法:COVID-19から回復した人が持つ抗体を含む血漿を投与することで、患者の治療に効果があるとされています。
6. 免疫グロブリン療法:免疫グロブリンを使用して、患者の免疫力を高めることができます。
COVID-19による危機的な状態に陥った患者には、上記の治療法を組み合わせて行われることがあります。治療は、患者の状態や症状に合わせて個別に決定されます。早期の診断と治療が重要です。
そつない回答で、本稿よりよっぽど丁寧だ。今後はChatGPTに書かせようかとも思ったが、ニュース系は弱いようで、トランプ前大統領はまだ起訴されていない、将棋の最強プレイヤーは居将棋のランキング1位である羽生善治九段、藤井聡太七段が八冠になれるかどうかは断言できないと言っている。事前に学習すべき情報の量が限られる分野でAIが活躍するのは未だ先のようだ(有料版は最新の情報を収集できるのかもしれないが)。
リンク: ChatGPTを提供するOpenAIのホームページ
【新薬開発】
イミフィンジの卵巣癌試験が成功
(2023年4月5日発表)
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)とPARP阻害剤Lynparza(olaparib)の第3相卵巣癌一次治療試験、DUO-Oの中間解析で主評価項目の一つが良好な成績を上げたことを明らかにした。抗PD-1/PD-L1抗体の卵巣癌試験が成功するのは珍しい。延命効果などは未確認。データは今後、発表する予定。
この試験は日本を含む多くの国の医療施設で進行ハイ・グレード上皮性卵巣癌の一次治療を受ける患者1200人以上を組み入れた。tBRCA型(腫瘍細胞のBRCA遺伝子に悪性変異あり)ではない患者は標準療法群(白金薬ベース化学療法とbevacizumabによる導入療法とbevacizumabによるメンテ療法)、Imfinzi追加群(導入とメンテ合わせて最大24ヶ月間投与)、またはImfinzi・Lynparza追加群(Lynparzaはメンテのみ、最大24ヶ月間投与)に無作為化割付けし、tBRCA型は別の群に割り付けた。主評価項目は二剤追加群と標準療法群のPFS(無進行生存期間、治験医評価)で、全患者とHRD(相同組換え不全)型サブグループの二つの解析が予定されている。
今回の中間解析では、このうち、全患者のPFSに統計的にも臨床的にも意味のある差が見られたとのこと。Imfinziだけ追加した群も点推定値は上回った模様だ。HRDサブグループの解析は言及されていないが、サンプルサイズが小さくなるので未成熟なのかもしれない。
Imfinziは卵巣癌には承認されていないので新市場になりうる。Lynparzaは白金薬ベース化学療法に部分反応以上した患者のメンテ療法に承認されているが適応になるのはHRD型だけなので、本試験でもしHRD型以外にも便益が見られるならば、対象が倍増することになる。
リンク: 同社のプレスリリース
速筋トロポニン活性化剤の第3相が中止に
(2023年3月31日発表)
Cytokinetics(Nasdaq: CYTK)はCK-2127107(reldesemtiv)の第3相COURAGE-ALS試験を中止すると発表した。データ安全性監視委員会が200人の24週データの中間解析で無益性を認定した。昨年、心ミオシン活性化剤CK-1827452(omecamtiv mecarbil)の第3相もフェールしており、崖っぷちに追い込まれた。
この試験は筋力低下が発現してから2年以内の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を組入れて300mgを一日二回、経口投与する効果を検討した。150~450mgをテストした第2相では主評価項目のSVC肺活量も副次的評価項目のALSFRS-Rもフェールしたが、三用量のプール分析で効果の兆候が見られたため、21年8月に第3相入りしたもの。前後してアステラス製薬が共同開発から降りたこともあり、ハイリスク・プロジェクトと見なされていた。
リンク: 同社のプレスリリース
キイトルーダ・レンビマ併用試験が二本フェール
(2023年4月7日発表)
MSDとエーザイは抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)とVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib)を併用する第3相試験を数多く実施しており、内膜腫などは承認に結び付いたが、枝の高い所に生っている実の取りこぼしも少なくない。今回は、二本のフェールが公表された。
LEAP-003試験は切除不能/転移黒色腫の一次治療薬であるKeytrudaにLenvimaを追加する効果を検討した。共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)は以前実施した中間解析で有意に延びていたが、もう一つの全生存期間は今回の中間解析で便益が見られなかった。独立データ監視委員会の勧告に従い中止する。
LEAP-017試験はMMR(ミスマッチ修復不全)でもMSI-H(高マイクロサテライト不安定性)でもない切除不能/転移結腸直腸癌で5-FU、oxaliplatin、irinotecan、BRAF阻害剤などのレジメンに不応再発不耐の患者を組入れて、サルベージ薬としての延命効果をregorafenibまたはtrifluridine・tipiracil合剤を投与する群と比較したが、事前に設定された解析計画に基づく最終解析でハードルをクリアできなかった。全生存期間も副次的評価項目であるPFSやORR(客観的反応率)も上回る傾向は見られたようだ。
わざわざ事前に設定された解析計画と書いているところを見ると、別の解析方法や、中間解析と最終解析のアルファの配分次第では、結論が変わる可能性があったのかもしれない。何れにせよ有意性は高度ではないだろうから、承認申請するにしても他のエビデンスと合わせて総合的な分析を提示する必要があるだろう。
尚、MMRやMSI-Hは遺伝子複製過程で多くの過ちが生じているため変な蛋白ができやすく、免疫強化療法の標的になりうる。切除不能/転移結腸直腸癌の場合、Keytrudaが一次治療や二次治療以降に承認されている。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認申請】
ファイザーも希少型NSCLCに二剤併用を承認申請
(2023年4月4日発表)
ファイザーは、非小細胞性肺癌の2%程度で見られるBRAFにV600E変異を持つ癌にBRAF阻害剤Braftovi(encorafenib)とMEK阻害剤Mektovi(binimetinib)を併用する一変をFDAに申請し受理された。審査期限は今年第4四半期とのこと。ノバルティスのTafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)は17~18年に欧米日で適応拡大しているので6年遅れとなる。エビデンスは欧韓米の施設で98人を組入れた第2相試験におけるORR(客観的反応率)で、データは今後発表する。
両剤は19年にArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)を114億ドルで買収して入手したもので、18~19年に米欧日でV600EまたはV600K変異を持つ切除不能/転移黒色腫に併用することが承認された。Braftoviはcetuximabと併用でV600E変異のある転移結腸直腸癌に用いることも承認されている(日本はMektoviを含む三剤併用も承認)。
リンク: 同社のプレスリリース
遺伝子編集技術薬を承認申請
(2023年4月3日発表)
Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)と遺伝子編集技術のフロントランナーの一社であるCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)は、CTX001(exagamglogene autotemcel、略称exa-cel)の米国におけるローリング承認申請を完了した。適応は鎌状赤血球病と輸血依存ベータ・サラセミア。優先審査を要請しており、認められれば審査期限が申請の12ヶ月後から8ヶ月後に早まる。
患者のCD34陽性造血幹細胞や前駆細胞をex vivoでCRISPR/Cas9遺伝子編集し、胎児期にしか発現しない胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を促すことによって、成人ヘモグロビン(HbA)の欠乏を補うもの。臨床試験で血管閉塞性クリーゼや輸血頻度を抑制する効果を示した。
リンク: 両社のプレスリリース
和黄医薬、VEGFR阻害剤を米国でも申請
(2023年3月31日発表)
中国のHutchmed(和黄医薬、Nasdaq:HCM)は米国でElunate(fruquintinib)のローリング承認申請を完了した。汎VEGF受容体阻害剤で難治/転移結腸直腸癌に用いる。中国で5年前に承認、欧日でも年内に承認申請する考え。中国外の権利は武田薬品が保有している。
米欧日豪で実施した第3相試験でLonsurf(trifluridine、tipiracil)及びVEGF受容体阻害剤Stivarga(regorafenib)に不応/不耐で他の標準療法薬は全て使い果たした進行/難治/転移結腸直腸癌に投与したところ、メジアン生存期間が7.4ヶ月と偽薬群の4.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.66だった。G3以上の有害事象発現率は各群62.7%と50.4%で高血圧症や無気力、手足症候群などが増加した。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
TransCon PTHの承認は遅延へ
(2023年4月3日発表)
デンマークのアセンディス・ファーマ(Nasdaq:ASND)はTransCon PTH(palopegteriparatide)を副甲状腺ホルモン欠乏症用薬として昨年、欧米で承認申請し、米国の審査期限は今月30日となっているが、遅延の可能性がでてきた。申請内容に瑕疵があるため、審査手続きの最終段階であるパッケージ・インサートや承認後試験に関する協議に進めない旨、FDAから連絡が来たとのことだ。具体的な内容は不明。
TransCon PTHは体内で副甲状腺ホルモンに変わるプロドラッグをキャリアと結合して一日一回皮下注と投与頻度を減らした。第3相試験では79%の患者がカルシウムと活性化ビタミンDの服用を止めても血清カルシウム量が正常水準(8.3~10.6mg/dL)に維持することができた。偽薬群は5%のみだった。症状やQOLも改善が見られた。
リンク: 同社のプレスリリース
CHMP、オンボーなどの承認を支持
(2023年3月31日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
イーライリリーのOmvoh(mirikizumab)は抗IL-23p19サブユニット抗体。中重度活性期潰瘍性大腸炎で既存薬に不耐、不十分応答、または再燃した成人患者に用いる。3月に日本で承認された。米国でも審査中。
リンク: EMAのプレスリリース
Fennec Pharmaceuticals(Nasdaq:FENC)のPedmarqsi(sodium thiosulfate)は抗癌剤の聴覚毒性を緩和する薬。生後1ヶ月から18歳までの局所性または非転移性固形癌にcisplatinベースの化学療法を施行する時に用いる。臨床試験ではリスクが4~7割低下した。米国では昨年9月に承認。
リンク: EMAのプレスリリース
TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)のBriumvi(ublituximab)は抗CD20キメラ抗体。糖鎖のフコースを抑制しADCC(抗体依存性細胞傷害毒性)活性を強化した。抗CD20抗体の代表的な用途の一つである活動性再発寛解型多発硬化症に用いる。臨床試験では今やこの領域の咬ませ犬化したteriflunomide比で再発が半減した。米国では昨年12月に承認。オランダのPropharma Groupが承認申請者となっている。
リンク: EMAのプレスリリース
先週号で報じたように、スペインのHIPRA HUMAN HEALTHが申請したCOVID-19ワクチン、Bimervaxも支持された。蛋白抗原型ワクチンで、mRNAワクチン接種歴のある16歳以上の小児・成人の追加接種に用いる。
適応拡大では、まず、ブリストル マイヤーズ スクイブのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)。現在は再発難治性のDLBCL(びまん性巨細胞型B細胞リンパ腫)、PMBCL(原発性縦隔B細胞リンパ腫) 及びFL3B(濾胞性リンパ腫グレード3B)の成人の三次治療薬として承認されているが、難治または初回治療後12ヶ月以内に再発した成人の二次治療に用いることが支持された。上記3種類に加えてHGBCL(ハイ・グレードB細胞リンパ腫)も適応になる予定。
リンク: EMAのプレスリリース
アストラゼネカ傘下のAlexion PharmaceuticalsのUltomiris(ravulizumab)は抗アクアポリン4抗体陽性視神経脊髄炎の成人に用いることが支持された。日米でも申請中。臨床試験では48週間無再燃率が98%と偽薬群の63%を大きく上回った。現在は発作性夜間ヘモグロビン尿症、非典型溶血性尿毒症症候群、アセチルコリン受容体に対する抗体を持つ全身性筋無力症の治療に承認されている。
リンク: EMAのプレスリリース
一方、Covis PharmaがFeraheme(ferumoxytol)の承認申請を商業的な理由で撤回したことが明らかにされた。米国では14年前に承認された鉄欠乏性貧血治療薬で既にGE薬が発売されている。欧州で申請していたのは初耳。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
危機的COVID-19の救命薬がEUA
(2023年4月4日発表)
FDAはInflaRx(Nasdaq:IFRX)が開発したGohibic(vilobelimab)を危機的COVID-19用薬としてEUA(非常時使用認可)した。人工呼吸器やECMOを装着後48時間以内の成人患者に800mgを最大6回(第1、2、4、8、15、22日)点滴静注する。ICU退室後も入院中は治療を続ける。尚、EUAなのでFDAに承認されているわけではない。
C5a補体に結合するマウス抗体の可変領域とヒトの固定領域を結合したIgG4カッパ型キメラ抗体。欧州や中南米、ロシア、南アの施設で約370人を組入れた臨床試験で28日死亡率(カプラン・メイヤー推定)が31.7%と偽薬群の41.6%を下回り、ハザードレシオ0.67、p値は0.05を下回った。副次的評価項目の60日死亡率も各36.5%、47.2%、0.67、0.05未満だった。有害事象は肺炎や敗血症が増加した。
上記は介入方法と年齢を共変数とするCox比例ハザードモデルによる解析結果で、元々は主解析方法だったが、盲検解除の二週間前に、承認審査機関のアドバイスにより、治験実施施設で階層化した上で解析する方法に変更された。階層化から漏れる症例が発生したせいか、ハザードレシオは0.728と良い数値が出たがp=0.094でフェールしてしまった。標準療法に国毎の違いがあっても不思議がないので階層化したほうが良いだろうし、米国施設が参加していないのでEUAされるかどうか不透明な状態だった。
尚、危機的COVID-19にはdexamethasoneやActemra(tocilizumab)、Veklury(remdesivir)、Olumiant(baricitinib)も用いることができるが、当試験での使用率は各薬99%(他のステロイドも含む)、16%、5%、3%となっており、高価な薬と同時使用する時の上乗せ効果は明確ではない。また、Gohibicの一人当たり価格はVekluryの10倍以上に設定されるようだ。
欧州でも承認申請予定。同社はドイツ企業で欧州の施設も参加したことを考えれば、なぜ未だ申請されていないのだろうか。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 医療従事者向けファクト・シート(pdfファイル)
パドセブ・キイトルーダ併用で尿路上皮腫に承認
(2023年4月3日発表)
FDAはSeagen(Nasdaq: SGEN)がアステラス製薬と共同開発販売している抗ネクチン4抗体薬物複合体、Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)と、MSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を併用でcisplatin不適局所進行性/転移尿路上皮腫の一次治療に用いる適応拡大を加速承認した。Keytrudaは200mgを3週毎または400mgを6週毎に点滴静注する。Padcevは再発後に単剤投与する場合は1.25mg/kg(最大125mg)を週一回、三週連続投与して翌週は休む投与スケジュールだが、今回の用法はKeytrudaに合わせた3週サイクルで左記用量を二週オン、一周オフとなっている。
エビデンスは第2相試験のORR(客観的反応率)とその持続性。121人に投与したところORRは68%、完全反応率は12%だった。両社は市販後薬効確認試験をコミットしている。
リンク: FDAのプレスリリース
【承認返上/取消】
FDAが17-OHPCの承認を取消
(2023年4月6日発表)
FDAはRobert Califf長官とNamandjé Bumpusチーフ・サイエンティストの連名でCovis PharmaのMakena(hydroxyprogesterone caproate、通称17-OHPC)とジェネリック薬の承認取消決定を発表した。加速承認から12年、市販後薬効確認試験がフェールしてから4年経ち、やっと決着した。次の焦点は他の国の産婦人科医や学会の対応だ。
活性成分は1956年にスクイブが米国で販売承認を取得したが、その後、商業上の理由で販売を打ち切った。21世紀に入って、研究者主導試験で37週未満の早産を抑制する効果を示し、調剤薬局品が普及。安全性懸念のある薬剤が未承認のまま広く用いられるのは好ましくないためFDAが呼びかけたところ、KV Pharmaceuticalsが06年に承認申請し、市販後薬効確認試験(PROLONG試験)を開始した後の11年に加速承認された。適応・効能は37週より前の単体自然早産歴を持つ女性の早産予防。
ところが、19年にPROLONG試験がフェールしてしまった。サロゲート・マーカーである35週未満の早産も、臨床的に重要な評価項目である新生児の有病・死亡率も、偽薬群と大差なかった。FDA諮問委員会の意見は分かれたが、2020年、FDAがメーカー側に自主的な承認返上を推奨した。
この間、メーカーも変遷した。KVはMakenaを調剤薬局品の100倍の価格で発売するとともに、薬局調剤をスクイーズアウトしようとしたが、政治介入などにより果たせず、破産法適用申請に至った。Makena事業などはAMAG Pharmaceuticalsが継承したが、FDAが自主返上を促した翌月、ルクセンブルグ籍の未上場企業、Covis Pharmaに6.5億ドルで買収された。Covisは3年近く粘ったが今年3月に承認返上を決定した。
FDAが承認取消ではなく自発的承認返上を求めるのは、そのほうが簡便・迅速だからだ。承認を取り消すためには公聴会や諮問委員会を開催する必要がある。今回の場合、議題や委員に配布される資料、販売中止する場合の経過措置などについて事前の協議が進まず、開催まで2年かかった。製薬会社には社員や株主、医療従事者など様々なステークホルダーが存在し、顧客と呼べるかどうか曖昧な患者のためにベストな選択をするとは限らないだけに、今回の経験を生かすには法改正などが必要だろう。
知人の娘さんが治療を始めたと聞いた直後にフェールを知ったので個人的に強い関心を持っていたが、『米国では』、一応の決着を見た。
Makena問題の推移
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: FDAのMakena情報ページ
イムブルビカのMCLとMZL適応を自主返上へ
(2023年4月6日発表)
Btk阻害剤Imbruvica(ibrutinib)を共同開発販売しているPharmacyclics(アッヴィの子会社)とJanssen Biotech(ジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社)は、夫々、適応の一部を米国で返上する意向を明らかにした。
一つは13年に加速承認されたマントル細胞腫(MCL)の二次治療。もう一つは17年に加速承認された辺縁帯リンパ腫(MZL)の二次治療。どちらも市販後薬効確認試験が良好な結果にならず、FDAが本承認切替を認めなかった。
MCLは初めて治療を受ける65歳以上の患者に化学療法と併用したSHINE試験が成功し、PFS(無進行生存期間)が有意に増加した。しかし、副作用などによる死亡が増加したため、全生存期間は化学療法・偽薬併用群と大差なかった。両社はEUで二種変更申請したが、CHMPは便益が限定的で深刻な感染症のリスクも見られることから懐疑的で、申請撤回した。
MZLは難治再発濾胞性リンパ腫を組入れたSELENE化学療法併用試験でMZLサブグループも含めてPFS延長を達成できなかったとのこと。データは今後発表予定。
Imbruvicaは上記のほかに慢性リンパ性白血病/小リンパ球性白血病やワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、慢性移植片宿主病の二次治療に承認されている。
リンク: Janssen Pharmaceuticalのプレスリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース(開示内容が若干異なるのが興味深い)
【主なFDA審査期限、諮問委員会(23年4月)】
PDUFA:
諮問委員会:
今週は以上です。
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