【ニュース・ヘッドライン】
- her2陽性胆道癌のpivotal試験成功
- PDE3/4阻害剤の二本目のCOPD試験成功
- NASH治療薬を承認申請へ
- イミフィンジのNSCLC一次治療モノセラピー試験はフェール
- 武田、抗CMV薬の一次治療実薬対照試験はフェール
- 放射線療法誘導性口腔粘膜炎の予防薬を承認申請
- ファイザーもS1P受容体調節剤を承認申請
- パドセブとキイトルーダの併用を膀胱癌に承認申請
- ETA/B阻害剤を難治高血圧症に承認申請
- 和黄医薬、米国でVEGFR阻害剤を大腸癌にローリング承認申請着手
- PDE4阻害剤を幼小児尋常性乾癬に対象拡大申請
- 合成ヒペリシンをCTCLの光力学療法に承認申請
- ジェネンテックの抗CD20/CD3二重特異性抗体が米国でも承認
- カプシド阻害剤が米国でも承認
- アバロパラチドが高リスク骨粗鬆症の男に承認
- EBV性リンパ増殖性疾患の細胞療法がEUで承認
- レカネマブの治験で3人目の死亡例
【新薬開発】
her2陽性胆道癌のpivotal試験成功
(2022年12月21日発表)
アイルランド籍のJazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)と米国デラウェア州に籍を移したZymeworks(Nasdaq:ZYME)は、ZW25(zanidatamab)のHERIZON-BTC-01試験のトップラインを公表した。pivotal試験と呼んでいるので、米国などで承認申請に向かう考えなのだろう。
治療歴のあるher2陽性(IHC法で2+または3+)胆道癌を組み入れた単群試験で、ORR(客観的反応率、独立中央評価)が41.3%(95%信頼区間30.4~52.8)、メジアン反応持続期間は12.9ヶ月だった。
本剤はher2のエピトープのうち二ヶ所に結合する抗体。Jazzは10月に米欧日などの独占開発商業化権を取得したが、今回、権利継続を決めた。判り難いが、前回の一時金は5000万ドル、今回は3.25億ドルなので、10月の合意はオプション取得と同じような意味合いなのだろう。目標達成時報奨金は承認にかかわるものが最大5.25億ドル、売上関連は最大8.62億ドル、売上ロイヤルティは10~20%となっている。
her2陽性胃食道腺腫の一次治療でもpivotal試験中。her2標的薬は少なくとも進行/転移癌に関しては第一三共/アストラゼネカのEnhertu(trastuzumab deruxtecan)のような抗体薬物複合体が主役になるのではないかと思われるが、共通の癌で治験成績が明らかになれば、優劣が明確化するだろう。
リンク: 両社のプレスリリース
PDE3/4阻害剤の二本目のCOPD試験成功
(2022年12月20日発表)
英国のVerona(Nasdaq:VRNA)はRPL554(ensifentrine)の二本目の第3相中重度COPD維持療法試験が成功したと発表した。従来の計画通り、23年上期に米国で承認申請する考え。
英国のVernalisが開発したネブライザ吸入用PDE3/4阻害剤で、同社を18年に買収した米国のLigand Pharmaceuticals(Nasdaq:LGND)がVeronaに導出した。第3相は中重度症候性COPDでLAMA(長時間作用性ムスカリン受容体拮抗剤)またはLABA(同ベータ2刺激剤)を用いている患者などを組み入れて、3mgを一日二回、24週間に亘って追加吸入する効果を偽薬追加と比較した。主評価項目のFEV1(吸入後0~12時間のAUC(曲線化面積)、12週後)は、最初に結果が出たENHANCE-2試験では偽薬比94mL改善、今回のENHANCE-1試験では87mL改善した。副次的評価項目では、吸入後0~4時間におけるピークFEV1が偽薬比146mLと147mL改善。一番重要な中重度増悪頻度は偽薬比42%減(p=0.01)と36%減(p=0.0505)で、二本目はフェールしたが、リスク削減率はそれほど違わず、二本のプール分析では40%減、p=0.0012となっている。忍容性は大きな問題はなかったようだ。
COPDは増悪時に短時間作用性気管支拡張剤で治療するが、しばしば増悪する場合はLAMAまたはLABAで予防し、それでも増悪する場合は両剤併用またはICS(吸入コルチコステロイド)を追加する。本試験の被験者は6~8割が単剤治療を受けていたので、二の矢を目指していることになる。
リンク: Veronaのプレスリリース
NASH治療薬を承認申請へ
(2022年12月19日発表)
Madrigal Pharmaceuticals(Nasdaq:MDGL) は、MGL-3196(resmetirom)の第3相NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)試験で主目的を達成したと発表した。年初にNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)の第3相も成功しており、23年第1四半期に肝硬変を合併していないNASHの治療薬として承認申請する考え。8月に代償性NASH肝硬変の臨床的アウトカム試験も開始しており、加速承認後の本承認切替えと適応拡大を狙う。
resmetiromは08年にVIA Pharmaceuticalsがロシュからライセンスした権利・資産を11年に買収したもの。甲状腺ホルモン受容体のうち、肝臓における脂肪やコレステロールの新生や代謝を管理するベータ型を高度選択的に作動し、アルファ型作動に伴う心臓や骨に対する副作用を回避する。
今回のMAESTRO-NASH試験は966人の患者を偽薬、80mg、または100mgを一日一回経口投与する群に無作為化割付けして、ベースライン時点と52週後に生検を実施し、第3者がNASH症状や線維症の進展を評価した。主評価項目はFDAのガイダンス文書に即してNASH解消奏効率(風船様肝細胞腫大がなく、小葉炎症の評価値が0または1、NAFLD活動性スコアが2ポイント以上改善、かつ線維症は悪化せず)と線維症改善奏効率(1ステージ以上改善かつNAFLD活動性スコア悪化せず)。前者は各群10%、26%、30%、後者は14%、24%、26%となり、両用量とも偽薬比有意に上回った。副次的評価項目ではLDL-Cも偽薬群は1%上昇したが試験薬群は各12%と16%低下した。
有害事象は下痢や悪心の発生率が偽薬群より10~20パーセンテージポイント程度高かった。もっぱら軽度で、深刻有害事象の発生率は三群とも12%前後、有害事象治験離脱率は各群3.7%、2.8%、7.7%だった。
NASHの前段階であるNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)の試験は主評価項目は安全性だったが、副次的評価項目である肝臓脂肪(MRI評価)が偽薬群は52週間で8%増加したのに対して80mg群は43%減、100mg群は48%低下した。
リンク: 同社のプレスリリース
イミフィンジのNSCLC一次治療モノセラピー試験はフェール
(2022年12月19日発表)
アストラゼネカはImfinzi(durvalumab)の第3相PEARL試験がフェールしたと発表した。対象患者を広げすぎたのだろう。PD-L1陽性(25%以上の腫瘍で発現)の転移非小細胞性肺癌で初めて治療を受ける患者を中国などアジアの施設を中心に組み入れて、単剤投与と化学療法の全生存期間を比べたが、全ユニバースの解析も、共同主評価項目である、新開発のアルゴリズムで早期死亡リスクが低いと判定したサブグループの解析も、フェールした。
類薬ではMSDのKeytruda(pembrolizumab)による一次治療モノセラピーが承認されているが、対象となるのはPD-L1が50%以上の腫瘍で発現している癌。PEARL試験でも50%以上限定の副次的評価項目では臨床的に意味のある差が示されたとのことなので、結果論で言えば、戦場を広げすぎたのだろう。
抗PD-L1/PD-1抗体は化学療法や免疫療法薬との併用ならPD-L1陰性や低発現でも上乗せ効果がある。Imfinziの場合、10月に米国でEGFR/ALK変異のない転移非小細胞性肺癌に抗CTLA-4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)と併用することが承認された。但し、PD-L1≧50%の癌はKeytrudaモノセラピーで十分という意見もあるので、PEARL試験のフェールは痛いことは痛いだろう。
リンク: 同社のプレスリリース
武田、抗CMV薬の一次治療実薬対照試験はフェール
(2022年12月20日発表)
武田薬品はLivtencity(maribavir)の第3相AURORA試験がフェールしたと発表した。昨年11月に米国で承認された時のポスト・マーケティング・コミットメントだが、悪い内容ではなく、二次治療ではなく一次治療の試験なので、少なくとも承認取消しの可能性はなさそうだ。
オリジネーターはGSKで、03年にライセンスしたViroPharmaを13年にシャイアが買収、19年に武田に買収された。CMV(サイトメガロウイルス)のpUL97プロテイン・キナーゼを阻害する新規作用機序を持ち、既存のポリメラーゼ阻害剤に応答しないウイルスにも期待できる。CMV感染症は日和見感染だが臓器移植や造血幹細胞移植を受けた患者は免疫抑制療法を受けるのでCMVの発症や重症化リスクがある。ViroPharmaが実施した予防試験はフェールしたが、用量を4倍に増やした二次治療試験が成功、12歳以上で体重35kg以上の患者に用いることが承認された。
今回は、造血幹細胞移植を受けた患者の初回治療としての効果をvalgancicloverと比較した。第8週のCMV消失達成率は69.6%と77.4%で、群間差は-7.7%、95%下限は-14.98となり非劣性マージンとして設定された-7%を下回った。但し、第8週と16週の両方でCMV消失を達成した患者の比率は52.7%と48.5%で大差なかった。また、二次治療試験と同様に、好中球減少症の発生率は大きく下回った。
リンク: 同社のプレスリリース(和文)
放射線療法誘導性口腔粘膜炎の予防薬を承認申請
(2022年12月12日発表)
Galera Therapeutics(Nasdaq:GRTX)はGC4419(avasopasem manganese)を頭頚部癌の放射線治療を受ける患者の口腔内粘膜炎を抑制する薬として米国で承認申請した。cisplatinと強度変調放射線治療を受ける患者455人を組み入れた第3相ROMAN試験で重度口腔内粘膜炎(固形物や液状物を摂取できない)発生率が54%と偽薬群の64%を下回り、p=0.0451だった。発症日数で見てもp=0.0022だった。
SOD(スーパーオキシド・ジスムターゼ)類縁体で、スーパーオキシドが放射線に刺激されて粘膜炎を誘導しないように、分解してしまうアイディア。同社は昨年10月に上記試験がフェールしたと発表したが、治験管理受託会社の解析に誤りがあったことが判明、p値だけ0.113から0.0451に変更された。これでもボーダーライン上だが、後期第2相ではp=0.009だったので、再現性は見られたことになる(数値修正の経緯は気になるが)。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
ファイザーもS1P受容体調節剤を承認申請
(2022年12月21日発表)
ファイザーはetrasimodを中重度潰瘍性大腸炎の治療薬として欧米で承認申請し受理されたと発表した。3月に企業価値67億ドルで買収したArena Pharmaceuticalsの主要開発品で、S1P受容体調節剤。2mgを一日一回、経口投与する。第3相試験で第12週臨床的寛解率(修正Mayoスコア・ベース)が一本では24.8%(偽薬群は15.2%)、もう一本は27.0%(同7.4%)だった。
S1P受容体調節剤は既に様々な薬が様々な用途で用いられているが、特徴的な副作用がある。欧米で多発硬化症や中重度潰瘍性大腸炎に承認されたブリストル マイヤーズ・スクイブのZeposia(ozanimod)の場合、事前に全血球計算やECG、肝機能検査、そしてブドウ膜炎や黄斑浮腫歴のある患者は眼底検査も実施する必要があり、投与量は3段階漸増する。ファイザーはZeposiaのような複雑な用量漸増は必要でないと記しているので、どの程度シンプルなのか、注目される。
リンク: ファイザーのプレスリリース
パドセブとキイトルーダの併用を膀胱癌に承認申請
(2022年12月20日発表)
抗Nectin-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)を共同開発販売しているSeagen(Nasdaq:SGEN)とアステラス製薬、そして、抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を開発販売しているMSDは、両剤を併用でcisplatin系化学療法に適さない局所進行性/転移性尿路上皮腫の一次治療に用いる適応拡大を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年4月21日。
後期第1相/第2相のEV-103/KeyNote-869試験のコフォートKとコフォートAに基づくもので、前者ではcORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が64.5%(完全反応率は10.5%)だった。
Padcevは白金製剤及び抗PD-1/PD-L1抗体による治療歴を持つ局所進行性/転移性尿路上皮腫に用いることが米日欧で承認されている。抗PD-L1/PD-1抗体も有効と考えられてきたが、最近の治験成績は期待外れ。併用で捲土重来を図ることになる。
リンク: 三社のプレスリリース
ETA/B阻害剤を難治高血圧症に承認申請
(2022年12月20日発表)
スイスのイドルシアはaprocitentanを難治性高血圧症用薬として米国で承認申請した。Ca拮抗剤、ARB、HCT利尿剤の三剤合剤で治療してもSBP(収縮期血圧)が140 mmHg以上の患者を組み入れて偽薬/12.5mg/25mgのいずれかを4週間投与した第3相試験で、各群のSBPが11.5/15.3/15.2 mmHg低下し、両用量とも偽薬を有意に上回った。有害事象は浮腫/体液貯留が増加した。
肺動脈高血圧症治療薬Opsumitの活性成分であるmacitentanの代謝物で、エンドテリンのAとBを阻害する。イドルシアは17年にアクテリオンがジョンソン・エンド・ジョンソンに買収された時にスピンアウトした会社で、aprocitentanも、結局、JNJが独占開発販売オプションを行使、イドルシアは売上の20~35%をロイヤルティとして受領する。
リンク: イドルシアのプレスリリース
和黄医薬、米国でVEGFR阻害剤を大腸癌にローリング承認申請着手
(2022年12月19日発表)
Hutchmed(和黄医薬)は米国でfruquintinibを難治性転移結腸直腸癌のサルベージ療法としてローリング承認申請手続きを開始した。23年上期に完了する予定。米欧日豪で実施した第3相FRESCO-2試験をエビデンスとするもので、これらの地域でも承認申請する考えだ。
中国では18年に3次治療薬として承認されたVEGFR阻害剤。上記試験では代謝拮抗剤Lonsurf(trifluridine、tipiracil)やVEGFR阻害剤Stivarga(regorafenib)に不応不耐で他の標準療法はすべて実施済みの患者を組み入れて全生存期間を偽薬と比較したところ、ハザードレシオは0.66、メジアン生存期間は各7.4ヶ月と4.8ヶ月と、有意に上回った。有害事象は高血圧症や脱力、手足症候群など。
中国企業は政府が外国の監査法人による監査を受け入れていなかったため、2020年に米国でHolding Foreign Companies Accountable Actが成立、米国株式市場に上場できなくなる可能性が生じた。結局、中国側が譲歩し、無事監査が終わった模様。HutchmedやBeiGene、Zai Labなど約200社がリストアップされていたようだが、危機は去った。
リンク: 同社のプレスリリース
PDE4阻害剤を幼小児尋常性乾癬に対象拡大申請
(2022年12月19日発表)
Arcutis Biotherapeutics(Nasdaq:ARQT)はZoryve(roflumilast、0.3%クリーム製剤)を2~11歳の尋常性乾癬治療薬として米国で対象年齢拡大申請を行った。欧米でCOPD治療薬として承認されているPDE4阻害剤で、7月に12歳以上の尋常性乾癬に承認された。適応拡大に活発に取り組んでおり、第3相は6歳以上の軽中度アトピー性皮膚炎試験や、フォーム製剤を用いた9歳以上の中重度脂漏性皮膚炎試験と頭部体部乾癬試験が、すでに成功している。
リンク: 同社のプレスリリース
合成ヒペリシンをCTCLの光力学療法に承認申請
(2022年12月15日発表)
米国のSoligenix(Nasdaq:SNGX)はHyBryte(hypericin)を早期菌状息肉腫/皮膚T細胞リンパ腫の光力学療法用薬としてFDAに承認申請した。セント・ジョーンズ・ワートに含まれる、光増感作用を持つ色素を合成した軟膏で、皮膚病変に塗布すると腫瘍T細胞に集積する。24時間後に蛍光灯照射する。通常の光線なので紫外線より深部まで浸透し、二次的腫瘍の懸念も小さい可能性がある模様。
週2回、6週間治療して2週間休むサイクルで治療した第3相では、第1サイクル後の病変反応率(評価対象に設定された3病変のmodified Composite Assessment of Index Lesion Severityスコアが50%以上改善)が16%と偽薬群の4%を上回った(p=0.04)。偽薬対照期間終了後の第2サイクル後は40%、第3サイクル後は49%に上昇した。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
ジェネンテックの抗CD20/CD3二重特異性抗体が米国でも承認
(2022年12月22日発表)
FDAはジェネンテックのLunsumio(mosunetuzumab-axgb)を成人の難治再発濾胞性リンパ腫の3次治療薬として加速承認した。腫瘍化したB細胞のCD20と細胞傷害性T細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体で、第2相試験では90人中72人(80%)がORR(客観的反応率、独立評価)、メジアン反応持続期間は22.8ヶ月だった。54人(60%)は完全反応だった。サイトカイン放出症候群が枠付き警告されているが、G3の発生率は2%、G4は0.5%で、CAR-T療法よりかなり低い。EUでは6月にロシュが承認取得した。
ジェネンテックとロシュはCD20に結合する腕2本とCD3に結合する一本を持つ二重特異性抗体、glofitamabも開発していて、難治再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として4月にEUで承認申請した。第2相拡大試験で155人中51%がORR、39%は完全反応だった。
両社の抗CD20抗体Rituxan(rituximab)はIDECからライセンスしたもの。上記二剤も提携範囲に含まれていたのか、2003年にIDECと合併したバイオジェンが売上ロイヤルティなどを取得する。
リンク: FDAのプレスリリース
カプシド阻害剤が米国でも承認
(2022年12月22日発表)
FDAはギリアド・サイエンシズのSunlenca(lenacapavir)をHIV/AIDSのサルベージ・セラピーとして承認した。欧州では8月に承認されたが、目に見えないガラス・パーティクルが形成される懸念が生じバイアルをホウケイ酸塩ガラスからアルミノケイ酸塩ガラスに切り替えたことなどが影響したためか、米国では遅れていた。
ウイルスの複製に必要な、RNAを包むカプシドを阻害する新規作用機序を持つ。当初は錠剤と皮下注用製剤を併用するが、維持期は6ヶ月毎皮下注で足りる点も画期的。多剤抵抗性HIV-1感染症の成人を組み入れて、最適化バックグラウンド・セラピーに追加する効果を検討した臨床試験では、14日後のウイルス抑制奏効率が87.5%と偽薬群の16.7%を上回り、52週時点でも83%と高水準が維持された。
体内に少量が1年、あるいはそれ以上の期間、残存するため、耐性ウイルスの出現や薬物相互作用に注意する必要がある。
リンク: FDAのプレスリリース
アバロパラチドが高リスク骨粗鬆症の男に承認
(2022年12月20日発表)
Radius HealthはFDAがTymlos(abaloparatide)を骨折リスクが高い、または既存治療不応不耐の骨粗鬆症の男性に用いることを承認したと発表した。ヒト副甲状腺ホルモン関連ペプチドの類縁体で、日米欧で高リスク閉経後骨粗鬆症の治療薬として承認されている(日本では帝人のオスタバロ)。プレスリリースによると、股関節骨折症例の3割は男性。
80mcgを一日一回皮下注射する。前臨床で骨肉腫が見られたことなどから米国承認時は累積投与2年以内という制限や枠付き警告が付されたが、いつの間にか削除された。
リンク: 同社のプレスリリース
EBV性リンパ増殖性疾患の細胞療法がEUで承認
(2022年12月19日発表)
Atara Biotherapeutics(Nasdaq:ATRA)のEbvallo(tabelecleucel)が臓器/骨髄移植を受けた2歳以上の小児・成人の深刻なEBV(エプスタイン・バー・ウイルス)陽性リンパ増殖性疾患の二次治療薬としてEUで承認された。ボランティアから採取したT細胞をESVに曝露したB細胞と会合させた上で培養した細胞療法で、臨床試験ではrituximabなどの治療がフェールした38人中19人が反応し、うち11人は6ヶ月以上持続した。症例が少なく延命効果などは確立していないが、希少な難病であることなどから、EUの例外的環境条項に基づき承認された。
ピエール・ファーブルが欧州などの独占販売権を持っている。
リンク: 両社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
レカネマブの治験で3人目の死亡例
(2022年12月21日発表)
エーザイがスウェーデンのバイオアークティック・ニューロサイエンスからライセンスしバイオジェンと共同開発している抗アミロイド・ベータ抗体BAN2401(lecanemab)は、米国で早期アルツハイマー病用薬として承認申請され、来月6日までに合否が判明する予定だが、被験者の死亡がまた明らかになった。11月と同様に、SCIENCEINSIDERが報じたもの。
BAN2401などの抗アミロイド抗体を投与すると、MRI検査でARIA(アミロイド関連造影異常)が見られることがしばしばある。脳血管に付着したアミロイドが免疫により除去される過程で血管の腫脹や出血が起きると考えられている。幸い、症状を伴わないことが多いが、全てではない。アルツハイマー病は高齢者の病気なのでlecanemabの第3相でも1800人中13人が死亡したが、SCIENCEINSIDERが報じた2例と10月にSTATが報じた症例は脳出血や脳梗塞を発症後に死亡したため、薬との関連性を十分に検討する必要がありそうだ。
3例目は79歳の女性で延長試験に参加していた。アルツハイマー以外に健康上の問題はなかったとのことだが、脳卒中で入院、痙攣を合併し、検査で脳浮腫や出血が見られた。数日後に多臓器不全で死亡した。
臨床試験での症候性ARIAの発生率は低いが、選ばれた医療施設の選ばれた医師が厳選された患者を治療する臨床試験と比べると、現実の医療では薬効はもっと小さく、副作用はもっと多くなる。上記の死亡率は米国の60代の年間死亡率が1~2%、70代は2~5%であるのと比べて低く、余命という点では平均より健康な人たちが組み入れられたことが分かる。FDAは両社のAduhelm(aducanumab)を21年に加速承認したが、臨床試験のプロトコルと異なり、治療前や治療中のMRI検査を義務化しなかったので、症状のないうちにARIAを早期発見することは難しく、症候性ARIAが臨床試験より多く発生してしまう可能性もあるのではないか。
リンク: SCIENCEINSIDERの記事
今週は以上です。
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