2022年12月17日

第1081回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • アステラス、クローディン標的薬を承認申請へ 
  • mRNAワクチンは癌にも有効 
  • ASH:BTK阻害剤の直接比較試験 
  • ASH:Regeneron、抗CD20xCD3抗体を承認申請へ 
  • リンゼスが米国で小児便秘に適応拡大申請 
  • ODAC:心ミオシン活性化剤はエビデンスが不十分 
  • CHMP、B型血友病の遺伝子療法などの承認を支持 
  • 筋層非浸潤膀胱癌の遺伝子療法が承認 
  • 第2のKRAS阻害剤が承認 
  • テセントリクが胞巣状軟部肉腫に承認 
  • アッヴィ、カリプラジンが鬱病に承認 


【新薬開発】


アステラス、クローディン標的薬を承認申請へ
(2022年12月16日発表)

アステラス製薬はIMAB362(zolbetuximab)の二本目の第3相試験、GLOWが成功したと発表した。先に成功した一本目のSPOTLIGHTと合わせてグローバルに承認申請する予定。

細胞間接着分子Claudin-18(CLDN)のアイソフォームで胃腺癌の4割程度で高発現しているClaudin-18.2に結合する抗体医薬。16年にドイツのGanymed Pharmaceuticalsを約4億ユーロ及び目標達成時報奨金約8億ユーロで買収して入手した。因みに、Ganymedは今を時めくBioNTechの共同創業者でCEOのUgur Sahin氏と共同創業者兼CFOのOzlem Tureci氏の夫妻が創設した。

第3相はClaudin-18.2陽性でher2陰性の切除不能局所進行性/転移性の胃腺腫・食道胃接合部腺癌の一次治療を受ける患者が対象で、GLOW試験はCAPOXレジメン(capicitabineとoxaliplatinの併用)に追加、SPOTLIGHT試験はmFOLFOX-6(5-FU、leucovorin、及びoxaliplatinの併用)に追加する便益と危険を検討した。どちらも主評価項目であるPFS(無進行生存期間)と全生存期間に統計的に有意な差があった。データは未発表。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


mRNAワクチンは癌にも有効
(2022年12月13日発表)

モデルナ(Nasdaq:MRNA)と開発販売パートナーであるMSDは、mRNA-4157(MSDの開発コードはV940)が後期第2相試験で統計的に有意かつ臨床的にも意味のある再発・死亡抑制効果を示したと発表した。統計的に有意と言えるかどうかは議論の余地があるが、点推定値は良好で、第2相試験であることを考えればとやかく言うほどではないと私は思う。但し、有害事象はやや多いか。第3相に向かう予定。

このテイラーメイド・ワクチンは、患者の癌細胞で発現するネオアンチゲン(腫瘍細胞特有の変異蛋白)のうち最大34種類をスクリーニングして一本のmRNAにエンコードし、リピッド・ナノパーティクルに封入したもの。MSDは16年に共同開発販売オプションを取得、今年10月に2.5億ドルで行使した。

今回のKEYNOTE-942/mRNA-4157-P201試験は、ステージIII/IV黒色腫の完全切除を受けたが再発リスクが高い患者157人を組み入れた術後アジュバント試験。承認薬であるKeytruda(pembrolizumab)を投与する群と、Keytruda(200mgを3週毎に最大18回投与)とmRNA-4157(3週毎に最大9回投与)を併用する群のRFS(無再発生存期間)を比較した。結果はハザードレシオが0.56(95%信頼区間0.31-1.08)、片側p=0.0266だった。深刻有害事象の発現率は14.4%でKeytruda群の10%を上回った。

95%信頼区間は1を跨ぎ、p値は両側p値を使うのが保守的だが、後期第2相なのでハードルが甘目に設定されているのだろう。アジュバント療法は末期癌より安全性要求が高いこともあり、第3相で再現性を確かめる必要がある。それでも、現時点では良好な結果と言えそうだ。

リンク: 両社のプレスリリース


ASH:BTK阻害剤の直接比較試験
(2022年12月13日発表)

BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)はBrukinsa(zanubrutinib)の効果をアッヴィ/ヤンセンのImbruvica(ibrutinib)と比較したALPINE試験の最終解析結果をASH(米国血液学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表した。欧米中国の施設で難治再発患者652人を各剤に無作為化割付けしてPFS(無進行生存期間)を比較したところ、ハザードレシオは治験医評価でも独立評価委員会でも0.65となり、有意に優れていた。24ヶ月時点での無進行生存率は各群78.4%と65.9%で、10ポイント以上の差がある。有害事象による治験離脱率は各15.4%と22.2%、致死的心臓有害事象発生率はゼロと1.9%で、BTK阻害剤のクラス・イフェクトである心毒性が比較的小さそう。一方、好中球減少症や感染症の発生率は若干上回った。

Brukinsaは米国でマントル細胞腫やワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、辺縁帯リンパ腫に承認されている。CLL/SLLは一次治療と合わせて欧米で承認申請、米国は審査期限が来月20日に延期されたがEUでは11月に承認された。

リンク: 同社のプレスリリース


ASH:Regeneron、抗CD20xCD3抗体を承認申請へ
(2022年12月11日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はREGN1979(odronextamab)の第1相と第2相びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)コフォートと濾胞性リンパ腫(FL)コフォートの成績をASH(米国血液学会)で発表した。DLBCLは、CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法未施行の患者に加えて、症例数はまだ限られているがCAR-T歴を持つ患者にも良好な成績を上げた。23年に米国などで承認申請する考え。FLも良好に進捗している様子だ。

抗PD-1/PD-L1抗体に続いて雨後の筍状態になった抗CD20xCD3二重特異性抗体の一つ。第2相のうちCAR-T未施行DLBCLコフォートで130人に投与したところORR(客観的反応率)49%、CR(完全反応率)は31%、メジアン反応持続期間は18ヶ月だった。第1相のCAR-T歴を持つコフォート31人ではORR48%、CR32%。反応持続期間はまだメジアン値に達していない。

odronextamabは2年前にFDAが治験の部分停止を命じたことがある。効果が高い分、メカニズムに基づく副作用であるCRS(サイトカイン放出症候群)のリスクも高かったからだ。同社は用量漸増レジメンを探索し、第2相試験の途中で採用されたレジメン下ではG3のCRS発生率が1%まで低下した。また、G4/5のCRSは第2相の当初のレジメンを含めても一件も発生しなかったとのこと。

第2相FLコフォート121人ではORR81.8%、CR75.2%、完全反応のメジアン反応持続期間は20.5ヶ月だった。131人中5人がG3のCRSを発現したが、新レジメンでは1人だけだった(発生率2%)。G4/5のCRSはなし。治療関連深刻有害事象は53人で発現、治療との関連が考えうる死亡は3人(肺炎、進行性多巣性白質脳症、全身性真菌症)だった。

抗CD20xCD3抗体はCAR-Tと類似した作用機序を持つが、患者本人から採取したT細胞を加工・培養するのではなく出来合いの製品を使うので事前の準備に時間がかからず順調に培養できないリスクも無い。薬効自体は見劣りするように感じられるが、各社が開発競争する中で、どの程度向上できるか注目される。

リンク: 同社のプレスリリース(DLBCL、12/11付)
リンク: 同社のプレスリリース(FL、12/12付)

【承認申請】


リンゼスが米国で小児便秘に適応拡大申請
(2022年12月16日発表)

アッヴィはIronwood Pharmaceuticals(Nasdaq:IRWD)と米国で共同開発販売している慢性便秘/便秘型過敏性腸症候群治療薬、Linzess(linaclotide)の適応拡大をFDAに申請した。6~17歳の青少年の機能性便秘に72mcgを投与する、対象年齢拡大及び用量追加に関わるもの。

手元の初承認時のメモを読むと、6歳以下は禁忌、17歳以下は使うべきではないと記されている。マウスの試験で大人は承認用量の1000倍まで投与できたが子供で死亡例が発生したことが原因のようだ。小児適応申請が初承認の10年後というのは最近の新薬ではかなり遅いが、慎重に検討、試験したからなのだろう。

Linzessは日本ではアステラス製薬がリンゼス名で販売している。

リンク: アッヴィのプレスリリース

【承認審査・委員会】


ODAC:心ミオシン活性化剤はエビデンスが不十分
(2022年12月13日発表)

FDAのODAC(腫瘍学薬諮問委員会)はCytokinetics(Nasdaq: CYTK)が駆出率低下心不全(HFrEF)の治療薬として承認申請したCK-1827452(omecamtiv mecarbil)の便益や危険を検討し、8人対3人の多数が便益が便益が上回るとは言えないと判定した。FDAもエビデンス不足と考えている模様なので、承認されないだろう。

筋収縮の原動力であるmyosinに結合し活性化する経口剤。第3相GALACTIC-HF試験でLVEF(左心駆出率)が正常値の35%以下であるクラスII~IVの心不全患者を組み入れて心不全による入院や救急治療、心血管死などのリスクを抑制する効果を検討したところ、偽薬比ハザードレシオ0.92(95%信頼区間0.86-0.99)、p=0.0252と、統計学的には有意だがボーダーライン上、臨床的には悪くはないが喜ぶほどでもない結果になった。心血管死や主要虚血性心臓イベントは両群大差なく、QOL指標も同程度だった。

会社側はLVEFが28%以下のサブグループではハザードレシオ0.84と良好であることをアピールしたが、この閾値の合理性を認定するのは容易ではない。過剰投与すると心筋梗塞や心不全のリスクが高まる懸念があるが、この試験では心房細動/心房粗動を合併する患者で心血管死が増加する兆候が見られた。本試験は薬剤の血漿濃度を調べながら漸増する手法を採用したが、検査アッセイは承認申請されていない。

CK-1827452はアムジェンやセルビエが共同開発販売権を取得したが、第3相試験の結果が出た後に返還した。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMP、B型血友病の遺伝子療法などの承認を支持
(2022年12月16日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、下記の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

CSL BehringのHemgenix(etranacogene dezaparvovec)はB型血友病の遺伝子療法。重度または中程度重度で第IV因子インヒビターを持たない成人に用いることが条件付き承認された。アデノ随伴ウイルス5型をベクターとして高活性のPadua型第IV因子の遺伝子を導入し、肝細胞選択的に発現させるもの。53人の臨床試験で出血頻度が年率1.51回と、第IV因子の予防的投与を受けていたリード・イン期間中の4.19回から大きく低下した。1名以外は予防的投与を中止できた。長期追跡データは未だ十分ではなく、最長3年が3例程度。米国では11月に承認され、リストプライスは350万ドル。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカのImjudo(tremelimumab)はファイザーからライセンスした抗CTLA-4抗体。T細胞の抑制的刺激受容体をブロックし、活性化・増殖を促す。同社の抗PD-L1抗体、Imfinzi(durvalumab)と併用で進行/切除不能幹細胞腫の一次治療に、あるいは、更に化学療法も併用して、EGFR阻害剤やALK阻害剤が適応にならない転移非小細胞性肺癌の一次治療に、用いる。米国は各10月と11月に承認、日本でも11月に第二部会を通過した。

尚、肺癌のほうはImjudoではなくTremelimumab AstraZenecaというGE薬のような名称になっているので、後日、Imjudo名でも承認されるのだろう。

リンク: EMAのプレスリリース(Imjudo)
リンク: EMAのプレスリリース(Tremelimumab AstraZeneca)

アミカス・セラピューティクス(Nasdaq: FOLD)のPombiliti(cipaglucosidase alfa)は遺伝子組換え型アルファ・グルコシダーゼ。ポンペ病の酵素補充療法で、安定性をや活性を増強する目的でmiglustat(アストラゼネカのアクテリオン子会社が3型ガウシェ病治療薬として販売しているグルコシルセラミド合成酵素阻害剤)を併用する。6分歩行テストを主評価項目とした遅発型ポンペ病の第3相でジェンザイムのLumizyme(alglucosidase alfa)と同程度の効果が見られた。米国でも審査中だが、中国の渡航制限により現地企業の査察ができず、遅延している。

リンク: EMAのプレスリリース

一方、否定的意見だったのはY-mAbs Therapeutics(Nasdaq:YMAB)のOmblastys(131I-omburtamab)。Memorial Sloan Ketteringからライセンスしたヨード131標識抗B7-H3(CD276)マウス抗体で、神経芽腫の中枢神経転移治療薬として新薬承認申請したが、外部対照群との比較可能性がネックとなり、米国でも承認されなかった。

リンク: EMAのプレスリリース

CHMPの評価が思わしくなく申請撤回となったのは、Reata Pharmaceuticals(Nasdaq:RETA)はImbarkyd(bardoxolone methyl)をアルポート症候群の慢性腎疾患治療薬として欧米で新薬承認申請したが、米国では承認されず、CHMPは便益や安全性について懸念を持った。臨床試験でeGFR(推定腎濾過率)の低下が抑制されたが、臨床的便益につながるサロゲート・マーカーとは見なされないことや催不整脈性懸念、そして、CHMPによれば、薬物動態や代謝物に関する検討が不十分であることがネックとなった。

日本は協和キリンが昨年、承認申請したが、承認されるかどうか不透明であるようだ。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大で肯定的意見を得たのは、まず、サノフィがRegeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)と共同開発販売しているDupixent(dupilumab)。12歳以上、体重40kg以上で従来療法に十分応答しない、不耐、または対象にならない好中球性食道炎に用いることが支持された。米国では5月に承認。

アストラゼネカのForxiga(dapagliflozin、和名フォシーガ)は症候性慢性心不全の適応における駆出率低下(LVEF40%以下)限定の解除。DELIVER試験でLVEF40%超の患者の心血管死/心不全入院・救急を18%抑制した。

第一三共がアストラゼネカと共同開発販売しているEnhertu(trastuzumab deruxtecan)は成人のher2低発現型切除不能/転移乳癌。転移後に化学療法を受けた、あるいは、切除術後アジュバント療法中、または完了後6ヶ月以内に再発した患者が対象。米国は6月に承認。

UCBのFintepla(fenfluramine hydrochloride)はレノックス・ガストー症候群。米国は3月に承認。20~22年に米欧日でドラベ症候群の癲癇治療薬として承認されている。

ロシュが日本外で中外製薬からライセンスしたHemlibra(emicizumab)は17~18年に米欧日でA型血友病の出血予防薬として承認されたが、EUでは重度患者(第VIII因子活性が正常の1%未満)に限定されている。今回、中度患者(同1%~5%)で重度出血フェノタイプに用いることも支持された。因子活性と出血リスクは必ずしもパラレルではなく、米国では限定されていない。ロシュはHAVEN 6試験で中度患者などにおける便益を確認した。

バイエルのKerendia(finerenone)は成人二型糖尿病患者のアルブミン血症を伴うステージIII/IV慢性腎不全に承認されているが、ステージIII・IV限定解除が支持された。FIGARO-DKD試験でステージIからIVまで幅広い段階の患者に便益が見られた。

意外だったのはイーライリリーのJAK阻害剤、Olumiant(baricitinib)。酸素投与/呼気補助を必要とするCOVID-19に適応追加申請され20年11月に米国でEUA(非常時使用認可)、日本でも21年4月に承認されたが、CHMPは便益の立証が不十分と考えていたようで、申請撤回となった。臨床試験は三本実施され、NIAID(米国アレルギー・感染症研究所)主導試験では回復までの期間がメジアン7日と対照群より1日早かったがp値は0.047だった。イーライリリーの試験では死亡/呼気補助リスクが有意に小さくなかった。オックスフォード大学主導の大規模なRECOVERY試験では年齢調整死亡率比が0.87だったが、p値は0.026で、remdesivirによる治療を受けた患者が20%と今日の標準療法とは食い違っていた。とは言え、FDAは今年5月に成人適応に関しては本承認に切り替えており、CHMPが否定的なのは重ね重ね意外だ。

リンク: EMAのプレスリリース

【承認】


筋層非浸潤膀胱癌の遺伝子療法が承認
(2022年12月16日発表)

FDAはフェリングのAdstiladrin(nadofaragene firadenovec-vncg)をBCG不応で高リスクの上皮内NMIBC(筋層非浸潤膀胱癌)に用いることを承認した。乳頭状腫瘍であるか否かは問わない。フィンランドのFKD Therapies Oyからライセンスした遺伝子療法で、増殖できないアデノウイルス5型をベクターとしてインターフェロン・アルファ2bの遺伝子を膀胱内に、3ヶ月毎に最大4回、注入する。第3相で完全反応率が53%、うち24%は12ヶ月以上持続した。治療関連有害事象による離脱率は1.9%だった。

膀胱癌の新患は7~8割がNMIBCで、結核ワクチンであるBCGが標準治療薬だが、再発/進行リスクが高い。切除術が適応になるが、20年にMSDのKeytruda(pembrolizumab)が切除不適/拒否患者向けに米国で適応拡大した。どちらも完全反応率と反応持続期間に基づく承認で、比較できるかどうかは不明だが、前者はAdstiladrin、後者はKeytrudaのほうが若干高くなっている(化学療法と免疫療法でよくあるパターンだ)。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: フェリングのプレスリリース


第2のKRAS阻害剤が承認
(2022年12月12日発表)

FDAはMirati Therapeutics(Nasdaq:MRTX)のKrazati(adagrasib)を加速承認した。全身性治療歴のある成人のKRAS-G12C変異型局所進行/転移非小細胞性肺がんに600mg(3錠)ずつ一日二回、経口投与する。第2相KRYSTAL-1試験でORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が43%、メジアン反応持続期間は8.5ヶ月だった。被験者112人の殆どが免疫療法および化学療法による治療歴を持っていた。有害事象は胃腸や肝臓毒性、QTc延長、間質性肺疾患/肺臓炎(G3/4発生率1.4%、致死的1例)など。枠付き警告はない。欧州でも承認申請中。

市販後コミットメント試験は上記と同様な患者を組み入れて延命効果などをdocetaxelと比較する試験を実施中。FDAは抗癌剤開発企業の至適用量探索が不十分と考えている模様であり、そのせいか、Krazatiも第3相では400mg一日二回が採用された模様だ。

類薬はアムジェンのLumakras(sotorasib)が21~22年に米欧日で承認されている。米国は加速承認、EUは条件付き承認で、上記と同様な試験で960mgを一日一回投与したところ、ORRが36%、メジアン反応持続期間は10ヶ月だった。被験者の背景が異なる可能性もあるので、両剤とも大差ないと考えたほうが良いだろう。

Miratiの株価は承認直前の一週間で半減した。KRYSTAL-7試験でKRAS-G12C変異非小細胞性肺癌の一次治療としてKeytrudaと併用したところ53人のORRが49%だったことが発表されたため。単剤が二次治療で43%だったことを考えると案外な結果だ。

リンク: FDAのプレスリリース


テセントリクが胞巣状軟部肉腫に承認
(2022年12月9日発表)

FDAはロシュ・グループのジェネンテックの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)を2歳以上の切除不能/転移胞巣状軟部肉腫に用いることを承認した。米国で年80人が診断される超希少疾患で、当初は痛みなどの症状を伴わないため早期発見が難しい。5年生存率は50%程度とのこと。49人に投与した臨床試験ではORR(客観的反応率、独立評価委員会)が24%、6ヶ月反応持続率は66%だった。G3/4の有害事象は筋骨格痛、高血圧、頭痛など。

Memorial Sloan Kettering Cancer CenterなどがNCI(米国癌研究所)などの支援を受けて実施したsunitinibの試験では48人中一人が部分反応しただけだった(ClinicalTrials.govによる)のでかなり違う。テセントリクは日本でも研究者指導試験中。

リンク: FDAのプレスリリース


アッヴィ、カリプラジンが鬱病に承認
(2022年12月16日)

アッヴィはFDAがVraylar(cariprazine)を鬱病治療に用いることを承認したと発表した。標準療法薬に十分応答しない成人患者に追加投与する(アジャンクティブ用法)。パミンD3、D2、セロトニン5-HT1A受容体の部分作動剤で、ハンガリーのゲデオン・リヒターから北米の権利をライセンス、これまでに双極障害I型のうつ症状や急性躁症状、混合症状、そして統合失調症の治療に承認されている。日本でもアッヴィが開発予定。



リンク: 同社のプレスリリース





今週は以上です。

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