【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- 欧州のETF、二価ワクチンを当初免疫にも容認
- マルチトープ・ワクチンの第3相が成功
- その他の領域:
- ビンゼレックスも化膿性汗腺炎試験が成功
- SABCS:AKT阻害剤のFaslodex併用試験が成功
- ノバルティス、PNH一次治療試験が成功
- SABCS:エンハーツの延命データ
- ノバルティス、Pluvictoはプリキモにも有効
- GSK、抗PD-1抗体の第3相内膜腫化学療法併用試験が成功
- テセントリクとカボメティクスの併用肺がん試験はフェール
- Relmada、鬱病試験が二連敗
- PI3K阻害剤の開発を断念
- ヤンセン、新種の二重特異性抗体を承認申請
- ファイザーも高齢者用RSVワクチンを承認申請
- 新規抗鬱剤を承認申請
- EQRx、EGFR阻害剤を欧州で承認申請
- メルク、乳幼児用住血吸虫症治療薬を承認申請
- I-131標識抗B7-H3抗体は承認されず
- Oncopeptides、FDAが加速承認返上を要請
- 武田のデング熱ワクチンがEUで承認
- 第2のIDH1阻害剤が承認
- Brexafemmeがカンジダの再燃予防薬としても承認
- ゼルヤンツを55人に5年間投与すると一人が癌に
【COVID-19関連】
欧州のETF、二価ワクチンを当初免疫にも容認
(2022年12月6日発表)
欧州の薬品審査機関、EMAのEmergency Task Forceは、COVID-19の二価ワクチンを当初免疫に用いることを容認すると発表した。根拠はin vitro研究やオミクロン株感染者の免疫応答データ。SPC(添付文書)は今まで通り、追加免疫に限定されるようだ。
欧米の添付文書は、BioNTech/ファイザーのComirnatyとモデルナのSpikevaxの二価バージョンの用途を追加免疫に限定している。オリジナルのワクチンも半量とはいえ配合されているので当初免疫でも良いのではないかと思うが、BA.4/5対応ワクチンは免疫原性試験の結果すら出ていない段階で承認されたことなどから、対象をむやみに広げないほうが良いと判断したのだろう。
現時点で未接種の成人はおそらく二価ワクチンも接種しないだろうから、実質的には、対象となるのは幼小児や20代の未接種者だろう。
リンク: EMAのプレスリリース
マルチトープ・ワクチンの第3相が成功
(2022年12月2日発表)
米国のVaxxinity(Nasdaq:VAXX)は、新種のCOVID-19ワクチンであるUB-612の第3相追加接種試験が成功したと発表した。まず英国とオーストラリアで来年上期に条件付き/暫定承認を申請する考え。
ウイルスのS1タンパクのRBD(受容体結合領域)のよく保護されたエピトープに加えて、S2のヘルパーT細胞や細胞傷害性T細胞に認識されるエピトープや膜などのペプチドも配合されていることが特徴。第3相は米国、パナマ、フィリピンの施設で16歳以上の944人を組み入れて、過去の接種と異なるワクチンを用いる「ヘテロ・ブースター」接種を行い、28日後に抗原性を一価ワクチン(BioNTech/ファイザーのComirnaty、オックスフォード大学/アストラゼネカのVaxzevria、Sinopharm(中国医薬集団)のBIBP)と比較した。
主評価項目の武漢株に対する中和抗体力価はGMR(幾何平均比)がComirnaty対比では非劣性、VaxzevriaやBIBP対比では有意に上回った。オミクロン株に対するGMRや、副次的評価項目である抗体陽転率(4倍増達成率)もComirnaty比非劣性、他の二品に対して有意に上回った。
リンク: 同社のプレスリリース
【新薬開発】
ビンゼレックスも化膿性汗腺炎試験が成功
(2022年12月9日発表)
UCBはbimekizumabの第3相中重度化膿性汗腺炎試験が二本とも成功したと発表した。第16週のHiSCR50(膿瘍・炎症性結節数半減)奏効率が偽薬群を有意に上回った。データは未発表。23年第3四半期から適応拡大申請を開始する予定。
IL-17AとIL-17Fに結合する二重特異性抗体で、昨年EUでBimzelx名で、今年1月には日本でもビンゼレックス名で、乾癬治療薬として承認された。米国は遅れているが、政府の渡航制限により工場査察ができなかったことが要因のようだ。適応拡大は体軸性脊椎関節炎や乾癬性関節炎の第3相が成功、既に承認申請が開始されたと推測される。
IL-17Aだけに結合する多くの抗体医薬と競合しているが、化膿性汗腺炎はノバルティスのCosentyx(secukinumab)が承認審査中であるだけ。抗TNFアルファ抗体もHumira(adalimumab)が承認されているだけなので、比較的競争条件が良い。
リンク: UCBのプレスリリース
SABCS:AKT阻害剤のFaslodex併用試験が成功
(2022年12月8日発表)
アストラゼネカは10月にAZD5363(capivasertib)の第3相CAPItello-291試験の成功を発表したが、データをSABCS(サン・アントニオ乳癌シンポジウム)で明らかにした。アロマターゼ阻害剤歴を持つ局所進行/転移ホルモン受容体陽性乳癌を組み入れて、Faslodex(fulvestrant)と併用する効果を検討したところ、メジアンPFS(無進行生存期間、治験医評価)が7.2ヶ月とFaslodex・偽薬併用群の3.6ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.60だった。Faslodex抵抗性が指摘されているPI3KCA/AKT1/PTEN経路に活性化変異を持つサブグループ(被験者の4割)では各7.3ヶ月、3.1ヶ月、ハザードレシオ0.50だった。her2発現の多寡(陽性、低発現、陰性)を問わずに効果が見られた。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だが好ましいトレンドが出ている由。
AKTをATP競合的に阻害する経口剤で、Astex(13年に大塚製薬が買収)が英国のがん研究所と共同で創製、アストラゼネカにライセンスした。トリプル・ネガティブ乳癌や前立腺癌の第3相も進行中。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
ノバルティス、PNH一次治療試験が成功
(2022年12月8日発表)
ノバルティスはLNP023(iptacopan)の第3相APPOINT-PNH試験の成功を発表した。eculizumabなどの既存の補体阻害剤による治療を受けていないPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)患者に200mgを一日二回、24週間に亘り経口投与した単群試験で、ヘモグロビンが輸血なしで上昇した。
代表的なPNH治療薬であるアストラゼネカのeculizumab/ravulizumabは補体系C5因子を抗体で阻害するが、iptacopanは補体副経路のB因子を可逆的に阻害する小分子薬。eculizumab/ravulizumabに十分応答しない患者を組み入れた第3相スイッチ試験、APPLY-PNHでヘモグロビン矯正奏効率が継続投与群より有意に高かった。もともと十分応答していなかったのだから当然といえば当然で、真価を決するには一次治療試験が必要だが、残念なことに、今回の試験は実薬対照試験ではなかった。
リンク: 同社のプレスリリース
SABCS:エンハーツの延命データ
(2022年12月7日発表)
第一三共と開発販売パートナーのアストラゼネカは、抗her2抗体薬物複合体Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)の延命効果を示すデータをSABCS(サン・アントニオ乳癌シンポジウム)で発表した。trastuzumabとタキサン系抗がん剤による治療歴を持つ転移乳癌を組み入れてロシュの類薬であるKadcyla(ado-trastuzumab emtansine)と直接比較したDESTINY-Breast03に関するもので、主評価項目のPFS(無進行生存期間)は21年に成功発表、米国では今年5月に適応追加された。この時点では副次的評価項目である全生存期間の解析は未成熟でトレンドに留まっていたが、今回、ハザードレシオ0.64、 p=0.0037、2年生存率(推定)は77.4%対69.9%となったことが発表された。13.3人に投与すれば2年間で一人多く死亡から救うことができる計算になる。
転移性乳癌領域では、異なったタイプの抗がん剤の試験で、PFSが増加しても全生存期間は延びないという意外な現象が見られた。治療法が増えて4次治療、5次治療も珍しくなったため後治療の影響も無視できないが、加速承認の取消が取りざたされる事例も出てきている。それだけに、延命効果も確認できたのは一安心だ。
リンク: 両社のプレスリリース
ノバルティス、Pluvictoはプリキモにも有効
(2022年12月5日発表)
ノバルティスはPluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)の第3相PSMAfore試験が成功したと発表した。アンドロゲン受容体経路阻害剤(ARPI:abiraterone、enzalutamide、darolutamide、またはapalutamide)のうち一つによる治療歴を持ち化学療法未施行のPSMA陽性mCRPC(転移去勢抵抗前立腺癌)を対象に、6週毎6回投与する群のrPFS(放射線学的無進行生存期間)を、前治療とは異なるARPIを投与する群と比較したところ、有意に上回った。数値は未発表。23年に適応拡大申請する予定。
DKFZ(ドイツの癌研究所)とハイデルベルグ大学病院が共同開発した放射性医薬品で、PSMAに結合しベータ線を放出する。ノバルティスは18年にEndocyteを21億ドルで買収して入手、22年に米国でARPI歴と化学療法歴を持つPSMA陽性mCRPCに承認取得した。今回の成功で一歩前の段階での使用が見えてきた。
リンク: 同社のプレスリリース
GSK、抗PD-1抗体の第3相内膜腫化学療法併用試験が成功
(2022年12月2日発表)
GSKはJemperli(dostarlimab-gxly)の第3相内膜腫化学療法併用試験、RUBYが中間解析で成功したと発表した。主評価項目であるdMMR/MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性/DNAミスマッチ修復機能欠損)を持つサブグループのPFS(無進行生存期間、担当医評価)も、全ユニバースのPFSも、化学療法と偽薬を併用した群を有意に上回った。dMMR/MSI-Hではないサブグループにも臨床的に重要な便益があった由。データは学会発表の予定。適応拡大申請に向かうのではないか。
Jemperliは19年にTesaroを負債承継込み51億ドルで買収して入手したパイプラインで、IgG4型の抗PD-1抗体。21年に欧米でdMMR/MSI-Hを持つ難治/進行内膜腫の二次治療薬として承認された。米国では他に適切な治療手段のない、dMMR/MSI-Hを持つ固形癌にも加速承認されている。
リンク: GSKのプレスリリース
テセントリクとカボメティクスの併用肺がん試験はフェール
(2022年12月8日発表)
ロシュとExelixis(Nasdaq:EXEL)は前者の抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)と後者のCabometyx(cabozantinib)の併用試験を複数の癌で実施しているが、CONTACT-01試験はフェールした。抗PD-1/PD-L1抗体と白金薬による治療歴のある転移性非小細胞肺癌における延命効果をdocetaxelと比較したダメだった。詳細は不明。
CabometyxはVEGFR阻害剤。日本では武田薬品、日米以外ではイプセンが販売している。
リンク: Exelixisのプレスリリース
Relmada、鬱病試験が二連敗
(2022年12月7日発表)
Relmada Therapeutics(Nasdaq:RLMD)はREL-1017(esmethadone)の鬱病モノセラピー試験に続き、第3相抗鬱剤併用試験もフェールしたことを明らかにした。この試験でも組み入れ数の多い二施設で偽薬群のMADRS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)低下が試験薬を大きく上回る異常値が出ており、他の施設だけの解析ではp<0.02と悪くない結果になっている由。もう一本のアジャンクト試験の成否が注目される。
どの施設なのか、気になる製薬会社は多いだろう。
リンク: 同社のプレスリリース
PI3K阻害剤の開発を断念
(2022年12月6日発表)
米国のMEIファーマ(Nasdaq:MEIP)と開発販売パートナーの協和キリンは、PI3Kデルタ阻害剤ME-401(zandelisib)の開発を中止すると発表した。FDAがPI3K阻害剤全体の安全性に懸念を持ち、MEIファーマが第2相試験の反応率データに基づいて承認申請することを認めなかっただけでなく、第3相試験についても先月、統計解析計画などに関して新たな勧告を行ったため、規模拡大による費用負担などに鑑み、ギブアップした。
但し、日本市場に関しては11月にトップラインが出た第2相MIRAGE試験に基づいて2次以上の治療歴を持つ再発/難治低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫に承認申請することを引き続き検討する。
FDAがPI3K阻害剤に厳しくなったのは、幾つかの製品の臨床試験で、反応率や無進行生存期間は良かったのに全生存期間が延びなかったりむしろ短くなったりする現象が見られたためだ。トラベル・ドクターだけでなく医師も使命は癌を直すことではなく人を見て人を直すことなのだから、腫瘍がある程度縮小減少しただけのことで奏功と呼んではいけない。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認申請】
ヤンセン、新種の二重特異性抗体を承認申請
(2022年12月9日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Pharmaceuticalは、JNJ-64407564(talquetamab)を3種類の薬による治療歴を持つ多発骨髄腫用薬として米国で承認申請した。
骨髄細胞で発現し正常な細胞ではあまり発現しないGPRC5D(G Protein-Coupled Receptor Family C Group 5 Member D)とCD3に結合する二重特異性抗体で、ジェンマブのDUOBODY技術で創製されたもの。
第1/2相試験では、0.4mg/kgを週一回皮下注した143人におけるORR(客観的反応率)が73%、完全寛解率は29%、メジアン反応持続期間は9.3ヶ月だった。CAR-T療法とは異なりG3以上のサイトカイン放出症候群発生率は2%のみ。G3以上の有害事象は貧血(31%)、好中球減少症(30%)、血栓性血小板減少症(20%)、感染症(19%)など。
リンク: JNJのプレスリリース
ファイザーも高齢者用RSVワクチンを承認申請
(2022年12月7日発表)
ファイザーはPF-06928316を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年5月。60歳以上のRSV(respiratory syncytial virus)による下部気道疾患を予防するワクチンで、120mcgを一回接種する。第3相試験では二つ以上の症状を伴う同疾患が偽薬比66%減、三つ以上は85%少なかった。
RSVは珍しくない感染症だが米国では高齢者が年6~12万人入院し、6000~14000人が死亡と推定されている。NIH(米国立医療研究所)が融合前結晶構造を解明したことを機にワクチンの開発が活発化、ファイザーのほかにGSKもGSK3844766Aの承認申請が日米欧で10~11月に受理された。
PF-06928316は妊婦に接種して新生児の感染を予防する第3相も成功、承認申請される予定。GSKの同様な試験はフェールしており、何が違うのか、解明が望まれる。
リンク: ファイザーのプレスリリース
新規抗鬱剤を承認申請
(2022年12月6日発表)
Sage Therapeutics(Nasdaq:SAGE)とバイオジェンは、米国でSAGE-217/BIIB125(zuranolone)のローリング承認申請を完了した。GABA-Aの選択的ポジティブ・アロステリック・モジュレーターで鬱病と産後鬱の治療に用いる。2週間投与して反応を確認し、鬱病の場合は必要に応じて8週以上の間をおいて再投与することができる。19年に米国で産後鬱治療薬として承認されたZulresso(brexanolon)の類薬だが、連続点滴静注ではなく一日一回経口投与できるので外来治療に適している。
日本と台湾韓国は塩野義製薬が開発販売権を取得した。
リンク: 両社のプレスリリース
EQRx、EGFR阻害剤を欧州で承認申請
(2022年12月2日発表)
米国のEQRx(Nasdaq:EQRX)はaumolertinibをEUに承認申請し受理されたと発表した。成人の局所進行性/転移性非小細胞性肺癌のうち、EGFRに活性化変異を持つ癌の一次治療、または、T790M変異を持つ癌に用いることを想定している。中国で実施されたAENEAS試験で初治療を受ける患者におけるPFS(無進行生存期間、担当医評価)がメジアン19.9ヶ月とgefetinib群の9.9ヶ月を上回り、ハザード比は0.46で統計的に有意だった。
Hansoh Pharma(翰森製薬集団、3692.HK)からライセンスしたEGFRチロシン・キナーゼ阻害剤で、中国では20年に承認されている。EQRxは中国などの製薬会社かライセンスした薬を欧米で比較的廉価に供給する価格破壊型企業を目指していたが、米国に関しては、FDAが中国内で実施された臨床試験の成績に懐疑的であるために、方針転換した。aumolertinibは化学療法併用試験の結果が27年頃に開票してから米国申請する予定。
リンク: 同社のプレスリリース
メルク、乳幼児用住血吸虫症治療薬を承認申請
(2022年12月2日発表)
ドイツのメルクは、arpraziquantelをEUで乳幼児の住血吸虫症治療薬として承認申請した。3か月児から6歳までの乳幼児が対象。承認されたら24年にサブサハラ・アフリカから供給を開始する考え。
住血吸虫症は同地域などで流行した風土病。メルクのpraziquantelが有効だが、錠剤が大きく苦いことなどもあり、6歳以上が適応となっている。arpraziquantelは左旋性異性体を使った経口分散錠で、未就学児の味覚にも合うらしい。メルクが主導するPediatric Praziquantel Consortiumが開発、臨床試験では臨床的治癒率が90%超だった。今回の申請はEU域外で使用される薬を政府に代わって審査する制度に基づくもの。メルクは儲けなしで供給する予定。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
I-131標識抗B7-H3抗体は承認されず
(2022年12月1日発表)
Y-mAbs Therapeutics(Nasdaq:YMAB)は米国で131I-omburtamabを小児神経芽腫の中枢神経系/軟髄膜転移の治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。追加試験を求められた模様。元々、FDAの事前同意を得ずに強行したハイリスク案件なのでサプライズ感はない。
同社は創業社長であるThomas Gadが娘の神経芽腫治療に効果があった抗GD2抗体と上記のI-131標識抗B7-H3マウス抗体を開発するためにMemorial Sloan Ketteringから権利を取得して設立した。前者はDanyelza(naxitamab-gqgk)として20年に米国で加速承認されたが、後者は症例数が少ないことや対照群が90年代初めにまで遡るドイツの患者登録データで小児神経芽腫自体の治療の強度などがかなり異なることが難点となった。FDAの分析によると、全生存の調整後ハザードレシオは1.02となり、同薬を使わなかった患者と大差なかった。10月の諮問委員会でも16人の委員全員が薬効の立証不十分と判定した。
リンク: 同社のプレスリリース
Oncopeptides、FDAが加速承認返上を要請
(2022年12月7日発表)
スェーデンのOncopeptides(Nasdaq Stockholm:ONCO)は、Pepaxto(melphalan flufenamide)の加速承認を撤回するようFDAから要請を受けたと発表した。21年に多発骨髄腫の5次治療薬として加速承認されたが、4次治療の第3相dexamethasone併用試験で全生存期間がメジアン19.7ヶ月とdexamethasone・pomalidomide併用群の25.0ヶ月を下回り、ハザードレシオ1.104(95%信頼区間0.846-1.441)と見劣りしたため、9月に開催された諮問委員会でも16人の委員中14人が便益が危険を上回るとは言えないと判定した。会社側は昨年10月に加速承認の撤回を申し入れ、販売も中止したが、前CEOが復職して撤回を撤回。今年8月にはEUで一部の患者の4次治療に承認されるなど、事態が二転三転している。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
武田のデング熱ワクチンがEUで承認
(2022年12月8日発表)
武田薬品はQdengaがEUで承認されたと発表した。米国でも審査中。4価弱毒生デング熱ワクチンで、4歳以上に90日おいて二回、皮下注する。中南米や東南アジアの風土病なので、これらの地域に長期渡航する人や、承認審査をEUなどに依存している国で使用されることになりそうだ。臨床試験では1年間のデング熱発症が偽薬比80%少なく、入院治療に至った患者は95%少なかった。4年半の追跡データでも各61%と84%少なく、効果の持続性が窺われる。
タイの大学から権利を取得し開発したInviragenを13年に買収して入手したもの。
リンク: 同社のプレスリリース(和文)
第2のIDH1阻害剤が承認
(2022年12月1日発表)
Rigel Pharmaceuticals(Nasdaq:RIGL)はFDAがRezlidhia(olutasidenib)を成人の難治再発急性骨髄性白血病用薬として承認したと発表した。このIDH1(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1)阻害剤に感受性を持つIDH1変異のある癌が適応になる。臨床試験では147人中51人、35%が完全寛解(末梢血球数の回復が部分的なCRhも含む)した。うち47人が完全寛解。メジアン反応持続期間は25.9ヶ月。有害事象は肝機能検査値以上など。
承認申請したForma Thaerapeutics(Nasdaq:FMTX)から8月に世界開発販売権を取得したもの。米国外はサブライセンスする考えだ。
IDH1阻害剤は18年に米国でAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)のTibsovo(ivosidenib)が75歳以上または強化導入化学療法に適さないIDH1変異型新患急性骨髄性白血病用薬として承認されている。Agiosはその後、腫瘍学から撤退。製品と開発品はセルビエが継承した。
リンク: Rigelのプレスリリース
Brexafemmeがカンジダの再燃予防薬としても承認
(2022年12月1日発表)
Scynexis(Nasdaq:SCYX)はBrexafemme(ibrexafungerp)を難治外陰膣カンジダ症の再燃抑制に用いることがFDAに承認されたと発表した。昨年承認された治療用途では150mg錠を二錠ずつ、一日二回、二日間服用するが、新用途はfluconazoleなどに応答した患者に150mg二錠一日二回投与を月一回、6ヶ月間行う。臨床試験では24週間無再発率が65.4%と偽薬群の53.1%を上回った(p=0.02)。有害事象は下痢、悪心嘔吐、腹痛、眩暈など。
リンク: 同社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
ゼルヤンツを55人に5年間投与すると一人余計に癌に
(2022年月日発表)
ファイザーのXeljanz(tofacitinib)はFDAの要請で実施された長期安全性確認試験で心臓や血管における血栓塞栓性疾患と腫瘍のリスクが確認され、他のJAK阻害剤も含めて、使用が制限されるようになった。このうち、癌に関する解析結果が論文発表された。
Xeljanzの5mg一日二回群と10mg一日二回群は100人年当り1.13と1.11件発生し、抗TNFアルファ抗体を投与した群の0.77を有意に上回った。リスクは服用期間と相関する模様で、Xeljanz二群のカプランマイヤー・カーブは18ヶ月が経過した辺りから抗TNFアルファ抗体の曲線と離れ始め、乖離が次第に広がっていった。5年間の癌発生率はXeljanz両群が約6%、抗TNFアルファ抗体群が約3%と倍に開いた。Number-needed-to-Halm(害必要数)は約275で、55人に5年間投与するとXeljanzは抗TNFアルファ抗体より一人多く癌を発症することになる。代表的な用途である中重度関節リウマチは5年では治らないので、もっと長く服用することになるが、5年データでも解析対象症例数がかなり減っており、6年目以降に更にリスクが高まるのかどうかはよくわからない。
リンク: Curtisらの治験論文(Annals of the Rheumatic Diseases)
今週は以上です。
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