【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- パキロビッドの標準リスク患者試験がフェール
- 6ヶ月児以上の幼小児にもワクチンがEUA
- 変異株対応ワクチンのローリング申請を開始
- その他の領域:
- 早産予防薬の承認取消は秋以降に
- 割安な抗PD-L1抗体を申請へ
- ヴァンフリタの化学療法併用試験が成功
- 小児脳腫瘍用薬を来年にも承認申請の期待
- 抗アミロイド・ベータ抗体のアルツハイマー病家系発症予防試験がフェール
- FDA諮問委員会、pimavanserinをアルツハイマー性精神症に支持せず
- MC4Rアゴニストがバルデー・ビードル症候群に適応拡大
- アルナイラムの3ヶ月毎投与型hATTR用薬が承認
- オルミエントが円形脱毛症に承認
- カナダがAmylyxのALS用薬を条件付き承認
- Clovis、PARP阻害剤の卵巣癌3次治療の承認を返上
【COVID-19関連】
パキロビッドの標準リスク患者試験がフェール
(2022年6月14日発表)
ファイザーはPaxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)の第2/3相EPIC-SR試験の途中解析結果と新規組入れ中止を発表した。主評価項目の治癒率(症状解消が4日以上続いた患者の比率)がフェールし、副次的評価項目の入院・死亡も数値上は良かったがイベント数が少なく統計的に有意ではなかったこと、そして、入院・罹患率が比較的低いオミクロン株の流行が続いていることなどが理由である模様だ。ファイザーは、今回の試験のデータも援用して、重症化リスク因子を持つ軽中等症COVID-19の治療向けに、ワクチン接種歴を問わず、米国で正式な承認申請を行う予定。
PaxlovidはSARS-CoV-2ウイルスの3CLプロテアーゼ阻害剤とその効果が低下するのを遅らせる3A4阻害剤の同梱製品。軽中等症だが重症化リスクを持つCOVID-19感染者を組入れたEPIC-HR試験が成功、21年12月から22年2月にかけて、日米欧で暫定的に承認された。この試験はワクチン接種済みの患者は対象外だったため、重症化リスク因子を持たない患者やワクチン接種済の患者を組入れた今回の試験の首尾が注目されていた。
今回、入院・死亡リスクに関するデータがアップデートされた。昨年12月までに組入れられた1153人の解析で、偽薬群は569人中10人がヒットしたのに対して、試験薬群は576人中5人に留まり、相対削減率は51%と良好だったが有意水準に達しなかった。このうち、重症化リスク因子を持つがワクチン接種済みの患者では偽薬群が360人中7人、試験薬群は361人中3人、相対リスク削減率は57%でこちらも良好だが有意ではなかった。
偽薬(A) | 試験薬(B) | B/A | |
---|---|---|---|
解析対象者数 | 569 | 576 | |
入院・死亡 | 10 | 5 | |
入院・死亡率 | 1.76% | 0.87% | 0.49 |
ワクチン接種高リスク者数 | 360 | 361 | |
入院・死亡 | 7 | 3 | |
入院・死亡率 | 1.94% | 0.83% | 0.43 |
それ以外 | 209 | 215 | |
入院・死亡 | 3 | 2 | |
入院・死亡率 | 1.44% | 0.93% | 0.65 |
EPIC-HR試験では偽薬群の入院・死亡率は6.3%だったが、今回は1.8%と、当然のことではあるが、低かった。もし4%だったらリスク削減率が51%でもギリギリ有意差が出ただろうし、治験を継続してイベントが増えればもっと良いp値が出る楽しみもあっただろう。つまり、今回の試験のフェールの一因はオミクロン株の流行と推測する。尤も、結論に異議はない。重症化リスクの低いウイルスの流行下で元々重症化リスクの小さい人にリスク抑制薬を使う意義は曖昧だ。
リンク: 同社のプレスリリース
6ヶ月児以上の幼小児にもワクチンがEUA
(2022年6月17日発表)
FDAはVRBPAC(ワクチン及び関連生物学的製品諮問委員会)を招集し、モデルナとBioNTech/ファイザーが夫々EUA(非常時使用認可)申請したCOVID-19ワクチンの幼小児適応拡大について意見を聞いた。14日はモデルナのSpikevaxを6-17歳にも認可することに22人全員が賛成、その翌日は同薬とBioNTech/ファイザーのComirnatyの適応年齢下限を6ヶ月児に変更することに21人全員が賛成した。
FDAは17日にEUA、CDC(米国疾病予防管理センター)は18日にACIP(ワクチン接種諮問委員会)を経て接種勧奨を行ない、前米での接種がオープンした。
エビデンスは免疫ブリッジング試験。中和抗体価とワクチン効率に関するデータが揃っている上の年代の中和抗体価データと比べて非劣性だった。『記述的な』ワクチン効率も、Comirnatyのように検出不足で有意差が出なかったものもあるが、数値上は良好だ。下表のように、Spikevaxの効率は年齢層毎にかなり異なるが、年齢ではなく流行株の違いが影響したようだ。12~17歳の試験は当初のD614G株やアルファ株の流行期に実施、6~11歳はデルタ株流行期、6ヶ月~5歳の試験はオミクロン株流行期で、各期における疫学研究のデータの推移と大きな食い違いはないとのことである。Comirnatyのワクチン効率ともかなり違いがあるが、同様な理由で、比較できるものかどうかは不明。
メーカー | モデルナ | BioNTech /ファイザー |
---|---|---|
商標名 | Spikevax | Comirnaty |
一般名 | elasomeran | tozinameran |
18歳以上: | 16歳以上: | |
用量 | 100mcg | 30mcg |
ワクチン効率 | 94.1% | 91.1% |
12~17歳: | 12~15歳: | |
用量 | 100mcg | 30mcg |
ワクチン効率 | 93.3% | 100% |
6~11歳: | 5~11歳: | |
用量 | 50mcg | 10mcg |
ワクチン効率 | 76.8% | 90.7% |
2~5歳: | 2~4歳: | |
用量 | 25mcg | 3mcg |
ワクチン効率 | 36.8% | 82.4% |
6~23ヶ月児: | 6~23ヶ月児: | |
用量 | 25mcg | 3mcg |
ワクチン効率 | 50.6% | 75.6% |
出所:FDAの各種資料から作成
尚、モデルナ品の接種スケジュールは第1日と29日の二回筋注で成人と同じ。一方、BioNTech/ファイザー品は6ヶ月児~4歳に関しては三回接種で、二回目は21日後、三回目はその8週間以上後となっており、完了まで3ヶ月弱かかるのが弱点。
一方、モデルナ品は若年層におけるごく稀な有害事象である心筋炎・心膜炎の報告頻度がBioNTech/ファイザー品より高いが、今回の臨床試験では発生しなかった。
リンク: FDAのプレスリリース
変異株対応ワクチンのローリング申請を開始
(2022年6月15日、17日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAは、変異株対応COVID-19ワクチンのローリング承認申請に着手したと発表した。ローリング申請は承認取得に必要な資料を逐次提出して審査してもらう制度。6月15日はBioNTech/ファイザーの、17日はモデルナの、ワクチンの審査を開始した。
内容は若干異なり、プレスリリースによれば、前者の承認申請は抗原についてはまだ流動的で、前倒し審査の対象もCMC(化学、製造、管理)に関わるものだけだ。後者はSpikevaxの抗原にオミクロン対応抗原を加えた二価ワクチンで、CMCと前臨床書類を審査する。
EUはCOVID-19ワクチン・メーカーに納入を秋以降に遅らせるよう要求した。4回目接種が想定ほど進まずワクチンが余ってきたことや、オミクロン株対応ワクチンが秋にも実用化されるなら現行のワクチンを今すぐ打つより好ましいという判断のようだ。日本にはいつ入ってくるのだろうか?
リンク: EMAのプレスリリース(6/15付)
リンク: 同(6/17付)
【今週の話題】
早産予防薬の承認取消は秋以降に
(2022年6月14日発表)
税率の低いスイスに本籍を置くCovis Pharmaは、FDAがMakena(hydroxyprogesterone caproate)に関する諮問委員会を10月17~19日に開催する予定であることを公表した。同社は承認取消を回避すべくあの手この手を使ってきたが、いよいよ正念場を迎えることになる。尤も、3年前の諮問委員会でも委員の意見は分かれたので、結末は予想しがたい。誹謗中傷規制が強化される中、言葉には気を付けなければならないが、一言だけ言わせてもらえば、もう一回臨床試験を行って薬効を確認する考えならば、なぜ、治験フェールから3年経った今になっても開始していないのか?
同社の発売当初の思惑と異なり、承認後に薬局調剤品を禁止できなかったため、価格競争力は弱い。GE薬も承認されている。開発販売会社も変遷した。再試験が始まっても完遂しないうちに事業売却されるかもしれない。Makenaが切迫早産の出産を遅らせたり、新生児の健康を向上したりすることができるのか、分からないままになった場合、どうすべきか、日本を含む世界の婦人科医は検討すべきである。
Makena問題の推移
2003年、New England Journal of Medicine誌がNIH主導試験の論文を刊行、自然単体早産歴のある妊婦の37週未満の出産リスクをhydroxyprogesteroneが抑制したことが各種メディアで報道され、普及
2006年、開発要請にKV Phamaceuticalsが手を挙げてFDAに承認申請
2008年、FDA諮問委員会で21人の委員中12人が35週前の切迫早産の予防効果を認めたが、FDAは非承認可能通知を発出
2011年、市販後薬効確認試験の開始などにより、FDAが加速承認(37週より前の自然単体早産歴を持つ女性の早産予防)。KVが薬局調剤品の100倍の価格で発売したが、政治介入などにより薬局調剤品の販売を禁止できず、半値に引き下げ。それでも需要不振で破産法適用申請
2013年、KVの会社更生が認められ、AMAGがMakina事業など、とPerrigoがそれ以外を分割買収
2019年、市販後薬効確認試験のPROLONGがフェール、35週未満の早産も新生児の有病・死亡率も偽薬群並み。FDA諮問委員会で9人が承認取消を支持、7人がもう一度薬効確認試験を促すことを支持、但し産婦人科医の委員に関しては6人中5人が再試験を支持。
2020年10月、FDAの小分子薬担当部門、CDERが自発的承認返上を推奨
同年11月、CovisがAMAGを買収
2021年8月、Covisが要請し公聴会開催決定
同年6月、諮問委員会の質問事項やブリーフィング資料の内容に関する両者の意見対立に関して、FDAの高官が裁定を下すとともに日程等を決定(但し、Makenaの発癌性に関する文献に言及すべきでないというCovidの主張については後日裁定)
同年7月17日、CovisとFDAが互いにブリーフィング資料のドラフトをこの日までに提出。その後2週間、双方の異議申し立てを受け付ける
同年9月16日、ブリーフィング資料の最終稿の提出期限
2022年10月17~19日、ORUDAC(産科、再生産、泌尿器科用薬諮問委員会)を開催予定。Covidは新たな薬効確認試験のデザイン等についてプレゼンする考え。
リンク: Covisのプレスリリース
【新薬開発】
割安な抗PD-L1抗体を申請へ
(2022年6月16日発表)
米国マサチューセッツ州のCheckpoint Therapeutics(Nasdaq:CKPT)は、CK-301(cosibelimab)のcSCC(皮膚扁平細胞癌)試験が中間解析で良好な成績を挙げたと発表した。年内に米国で承認申請する予定。類薬は多いが、同社は2-3割安価に販売する考え。
IgG1型抗PD-L1抗体で、結合持続性が高く、ADCC活性も強化されている。Fortress Biotech(Nasdaq:FBIO)が2015年にDana-Farber Cancer Instituteからライセンス、プロジェクト・ベース子会社であるCheckpoint社を設立して開発を進めている。リード・インディケーションがcSCCで、1月に転移性患者78人のORR(客観的反応率、独立中央評価)が47.4%、95%下限36.0%、反応持続期間はメジアン未達であることが発表された。今回は治癒的切除/放射線療法が適応にならない局所進行性cSCC31人が解析対象。ORR(同)が54.8%、95%下限は36.0%で閾値の25%を上回った。
非扁平上皮非小細胞性肺癌の第3相一次治療化学療法併用試験も進行中。
リンク: Checkpoint社のプレスリリース
ヴァンフリタの化学療法併用試験が成功
(2022年6月13日発表)
第一三共は昨年11月にVanflyta(quizartinib)の第3相QuANTUM-First試験が成功したと発表しているが、データをEHA(欧州血液学会)で発表した。再発治療は欧米では承認されなかったが、再チャレンジするのではないか。延命効果が確認された一方で有害事象による死亡が増加した模様なので、要注意。
急性骨髄性白血病(AML)でしばしば見られるFLT3遺伝子内縦列重複(FLT3-ITD)変異を標的とするFLT3チロシン・キナーゼ阻害剤で、19年に日本で再発難治性AMLに承認された。欧米でも申請されたが、延命効果が小さく心毒性が見られることや、臨床試験の実施状況などから、承認されなかった。
今回の試験はFLT3-ITD変異を持つ未治療AML539人を組入れて、標準的な化学療法に追加する効果を検討した。主評価項目の全生存はハザードレシオ0.776、メジアン生存期間は31.9ヶ月で化学療法だけの群の15.1ヶ月を大きく上回った。ハザードレシオは単剤をサルベージ化学療法と比較した再発治療試験と大差ないが、メジアン値の差はほぼ10倍だ。
一方で、副次的評価項目の完全寛解率や無イベント生存期間には有意差がなかった。また、治療時発現有害事象による死亡率は11.3%対9.7%で上回った。
リンク: 同社のプレスリリース(和文、pdf)
小児脳腫瘍用薬を来年にも承認申請の期待
(2022年6月12日発表)
米国南サンフランシスコのDay One Biopharmaceuticals(Nasdaq:DAWN)はDAY101(tovorafenib)の第2相FIREFLY-1小児脳腫瘍試験に組入れられた最初の25人の成績を公表した。ORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が64%と良好なもので、来年第1四半期に判明するであろう全患者のデータも良好なら承認申請に向かう考え。
Sunesis Pharmaceuticals(当時:昨年、Viracta Therapeutics(Nasdaq:VIRX)に吸収合併された)が2011年に武田薬品の米国子会社にライセンスしたタイプII汎RAFキナーゼ阻害剤で、Day Oneは20年に一部の希少疾患を除く開発販売権を取得した。
今回の試験は生後6ヶ月から25歳までの再発/進行性pLGG(小児低悪性度神経膠腫)に週一回、単剤投与した。薬効解析対象はメジアンで3治療歴を持つ22人。ORRは確認例が13人、未確認1人。19~43%縮小した疾病安定も6例あった。治療関連有害事象はCPK上昇やラッシュ、毛髪変色など。G3以上の治療関連有害事象が25人中9人、36%で発生した。
リンク: 同社のプレスリリース
抗アミロイド・ベータ抗体の家族性アルツハイマー病発症予防試験がフェール
(2022年6月15日発表)
ロシュ・グループのジェネンテックは、RG7412/MABT5102A(crenezumab)のAPI ADADコロンビア試験がフェールしたと発表した。コロンビアの常染色体優性早発性アルツハイマー病が多い家系の未発症者に抗アミロイド・ベータ抗体を3~5年投与して、認知能力や記憶力の変化を偽薬群と比較したが、小さな、有意ではない差しかなかった。データは8月2日のAAIC(アルツハイマー協会国際会議)で発表する予定。
2006年にスイスのAC ImmuneからライセンスしたIgG4型抗体で、16年に前駆・軽度アルツハイマー病の第3相を始めたが、無益中止となった。今回の試験はBanner Alzheimer's InstituteやNIH(米国立医療研究所)と共同でコロンビアで実施した。被験者252人の2/3は、典型的には44歳前後で認知障害が現れる、PSEN1(presenilin 1)のE280A変異を持っていた。
抗アミロイド・ベータ抗体の第3相が続々フェールしたころ、原点に帰ってアミロイド・ベータ蓄積につながる変異を持つ家族性早発性アルツハイマー病の試験を行うべきではないかと書いたが、こちらも行き詰った。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA諮問委員会、pimavanserinをアルツハイマー性精神症に支持せず
(2022年6月17日発表)
FDAは精神薬学的薬諮問委員会を招集し、Nuplazid(pimavanserin)をアルツハイマー患者の幻覚妄想症状の治療に用いる適応拡大について意見を聞いた。臨床試験で便益が確立したと答えた委員は3人のみで9人は反対した。審査期限は8月4日。
Nuplazidは5-HT2Aインバース・アゴニスト。ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)が開発、16年に米国でパーキンソン病患者の精神症状の治療薬として承認された。向精神薬を高齢認知症患者に用いると死亡リスクが高まることが枠付警告されている。
同社は第3相試験一本と補助的エビデンスとして第2相試験のデータを提出した。前者は中間解析で成功認定されたが、FDAの分析によると、大きな効果があったのはパーキンソン病患者などで、被験者の2/3を占めるアルツハイマー病では(検出力不足もあり)有意水準に達していない。後者は治験デザインや薬効評価方法、治療効果の臨床的な意義、副次的評価項目はフェールしたことなどに、FDAが疑問を呈していた。
アルツハイマー病性精神症は、FDAの度重なる警告にもかかわらず様々な向精神薬がオフレーベル使用されており、充足されないニーズの大きさが窺われる。Nuplazidが承認されれば良かったが、クラスレーベルである死亡リスクの上昇を正当化できるだけの便益を確立するのは容易ではない。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
スキリージがクローン病に適応拡大
(2022年6月17日発表)
アッヴィはSkyrizi(risankizumab-rzaa)を成人の中重度活性期クローン病の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。抗IL-23p19抗体がこの用途で承認されるのは初。最初の3回は4週おきに600mgを1時間点滴静注し、第12週からは360mgを8週毎に自己皮注する。維持用量は180mgも申請した模様だが、未だ審査中。日欧でも申請中。
寛解導入試験二本と維持試験で内視鏡的奏効率と臨床的寛解率が偽薬を有意に上回った。
リンク: 同社のプレスリリース
MC4Rアゴニストがバルデー・ビードル症候群に適応拡大
(2022年6月16日発表)
FDAはRhythm Pharmaceuticals(Nasdaq:RYTM)のImcivree(setmelanotide)を6歳以上のバルデー・ビードル症候群患者の肥満症に適応拡大した。米国で1500~2500人が罹患する希少疾患で、症状の一つである肥満症は治療が中々成功せず、医薬品が承認されたのは初めて。
44人の患者を組入れて一日一回皮注した偽薬対照試験では、52週後のBMI(ベースライン値は41.8kg/m2)が平均7.9%低下した。14週の偽薬対照期間中の低下は4.6%で偽薬群の0.1%と有意な差があった。
食欲制御に係るメラノコルチン-4受容体のアゴニストで、2020年に米国で、21年にはEUでも、同じく食欲制御に係るPOMC、PCSK1、またはLEPRの欠病症による6歳以上の肥満症用薬として承認された。
尚、バルデー・ビードル症候群とともに臨床試験に組み込まれたアルストレム症候群に関しては、被験者数が少なかったせいか、成績が今一つだったせいか、審査完了通知を受領した。
この薬の注意すべき有害事象は、性感障害や長時間勃起、自殺思慮・鬱病、皮膚色素沈着など。適応外だが新生児や乳児に投与するとベンジルアルコールによる深刻/致死的なGasping症候群のリスクがある。
リンク: FDAのプレスリリース
アルナイラムの3ヶ月毎投与型hATTR用薬が承認
(2022年6月13日発表)
アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)は、Amvuttra(vutrisiran)がhATTR(家族性トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス)患者のポリニューロパチー治療薬としてFDAに承認されたと発表した。122人に25mgを3ヶ月毎に皮注した臨床試験で9ヶ月後のmNIS+7スコアが2.24ポイント低下した。対照群に設定された、同社のOnpattro(patisiran)の試験の偽薬群は14.76ポイント上昇だったため、有意な差があった。
18~19年に米欧日で同じ適応症に承認されたOnpattroと同様なRNA介入薬で、違いは、Onpattroは3週毎点滴静注であること。
リンク: 同社のプレスリリース
オルミエントが円形脱毛症に承認
(2022年6月13日発表)
イーライリリーは、JAK1/2阻害剤のOlumiant(baricitinib)を重度円形脱毛症の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。2mg一日一回経口投与で開始し、反応が不十分なら4mgに増量を検討、応答したら2mgに減量を検討する。米日などで実施された第3相試験二本で、毛髪が頭皮の80%以上を占めた患者の比率が一本では偽薬群5%、2mg群22%、4mg35%、もう一本では各3%、17%、33%だった。二本のプール分析で、ベースライン時点で占有0~5%のみだった患者では各群1%、10%、21%。6~50%だった患者では8%、33%、48%だった(50%超は治験の対象外)。
すごい効果だが、JAK阻害剤は深刻な有害事象のリスクも持っているので要注意。また、JAK阻害剤の第2相試験では脱毛してから何年も経った患者には十分な効果が見られず、上記試験は8年以上経った患者は除外したが、レーベル上は言及されておらず、このような人にもリスクに見合う効果があるのかどうか、曖昧だ。
リンク: 同社のプレスリリース
カナダがAmylyxのALS用薬を条件付き承認
(2022年6月13日発表)
Amylyx(Nasdaq:AMLX)はAMX0035(sodium phenylbutyrateとtaurursodiolの経口懸濁液用粉末製剤)をALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として開発、欧米などで承認申請したが、昨年6月に最初に申請したカナダで承認されたと発表した。24年に結果が出る見込みの第3相試験で薬効を確認する条件付き。薬価収載を経て数ヶ月後に発売する見込み。
昨年11月に申請した米国は、FDAがエビデンスの頑強性に疑問を持ち、諮問委員会も薬効確立と考える委員が4人、考えない委員が6人と評価が分かれた。審査期限は3ヶ月延長され9月29日になった。EUは今年1月に申請。
リンク: 同社のプレスリリース
リンク: カナダのプロダクト・モノグラフ(pdf)
【医薬品の安全性】
Clovis、PARP阻害剤の卵巣癌3次治療の承認を返上
(2022年6月16日発表)
Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)は、SECに提出した適時開示報告、フォーム8-Kの中で、FAP-2286の第1相試験途中データやPARP阻害剤Rubraca(rucaparib)の卵巣癌二次治療後維持療法試験の全生存期間途中解析結果について報告した後に、RubracaのBRCA有害変異型卵巣癌3次治療に関する米国の承認を返上したことを明らかにした。難治性卵巣癌で白金薬ベースの二次治療に完全/部分反応した患者の維持療法や、BRCA有害変異のある去勢抵抗性前立腺癌でアンドロゲン標的薬歴や化学療法歴を持つ患者の適応は維持している。
この適応は16年に新薬として加速承認された時のもの。卵巣癌二次治療後維持療法偽薬対照試験が成功したため、18年に本承認に切り替わった。ところが、PFS(無進行生存期間)を延ばす効能を確認するBRCA有害変異卵巣癌の3次治療化学療法対照試験(ARIEL4)で、主目的は達成したものの、全生存のハザードレシオが1.55、メジアン生存期間は19.6ヶ月対27.1ヶ月と見劣りした。
上記維持療法試験でも全生存期間の中間解析はハザードレシオが1前後と失望的に推移している。
Rubracaの需要に占める3次治療の割合は低いため、収益影響は小さい模様。
リンク: 同社の8-K(SECのEDGARサイト)
今週は以上です。
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