2021年9月24日

第1018回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • 高リスク限定でコミナティの三回目接種がEUA 
  • コミナティを5~11歳にも申請へ 
  • JNJ、一回投与型ワクチンの二回接種試験が成功 
  • ベクルリーの外来治療試験が成功 
  • その他の領域: 
  • アステラス、更年期障害用新薬の第3相結果を発表 
  • ESMO:キイトルーダのTNBC一次治療試験、全生存期間の解析も成功 
  • ブルーバード、ベータ・サラセミアの遺伝子治療を米国でも承認申請 
  • BMS、抗LAG-3抗体合剤を承認申請 
  • スキリージをクローン病に承認申請 
  • リズム社、MC4Rアゴニストをバルデー・ビードル症候群などに適応拡大申請 
  • 伝染性軟属腫治療薬の承認がCMO問題により遅延 
  • インサイト、JAK阻害剤の局所用新製剤がアトピーに承認 
  • ジャカビが慢性の移植片対宿主病に適応拡大 
  • 抗TF抗体薬物複合体が子宮頸癌二次治療に承認 
  • カボメティクスが分化甲状腺癌に適応拡大 




【COVID-19関連】


高リスク限定でコミナティの三回目接種がEUA
(2021年9月22日発表)

バイデン米国大統領は9月20日の週からCOVID-19ワクチンのブースター接種を開始する考えだったが、FDAはBioNTech/ファイザーのComirnaty(tozinameran、和名コミナティ)の三回目接種を一部の人にしかEUA(非常時使用認可)しなかった。両社は16歳以上の全人口を対象にEUAではなく正式な承認を求めていた。Modernaのワクチンは申請/審査手続きが終わっておらず、政府の構想は大きく後退した。

Comirnatyの現在の適応をまとめると、16歳以上に21日置いて二回のプライマリー接種は正式承認、12~15歳はEUA。臓器移植レシピエントなど免疫不全に二回目の28日後に三回目のプライマリー接種はEUA。そして、今回、以下の人たちに二回目から少なくとも6ヶ月置いてブースター接種を行うことがEUAされた。

・65歳以上
・18~64歳で重症COVID-19感染症のリスクが高い人
・18~64歳で施設内/職業的曝露により重症感染症などの深刻合併症リスクが高い人(介護施設入居者/従事者や医療従事者など)

VRBPAC(ワクチン及び関連生物学的製品諮問委員会)の判断を踏襲した格好だ。(米国大統領は学術会議会員を選定する権限を持っていないのかな。いい国だな)

リンク: Cimirnatyの医療従事者向け文書



コミナティを5~11歳にも申請へ
(2021年9月20日発表)

BioNTech(Nasdaq:BNTX)とファイザーは、5~11歳におけるCOVID-19ワクチンComirnaty(tozinameran、和名コミナティ)の免疫原性や安全性を確認した試験がポジティブな結果になったと発表した。4500人級の大規模小児試験の、当該年齢を組入れた第2/3相コフォートの解析で、10mcgを3週置いて二回接種したところ、GMT(幾何平均抗体価)が1,197と、30mcgを3週置いて二回接種した16~25歳の外部対照群の1,146と非劣性だった。副作用も同様だった。米国はEUA、EUは条件付き承認、などを申請する予定。

2~5歳と6ヶ月~2歳のコフォート(どちらも3mcgを3週置いて二回接種)も進行中で年内に結果が出る見込み。

COVID-19ワクチンは接種者の感染リスクや感染入院リスクを削減するが、他人にうつすリスクが減るかどうかは判然としない。海外では接種が進むにつれて行動規制が緩和され、マスクを外すことも容認されるようになったが、もし、自分は感染しても発症しないが他人にはうつす人たちが活発に行動するようになったら、接種していない人のリスクが高まってしまう。規制緩和に乗じて非接種なのにマスクを外す人もいるだろう。多様性を尊重しなければならない時代なので自業自得ではなく自己リスクと表現せざるを得ないが、子供や已むを得ない理由で接種できない人達には手を差し伸べなければならない。

リンク: 同社のプレスリリース



JNJ、一回投与型ワクチンの二回接種試験が成功
(2021年9月21日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはアデノウィルス26型をベクターとするCOVID-19ワクチンを開発、今年2月に米国でEUA(非常時使用認可)、3月にEUで条件付き承認を得ている。同社は接種回数を一回に留めて第3相を行ったが、英国政府などの要請に応じて二回接種を検討したENSEMBLE 2試験も成功したことが発表された。ワクチン効率や抗体価は一回接種試験のデータより良好だ。

この試験は、一回接種のENSEMBLE試験と同様に18歳以上の健常者を組入れて、8週置いて二回接種する効果を偽薬二回と比較した。目標組入れ数はClinicalTrials.govによると3万人。メジアン追跡期間は二回接種完了後36日間で、一回投与試験やmRNAワクチンの第3相試験の約2ヶ月間と比べても短い。

JNJの試験は中等症以上の感染症だけに絞り込んで評価しているのが特徴。ワクチン効率は75%と一回投与試験の67%より上向いた。米国だけのデータは各94%と74%。但し、直接比較試験ではないので、流行株や被験者の行動態様など第3の因子が影響している可能性もある。

抗体価は一回目の接種の後と比べて4~6倍に高まり、8週ではなく6ヶ月後に接種した症例では12倍に上昇したとのこと。ワクチン効率とどのように相関するのかはプレスリリースには記されていない。最近の重要なテーマであるデルタ株に関する分析も記されていない。

一回接種と二期接種

ENSEMBLE 1ENEMBLE 2
被験者数約4万人約3万人
接種日第1日第1日と第57日
メジアン追跡期間:8週間5週間
ワクチン効率(2週後以降):
中等症以上の感染症67%75%
(米国)(74%)(94%)
(海外)(61%)(75%)
注:一回接種はFDA諮問委員会用資料、二回接種は下記プレスリリースのデータを採用(但し、一回接種の海外データは南アフリカとラテンアメリカのデータから算出)。

リンク: 同社のプレスリリース



ベクルリーの外来治療試験が成功
(2021年9月22日発表)

ギリアド・サイエンシズはVeklury(remdesivir、和名ベクルリー)の第3相非入院治療試験が成功したと発表した。効果は抗SARS-CoV-2抗体と大きな差がないように感じられるが、一回ではなく三回点滴静注なので、外来治療にせよ往診治療にせよ、ロジスティクスが不便だ。22年に経口剤の治験許可申請を行う予定。

このPINETREE試験は発症から7日以内、診断から4日以内に治療を着手できる外来患者1264人を組入れる予定だったが、抗SARS-CoV-2抗体の登場などにより、今年4月に組入れを繰上げ終了し、既組入れの562人で二重盲検試験を行った。初日は負荷用量で200mg、2日目と3日目は100mgを一日一回投与した(承認用法は5~10日間連続投与)。

主評価項目の28日間のCOVID-19関連入院/全死亡リスクは、試験薬群は0.7%、偽薬群は5.3%、ハザードレシオ0.13、p=0.008となった。両群とも死亡者はゼロ。安全性は過去の試験と同様だった由。

リンク: 同社のプレスリリース


【新薬開発】


アステラス、更年期障害用新薬の第3相結果を発表
(2021年9月22日発表)

アステラス製薬は、NK3受容体拮抗剤fezolinetantの第3相更年期障害試験の結果をNAMS(北米閉経学会)で発表した。閉経に伴う中重度VMS(血管運動神経症状)の患者を偽薬、30mg、または45mgを一日一回経口投与する群に無作為化割付して、両用量の第4週と第12週の発症頻度と重症度という8つの主評価項目を検討した欲張りな試験で、今年2月に二本とも全主評価項目が成功したことが発表されているが、今回、約500人を組入れたSKYLIGHT 2試験のデータが公表された。

まず、30mgと45mgの各群の中重度VMS平均頻度(ベースライン値は11.5/日)は、4週時点で偽薬群より各1.82と2.55多く改善、12週時点では各1.86と2.53多く改善した。何れもp≦0.001。尚、学会抄録によると偽薬群は4週時点で3.5、12週時点では4.8改善しており、偽薬効果が治療効果と比べてもかなり大きいことが窺われる。

同様に、平均重症度(ベースライン値は2.42)は4週時点で各0.15と0.29多く改善、12週時点でも0.16と0.29改善した。45mg群はp≦0.001だが30mg群はp≦0.021とp=0.049なので、有意性はそれほど高くはない。尚、偽薬群は0.3と0.46改善しており、ここでも偽薬効果がかなり大きかった。。

統計解析の厳格性という点で私が敬意を持っているのはMSDとエーザイだ。一方、直接比較試験で複数の副次的評価項目の非劣性検定と優劣性検定を行い、一つでも後者が成功したら大々的に喧伝する製薬会社もある。今回の試験は主評価項目なのでデータ自体は信頼性が高いと推測されるが、多重性の補正をどのように行ったのか、明らかではない。学会抄録にはunajusted pと記されているが、何を調整していないのか、調整後pはいつ公表されるのか、記されていない。

SKYLIGHT 1試験のデータは別途発表されるのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース(和文)



ESMO:キイトルーダのTNBC一次治療試験、全生存期間の解析も成功
(2021年9月19日発表)

MSDはKeytruda(pembrolizumab)の第3相KEYNOTE-355試験の共同主評価項目である全生存期間の解析が成功したと発表した。切除不能/転移トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療として、paclitaxelまたはnab-paclitaxel乃至はcarboplatin・gemcitabine併用レジメンに追加する効果を偽薬追加群と比較した試験で、もう一つの評価項目であるPFS(無進行生存期間、独立盲検評価)は、昨年、PD-L1高発現(CPS≧10)のサブグループに関して成功したことが発表されている。今回も同じサブグループで全生存期間ハザードレシオが0.73、p=0.0093、メジアン値は23ヶ月対16.1ヶ月と7ヶ月程度の延命効果が見られた。併用薬毎の解析でも大きな食い違いはなかったようだ。

Keytrudaは本試験のPFSデータに基づき昨年米国で加速承認され、ネオアジュバント試験の成功により今年7月、本承認に切り替わった。日本では先月承認、EUでは今月、CHMPで肯定的意見を得たところ。従って、今回の発表で適応が新たに増える訳ではないが、延命効果が確認されなかった抗PD-1/PD-L1抗体も存在するので、きちっとしたエビデンスができたことは一安心だ。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認申請】


ブルーバード、ベータ・サラセミアの遺伝子治療を米国でも承認申請
(2021年9月21日発表)

bluebird bio(Nasdaq:BLUE)は、 betibeglogene autotemcel(通称beti-cel)の米国におけるローリング承認申請を完了したと発表した。目標適応症は成人青少年の輸血に依存するベータ・サラセミア。

この疾患はベータ・グロブリンの遺伝子異常によりヘモグロビンが不足又は欠乏する重症遺伝子疾患。世界で28万人が罹患と推測されている。治療は同種幹細胞移植が有効だが適合するドナーが見つかるとは限らない。beti-celは自己不活化レンチウイルスにベータ・グロブリン遺伝子を組入れたin vivo遺伝子療法。臨床試験では19人中15人が輸血不要になり、19年にEUで条件付き承認された。EUの適応は、12歳以上の輸血依存ベータセラサミアで造血幹細胞移植が適応になるがマッチするドナーがいない患者。ヘモグロビンを殆ど作れないベータ0/ベータ0遺伝子型は適応外となったが、米国での申請は限定していないようだ。

レンチウイルスはRNAウイルスで、逆転写によりDNAが生成され、ウイルスインテグラーゼにより宿主ゲノムに挿入される。分裂していない細胞のゲノムにも入ることができる。被験者のうち数人が血液癌を発症したため一時的に治験停止となったが、ゲノム解析の結果、変なところにウイルスの遺伝子が組み込まれたことが原因ではないことが示唆された。

リンク: 同社のプレスリリース



BMS、抗LAG-3抗体合剤を承認申請
(2021年9月20日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、抗LAG-3抗体BMS-986016(relatlimab)と抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)の固定用量合剤(FDC)をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年3月19日。12歳以上かつ体重40kg以上の切除不能/転移黒色腫に用いることを想定している。

第2/3相RELATIVITY-047試験では、未治療患者714人をFDCとOpdivoに無作為化割付してOpdivoは480mg、relatlimabは160mgを4週毎点滴静注したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.75、p=0.0055、メジアン値は各10.1ヶ月と4.6ヶ月だった。G3/4の治療関連有害事象発生率は各18.9%と9.7%、G5は3人と2人、治療関連有害事象による治験離脱率は14.6%と6.7%だった。

抗LAG-3抗体はイフェクターT細胞や制御的T細胞が発現する免疫チェックポイント受容体をブロックする。抗PD-1抗体は様々なチェックポイント阻害剤と併用試験が行われているが、最も有望なパートナーの一つと考えられていた。

リンク: BMSのプレスリリース



スキリージをクローン病に承認申請
(2021年9月20日発表)

アッヴィはSkyrizi(risankizumab-rzaa、和名スキリージ)を16歳以上の中重度潰瘍性大腸炎の寛解導入や寛解維持に用いる適応拡大をFDAに申請した。第3相寛解導入試験二本では、偽薬、600mg、または1200mgを点滴静注した各群の臨床的寛解率(CDAI基準)が一本は25%、45%、42%、もう一本は19%、42%、41%となり、二用量とも偽薬比有意だった。寛解導入試験の試験薬群の患者を偽薬、180mg、または360mgを皮注する群に無作為化割付したした第52週寛解維持試験(離脱試験)は臨床的寛解率が各41%、55%、52%となり、二用量とも偽薬比有意だった。但し、180mgはEUの要求に応じて設定した主評価項目がフェールした。そのせいか、寛解導入は600mg、維持は360mgを申請した。

Skyriziは抗IL-23p19抗体。日米欧で乾癬治療薬として承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース



リズム社、MC4Rアゴニストをバルデー・ビードル症候群などに適応拡大申請
(2021年9月20日発表)

Rhythm Pharmaceuticals(Nasdaq:RYTM)は、Imcivree(setmelanotide)を6歳以上のバルデー・ビードル症候群(BBS)やアルストレム症候群(AS)の肥満症や食欲抑制に用いる適応拡大をFDAに申請した。EUでも第4四半期に申請予定。

Imcivreeはメラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニスト。過去の開発品と異なり血圧上昇リスクが見られない。2010年にイプセンから世界市場での権利をライセンス、2020年に米国でPOMC、PCSK1、またはレプチン受容体の欠乏による6歳以上の肥満症の治療薬として米国で承認され、翌年、EUでも承認された。

今回の二疾患も希少遺伝子疾患で、網膜色素変性症、難聴、肥満などを伴う。第3相試験はBBS患者32人とAS患者6人を組入れて一日一回皮注したところ、主評価項目である12歳以上のサブグループにおける10%以上の減量を、BBSでは28人中11人が達成、ASでは3人とも達成できなかった。治療時発現有害事象は注射箇所反応や悪心嘔吐など。

今回の目標適応である6歳以上の集団におけるデータやASにおける便益の裏付けとなるデータは未公表。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認審査・委員会】


伝染性軟属腫治療薬の承認がCMO問題により遅延
(2021年9月30日発表)

Verrica Pharmaceuticals(Nasdaq:VRCA)はVP-102(cantharidin局所用液)を伝染性軟属腫治療薬として承認申請したが、第2巡も審査完了となった。昨年の審査完了通知ではCMC(化学・製造・管理)における欠陥や、患者がアプリケータを正しく使えるか十分に検討していないことなどが指摘されていたが、今回は、製造委託先の、VP-102の製造とは直接関係のない、体制不備がネックだったようだ。Verricaによると、当該委託先は30事業日内の問題解決を計画しているとのことだが、製造問題はしばしば長引くので油断はできない。

伝染性軟属腫は皮膚に蝋または真珠のような丘疹ができる。米国で推定600万人が罹患、多くは小児。カンタリジンはある種の昆虫が持つ成分で、皮膚に水疱を起こすため、再生が促がされる。日本で承認されていたこともあるようだ。VP-102は新開発の使い捨てアプリケータを用いて投与する。日本は今年3月に鳥居薬品がライセンスした。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認】


インサイト、JAK阻害剤の局所用新製剤がアトピーに承認
(2021年9月21日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は、FDAがOpzelura(ruxolitinib)をアトピー性皮膚炎の治療薬として承認したと発表した。骨髄異形成症候群などの治療薬として承認されているJakafi(和名ジャカビ)の活性成分をクリーム化した新製剤で、適応になるのは、12歳以上で、局所性処方薬に十分応答しないまたは不適の、免疫不全ではない、軽中度アトピー性皮膚炎。常用ではなく、間歇的な慢性使用または短期間使用する。

JAK阻害剤のクラス・ウォーニングである以下の有害事象が枠組み警告された。
・入院や死亡の可能性もある深刻感染症
・炎症性疾患の治療に用いると全死亡や主要有害心臓イベントが増加したり、リンパ腫などの腫瘍や深刻で命に係わることもある血栓症が発生することがある

Opzeluraの臨床試験では顕著なリスクは見られなかったが、長期安全性確認試験は実施されていないので、良く分からない。

局所性製剤にすることで全身性曝露をどの程度抑えられたのだろうか?レーベルによると、成人小児患者41人のPK試験(一回用量は1.2~37.6g、一日二回、28日間投与)で初日のCmax(最高血中濃度)は平均449nM、AUC0-12(投与後12時間の血中濃度の曲線下面積)は平均3215nM時だった。反復投与しても蓄積は見られなかった。用量は患部の面積に応じて変動するが、一週間の累積用量を60g(チューブ一本分)以下に抑えるよう注意書きがあるので、これらの数値を過小評価と考える必要はないだろう。

一方、JakafiのPK試験(5~200mgを一回投与)ではCmaxが205~7100nM、AUCは862~30700nM時のレンジだった。用量とCmax、AUCは相関したとのことなので、Opzeluraの全身性曝露はJakafiの推奨開始用量レンジである5~20mgと大差なさそうだ。

さて、FDAはJAK阻害剤の上記リスクを懸念、数多くの新薬や適応拡大の承認審査が遅延していたが、遂に流れ出したと推測される。承認されている用途ほど深刻ではない疾患であるように感じられるアトピーで承認されたことは他社のJAK阻害剤にもポジティブだろう。

ところで、アトピー性皮膚炎の新薬として人気を集めたカルシニューリン阻害剤に発癌性が確認された15年ほど前の事件の記憶はどの程度残っているだろうか。

リンク: 同社のプレスリリース



ジャカビが慢性の移植片対宿主病に適応拡大
(2021年9月22日発表)

FDAはインサイト(Nasdaq:INCY)のJakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)を慢性のステロイド不応GvHD(移植片対宿主病)に用いる適応拡大を承認した。12歳以上で1~2種類の全身性治療がフェールした患者が適応になる。臨床試験では、24週間のORR(客観的反応率)が70%と最良既存療法の57%を上回った。メジアン反応持続期間は各4.2ヶ月と2.1ヶ月だった。Jakafiを投与した230人中5人が中毒性表皮壊死症や好中球減少症、貧血、且つ又血栓性血小板減少症の有害事象により死亡した。

JakafiはJAK1/2阻害剤で骨髄線維症などの治療に用いられている。造血幹細胞移植などの合併症で移植された細胞がレシピエントの組織を攻撃するGvHDでは、急性型に用いることが米国では19年に承認されている。急性は移植後100日以内、慢性は100日以降に発症することが多いようだ。急性の開始用量は5mg一日二回だが慢性は10mg一日二回。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: インサイトのプレスリリース



抗TF抗体薬物複合体が子宮頸癌二次治療に承認
(2021年9月20日発表)

デンマークのジェンマブ(Nasdaq:GMAB)と共同開発販売パートナーのSeagen(Nasdaq:SGEN)は、FDAがTivdak(tisotumab vedotin-tftv)を治療歴のある難治転移子宮頸癌用薬として加速承認したと発表した。白金薬レジメンなど1~2次治療歴を持つ患者101人を組入れて、2mg/kg(最大200mg)を3週毎に30分点滴静注した第2相試験で、確認ORR(客観的反応率、独立評価委員会)が24%、メジアン反応持続期間は8.3ヶ月だった。直接比較試験ではないが、ORRの数値はMSDのKeytruda(pembrolizumab)より高い。

枠組み警告は角膜上皮や結膜の障害。深刻な視力低下を招く可能性もある。上記試験では眼球表面の活性期疾患や瘢痕性結膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、G2以上の末梢神経症、凝固障害による高出血リスクは除外条件だった。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース(9/21付)



カボメティクスが分化甲状腺癌に適応拡大
(2021年9月17日発表)

Exelixis(Nasdaq:EXEL)は、Cabometyx(cabozantinib、和名カボメティクス)を分化甲状腺癌に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。12歳以上で他のVEGFR阻害剤による治療歴を持ち放射線ヨウ素に抵抗性または不適の局所進行性/転移分化甲状腺癌が適応になる。

60mgを一日一回経口投与した第3相試験では、PFS(無進行生存期間、盲検独立放射線学委員会評価)がメジアン11.0ヶ月と偽薬群の1.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.22、p値は0.0001を下回った。

Cabometyxは腎臓や肝臓の癌にも承認されている。甲状腺癌では、錠剤ではなくカプセル剤のCometriqが進行/転移甲状腺髄様腫に承認されている。日本では武田薬品がライセンス、根治切除不能または転移性の腎細胞腫に単剤またはオプジーボ(ニボルマブ)と併用することが承認されている。

リンク: Exelixisのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース(9/22付)





今週は以上です。

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