【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- FDA諮問委員会、バイデン政権のブースター接種計画に反対
- リリーの抗SARS-CoV-2抗体も暴露後予防にEUA
- その他の領域:
- ESMO:エンハンスト・ハーツーの好成績が続々披露
- ESMO:キイトルーダの黒色腫補助療法と子宮頸癌一次治療データ
- アステラスの遺伝子療法で4人目の死亡者
- リンヴォックを潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
- 百済神州、抗PD-1抗体を米国で承認申請
- CHMP、抗癌剤などの承認に肯定的意見
- 武田、Ariadの第3の医薬品が承認
- 百済神州、BTK阻害剤が米国で適応拡大
【COVID-19関連】
FDA諮問委員会、バイデン政権のブースター接種計画に反対
(2021年9月17日発表)
FDAはVRBPAC(ワクチン及び関連生物学的製品諮問委員会)を招集し、BioNTech(Nasdaq:BNTX)がファイザーと共同で承認申請した、COVID-19ワクチンComirnaty(tozinameran)のブースター・ショットの便益と危険について意見を聞いた。ファイザーは二回接種を終えてから6ヶ月以上経った16歳以上の全人口を適応とする考えだったが、16対2の圧倒的多数が反対した。一方、65歳以上の高齢者と感染したら重症化するリスクのある人(基礎疾患のある人など)に関しては、全員が賛成した。公式な採決ではないが、後者に医療従事者のような感染リスク自体が高い人を含めることも支持された。
バイデン政権は9月20日の週から接種完了後9ヶ月経った人のCOVID-19ワクチンのブースター接種を開始する予定だが、FDAの中には否定的な意見も多いようで、この件が引き金になったのかトランプ大統領時代の政策のせいなのかは分からないが、ワクチンを担当するCBERの高官二名が退職を決めたという。この諮問委員会にも影を落としており、通常は一週間前に委員用ブリーフィング資料と共に公表される諮問事項が、直前になって一つ公表されただけだった。ファイザーのブースター接種の投与実績は数百人とワクチンとしては少なく、低年齢や高齢者は特に少なかったので、この質問にYesと答えるのは困難であり、クリーブランド・クリニック時代から一部製薬会社のスタンスを厳しく批判し続けているScripps ResearchのEric Topol博士の言葉を借りれば、フェールすべくしてフェールした。
ファイザーの申請内容に即して議論するのは当然だが、FDAは範囲を狭めたり広げたりすることがしばしばある。65歳以上の高齢者や基礎疾患を持つ人に限定した第二の諮問事項は、通常なら、一週間前に開示されていたはずだ。議論をall or nothingに誘導して承認申請を潰すことを企図した勢力が存在するのだろう。
ブースター接種の必要性に関するエビデンスは、今のところ、前向き臨床試験のエビデンスはそれほどでもなく、ワクチン効率は経時的に減衰するが酷く低下する訳ではなく、重症感染を減らす効果はかなり維持されている。抗体価の推移の研究でも大きな低下はまだ見られない。一方、イスラエルの研究を始めとする後顧的疫学試験の幾つかでは、特にデルタ株が主流になった後に、効果の顕著な低下が示唆された。今すぐブースターが必要なのか、それとも早計なのかは、どちらを信じるかによって大きく変わる。
イスラエルの研究については、ブリストル大学の研究者のプレゼンの中で、群間の観察期間の違いを調整し人年ベースで比較すればNew England Jounal of Medicine誌に刊行されたデータほど悪い数値にはならないと指摘したと報じられている。このような交通整理をもっと沢山、行ってほしいものだ。
ブースター接種に反対する人たちの主要な論拠の一つはワクチンの需給が逼迫し低所得国での普及が妨げられる懸念があることだが、諮問委員会会長は、この点を考慮しないよう委員に念を押した。委員会の役割を考えれば当然だろう。
諮問委員会を経てFDAがどのような結論を出すのか、極めて不透明な状況にある。組織である以上、上層部の判断には従わなければならないが、政府にしたって、対象年齢を何歳からにするかはFDAの意見を聞く考えだし、接種完了の8ヶ月後というタイミングは、前回書いたように、腰だめで強固なエビデンスがあるわけではないのだから、当面は65歳以上かつまた感染・重症化高リスクに限定するような譲歩の余地もありそうだ。
尚、この承認申請は正式なsBLAだが、FDAはEUA(非常時使用認可)の是非を諮問した。
リンク: ファイザーのプレスリリース
リリーの抗SARS-CoV-2抗体も暴露後予防にEUA
(2021年9月16日発表)
FDAは、イーライリリーがカナダのAbCellera Biologicsや中国のJunshi Biosciencesから夫々ライセンスして開発した二種類の抗SARS-CoV2抗体、bamlanivimabとetesevimabを併用で、COVID-19感染者と濃厚接触した人の曝露後予防に用いることをEUA(非常時使用認可)した。リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)のREGEN-COV(casirivimab、imdevimab、和名ロナプリーブ)も7月に同内容のEUAを得ている。尚、曝露後予防はワクチン接種の代替になるものではないことをFDAは強調している。
適応になるのは、以下の条件をすべて満たす人だ。
・12歳以上且つ体重40kg以上
・COVID-19感染者と濃厚接触した、または同じ施設(介護施設や刑務所など)に入居している
・感染した時の重症化(入院や死亡を含む)リスクが高い
・ワクチン接種を完了していない、または、完了しているが十分な免疫を期待できない(免疫低下を伴う持病や免疫抑制剤治療中)
濃厚接触はCDC(米国疾病管理予防センター)基準により、感染者から6フィート(約1.8m)以内の場所に、24時間の中で合計15分以上、過ごした人。日本基準より厳しい。映画館やスタジアムの席は一席毎に座っても日本の基準を満たせないが、米国基準は2席ずつ空けても充足できず、前後の席も空けなければならないだろうから、かなり厳しい。
薬効のエビデンスはbamlanivimabだけを投与した臨床試験の高リスク・サブグループ分析。一回投与後8週間の症候性感染が偽薬群より7割少なかった。エビデンスのないetesevimab併用だけをEUAしたのは、bamlanivimab単剤はエプシロン株(カリフォルニア型変異)やB.1.525変異(ニューヨーク型)、ベータ株(南ア型)やガンマ株(ブラジル/日本型)の感受性が低く、イーライリリーが治療に関するEUAを返上した経緯があるからだろう。併用してもベータ株やガンマ株には有効性が期待できないが、デルタ株が席巻している現状では大きな問題ではなさそうだ。
よくわからないのがワクチン接種完了者を原則適応外とした根拠。ワクチンが予防してくれるはずだから不要、というだけの理由なのか、それとも、臨床試験の裏付けがあるのだろうか。治療試験では、感染して自力で抗体を作れた患者には効果が見られなかった。適応外になっていないのは、おそらく、事前抗体検査を義務付けると治療開始が遅れ、そうでなくても狭いセラプティック・ウインドウが更に狭くなってしまう懸念があるからだろう。曝露後予防は、予防というよりは感染が確認される前の段階で見込みで治療を開始するようなものなので、ワクチンや自力で抗体を獲得できた人には無効でも不思議はなく、ワクチン接種歴によるスクリーニングは手間暇がかからないので、適応に含めたのかもしれない。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: イーライリリーのプレスリリース
【新薬開発】
ESMO:エンハンスト・ハーツーの好成績が続々披露
(2021年9月18日発表)
第一三共と開発販売パートナーのアストラゼネカは、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)で、抗he2抗体・薬物複合体のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、和名エンハーツ)の乳癌、肺癌、胃癌試験の成績を発表した。何れも良好だが特にロシュの同様な抗体薬物複合体であるKadcyla(ado-trastuzumab emtansine)との直接比較で大きな差を付けたのが印象的。
第3相DESTINY-Breast03試験はher2陽性切除不能/転移乳癌でtrastuzumabとタクサン系抗癌剤による治療歴を持つ患者を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をKadcylaと比較した。結果はハザードレシオ0.28(95%信頼区間0.22-0.37)となり、Enhertu群はメジアン未達だが、治験医評価ではハザードレシオ0.26、メジアン25.1ヶ月、対照群は7.2ヶ月と1年以上の差を付けた。
副次的評価項目である全生存期間の解析は未成熟だが、ハザードレシオ0.56、p=0.007、1年生存率は94.1%対85.9%と少なくとも今のところ、良さそうな数値が出ている。Enhertuは過去の試験で間質性肺疾患/肺臓炎(以下、ILD/P)のリスクが散見されたが、この試験では治療関連と見なされるG4以上の症例は発生しなかった。尚、Enhertuの多くの試験ではILD/Pでステロイド治療を受けたことのある患者や、現在ILD/Pであることが否定できない患者を除外している。
EnhertuはKadcylaの次に使う3次治療薬として承認されているが、2次治療ステップアップの目途がついた。また、本試験は米国で加速承認された時の市販後コミットメントなので、3次治療が本承認に切り替わるだろう。一方、欧州の市販後コミットメントは条件付き承認と同じ3次治療のDESTINY-Breast02試験であるようだ。
第2相DESTINY-Lung01試験のアップデートも行われた。治療歴のある非小細胞性肺癌に5.4mg/kgではなく6.4mg/kgを投与した試験のher2変異型コフォートに関するもので、確認ORR(客観的反応率、独立中央評価、n=91)は54.9%、メジアン反応持続期間は9.3ヶ月だった。G3以上の有害事象発現率は46%、薬物関連ILD/PはG3が一人、G5(致死的)が二人だった。
非小細胞性肺癌は様々なメカニズムの寄せ集めで、EGFR、ALK、ROSなどにおける、頻度は1割あるかないかだが腫瘍化に大きく関わるドライバー変異を標的とする薬が実用化されている。her2変異型の頻度は2~4%なので、上記変異と同様に検査しても該当しない確率のほうがはるかに高いが、該当者には新しい選択肢が現れそうだ。
第2相DESTINY-Gastric02試験はher2陽性の切除不能/転移性胃・胃食道接合部腺腫でtrastuzumabレジメンのよる治療歴を持つ患者に6.4mg/kgを投与した。確認ORR(客観的反応率、独立中央評価、n=791)は38%(完全反応率3.8%)、メジアン反応持続期間は8.1ヶ月だった。G5のILD/Pが一例発生した。
余談になるが、第一三共のネーミングは面白く、プラビックスより優れると期待する薬の一般名がプラスグレル、抗her2抗体に従来より多くの細胞毒を結合してハーツ―攻撃力をエンハンスした薬の製品名がエンハーツ。プラスグレルの第2相の学会発表は、プログラムが公表された段階では演題だけでどの薬か分からなかったが、試験名にJumboが付いていたためCS-747と断定できた。
リンク: 両社のプレスリリース(DESTINY-BREAST03)
リンク: 同(DESTINY-Lung01)
リンク: 同(DESTINY-Gastric02)
ESMO:キイトルーダの黒色腫補助療法と子宮頸癌一次治療データ
(2021年9月18日発表)
MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の第3相試験であるKeynote-716とKeynote-826のデータをESMOで発表した。
前者はステージIIの黒色腫の術後アジュバント試験。200mg(12歳以上の小児は2mg/kg)を3週毎に投与しRFS(無再発生存期間)を偽薬と比較したところ、ハザードレシオ0.65、p=0.006となった。G3/4の治療関連有害事象発生率は16.1%、偽薬は4.3%だった。
ステージIIIを組入れた試験でもハザードレシオ0.57と良好な成績を挙げ、19年に米国で適応拡大が承認された。ステージIIも本試験に基づき8月に承認申請され、審査期限は12月4日となっている。
ステージIIIよりIIのほうが予後が良いように聞こえるが、黒色腫に関してはRFSも全生存期間もそれほど大きくは変わらないようだ。それだけに、ステージIIで高リスクな患者の標準療法を確立することが重要なのだろう。
後者の試験は治癒的手術・放射線療法が適応にならない持続・難治・転移子宮頸がんの一次治療として、carboplatinまたはcisplatinをpaclitaxelと併用するレジメン(bevacizumab追加も可)に更にKeytrudaを追加する効果を偽薬追加と比較した。中間解析で全生存期間のハザードレシオが0.67、p<0.001、メジアン値は24.4ヶ月対偽薬群の16.5ヶ月、もう一つの主評価項目であるPFS(無進行生存期間)もハザードレシオ0.65、p<0.001、メジアン値10.8ヶ月対8.2ヶ月と、どちらも成功した。PD-L1発現の有無に関わらず効果があった。G3以上の治療関連有害事象発生率は各68.4%と64.1%だった。
KeytrudaはPD-L1陽性(CPS≧1)子宮頸がんの二次治療薬として米国で承認されているが、一次治療に展開できそうだ。
リンク: MSDのプレスリリース
アステラスの遺伝子療法で4人目の死亡者
(2021年9月14日発表)
アステラス製薬は、AT132のX染色体連鎖性ミオパチー(XLMTM)試験で、4人目の死者が出たことを公表した。このASPIRO試験は昨年、高量投与例のうち3名で致死的有害事象が発生したためFDAが治験停止を命じた。12月に解除され低量に限定して再開されたが、再開後最初の、そして唯一の患者でも発生したことを考えると、開発続行はかなり難しくなったのではないか。
XLMTMはMTM1遺伝子の変異によりmyotubularinが欠乏、筋力低下や呼吸不全などを発症する重篤な希少神経筋疾患。AT132は20年に30億ドルで買収したAudentes Therapeuticsの開発品で、アデノ随伴ウイルス8型をベクターとしてMTM1遺伝子を導入する。力価アッセイを途中で変えた模様で、高用量は現行の第2世代アッセイでは350兆vg/kg、第1世代アッセイでは300兆vg/kg、低用量は各130兆vg/kgと100兆vg/kgとなる。当初は高用量が至適とされ、これまでに17人に投与された。低用量は7人。
高用量の死亡例は、一人目は敗血症、二人目は進行性肝不全と敗血症、三人目は肝機能不全を経て消化管出血により、死去した。共通点は、この試験は5歳未満が対象だがその中でも比較的年齢が高く、体重も比較的大きく、従って投与量も多く、肝胆疾患既往であること。そこで、低用量を3歳未満に投与する形で今夏、治験が再開された。
今回の死亡例は間歇的な胆汁うっ滞歴があったものの事前の肝超音波や肝機能検査では問題はなかったのに、今月初め、肝機能検査値異常の深刻有害事象を起こしたことが公表された。
アデノ随伴ウイルスの遺伝子療法は高量化傾向が見られ、脊髄性筋萎縮症治療薬として日米欧で承認されているノバルティスのZolgensma(onasemnogene abeparvovec-xioi)は110兆vg/kg、デュシェンヌ型筋ジストロフィー向けに開発されているサレプタのSRP-9001やSolid BiosciencesのSGT-001は200兆vg/kg、ファイザーのPF-06939926は300兆vg/kgと、100兆越えが珍しくなくなって来た。このうち、SGT-001は霊長類試験で3頭中1頭が臓器不全、豚の試験では3匹すべてがCNS副作用で犠牲となり、19年に二回、高用量が治験停止になったことがある。
FDAは今月、細胞組織遺伝子療法諮問委員会を招集してアデノ随伴ウイルス遺伝子療法の発癌性や肝障害、血栓性微小血管障害などのリスクについて意見を求めた。FDAは、何れも高量投与例で観察されており、また、カプシドだけで治療効果を持たない、いわばドンガラが、関与している可能性もあることを指摘したが、極めて専門的な分野であるためか、明確な結論は出なかったようだ。アステラスをはじめ、遺伝子療法を開発している企業はこのドンガラの量などについて開示を拒否しており、第三者が研究検討できない状態のようである。
人体を潜在的な危険に曝す臨床試験が倫理的に許容されるのは、他の多くの人たちの便益に繋がり得るからだ。暗闇の行軍で前の人が落とし穴に落ちたのに気付かず全滅する事態は何としても回避しなければならない。未知の領域に望む多くの研究者や患者のために、アステラスは原因解明を進め知見を開示すべきである。
リンク: 同社のプレスリリース(和文)
【承認申請】
リンヴォックを潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
(2021年9月16日発表)
アッヴィは、Rinvoq(upadacitinib、和名リンヴォック)を中重度潰瘍性大腸炎の寛解導入と維持に用いる適応拡大を欧米で承認申請した。伝統的治療薬またはバイオ薬に不応不耐な患者に、寛解導入期は45mg、維持期は15mgまたは30mgを一日一回経口投与することを想定している。
8週間の寛解導入試験では、臨床的寛解率が一本は26%(偽薬群は5%)、もう一本は33%(同4%)だった。応答者を偽薬、15mg、30mgに無作為化割付した52週間の維持療法試験では、臨床的寛解率が各群12%、42%、52%だった。
Rinvoqは欧州ではリウマチ性関節炎、感染性関節炎、強直性脊髄炎、そしてアトピー性皮膚炎に承認されているが、米国は副作用懸念からリウマチしか承認されていない。FDAは、JAK阻害剤のファースト・イン・クラスで潰瘍性大腸炎にも承認されているファイザーのXeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)の市販後安全性確認試験で心臓関連イベントや癌の懸念が浮上したことから、この二剤とイーライリリーのOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)の枠組み警告を強化し、適応を伝統的治療薬だけでなくTNF阻害剤にも不応不耐な患者に限定した。
潰瘍性大腸炎は様々な治療手段におけるJAK阻害剤の位置付けが比較的高いと言われているが、この流れから推測すると、少なくとも米国では会社が想定している適応よりカバレッジが狭まりそうだ。
リンク: アッヴィのプレスリリース
百済神州、抗PD-1抗体を米国で承認申請
(2021年9月13日発表)
BeiGene(Nasdaq:BGNE、HKEX:6160、百済神州)は、BGB-A317(tislelizumab)を米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年7月12日。欧米アジア11ヶ国で全身性治療歴を持つ進行切除不能/転移食道扁平上皮腫の患者512人を組入れたRATIONAL 302試験に基づくもので、メジアン生存期間が8.6ヶ月と化学療法(paclitaxel、docetaxel、またはirinotecan)群の6.3ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.70、p=0.0001だった。PD-L1陽性癌には特に有効で、ハザードレシオ0.54だった。
抗PD-1抗体で、中国では19年に古典ホジキン型リンパ腫で承認されて以降、複数の適応を取得、今回の用途は7月に承認申請が受理された。米国は初申請。米国や日欧市場ではノバルティスが販売する。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
CHMP、抗癌剤などの承認に肯定的意見
(2021年9月17日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
Amivas社のartesunateは成人小児の重症マラリアの初度治療に用いる抗原虫薬。WHOが必須医薬品にリスト・アップしている古くからある薬だが、EUでは未承認だった。米国でも同様で必要な場合はCDC(米国疾病予防管理センター)主導で供給していたが、このために設立されたAmivasが昨年5月に承認を取得、今年3月に発売した。
リンク: EMAのプレスリリース
BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGN、HKEX:6160)のBrukinsa(zanubrutinib)はBTK阻害剤。ワルデンシュトレームマクログロブリン(WM)血症の二次治療(化学免疫療法不適なら一次治療も可)で肯定的意見を得た。米国では19年にマントル細胞腫の二次治療薬として加速承認、今年8月にWM血症に適応拡大した。
リンク: EMAのプレスリリース
ロシュのGavreto(pralsetinib)はRET阻害剤。RET融合陽性の進行非小細胞性肺癌でRET阻害剤歴を持たない成人向けに条件付き承認することが支持された。米国では昨年9月に承認。Blueprint Medicines(Nasdaq:BPMC)からライセンス。
リンク: EMAのプレスリリース
Deciphera Pharmaceuticals(Nasdaq:DCPH)のQinlock(ripretinib)はKIT/PDGFRアルファ阻害剤。GIST(消化管間質腫瘍)で3種類のキナーゼ阻害剤による治療歴を持つ患者に支持された。米国では昨年5月に承認。
リンク: EMAのプレスリリース
バイオジェンのVumerity(diroximel fumarate)は成人の再発寛解型多発硬化症用薬。同社のTecfidera(dimethyl fumarate)の類縁体で胃腸副作用が若干改善されている。Alkermesからライセンス、Tecfideraとの生物学的同等性試験に基づいて申請された。米国では19年10月に承認。
リンク: EMAのプレスリリース
適応拡大では、グラクソ・スミスクラインの抗IL-5抗体、Nucala (mepolizumab、和名ヌーカラ)の3種類の新用途が支持された。現在は重度難治性好酸球性喘息症(6歳以上)に承認されているが、新たに、再発寛解性または難治性の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(6歳以上)と好酸球増多症候群(管理不十分な成人、非血液学的原因が特定できない場合に用いる)、そして鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎(全身性ステロイド且つ又手術でも十分に管理できない成人)が追加されることになる。米国では17年から21年7月にかけて逐次承認された。
フェリング・ファーマシューティカルズのGnRH受容体拮抗剤、Firmagon(degarelix、日本ではアステラス製薬のゴナックス)を高リスク局所性または局所進行性のホルモン依存性前立腺癌に放射線療法と併用で、またはその前のネオアジュバント療法として、用いることが支持された。現在の、進行ホルモン依存前立腺癌の治療より早い段階で用いることが可能になる。
ギリアド・サイエンシズがベルギーのGalapagos(Euronext:GLPG)からライセンスして09年に日欧で抗リウマチ薬として承認されたJAK1阻害剤、Jyseleca(filgotinib、和名ジセレカ)を中重度活性期潰瘍性大腸炎でバイオ薬又は従来療法に反応不十分、反応喪失、または不耐な患者に用いることも支持された。
適応拡大の常連である抗PD-1抗体では、MSDのKeytruda(pembrolizumab)をPD-L1陽性(CPS≧10)の局所再発性切除不能または転移性のトリプル・ネガティブ乳癌の転移後初治療に化学療法と用いることが支持された。
ブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab)は、PD-L1陽性(CPS≧5)でher2陰性の進行/転移性胃、胃食道接合部、食道の腺腫の一次治療として白金薬及びfluoropyrimidineと併用することが支持された。米国では4月に承認されたが、PD-L1は不問。
MSDのNoxafil(posaconazole、和名ノクサフィル)は複数の真菌による侵襲性感染症の第二選択薬として承認されているが、侵襲性アスペルギルス症に関しては限定を解除し一次治療に使えるようにすることが支持された。
否定的意見となったのが、ファイザーがイーライリリーとリスク・シェアリング契約を結んで開発した抗ヒトNGF抗体、Raylumis(tanezumab)だ。変形性関節炎に伴う中重度疼痛でNSAIDsやオピオイド系鎮痛剤に不応不耐な成人に承認申請されたが、CHMPは、鎮痛・運動機能改善効果が小さく、NSAIDs対照試験では上回らず、副作用面では急速進行性変形性関節炎や関節置換術のリスクが見られることから、便益や危険を上回らないと判定した。10年前に予想された通りの結果になった。
米国でも承認申請され、昨年12月に審査期限が来たはずだが、音沙汰無いので承認されなかったのだろう。日本では昨年8月に承認申請された。
リンク: EMAのプレスリリース
承認申請が撤回されたのは二件。Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)はLivmarli(maralixibat)を1歳以上のPFIC2(進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型)用薬として承認申請したが、撤回した。CHMPは、25人に13週間投与した単群試験で血中胆汁酸水準が十分に低下しなかったことや、cGMP適合性懸念などから、否定的なスタンスだった。
ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤で、18年にシャイアから、ライセンス元であるファイザーのものも含めた知的資産を取得したもの。胆汁うっ滞を伴う別の希少疾患、アラジール症候群で今年2月に米国で承認申請、EUでもPFIC2と入れ替わりに今月、承認申請された。
リンク: EMAのプレスリリース
Sesen Bio(Nasdaq:SESN)は抗EpCAM抗体フラグメント薬物複合体のoportuzumab monatoを欧米で承認申請していたが、8月に米国で審査完了通知を受領、EUでも申請撤回した。EUでは膀胱癌の治療・再発予防と乳頭癌再発予防で申請されたが、CHMPは、生産プロセスが一本化されていないことや、cGMPや不純物の懸念、臨床試験の対象と目標適応症の不一致、治験デザインの妥当性(途中で変更があったことや主評価項目)、薬効が不十分で安全性データには矛盾も散見されることなど、数多くの懸念を持っていた。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
武田、Ariadの第3の医薬品が承認
(2021年9月16日発表)
武田薬品は、FDAがExkivity(mobocertinib)をEGFRエクソン20挿入変異を持つ成人の転移性非小細胞性肺癌に加速承認したと発表した。40mgカプセル4個を一日一回、経口投与する。
第1/2相試験ではORR(客観的反応率、独立審査委員会評価、n=114)が28%、メジアン反応持続期間は17.5ヶ月と長い。有害事象による治験離脱率は17%で、理由は下痢や悪心など。命に係わるQTc延長(TdPを含む)のリスクがあり、治療開始前と治療中定期的に検査することや、QTc延長作用を持つ薬やCYP3A中強度インヒビターを同時使用しないことなどが枠組み警告されている。FDAはコンパニオン診断薬としてLife TechnologiesのOncomine Dx Target Testも承認した。
EGFRやher2のキナーゼ阻害剤で、EGFRの野生型よりエクソン20挿入変異型に対する力価が高い。17年に54億ドルで買収したAriad PharmaceuticalsがAP32788として開発したもので、米国で12年に承認された慢性骨髄性白血病用薬Iclusig(ponatinib)、17年承認のALK陽性非小細胞性肺癌用薬Alunbrig(brigatinib)に続く第3の医薬品となった。
EGFRエクソン20挿入変異は通常のEGFR阻害剤に抵抗性を持つ。非小細胞性肺癌の1~3%が該当し、米国の対象患者数は3000人、世界では3万人程度と推定されている。ライバルは今年5月に米国で加速承認されたジョンソン・エンド・ジョンソンのEGFR・MET二重特異性抗体、Rybrevant(amivantamab-vmjw)。こちらの試験は未治療脳転移を持つ患者を除外するなど患者背景が異なり、どちらも対照試験ではないので見比べることしかできないが、ORR(独立審査委員会評価)は40%、メジアン反応持続期間は11.1ヶ月だった。
リンク: 同社のプレスリリース(和文)
リンク: FDAのプレスリリース
百済神州、BTK阻害剤が米国で適応拡大
(2021年9月15日発表)
BeiGene(Nasdaq:BGNE、HKEX:6160、百済神州)は、FDAがBrukinsa(zanubrutinib)の適応拡大を加速承認したと発表した。BTK阻害剤で19年にマントル細胞腫の二次治療薬として米国で初承認、今年2月にはワルデンシュトレームマクログロブリン血にも承認、そして、今回、成人の再発難治辺縁帯リンパ腫に用いることが認められた。
第2相試験と第1/2相試験でORR(客観的反応率、2014年ルガノ基準、CTベース)が各56%と80%だった。完全反応率はどちらも20%。反応者の各85%と72%は1年以上持続した。
リンク: 同社のプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース
今週は以上です。
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