【ニュース・ヘッドライン】
- ギリアド、remdesivirの第三相COVID-19治療試験を拡大へ
- Moderna社、COVID-19ワクチンの治験用バッチの出荷を開始
- Vanda、NK1阻害剤のアトピー性皮膚炎試験はフェール
- 武田、ALK阻害剤を一次治療薬として米国で申請
- ロシュ、PerjetaとHerceptinの合剤を承認申請
- ノバルティス、皮注用抗CD20抗体を多発性硬化症に承認申請
- FDA諮問委員会がサイラムザの適応拡大を検討
- CHMPが塩野義の抗生剤の承認などを支持
- CHMP、ヨンデリスの卵巣癌適応に関して検討着手
- バイオヘブンのCGRP受容体拮抗剤も片頭痛治療に承認
- エスペリオン、コレステロール治療用合剤が承認
- FDA、Nerlynxの適応拡大を承認
- ASRSがベオビュの網膜血管炎症例を通知
【今週の話題】
ギリアド、remdesivirの第三相COVID-19治療試験を拡大へ
(2020年2月26日発表)
ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)は、中国や米国で実施されているGS-5734(remdesivir)の第三相COVID-19治療試験を他の地域も含めて拡大すると発表した。医療標準が国により異なる可能性があり、こういう事態なので厳格なプロトコル遵守も期待しにくいか、規模拡大はエビデンスの充実だけでなく、試験投与を望む様々な国の医師や患者のニーズに応えることが可能になる。FDAからは治験許可を受けた由。通常は申請後に待機して、音沙汰ないまま一定期間が経てば許可されたことになるのだが、今回は特別な対応を受けたのだろう。
GS-5734は核酸系抗ウイルス剤のプロドラッグ。これまでにエボラなどのウイルス感染症試験が行われてきた。COVID-19では中国や米国で少数の投与症例報告がある。第三相は2月に中国の首都医科大学をスポンサーとして中日友好医院のBin Cao教授らが開始、4月頃の結果報告を計画しているようだ。米国でもNIAID(米国国立衛生研究所傘下のアレルギー・感染症研究所)主導試験が行われている模様。ギリアドは、これらの試験を包含して1000人規模に拡大する考えだ。
一本は重症患者400人を組入れて、5日コースと10日コースの治療効果を比較する。用量は負荷用量200mg、維持用量は100mgを一日一回、静注する。主評価項目は症状軽快(体温と酸素飽和度の正常化が24時間以上持続)。インフルエンザ治療薬と同様なtime-to-event分析なのか、抗生物質のような治癒率なのかはプレスリリースからは不明。
もう一本は中程度の症状の患者600人を5日コースと10日コース、そして試験薬を投与しないSOC(標準的治療)だけの群に無作為化割付する。用量用法は同じ、主評価項目は14日以内に退院した患者の比率。
突発的な感染症の場合、治療薬やワクチン、検査アッセイを開発しても、流行が一巡して投資を回収できないような事態も考えられる。それでも、将来的にSARS-CoV-3が出現した時に備えて臨床開発を勧めておけば、トリ・インフルエンザの流行に備えたモックアップ・ワクチンのように、最低限の手直しと薬効・安全性確認試験および承認審査だけで実用化できる態勢を作れるかもしれない。
リンク: ギリアドのプレスリリース
Moderna社、COVID-19ワクチンの治験用バッチの出荷を開始
(2020年2月24日発表)
米国ケンブリッジのModerna(Nasdaq:MRNA)は、米国NIH(米国国立衛生研究所)傘下のNIAID(国立アレルギー・感染症研究所)やCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)とコラボしてCOVID-19ワクチンとして開発しているmRNA-1273の最初の臨床試験用バッチを出荷したと発表した。CEPIが生産資金を拠出した。早ければ4月にもNIAIDが臨床試験を開始する予定。
NIAIDとテキサス大学オースチン校の共同研究で解明された、ウイルスが宿主細胞の受容体に結合して細胞融合により侵入する過程の構造変化に配慮して選択した抗原のmRNAを接種する。SARS-CoV-2ウイルスのゲノム・シーケンス同定から42日という短期間でバッチ供給まで到達したのは快挙。クリアすべきハードルはまだまだ多いだろうが、経験を積めば将来、また新しいウイルス感染症が流行した時に、即応することができるようになるだろう。
リンク: Modernaのプレスリリース
【新薬開発】
Vanda、NK1阻害剤のアトピー性皮膚炎試験はフェール
(2020年2月25日発表)
米国ソルトレイクシティの新興製薬会社、Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq:VNDA)は、VLY-686(tradipitant)の一本目の第三相アトピー性皮膚炎試験がフェールしたと発表した。尤も、軽度患者の成績は悪くなかったため、詳細分析を進めるとともに、昨年第4四半期に開始した二本目の主評価項目を軽度患者に限定するなどのプロトコル変更を検討する考えだ。
tradipitantはイーライリリーのNK1阻害剤、LY686017を12年にライセンスしたもの。今回の試験は、重度の掻痒症状を持つ患者341人を85mgを一日2回経口投与する群と偽薬群に無作為化割付して8週間治療し、掻痒症状スコア(WI-NRS)の改善度合いを比較した。結果は、第二相と同様に、偽薬効果が大きいせいか有意差は出なかった。
但し、アトピー症状が軽度の患者に限定すればスコアが7割以上改善し、応答率は72%と偽薬群の33%を大きく上回った。軽度患者は被験者の23%を占めるだけだったが米国の患者全体では6割以上を占めるため、サブセグメントだけでも臨床的意義がある。軽度患者向けの新薬は少ないため商業的意義もありそうだ。
Vandaは胃麻痺や乗り物酔いの第三相も実施中。NK1阻害剤は化学療法誘導性悪心嘔吐の治療・予防薬として複数の製品が実用化されており、tradipitantも第二相では船酔い予防試験が一番良さそうな結果だった。Vandaはこの適応症で今年中に承認申請する計画。170mgを長くても数回服用するだけだろうから商業的な価値はあまり大きくなさそうだ。
胃麻痺では52週延長試験を行うべくプロトコル変更を申請したところ、FDAが犬やサル、ミニブタなどの毒性試験を完了するまで12週間以上投与する試験はダメと、部分停止を命じたため、司法の場で係争中。乗り物酔いする人は多くても数日しか乗らないだろから、この点でも、三用途の中では最も実用化に近そうだ。
リンク: Vandaのプレスリリース(pdfファイル)
【承認申請】
武田、ALK阻害剤を一次治療薬として米国で申請
(2020年2月25日発表)
武田薬品はAlunbrig(brigatinib)をALK陽性転移性非小細胞性肺癌の一次治療薬として米国で承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受ける。審査期限は未公表。EUでは下記のように今月、CHMPの肯定的意見を得た。
17年にAriad Pharmaceuticalsを54億ドルで買収して入手したALK阻害剤で、同年に米国でファイザーのXalkori(crizotinib、和名ザーコリ)に不応不耐のALK陽性転移性非小細胞性肺癌に用いることが承認された。
今回の申請は、ALK陽性局所進行・転移非小細胞性肺癌でALK阻害剤による治療歴を持たない患者(化学療法歴は1レジメンまでなら許容)を組み入れて効果をXalkoriと比較した第3相試験に基づくもの。PFS(無進行生存期間、盲検独立評価委員会ベース)がメジアン24.0ヶ月とXalkori群の9.2ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.49、p<0.0001だった(昨年11月に公表された第二中間解析データ)。脳転移のある症例では特に大きな差があった。
ALKは東京大学の間野博行教授らが科学技術振興機構の助成を受けて行った研究で、ある種の肺癌に関与していることが発見された。Nature誌に論文刊行されたのが07年、Xalkoriの米国承認が11年なので、ベンチとベッドが4年でつながったことになる。crizotinibはc-kit阻害剤として以前から臨床開発されていたことが寄与したのだろう。
それから9年経ち、今日では、ノバルティスのZykadia(ceritinib、和名ジカディア)や中外製薬のAlecensa(alectinib、和名アレセンサ)、ファイザーのLorbrena(lorlatinib、和名ローブレナ)と、直接比較試験でXalkoriを上回る効果を持つALK阻害剤が輩出している。
リンク: 武田薬品のプレスリリース(和文)
ロシュ、PerjetaとHerceptinの合剤を承認申請
(2020年2月25日発表)
ロシュはRG6264をFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は未公表。抗2C4抗体Perjtaの活性成分であるpertuzumabと抗her2抗体Herceptinのtrastuzumabの固定用量合剤で、her2陽性早期乳癌の術前術後アジュバント療法に用いる。Halozyme Therapeutics(Nasdaq:HALO)のヒアルロニダーゼ技術を用いて皮注製剤化した。各剤の静注製剤は60~150分かけて点滴するが、RG6264は5~8分で済む。
リンク: ロシュのプレスリリース
ノバルティス、皮注用抗CD20抗体を多発性硬化症に承認申請
(2020年2月24日発表)
ノバルティスは、OMB157(ofatumumab)を再発性多発性硬化症の治療薬として欧米で承認申請し、受理されたと発表した。米国の承認は6月、EUは来年4-6月の見込み。
活性成分は慢性リンパ性白血病用薬Arzerra(ofatumumab)として日米欧で承認されている。抗CD20抗体ではロシュがキメラ抗体のRituxan(rituximab)や糖鎖改変型完全ヒト化抗体のGazyva(obinutuzumab)を慢性リンパ性白血病や非ホジキンリンパ腫に、ヒト化抗体Ocrevus(ocrelizumab)を多発性硬化症に、ラインアップしている。ofatumumabはCD20の異なったエピトープに結合するが、OMB157の臨床的な長所は、Ocrevusが6ヶ月毎に3時間半かけて点滴静注するのに対して、オートインジェクターによる月一回皮下自己注であること。
第3相試験はサノフィのArbagio(teriflunomide)を対照薬とするダブルダミー試験が二本実施され、一本では年率再発頻度が0.11対0.22、もう一本は0.10対0.25で何れも統計的に有意に小さかった。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA諮問委員会がサイラムザの適応拡大を検討
(2020年2月26日発表)
イーライリリーは、FDA腫瘍学薬諮問委員会がCyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)の適応拡大を検討し、6人の委員が賛成、5人が反対したと発表した。接戦は意外だが、延命効果が確立していないことがネックになったのだろう。
CyramzaはVEGFR-2を標的とする完全ヒト化抗体で、ある種の胃癌、結腸直腸癌、肝細胞腫に承認されている。今回の適応拡大は、EGFR遺伝子にエクソン19欠損またはエクソン21L858A置換を持つ転移性非小細胞性肺癌の一次治療にTarceva(erlotinib)と併用するもの。
昨年10月にLancet Oncologyに刊行された第三相試験論文によれば、PFS(無進行生存期間)がメジアン19.4ヶ月とTarceva・偽薬併用群の12.4ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.59、p≦0.0001だった。全生存の解析は未成熟で、昨年12月現在の中間解析でもハザードレシオ0.92、95%信頼区間上限は1.32と、不満足な数値に留まっている。
上記のようなEGFR活性化変異を持つ非小細胞性肺癌はEGFR阻害剤が第一選択になる。TarcevaはEGFR阻害剤の先駆けの一つだが、今日では、効果が有意に上回る複数の第2世代品が存在するので、高価な新薬二剤を併用するハードルは高い。一次治療なので尚更だ。
今回の適応拡大はEUでは今年1月に承認された。日本でも承認審査中。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
CHMPが塩野義の抗生剤の承認などを支持
(2020年2月28日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、2月の会合で、塩野義製薬の抗菌剤の承認などに肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
塩野義のFetcroja(cefiderocol)は注射用シデロフォアセファロスポリン。好気性グラム陰性菌による感染症の成人で治療選択肢が限られている場合に適応になる。米国では昨年11月にFetroja名で18歳以上の治療選択肢が限られているグラム陰性菌複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)に承認された。
複数の作用機序を持ち、ベータラクタマーゼに分解されにくいため、in vitroでカルバペネム耐性の緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、そして腸内細菌科細菌にも強い活性を示した。但し、重症カルバペネム耐性菌感染症試験では14日死亡率が18.8%と対照群(主としてcolistinを使用)の12.2%を上回った。院内感染肺炎/人工呼吸器関連肺炎などの成績が悪かった模様だが、第三相院内感染肺炎試験では14日死亡率が12.4%とmeropenem群(11.6%)比で非劣性だったので、治験成績がちぐはぐだ。
リンク: EMAのプレスリリース
適応拡大で肯定的意見を得たのは、まず、武田薬品のAlunbrig(brigatinib)。ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)阻害剤で、ALK陽性転移性非小細胞性肺癌の二次治療薬として承認されているが、一次治療に用いることが支持された。
リンク: EMAのプレスリリース
次に、ベーリンガー・インゲルハイムのOfev(nintedanib、和名オフェブ)。特発性肺線維症(IPF)に承認されているが、新たに、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)の治療に用いることが支持された。米国では昨年9月に、日本では12月に、適応追加承認されている。
リンク: EMAのプレスリリース
最後に、アムジェンのOtezla(apremilast、和名オテズラ)。既存薬不応不耐の乾癬や乾癬性関節炎に承認されているが、新たに、ベーチェット病に伴う口腔潰瘍で全身性治療が適応になる成人に用いることが支持された。米国では昨年7月、日本でも9月に、承認されている。
Otezlaはセルジーンが開発したPDE-4阻害剤だが、BMSに買収される過程で、反トラスト規制をクリアするため、Otezla事業をアムジェンに134億ドルで売却した。
リンク: EMAのプレスリリース
否定的意見となったのはイーライリリーのEmgality(galcanezumab)の適応拡大。反復性片頭痛(月4日以上、発生)の予防薬として承認されている抗CGRP抗体を、反復性群発性片頭痛の予防に用いる是非を検討した結果、効果が明確ではないという結論に達した。
群発性片頭痛は数週間に亘って頻発する。第三相は慢性群発性片頭痛試験はフェールしたが、反復性(1ヶ月程度の群発しない期間がある)群発性片頭痛試験は成功したと発表されており、昨年6月に米国で適応拡大が承認された。レーベルによると、片頭痛発作回数がベースラインの週17回から8.7回に減少し、偽薬群の5.2回減少を有意に(p=0.036)上回ったとのこと。それだけに、CHMPの判断は意外。診断・特定が難しそうな疾患であることや、p値がそれほど低くないことが影響したのかもしれない。群発性片頭痛は他社の抗CGRP抗体の試験成績もパッとしない。
リンク: EMAのプレスリリース
最後に、BMSが、Opdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を併用で非小細胞性肺癌の一次治療に当てる適応拡大申請を、撤回したことが発表された。1月31日にBMSが公表済みなのでサプライズではない。米国でも適応拡大申請されており、審査期限は5月15日。日本でも昨年12月に一変申請された。
リンク: EMAのプレスリリース
CHMP、ヨンデリスの卵巣癌適応に関して検討着手
(2020年2月28日発表)
CHMPは、スペインのPharma Mar社のアルキル化薬、Yondelis(trabectedin、和名ヨンデリス)の検討に着手したことを発表した。日米欧で悪性軟部腫瘍用薬として承認されているが、EUだけで承認されている白金感受性再発卵巣癌に関する第三相試験がフェールしたため。
再発卵巣癌は米国でも承認申請されたが、根拠となる301試験の主評価項目であるPFSデータの信頼性や、全生存の解析が未成熟で有意差が出ていないことなどから、諮問委員会で15人の委員のうち14人が反対し、承認されなかった。結局、最終解析でも有意差は出なかった。
今回、俎上に上がる3006試験は301試験と類似した内容で、白金感受難治性卵巣癌の三次治療としてPEGリポソーム化doxorubicinと併用する効果をPEGリポソーム化doxorubicinだけの群と比較したが、第一回の中間解析で無益認定された。メジアン生存期間は23.2ヶ月と対照群の22.2ヶ月と大差なく、ハザードレシオは0.93、p=0.5236だった。深刻有害事象の発生率は41%対21%、有害事象による治験離脱は32%対16%と、どちらも大きく上回った。
事前に計画されていた生殖細胞系BRCA変異陽性サブグループ(被験者576人中155人)ではハザードレシオ0.54と良さそうな数値が出ているが、このタイプの患者の標準療法はPARP阻害剤になりつつあるので、臨床的な意義は曖昧だ。
全生存期間の解析が二本ともフェールしたことは軽視できないだろう。承認取消や範囲限定の可能性がありそうだ。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
バイオヘブンのCGRP受容体拮抗剤も片頭痛治療に承認
(2020年2月27日発表)
バイオヘブン・ファーマシューティカル(NYSE:BHVN)は、FDAがNurtec(rimegepant)口腔内崩壊錠を片頭痛治療薬として承認したと発表した。輩出しているCGRP(calcitonin gene-related peptide)拮抗剤の一つだが、経口剤であることや治療をリード・インディケーションにしたことが特徴。
臨床試験では、2時間以内片頭痛消失率が21%と偽薬群の11%を上回った。共同主評価項目である、本人にとって最も煩わしい症状(羞明、悪心など)の2時間内消失率も35%対27%と上回った。どちらも統計的に有意。主な有害事象は悪心。
GW Pharmaceuticalsから1億ドル余で購入した優先審査バウチャーを用いたため、アラガン(NYSE:AGN)がMSDからライセンスして開発し昨年12月に片頭痛治療薬として米国承認を得た、Ubrelvy(ubrogepant)よりそれほど遅れずに上市できそうだ。通常の錠剤も申請中で、数ヶ月内に承認されるだろう。
片頭痛予防でも開発中で、3月に第三相試験の結果が出る見込み。
rimegepantは16年にBMSからBMS-927711をライセンスしたもの。一緒にライセンスしたBHV-3500(vazegepant)は点鼻片頭痛治療薬として第三相試験中。
リンク: バイオヘブンのプレスリリース
エスペリオン、コレステロール治療用合剤が承認
(2020年2月26日発表)
エスペリオン・セラピューティクス(Nasdaq:ESPR)は、FDAがNexlizetをヘテロ接合性家族性高脂血症や確立アテローム硬化性心血管疾患の患者のLDL-C治療薬として承認したと発表した。先ごろ承認されたATPクエン酸リアーゼ阻害剤、Nexletol(bempedoic acid)とシェリング・プラウ(当時)が開発したNPC1L1阻害剤、ezetimibeの合剤で、生活習慣改善および第一選択薬であるスタチンの最大耐容用量を服用してもLDL-C値が十分に低下しない場合に追加投与する。心血管疾患抑制効果は未確認。
Nexletolは臨床試験でLDL-Cを偽薬比17~18%引き下げた。Nexlizetは38%なので、合剤でも高力価スタチンより見劣りする。オルターナティブ系に留まるだろう。
リンク: エスペリオンのプレスリリース
FDA、Nerlynxの適応拡大を承認
(2020年2月26日発表)
FDAは、Puma Biotechnology(NYSE:PBYI)のNerlynx(neratinib)の適応拡大を承認した。ファイザーからライセンスしたher2阻害剤で、her2早期乳癌の術後アジュバント療法(Herceptinなどを使う)の後の延長アジュバント療法薬として承認されているが、今回、her2陽性の進行/転移性乳癌で転移後にher2標的療法を2次以上施行した癌に、capecitabineと併用することが認められた。
臨床試験ではPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン5.6ヶ月とcapecitabine・lapatinib併用群の5.5ヶ月を若干上回り、ハザードレシオは0.76、p=0.0059だった。メジアン値の差は小さいが12ヶ月PFS率は29%対15%となっている。通常の偽薬対照試験のPFSと異なり、カプラン・マイヤー・カーブが分かれるまで時間がかかるのだろう。
Nerlynxは、研究者主導で各社のパイプラインを次々とテストし選抜するI-SPY2プロジェクトで最初に合格・卒業したことで有名。her2標的薬はここ数年、次々と登場しており、適応が限られるNerlynxの年間売上高は2億ドル程度に留まっている。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Pumaのプレスリリース
【医薬品の安全性】
ASRSがベオビュの網膜血管炎症例を通知
(2020年2月23日発表)
複数の報道によると、ノバルティスの新生血管加齢黄斑変性治療薬、Beovu(brolucizumab)で市販後に14例の網膜血管炎が報告されていることをASRS(米国網膜専門医学会)が会員に通知した。うち11例は失明のリスクのある閉塞性網膜血管炎である由。ASRSのホームページにそれらしいリンクがあるが、会員IDなどを入力しないとアクセスできない。
BeovuはスイスのESBATechを買収して入手した抗VEGF-Aヒト化抗体単鎖フラグメントで、米国で昨年10月に、欧州は今年2月に、承認された。日本でも1月に部会通過、3月にも承認される見込みだ。バイエル/リジェネロンのEylea(aflibercept)と比較した第三相試験では、主評価項目の視力改善効果は非劣性で、二次的評価項目の幾つかでは統計学的に有意に優れていた。
承認後4ヶ月強の累計投与回数は46000回である模様。ノバルティスは社外専門家委員会や社内でも検討を進める。承認審査機関にも報告したようだ。
リンク: Eyewire Newsの記事(2/25付)
今週は以上です。
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