【ニュース・ヘッドライン】
- サノフィ、ニーマン・ピック病B型の第2/3相が成功
- インサイト、JAK1/2阻害剤二剤の第三相アトピー性皮膚炎試験が成功
- イーライリリー、RET阻害剤を承認申請
- デュピクセントの小児適応を申請
- ロシュ、テセントリクとアバスチンを切除不能肝細胞腫に適応拡大申請
- カイト社、第二のCAR-Tを欧州でも承認申請
- BMS、オプジーボとヤーボイのNSCLC適応拡大申請をEUで撤回
- CHMP、急性肝性ポルフィリン症治療薬などに肯定的意見
- ピーナツアレルギーの経口減感作療法が承認
【新薬開発】
サノフィ、ニーマン・ピック病B型の第2/3相が成功
(2020年1月30日発表)
サノフィは、GZ402665(olipudase alfa)の酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症(ASMD)第2/3相試験と小児第二相がポジティブな結果になったと発表した。承認申請は2021年下期からの予定。まだ克服すべき課題が残っているのだろう。
ASMDはSMPD1遺伝子の変異によりライソソームの酸性スフィンゴミエリナーゼが機能低下・欠乏し、スフィンゴミエリンが蓄積、臓器や神経細胞に損傷をもたらす。ニーマン・ピック病(A型、B型)とも呼ばれ、A型は乳児期に発症、多くは3歳前後で死亡する。B型は小児期に発症、症状は神経学的なものは少なく、肝脾腫や膵肥大、心血管骨疾患、成長障害などが中心。尚、ニーマン・ピック病C型は原因遺伝子が異なる。
GZ402665は酸性スフィンゴミエリナーゼの酵素補充療法。日米EUで先駆けなどの指定を受けている。第2/3相試験では、18歳以上のニーマン・ピック病B型患者36人を日米欧など16ヶ国の24施設で組入れ、2週毎に52週間、点滴静注したところ、独立主評価項目の一つである肺機能(%予測肺拡散能で評価)がベースライン比22%改善、偽薬を19%上回った(p=0.0004)。膵量(腹部MRIで評価)は正常値比倍率(multiples of normal)が39.5%低下、偽薬比では40%低下した(p<0.0001)。米国の施設では膵肥大関連症状の患者評価も加味した分析を行ったが患者評価は両群大差なかった。治療関連深刻有害事象や有害事象による治験離脱はゼロ。
小児試験は新生児から17歳までの患者20人を組入れて64週間実施した単群試験。急速進行神経学的疾患は除外しているので、これもB型試験に近い。拡散能検査が可能な9例では33%増加、膵量正常値比倍率は49%低下した。治療時発現深刻有害事象は3人で5件発生した(一時的無症候性ALT上昇、蕁麻疹とラッシュ、アナフィラキシー)。永続的な投与中止はなかったとのことだが、やや心配だ。
リンク: サノフィのプレスリリース
インサイト、JAK1/2阻害剤二剤の第三相アトピー性皮膚炎試験が成功
(2020年1月28日発表)
Incyte(Nasdaq:INCY)は二種類のJAK1/2阻害剤の第三相アトピー性皮膚炎試験が成功したと発表した。一つは骨髄線維症の治療などに承認されているJakafi(和名ジャカビ)の活性成分であるruxolitinibの軟膏新製剤。もう一つはリウマチ性関節炎の治療などに承認されているOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)。
まず、ruxolitinib軟膏のTRuE-AD2試験は、病歴2年以上、年齢12歳以上で、IGA(Investigator's Global Assessment)スコアが2または3(中重度)、頭皮以外の体表面積に占める病変の割合が3-20%の患者を、偽薬、0.75%、または1.5%を一日二回塗布する三群に無作為化割付して、第8週時点のIGA治療成功率(スコアが0または1で且つベースライン比2ポイント以上改善した患者の比率)を比較した。データは未発表。
後期第二相試験では、1.5%を一日二回経口投与した群のEASI(Eczema Area and Severity Index)スコアがベースライン(平均8.4)比で71%改善し、偽薬群の15%と比べて有意な差があった。triamcinolone(中力価局所ステロイド)群の59%とは有意差が無かった。
もう一本の第三相の結果が今四半期中に出るのを待って承認申請に向かうのではないか。ステロイドの代替的な選択肢を目指す。
リンク: インサイトのプレスリリース(ruxolitinib軟膏)
次に、baricitinibのBREEZE-AD4試験。米国外の施設でcyclosporine不応不耐の中重度アトピー性皮膚炎を組入れて、局所性ステロイドに加えて、偽薬、1mg、2mg、または4mgを投与したところ、EASI75奏効率(EASIがベースライン比75%以上改善した患者の比率)が各17%、22%、27%、31%となり、4mg群が偽薬を有意に上回った。
Olumiantはイーライリリーと共同開発販売している。EUではイーライリリーが先日、適応拡大申請したとのこと。日米でも2020年中に申請の予定。
アトピー性皮膚炎ではリジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィが共同開発した抗IL-4受容体アルファサブユニット抗体、Dupixent(dupilumab、和名デュピクセント)が17年に欧米で、18年には日本でも、承認された。服用は塗り薬や経口剤のほうが便利だが、JAK1/2阻害剤は長期投与時の血栓症、感染症、腫瘍などのリスクを十分に検討する必要があるだろう。一般向けメディアが特効薬としてもてはやした後に癌のリスクが浮上した外用カルシニューリン阻害剤の轍を踏んではいけない。
リンク: 両社のプレスリリース(1月27日付け)
【承認申請】
イーライリリー、RET阻害剤を承認申請
(2020年1月29日発表)
イーライリリーは、昨年2月にLoxo Oncologyを80億ドルで買収して入手した選択的RET阻害剤、selpercatinibの承認申請がFDAに受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は今年第3四半期(7-9月)。予定適応症は、進行非小細胞性肺癌のうちRET融合陽性のもの(2%程度が該当)、甲状腺髄様腫のうちRET変異(同60%)、甲状腺癌のうちRET融合陽性(同20-30%)。
エビデンスとなる第1/2相試験でのORR(客観的反応率)は、RET融合陽性非小細胞性肺癌は未治療34例で85%、白金レジメン歴を持つ105例(うち55%はPD-1/PD-L1阻害剤歴、48%はマルチキナーゼ阻害剤歴あり)では68%でメジアン反応持続期間は20ヶ月だった。治療歴のあるRET変異甲状腺髄様腫のORRは56%、反応持続期間はメジアン未達だが95%下限は11ヶ月となっている。
抗癌剤の適応は原発部位に基づいて決定されるのが一般的だが、特定の遺伝子の変異が関与する癌については部位横断的な適応が承認されるようになってきた。LoxoはNTRK融合蛋白陽性というティッシュー・アゴニスティックな適応を持つTRK阻害剤、Vitrakvi(larotrectinib)の米国承認を18年に取得しただけでなく、今回のRET阻害剤やファースト・イン・クラスではないがbtk阻害剤も開発している、新進気鋭の新薬開発ベンチャーだった。
Vitrakviはバイエルと共同開発販売していたが、イーライリリーの買収が支配権変動条項をトリガー、バイエルがロイヤルティベースで単独開発販売することになってしまったため、イーライリリーにとってはselpercatinibがなけなしのコンパウンドになる。
このような、開発販売提携先とは異なる企業に買収されるケースが多いのは、新興企業側が提携契約に買収禁止条項を入れるのが一般的になったからだ。提携先だけでなく多くの会社が企業買収に乗り出す方が株主に有利だからだ。逆に、買収する側は高値を余儀なくされる。イーライリリーは、Loxoの発表前の株価に68%上乗せした価格で買収した。高い買い物だが、薬価に転嫁すれば回収できる。
近年、米国でも企業は株主だけのものではないという議論が出始めた。Loxoの株主は高値売却で潤い、リリーの株主は高薬価による収益拡大、株価上昇で潤い、結果的に、患者や医療保険加入者の資産が製薬会社の株主に吸い取られる現象も変わっていくのだろうか。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
デュピクセントの小児適応を申請
(2020年1月28日発表)
リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Dupixent(dupilumab、和名デュピクセント)を6~11歳の中重度アトピー性皮膚炎の治療に用いる小児適応をFDAに承認申請した。局所性処方薬で十分に管理できない、または不適の場合に用いる。優先審査を受け、審査期限は5月26日。
Dupixentはリジェネロンがヒト抗体を発現するトランスジェニックマウス技術に基づき開発した、IL-4受容体のアルファ・サブユニットに結合する抗体。アトピー性皮膚炎や好酸球性喘息症、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎などの治療に承認されている。
リンク: 両社のプレスリリース
ロシュ、テセントリクとアバスチンを切除不能肝細胞腫に適応拡大申請
(2020年1月27日発表)
ロシュは、Tecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)とAvastin(bevcizumab、和名アバスチン)を切除不能肝細胞腫の一次治療薬として併用する適応拡大をFDAに申請した。リアル・タイム・オンコロジー・リビュー(RTOR)パイロット・プログラムの対象なので、通常よりかなり早く承認される可能性がありそうだ。
全身性治療未施行の患者501人を組入れて効果をNexavar(sorafenib)と比較した第三相オープンレーベル試験、IMbrave150に基づくもので、主評価項目の一つである全生存期間のハザードレシオは0.58、p=0.0006となった。メジアンは未達(sorafenib群は13.2ヶ月)、もう一つのPFS(無進行生存期間、独立評価機関ベース)は各0.59、p<0.0001、6.8ヶ月、4.3ヶ月。G3/4の有害事象発現率は各群57%と55%、G5(致死的)は5%と6%だった。欧州や中国でも適応拡大申請の予定。
リンク: ロシュのプレスリリース
カイト社、第二のCAR-Tを欧州でも承認申請
(2020年1月28日発表)
ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq: GILD)の子会社であるカイト社は、KTE-X19を再発・難治性マントル細胞腫用薬としてEUに承認申請し、受理された。米国でも昨年12月に承認申請している。
第二相試験に基づくもので、74人を組入れ68人に投与したところ、総合反応率(独立放射線学的評価委員会ベース)は93%、完全反応率は67%だった。2年以上経った28例では43%が寛解を維持していた。全員がBTK阻害剤歴を持っており、他の薬や開発品のこのような患者における総合反応率が25~42%であったことを考えると、良好だ。臨床試験のCAR-Tはサイトカイン・シンドロームや神経学的副作用が見られるが、本試験ではG3以上の発現率は前者が15%、後者は31%で、G5(致死例)はなかった。
KTE-X19はびまん性巨細胞型B細胞リンパ腫などに承認されているYescarta(axicabtagene ciloleucel)と同様に、CD19に結合する抗体の可変領域単鎖フラグメントとCD3ゼータT細胞活性化ドメイン、そしてCD28シグナリング・ドメインから構成される。違いは生産過程で循環腫瘍細胞を自家免疫細胞から分離していること。直接比較試験は行われないだろうから、臨床的な違いは明確にはならないのではないか。
リンク: ギリアドのプレスリリース
【承認審査・委員会】
BMS、オプジーボとヤーボイのNSCLC適応拡大申請をEUで撤回
(2020年1月31日発表)
ブリストル·マイヤーズ スクイブは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab)を併用で非小細胞性肺癌の一次治療に充てる適応拡大を欧米で承認申請したが、EUに関しては、撤回を発表した。MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)との売上高の差を縮めるためには非常に重要な適応なので、FDAが審査期限の5月15日にどのような判断を示すか、注目される。
この二種変更申請は、CheckMate-227試験に基づくもの。転移性非小細胞性肺癌の一次治療を受ける患者を、PD-L1発現が1%以上の患者はパート1aに、未満はパート1bに振り向け、パート1aはOpdivoとYervoyの併用、Opdivo単剤、化学療法レジメンの三群に、パート1bはOpdivo・Yervoy併用、Opdivo・化学療法、化学療法の三群に、無作為化割付した。組入れ基準を拡大してパート2も設定した。
複数の主評価項目が設定され、最初に結果が出た解析が成功、欧米で承認申請された。パート1aと1bに組入れられた患者のうち、TMB(腫瘍遺伝子変異量)が10変異/メガベース以上のサブグループ分析で、Opdivo・Yervoy併用群のPFS(無進行生存期間)ハザードレシオが化学療法比0.58という大変良いものだった。
しかし、その後に結果が出た全生存期間の解析(主評価項目ではない)ではハザードレシオ0.77と数値は良いが有意差なし、TMBが10変異/メガベース未満のサブグループのハザードレシオは0.78でこちらも惜しくも有意差なし、という悩ましいものだった。この試験は盲検ではないのでPFSの信頼性は万全ではない。また、TMBを使って治療が奏功しそうな患者をスクリーニングする手法を検討したOpdivoの第二相試験やロシュのTecentriqの第二相試験の事後的分析では、PFSに関しては良さそうな結果が出たが全生存期間では無効に見えた。今回の第三相の結果と符合している。
結局、BMSは承認申請を撤回した。その後、もう一つの主評価項目であるパート1aにおけるOpdivo・Yervoy併用群の全生存期間の解析が成功、化学療法比ハザードレシオが0.79で有意だったため、改めて、PD-L1≧1%の転移性難治性非小細胞性肺癌でEGFRやALKの活性化変異を持たない患者に適応拡大申請したという経緯。
EUは、プロトコルが何度も変更されたことに難色を示したようだ。FDAが同じように考えるかどうかは不明。
BMSはCheckMate-9LA試験のデータを提出する考え。非小細胞性肺癌の一次治療としてOpdivoとYervoyそして化学療法を併用する効果を化学療法群と比較したもので、主評価項目である全生存期間の解析が成功した。数値は未発表で、Keytrudaと化学療法の併用と見比べてどれくらい良いのかは明らかではない。
尚、ライバルのKeytrudaもEUで適応拡大申請を撤回している(次項参照)。
リンク: BMSのプレスリリース
CHMP、急性肝性ポルフィリン症治療薬などに肯定的意見
(2020年月日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、1月の会合で、急性肝性ポルフィリン症治療薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
新薬で肯定的意見を得たのは、まず、アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)のGivlaari(givosiran)。12歳以上の急性肝性ポルフィリン症の治療薬。ポルフェリン症は、ヘム合成回路の酵素の機能喪失・低下変異が原因でポルフェリンが蓄積し、肝臓などに障害を与える、欧米で推定3000人が罹患する希少疾患。Givlaariはアミノレブリン酸合成酵素の発現を妨げる短鎖RNA介入薬で、ポルフェリン前駆体の産生を抑制する。臨床試験では増悪を偽薬比70%抑制した。注射箇所反応や腎毒性、肝機能検査値異常が見られる。米国では昨年11月に承認された。
リンク: EMAのプレスリリース
Esperion Therapeutics(Nasdaq:ESPR)のNilemdo(bempedoic acid)はACL(ATPクエン酸リアーゼ)阻害剤。高コレステロール血症または混合異脂血症で、スタチンだけではLDL-C値を十分に管理できない又は不耐の患者に用いる。Nustendi(ezetimibeとの固定用量合剤)も肯定的意見を受けた。第一三共がEUやスイスでの独占販売権を持っている。
EsperionはLipitor(ezetimibe)を発見した研究者が創設した会社。最も期待された遺伝子組換え型Apo A-IミラノはIVUS(血管内超音波)試験がフェールし開発中止になったが、遂に初承認が見えてきた。米国でも承認審査中で、審査期限は単剤が今月21日、合剤が同26日。
リンク: エスペリオンのプレスリリース
バイエルがオライオン(OMX:ORNAV/ORNBV)からライセンスしたNubeqa(darolutamide、和名ニュベクオ)は非ステロイド系アンドロゲン受容体アンタゴニスト。高リスクの非転移性去勢抵抗性前立腺癌に用いる。経口剤で、精巣摘出患者以外はゴナドトロピン放出ホルモン作用剤と併用する。第三相ARAMIS試験ではMFS(無転移生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン40.4ヶ月と、偽薬・アンドロゲン枯渇療法併用群の18.4ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.41、p<0.001だった。全生存期間の解析も数値は未発表だが、成功した。
米国で昨年7月に、日本でも今年1月に承認された。
リンク: バイエルのプレスリリース
ノボ ノルディスクのRybelsus(semaglutide)は二型糖尿病治療薬。週一回皮注用GLP-1作用剤Ozempicの活性成分を一日一回経口投与に変えた新製剤で、経口投与のGLP-1作用剤は初。Emisohere Technologies(OTCBB:EMIS)の技術を用いてサルカプロザートナトリウムと合わせて錠剤化、胃の受動的細胞内輸送メカニズムに乗れるようにした。米国では昨年9月に承認。日本は昨年7月に承認申請。
リンク: ノボのプレスリリース
イーライリリーのLiumjev(insulin lispro)は超速効型の遺伝子組換え型インスリン。Humalogの活性成分の新製剤で、血糖低下作用のオンセットを早めた。一型、二型の糖尿病患者を組入れたHumalog対照試験で、A1c低下は非劣性だったが、食事の1時間後、2時間後の血糖値は有意に低かった。低血糖リスクは有意差なし。
日本などでも承認申請中。血糖治療薬のライバルであるノボ ノルディスクの類似製品、Fiasp(insulin aspart)に対抗する。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
最後に、ファイザーのStaquis(crisaborole)はアトピー性皮膚炎の治療薬。2歳以上で病変が体表面積の40%以下である患者に用いる。PDE-4阻害剤の軟膏で、米国では16年12月にEucrisa名で承認された。16年5月にAnacor Pharmaceuticalsを52億ドル(現預金残高を差し引いたネット額)で買収して入手したコンパウンドの一つ。
適応追加では、Venclyxto(venetoclax、和名ベネクレクスタ、米名Venclexta)をGazyvaro(obinutuzumab、和名ガザイバ、米名Gazyva)と併用で未治療の成人性慢性リンパ性白血病(CLL)に用いることが支持された。承認の根拠となったCLL14試験では、持病を持つCLL患者の一次治療としてこの二剤の併用またはchlorambucilとGazyvaro併用を施行したところ、PFS(無進行生存期間、独立第三者評価)のハザードレシオが0.33と、大きな違いが出た。米国では昨年5月に用法追加承認。
Venclyxtoはアッヴィとジェネンテックの共同開発で、米国では共同販売、欧州などはアッヴィが単独販売している。
リンク: ロシュのプレスリリース
さて、今回は承認申請撤回が二件、EMAによって発表された。BMSのIdhifa(enasidenib)の新薬承認申請と、MSDのKeytruda(pembrolizumab)の食道がん適応追加申請だ。
IdhifaはBMSが1月に740億ドルで買収したセルジーンがAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)からライセンスしたIDH2(イソクエン酸脱水素酵素)阻害剤。米国では17年8月にIDH2変異再発難治急性骨髄性白血病用薬として承認されたが、エビデンスは単群試験の反応率と反応持続期間だった。EUは幾つかの血液癌については反応率に基づく承認をしない傾向があり、今回も、これが背景だろう。
血液癌の薬物療法は二次性腫瘍や分化症候群を誘導することがある。Idhifaは分化症候群の発生率が19%、死亡率は5%と比較的高い。
リンク: EMAのプレスリリース
Keytruda(pembrolizumab)は昨年7月に米国で、PD-L1陽性(CPS≧10)の局所進行性/転移性食道扁平上皮腫の二次治療に用いることが承認された。KEYNOTE-181試験に基づくもので、今回、EUで撤回されたのは、同様な内容の申請と推測される。EUは挙証不十分と見做したが、米国でも、承認された適応範囲が変だった。
181試験は三種類の集団に係る全生存期間が主評価項目に設定されたため、夫々の解析のp値の閾値は通常の0.05より低くなった。PD-L1陽性(CPS≧10)サブグループは担当医選択化学療法群に対するハザードレシオが0.69、p=0.0074となり閾値をクリアしたが、扁平上皮種サブグループは0.78、p=0.0095となり数値は良好だったが閾値をクリアできなかった。全割付患者の解析は0.89、p=0.056でフェールした。
従って、適応範囲はPD-L1陽性のみ、あるいは、PD-L1陽性又は扁平上皮腫、と予想していたが、結果は、PD-L1陽性且つ扁平上皮腫という主評価項目とは異なるサブグループだった。二次的評価項目だったのかもしれないが、主評価項目の一つがフェールしたのだから、二次的評価項目に関して統計学的に有意とは言えないはずだ。(A or B)から(A and B)を控除したサブサブグループの数値がよほど悪かったのかもしれない。
CPS≧20というスクリーニング基準は治験の開始後のプロトコル変更であった模様で、群間の偏りが見られるようだ。もしかしたら、FDAは適応を絞り込むことでMSDに今後の宿題を与えたのかもしれない。もしかしたら、EUの懸念も同じで、表現型が異なるだけなのかもしれない。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
ピーナツアレルギーの経口減感作療法が承認
(2020年1月31日発表)
FDAは、米国カリフォルニア州のAimmune Therapeutics(Nasdaq:AIMT)のPalforziaをピーナツアレルギーの減感作療法用薬として承認した。ラッカセイのアレルゲンを粉末化したもので、治療開始時に4-17歳の患者が適応になる。一日一回、半固形食品に混ぜて摂取する。リスクはなくならないので、ピーナツ摂取を避ける努力は続ける。開始時、増量時はアナフィラキシーのリスクが高まるため、服用後60分以上、経過観察する。激しい運動の後や入浴の前後には服用しない。管理不良喘息症や好酸球性疾患は禁忌。
欧州では昨年6月に承認申請された。
リンク: Aimmune社のプレスリリース
今週は以上です。
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