2018年6月17日

2018年6月17日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • HIV/AIDSの二剤併用療法、第三相が成功 
  • アミロイド仮説がまたまたフェール 
  • ガーダシル9の対象年齢拡大申請 
  • 非営利団体の熱帯病治療薬がFDAに承認 
  • MSD、キイトルーダの二つの適応拡大が承認 
  • ロシュ、アバスチンが術後付随療法に承認 


【新薬開発】


HIV/AIDSの二剤併用療法、第三相が成功
(2018年6月14日発表)

ヴィーブヘルスケアは、HIV/AIDS患者の最初の抗ウイルス療法としてdolutegravirとlamivudineの二剤だけを用いた第三相試験が二本とも成功したと発表した。年内に承認申請する考え。

HIV/AIDSの治療は複数の核酸系逆転写阻害剤とそれ以外の作用機序の抗ウイルス剤を併用する、HAART(highly active anti-retroviral therapy)が主流だ。多剤併用はピルバーデンが重いが、プロテアーゼ阻害剤以外では、3~4種類の薬剤の合剤が実用化され、一日1~2回、1錠/1カプセルずつ服用するだけで足りるようになった。

核酸系逆転写阻害剤は耐性ウイルスが選択されるのを防ぐため複数併用するのが常識だが、ヴィーブは二剤併用療法の開発に相次いで成功した。最初がインテグラーゼ阻害剤dolutegravirとジョンソン・エンド・ジョンソンの非核酸系逆転写阻害剤であるrilpivirineを配合したJuluca。17年に米国で、今年5月にはEUでも、HAARTが奏功しウイルス抑制に成功した患者の維持療法として承認された。

第二弾が今回のdolutegravirとlamivudine。第三相試験では対照群に設定されたdolutegravirとギリアドの核酸系逆転写阻害剤であるemtricitabineおよびtenofovir disoproxil fumarate(TDF)の三剤併用群と比べて、奏効率が非劣性だった。二剤で済むなら忍容性の面で都合がよい。

ヴィーブはグラクソ・スミスクラインと塩野義製薬、ファイザーの合弁会社。dolutegravirは塩野義が創製したもの。lamivudineはグラクソ・スミスクラインが1990年代に発売した核酸系逆転写阻害剤の代表的な製品。

リンク: ヴィーブのプレスリリース

アミロイド仮説がまたまたフェール
(2018年6月12日発表)

アストラゼネカとイーライリリーは、両社が共同開発しているBACE阻害剤、lanabecestatの第三相アルツハイマー病試験三本の打ち切りを決めた。アルツハイマー病の比較的早い段階の患者を組入れた試験と軽度アルツハイマー病の試験の独立データ監視委員会が無益性を認定したため、延長試験と合わせて、繰上げ終了する。

BACE阻害剤はアミロイド・ベータの切り出しに係る酵素を阻害する。抗アミロイド・ベータ抗体と同様に、アルツハイマー病の患者の脳にアミロイド・ベータの蓄積が見られることに注目したアミロイド仮説にの産物だが、数多くのコンパウンドの第三相試験がフェールしており、信憑性は低下している。

リンク: 両社のプレスリリース


【承認申請】


ガーダシル9の対象年齢拡大申請
(2018年6月13日発表)

MSDは、子宮頸がんワクチンGardasil 9の対象年齢を現在の9~26歳の男女から45歳まで拡大する申請を米国で行い、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は今年10月6日。

Gardasilは、将来、ヒト・パピローマ・ウイルスに感染した時の子宮頚癌や肛門癌、尖圭コンジローマのリスクを削減するワクチン。初代のGardasilは4種類、Gardasil 9は9種類のパピローマ・ウイルスをカバーする。癲癇発作に似た失神が起きることがあり、接種後は15分間様子を見る必要がある。酵母やGardasilに過敏反応する患者は禁忌。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認】


非営利団体の熱帯病治療薬がFDAに承認
(2018年6月13日発表)

Medicines Development for Global Health(MDGH)は、WHOの熱帯病医学特別研究訓練プログラム(TDR)と共同開発したオンコセルカ症(河川盲目症)の治療薬がFDAに承認されたと発表した。非営利団体としては初めて、熱帯病優先審査バウチャーを取得した。

この病気は黒バエが仲介して寄生虫が人体に侵入、皮膚のかゆみや結節、そして、失明に至る障害を引き起こす。今回承認されたmoxidectinは動物の寄生虫駆除剤として長年の使用歴がある。米国での承認を裏付けとして、患者が集中するアフリカ諸国で承認取得・供給することになる。

リンク: MDGHのプレスリリース

MSD、キイトルーダの二つの適応拡大が承認
(2018年6月13日発表)

MSDは、FDAがKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の二つの適応拡大を承認したと発表した。どちらも抗PD-1抗体で初。

一つはPMBCL(原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)の成人小児の三次治療。PMBCLは米国の非ホジキン型リンパ腫の2~4%を占める。自家造血幹細胞移植を経験済み、または、不適な患者を組入れた第二相試験で、ORR(客観的反応率)が45%、完全反応は11%だった。深刻有害事象の発生率は26%、有害事象による治験離脱率は8%だった。

成人は200mg、小児は2mg/kg(上限200mg)を三週毎に点滴静注する。緊急細胞減少療法が必要な患者は禁忌。

上記試験のデータに基づきブレークスルーセラピー指定を受け、優先審査されたが当初の審査期限よりは遅れた。

もう一つは子宮頚癌の二次治療。PD-L1発現検査でCPS(Combined Positive Score)が1以上が適応になる。小規模な単群試験でORRが14.3%、完全反応は2.6%だった。尚、CPS<1ではORRはゼロだった。

KeytrudaのPD-1発現検査はこれまでの適応ではTPS(Tumor Proportion Score)が用いられてきたが、今回は腫瘍関連免疫細胞における発現状況も評価するCPSが採用された。検査キットはTPSと同じ(PD-L1 IHC 22C3 pharmDx)であるようだ。尚、EUでは白金薬不適末期転移性尿路上皮癌の一次治療に用いる場合もCPSで10以上が条件となっている。

リンク: FDAのプレスリリース(PMBCL)
リンク: MSDのプレスリリース(同)
リンク: 同(子宮頚癌承認、6/12付け)

ロシュ、アバスチンが術後付随療法に承認
(2018年6月13日発表)

ロシュは、Avastin(bevacizumab)を卵巣癌の術後付随療法に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。ステージIII/IVの患者に一次的腫瘍減量手術を行った後、carboplatinとpaclitaxelの標準的レジメンと併用し、更にモノセラピーで総計で22サイクル施行する。

承認の根拠となったGOG-0218試験では、担当医評価によるPFS(無進行生存期間)がメジアン18.2ヶ月と、carboplatin・paclitaxelだけの群の12.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62、統計的に有意だった。

リンク: ロシュのプレスリリース






今週は以上です。

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