【ニュース・ヘッドライン】
- サイラムザ、バイオマーカーでスクリーニングした肝細胞腫試験成功
- インサイト、IDO1阻害剤のキイトルーダ併用試験がフェール
- Paratek社、テトラサイクリン系抗生剤を承認申請
- ファイザー、汎erbB阻害剤を欧米で承認申請
- アストラゼネカ、新規ADCを米国で承認申請
- アストラゼネカ、リムパーザをEUでも乳癌に適応拡大申請
- リジェネロン、抗PD-1抗体を有棘細胞癌に承認申請
- リジェネロン、デュピクセントを喘息に適応拡大申請
- Alkermes、難治性鬱病用薬は審査完了に
- クロビス、Rubracaの適応拡大が承認
【新薬開発】
サイラムザ、バイオマーカーでスクリーニングした肝細胞腫試験成功
(2018年4月4日発表)
イーライリリーは、Cyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)の第三相肝細胞腫二次治療試験が成功したと発表した。4年前に開票した試験では全生存期間が偽薬を有意に上回らなかった。今回はAFP(alpha fetoprotein)が高値の患者に絞り込んだことが奏功したのかもしれない。
この試験は、sorafenib歴を持つ、または不耐で、AFPが400 ng/mL以上の肝細胞腫を組入れて、延命効果を偽薬と比較したもの。AFPは肝細胞腫のバイオマーカーでもあり、5割程度がAFP≧400 ng/mLに該当する模様。データは今後、学会で発表される見込み。
CyramzaはVEGFR-2/KDRに結合する完全ヒト化抗体で、これまでに胃癌や肺癌、結腸直腸癌に承認されている。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
インサイト、IDO1阻害剤のキイトルーダ併用試験がフェール
(2018年4月6日発表)
インサイト(Nasdaq:INCY)は、INCB024360(epacadostat)の第三相試験がフェールしたと発表した。悪性黒色腫にMSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)と併用する効果をKeytrudaだけの群と比較したが、主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)は大差なかった。共同主評価項目の全生存期間はまだ成熟していないが、外部データ監視委員会が期待薄と判定し、治験打ち切りとなった。インサイトは、バイオマーカー分析などを進める考え。
INCB024360は、様々な腫瘍細胞で高度発現しているindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)1を阻害して、制御的T細胞やイフェクターT細胞の活性が低下するのを妨げる。癌が免疫を免れるメカニズムに作用する点で、Keytrudaのような抗PD-1抗体と似ており、相乗効果も期待されたが、結実しなかった。BMSのOpdivo(nivolumab)併用など他の第三相の結果が注目される。
他社のIDO1阻害剤の開発も今のところ難航していて、二匹目のドジョウはなかなか見つからない。
リンク: インサイトのプレスリリース
【承認申請】
Paratek社、テトラサイクリン系抗生剤を承認申請
(2018年4月4日発表)
Paratek Pharmaceuticals(Nasdaq:PRTK)は、PTK 0796(omadacycline)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。欧州でも承認申請する予定。
承認されたらほぼ20年ぶりとなるテトラサイクリン系の新薬で、ABSSSI(急性細菌性皮膚皮膚構造感染症)やCABP(地域感染細菌性肺炎)の治療に用いる。経口剤と静注用があり、一日一回投与。臨床試験では何れも実薬に非劣性だった。悪心嘔吐や肝機能検査値異常がやや多いように感じられ、CABP試験では死亡率が2.1%とmoxifloxacin群の1.0%より高かった。
華やかな協業歴を持ち、99年にグラクソ、03年にバイエル、05年にMSD、そして09年にノバルティスがライセンスしたが何れも解消となった。
リンク: Paratekのプレスリリース
ファイザー、汎erbB阻害剤を欧米で承認申請
(2018年4月4日発表)
ファイザーは、PF-00299804(dacomitinib)をEGFR活性化変異を持つ局所進行性・転移性非小細胞性肺癌の一次治療薬として欧米で承認申請し、受理された。米国は優先審査を受ける。
EGFRやher2など、erbB成長因子受容体を阻害する汎erbBチロシンキナーゼ阻害剤。第三相試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が14.7ヶ月とIressa(gefitinib)群の9.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.59だった。忍容性はやや劣り、66%の患者が減量した(Iressa群は8%)。
リンク: ファイザーのプレスリリース
アストラゼネカ、新規ADCを米国で承認申請
(2018年4月3日発表)
アストラゼネカは、moxetumomab pasudotoxを難治性再発性有毛細胞白血病の三次治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。
CD22を標的とする抗体のフラグメントに細胞毒を結合した抗体薬物複合体。アストラゼネカが06年に買収したCambridge Antibody Technologyがその前年にGenencorから取得したもの。米NCIがスポンサーになって実施された第三相試験で主目的(持続的完全反応)を達成した。データは今後、学会発表される予定。
有毛細胞白血病は米国で年1000人が診断される希少疾患で、一次治療の寛解率は高いが、やがて再燃すると予後はあまりよくないとのことなので、市場が小さくても価値がありそうだ。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
アストラゼネカ、リムパーザをEUでも乳癌に適応拡大申請
(2018年4月3日発表)
アストラゼネカのLynparza(olaparib、和名リムパーザ)はBRCA変異を持つ卵巣癌の薬として14年に欧米で承認された。適応拡大ではBRCAの生殖細胞性有害変異を持つher2陰性転移性乳癌の二次治療試験が成功。17年に日米で承認申請され、米国では今年1月に承認されたところだが、EUでもこの度、承認申請受理されたことが発表された。
臨床試験ではPFS(無進行生存期間)が7.0ヶ月と、capecitabineやeribulinなどを用いた群の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.58だった。
アストラゼネカはMSDとLynparza及びselumetinib(MEK阻害剤)の共同開発共同販売提携を結んでいる。目標達成報奨金を含めると最大で60億ドルの収入も見込める大型提携だ。MSDは、その後、エーザイともlenvatinibの共同開発販売で提携しており、大型協業が相次いでいる。
リンク: 両社のプレスリリース
リジェネロン、抗PD-1抗体を有棘細胞癌に承認申請
(2018年4月3日発表)
リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィは、REGN2810(cemiplimab)を転移性または切除不能局所進行性の有棘細胞癌用薬としてEUで承認申請し受理されたと発表した。米国も3月までにローリング承認申請を完了する計画だったので、早晩、受理が発表されるのではないか。
有棘細胞癌は米国で年4000~8000人が死亡する。手術と放射線療法が中心で承認された薬はない。cemiplimabはOpdivo(nivolumab)などと同様な抗PD-1抗体。第二相試験で客観的反応率が46.3%だった。
リンク: 両社のプレスリリース(pdfファイル)
リジェネロン、デュピクセントを喘息に適応拡大申請
(2018年4月3日発表)
リジェネロンがサノフィと共同開発販売しているIL-4受容体アルファサブユニットを標的とする抗体医薬、Dupixent(dupilumab、和名デュピクセント)は、軽中度アトピー性皮膚炎の治療薬として昨年欧米で承認され、日本でも年明けに承認されたところだが、次の用途として管理不良喘息症治療薬として適応拡大申請中。米国は3月に申請受理、日本は3月に承認申請、そして、今回、EUでも申請受理されたことが発表された。
臨床試験では重度喘息発作が偽薬比46%減少。FEV1の改善は偽薬比130mL程度なのでそれほど大きくはなさそうだ。
リンク: サノフィのプレスリリース(pdfファイル)
【承認審査・委員会】
Alkermes、難治性鬱病用薬は審査完了に
(2018年4月2日発表)
Alkermes(Nasdaq:ALKS)はALKS 5461(samidorphanとbuprenorphineの合剤)を難治性鬱病治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。薬効の立証が不十分で、よくデザインされた試験を改めて実施すべしとされた。第三相試験は一勝二敗、第二相を含めても二勝二敗だったので、意外な結果とはいえないだろう。
ALKS 5461は、ミュー・オピオイド受容体のアゴニストでカッパ・オピオイド受容体にはアンタゴニストとして作用するbuprenorphineに、ミュー・オピオイド受容体アンタゴニストのsamidorphanを併用することで、カッパ・アンタゴニズムだけを生かすアイディア。第三相の最初の二本は主評価項目のMADRSがフェール、三本目は評価項目を10から6に減らしたMADRS-6の期中平均値に切り替えたところ、高用量二群が成功した。
抗鬱剤の第三相は承認されている薬でもフェールが珍しくなく、「何本フェールしても二本成功すれば承認を取れる」とも言われている。Alkermesは異議申立てする考え。
リンク: Alkermesのプレスリリース
【承認】
クロビス、Rubracaの適応拡大が承認
(2018年4月6日発表)
クロビス・オンコロジー(Nasdaq:CLVS)は、Rubraca(rucaparib)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤で、16年に米国でBRCA有害変異を持つ末期卵巣癌の三次治療薬として承認された。今回の用途は、白金感受性卵巣癌で白金薬による二次以降の治療に反応した患者の維持療法。600mgを一日二回、経口投与する。
PARPは遺伝子複製ミスの修正に係る酵素。BRCAはPARPとは異なるミス修正メカニズムに係る酵素で、生殖細胞系または体細胞系遺伝子変異により機能喪失すると、体内でしばしば発生する複製ミスが上手く修正されず、癌のきっかけになりかねない。そのような人にPARP阻害剤を投与すると、活発に分裂する癌細胞は複製ミスも起きやすいので、毒を以て毒を制すような格好になる。
面白いのは、今回の用途はBRCA正常な患者にも適応になること。第三相のARIEL3試験では、最初にBRCA有害変異サブグループに対するPFS(無進行生存期間)延長効果を検討し、次に別のバイオマーカーに基づくサブグループ、そして全被験者の解析をシーケンシャルに行ったが、全てでハザードレシオが0.35を下回った。BRCA有害変異のない患者だけの探索的解析も良好な結果になった。
主な有害事象は貧血。警告注意事項は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病のリスクと催奇性。
Rubracaは2011年にファイザーからライセンスしたもの。欧州は3月にBRCA有害変異陽性卵巣癌の三次治療でCHMPの肯定的意見を得たところで、維持療法は承認後の6月に申請する予定。
リンク: クロビスのプレスリリース(pdfファイル)
今週は以上です。
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