2018年4月16日

2018年4月15日


【ニュース・ヘッドライン】

  • キイトルーダ、肺癌一次治療で化学療法に勝つ 
  • poziotinibがエクソン20変異肺癌に良績 
  • ファイザー、インライタの腎癌アジュバントはフェール 
  • RAGEアンタゴニストのアルツハイマー第三相がフェール 
  • PI3キナーゼ阻害剤の承認申請受理 


【新薬開発】


キイトルーダ、肺癌一次治療で化学療法に勝つ
(2018年4月9日発表)

MSDは、KEYNOTE-042試験が中間解析で成功認定されたと発表した。Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を非小細胞性肺癌の一次治療にモノセラピーで用いたところ、白金ベースの化学療法を施行した群より全生存期間が有意に長かった。データは未発表。

抗PD-1/PD-L1抗体の有効性はPD-L1発現状況により左右されるか、否か?臨床試験の結果は区々で、Keytrudaの場合、非小細胞性肺癌の二次治療に用いる時はTPS(PD-L1発現スコア)が1%以上なら適応になるが、一次治療は50%以上の癌しか承認されていない。一方、非扁平上皮非小細胞性肺癌にPD-L1不問でpemetrexed及びcarboplatinと三剤併用する用法は、米国では承認されたがEUは申請撤回となった。検査アッセイや手法が複数存在することもあり、今後の検討課題が数多く残っている。

042試験では最初に50%以上のサブグループ、次に20%以上、そしてさらにIntent-to-treat(この試験は1%以上のみ組入れた)と、シーケンシャルに解析を行ったところ、すべて延命効果が確認された。非小細胞性肺癌のうち、TPS≧50%は25%のみだが≧1%は60-65%を占めるとのことなので、適応患者が倍増以上することになる。尚、この試験は扁平上皮性も非扁平上皮性も組入れている。

独立データ監視委員会は二次的評価項目であるPFS(無進行性損期間)の解析を行うため治験継続を勧告した由。PFSのほうが先に成功しそうなものだが、抗PD-1/PD-L1抗体は全生存期間の解析が成功してもPFSは有意差に達しないこと時々ある。似たような現象はIL-2やアルファインターフェロンでも見られるので、免疫強化療法の特性なのだろう。

キイトルーダの肺癌は化学療法併用第三相試験なども実施されており、今週末に始まったAACR(米国癌研究学会)で結果発表が期待されている。モノセラピーと併用のどちらも有効ならば、忍容性も吟味した上で、一次治療から三剤併用するのか、モノで初めて白金レジメンは二次治療に取っておくのか、標準療法を決めることになりそうだ。

リンク: MSDのプレスリリース

poziotinibがエクソン20変異肺癌に良績
(2018年4月10日発表)

Spectrum Pharmaceuticals(Nasdaq:SPPI)は、MD Andersonで実施されたpoziotinibの第二相試験が良好な結果になったことを明らかにした。EGFRのエクソン20変異を持つ非小細胞性肺癌に投与したところ、最初の11人の解析でcORR(確認客観的反応率)が64%となった。主な有害事象はラッシュと下痢。

15年に韓国の韓美薬品(Kosdaq:128940)からHM781-36Bの中韓以外における独占開発販売権を取得したもの。エクソン20変異は非小細胞性肺癌の2~3%が該当する由。Spectrumは自社でもEGFRやher2のエクソン20変異を持つ非小細胞性肺癌や、her2陽性転移性乳癌の、第二相試験を実施中。

リンク: Spectrumのプレスリリース

ファイザー、インライタの腎癌アジュバントはフェール
(2018年4月10日発表)

ファイザーは、Inlyta(axitinib、和名インライタ)の第三相腎細胞腫アジュバント試験がフェールしたと発表した。このATLAS試験は、切除術を受けたが再発リスクの高い患者をInlyta群と偽薬群に無作為化割付して無病生存期間を比較したもので、独立データ監視委員会が中間解析で無益性を認定した。

Inlytaと同じVEGF受容体阻害剤の同様な試験では、バイエルのNexavar(soratinib)とファイザーのSutent(sunitinib)を偽薬と比較したASSURE試験がフェール。Sutentは高リスクの患者だけを組入れたS-TRAC試験が成功し、FDAは適応拡大を承認したがEUは今年2月にCHMPが否定的意見と、評価が分かれている。ATLAS試験はサンプル数はS-TRACと同程度だが、リスクがやや小さい患者も組入れ対象だったので、これが影響したのかもしれない。

同じような薬を雁行的に開発するのは奇妙に見えるが、過去の戦略の名残なのだろう。ファイザーは企業買収・合併を活発に行ってきたが、数年前までは、パイプラインの整理統合を行わず研究所同士で競わせる戦略を取っていた。三井住友銀行新宿支店のライバルは新宿西口支店、と日本でも人気のあった戦略だ。

Sutentの開発コードはSU-011,248で、02年に買収したファルマシアがそれ以前に買収したSugenのプリフィックスがついている。InlytaはAG-013,736で、2000年に買収したワーナー・ランバートがその前年に買収したAgouron Pharmaceuticalsの開発品と推測される。

リンク: ファイザーのプレスリリース

RAGEアンタゴニストのアルツハイマー第三相がフェール
(2018年4月9日発表)

vTv Therapeutics(Nasdaq:VTVT)は、TTP488(azeliragon)の第三相軽度アルツハイマー病試験がフェールしたと発表した。他の試験も打ち切る考え。

TTP488はAGE(終末糖化産物)の受容体のアンタゴニスト。ファイザーがライセンスしてPOC試験を行ったが、高用量群で認知機能悪化が見られたためデータ監視委員会が中止を勧告した。糖尿病性腎症試験も思わしい結果が出ず、2011年にライセンス返還した。

vTv社は、上記POC試験のポストホック分析で低用量群の軽度アルツハイマー病患者に対する治療効果のp値が0.008だったことに注目して、軽度患者800人を組入れて第三相に踏み切ったのだが、今回もまた、「事後的サブグループ分析でよい数値が出ても楽観できない」という経験則通りの結果になった。

尚、vTvは15年にTransTech Pharmaから社名変更した。

リンク: vTvのプレスリリース


【承認申請】


PI3キナーゼ阻害剤の承認申請受理
(2018年4月9日発表)

Verastem(Nasdaq:VSTM)は、duvelisib)の承認申請がFDAに受理され、優先審査指定されたことを発表した。審査期限は10月5日。

16年にInfinity Pharmaceuticals(Nasdaq:INFI)から世界開発販売権を取得したホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)デルタ/ガンマ阻害剤で、適応は、再発性難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の本承認と、再発性難治性濾胞性リンパ腫の加速承認を求めた。

前者はDUO試験でPFS(無進行生存期間)がメジアン13.3ヶ月とArzerra(ofatumumab、抗CD20完全ヒト化抗体)群の9.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.52だった。後者は第二相でORR(客観的反応率)が46%、完全反応はなく、期待外れだったのか、14年に開発販売権を取得したアッヴィがライセンスを返還した経緯がある。

リンク: Verastemのプレスリリース






今週は以上です。

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