2017年4月30日

2017年4月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功 
  • リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答 
  • アリアド、武田グループ入り後初の承認 
  • FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認 
  • FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認 
  • バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大 
  • EUでVarubyなどが承認 


【承認申請】


イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功
(2017年4月24日発表)

イーライリリーは、LY2835219(abemaciclib)の第三相乳癌一次治療試験の成功を発表した。ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後転移性乳癌にanastrozoleまたはletrozoleと併用する効果を検討したところ、中間解析で主評価項目のPFS(無進行生存期間)が偽薬群を有意に上回った。データは未発表。

abemaciclibは細胞周期の進行に係るサイクリン依存性キナーゼ4と6を阻害する小分子薬で、150mgを一日二回、経口投与する。先行品としてはファイザーのIbrance(palbociclib)が15年に、ノバルティスのKisqali(ribociclib)が今年3月に、米国で承認されている。イーライリリーは、追いかける側の定石通りに、サルベージと二次治療、そして一次治療の臨床試験を雁行的に進めており、今四半期中にサルベージと併用二次治療で、次四半期に今回の併用一次治療で、承認申請する計画だ。

先行二剤とは服用スケジュールが異なり、一日一回ではなく、休薬期がない。忍容性が優れる可能性もあるが、直接比較試験が行われたわけではないので、良くわからない。好中球減少症が用量制限的毒性にならないため効果が高い可能性があるので、データを見てみたい。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答
(2017年4月28日発表)

リジェネロンと開発販売パートナーであるサノフィは、Kevzara(sarilumab)を抗リウマチ薬として欧米で承認申請し、EUでは今月、CHMPの肯定的意見を得た。米国は、サノフィの充填最終製剤工場でcGMP上の欠陥が発覚し審査完了通知を受領したが、今回、指摘事項に回答、受理された。クラスIリサブミッションとなったので、2ヶ月内に審査結果が出るはず。

KevzaraはIL-6受容体アルファ・サブユニットを標的とする完全ヒト化抗体。日本発の抗体医薬である中外/ロシュのActemra(tocilizumab)の類薬だ。Kevzaraは皮注、Actemraも関節リウマチ用には皮注用製剤あり。投与頻度は二週間に一回、Actemraも同じだが100kg超の患者は毎週。Kevzaraは完全ヒト化抗体、Actemraはヒト化抗体。細かい違いはあるものの概ね同じようなものと考えておけばよいだろう。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認】


アリアド、武田グループ入り後初の承認
(2017年4月28日発表)

武田薬品は、2月に54億ドルで買収した米国の新興製薬会社、アリアド・ファーマスーティカルズが開発したAlunbrig(brigatinib)が米国で承認されたと発表した。ALK変異陽性の非小細胞性肺癌でcrizotinibに不応または不耐の患者に用いる。経口剤で、開始用量は90mgを一日一回、忍容性が良好なら8日目から180mgに増量する。

第二相試験では確認ORR(客観的反応率)が53%、メジアン反応持続期間は13.8ヶ月。脳転移患者では頭蓋内ORRが67%だった。主な有害事象は腎機能検査値異常、高血圧症、肺炎、発疹など。致死的な有害事象の発生率は3.7%で、肺炎や突然死、呼吸困難、肺不全、肺塞栓、細菌性髄膜炎、尿路性肺血症。

リンク: 武田のプレスリリース(アリアドのホームページ)

FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認
(2017年4月28日発表)

FDAは、ノバルティスのRydapt(midostaurin)をFLT3変異型AML(急性骨髄性白血病)の新患および末期全身性肥満細胞症に用いる薬として承認した。ノバルティスを始め多くの製薬会社の研究開発テーマであったFLT3阻害剤が遂に臨床デビューする。

AMLでは、cytarabineなどを用いる導入療法や地固め療法と併用で、第8~22日に50mgを一日二回経口投与する。第三相試験では全生存のハザードレシオが0.77と有意に改善した。末期全身性肥満細胞症では100mgを一日二回服用する。

主な有害事象は骨髄抑制、悪心嘔吐、粘膜炎など。妊婦は禁忌。肺障害が発生したら投与を中止する。

FLT(FMS-like tyrosine kinase)は造血前駆細胞の受容体チロシンキナーゼで、AMLの3割程度では、インターナル・タンデム・デュプリケーションなどの活性化変異が見られる。Invivoscribe TechnologiesがPMA(販売前申請)した検査アッセイも承認された。

全身性肥満細胞症は肥満細胞が増殖し肝臓などの臓器に障害を与えるとともに血球数や体重の低下が起きる。9割の患者では肥満細胞の増殖生存に係るKIT酵素の遺伝子変異が見られる。Rydaptは、他の多くの分子標的薬と同様に、KITも阻害する。

リンク: FDAのリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認
(2017年4月27日発表)

FDAはバイオマリン(Nasdaq:BMRN)が承認申請したBrineura(cerliponase alfa)を神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)治療薬として承認した。適応は幼児期後期に発症した3歳以上の患者だけで、2歳以下や早期発症型に対する効能や安全性は確立していない。

CLN2はTPP1遺伝子の変異によるトリペプチジル・ペプチダーゼ1の機能喪失/欠乏が原因で、ライソゾームで分解されるべき蛋白が蓄積する。典型的な経過は、2~4歳で発症し、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡する。米国では年間に20人の新生児が罹患と推定されている。

Brineuraは遺伝子組換え型ヒト・トリペプチジル・ペプチダーゼ1。第1/2相単群試験で24人に二週間に一回、300mgを4時間半かけて脳室内点滴投与したところ、運動・言語機能の評価スコアが48週間で0.43単位しか悪化しなかった。自然歴は2.1単位悪化と推定されている。FDAはリリースの中で症候性小児の歩行能力喪失を遅らせる薬は初と記しており、対照試験ではないが十分なエビデンスと評価したのだろう。主な治療関連深刻有害事象は過敏反応と点滴反応。

BrineuraはEUでもCHMPが今月、肯定的意見を纏めた。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイオマリンのプレスリリース

バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大
(2017年4月27日発表)

FDAはバイエルのStivarga(regorafinib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に適応拡大した。同社のNexavar(sorafenib、和名ネクサバール)による治療を既に受けた患者が適応になる。肝細胞腫用薬はNexavarが07年に適応拡大承認されて以来、10年ぶり。

StivargaはNexavarと類似した構造のVEGF受容体拮抗剤。Nexavarはオニキス・ファーマスーティカル(後にアムジェンが買収)とのras共同研究の成果で、オニキスにロイヤルティや利益シェアを払う必要がある。Stivargaは、バイエルは当初、独自に創製と主張したが、結局、オニキスへの支払いを免れることはできなかった。それでも、Nexavarより特許失効が遅いので、Stivargaを優先するメリットがある。

第三相試験ではメジアン生存期間が10.6ヶ月と偽薬群の7.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62と有意に改善した。

日本でも昨年10月に申請され、迅速審査指定を得ている。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイエルのプレスリリース

EUでVarubyなどが承認
(2017年4月26日発表)

EUの薬品承認審査機関であるEMAの医薬品専門家委員会、CHMPが2月と3月に肯定的意見を纏めた薬が続々と承認された。

まず、Tesaro(Nasdaq:TSRO)のVaruby(rolapitant)。NK-1受容体拮抗剤で、化学療法薬に誘発されて分泌されるサブスタンスPが脳の嘔吐中枢を刺激するのを防ぐ。中高度催吐性を持つ抗癌剤を施行する時に、即効性制吐剤である5-HT3受容体拮抗剤やdexamethasoneと併用すると、遅発性悪心嘔吐を抑制することができる。

米国では今年1月に審査完了通知を受領した。

NK-1受容体拮抗剤の第一号であるMSDのEmend(aprepitant、和名イメンド)と異なり3A4相互作用が小さい長所を持つが、発売が10年以上遅れたので市場性は限定的だろう。

Opko Health(NYSE:OPK)がシェリング・プラウ(後にMSDと合併)から資産取得し、MGI Pharmaで5-HT3受容体拮抗剤Aloxi(palonosetron)を開発したメンバーがエーザイ買収を機に独立して設立したTesaroに独占開発生産販売権を供与した。

リンク: Tesaroのプレスリリース(4/26付け)

次に、シャイアーのNatpar(甲状腺ホルモン、遺伝子組換え)は15年に52億ドルで買収したNPS Pharmaceuticalsの開発品。NPSは骨粗鬆症治療薬として欧米で承認申請したが、米国では承認されず、欧州では06年にPreotactという製品名で承認されたものの14年に商業上の理由で承認返上。慢性副甲状腺機能低下症に伴う低カルシウム血症の治療薬として出直した。米国では15年に限定的な内容で承認され、今回、EUでも条件付き承認された。

リンク: シャイアーのプレスリリース(4/26付け)

適応拡大では、Darzalex(daratumumab)を多発骨髄腫の二次治療に用いることが承認された。セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide )若しくはジョンソン・エンド・ジョンソン/武田薬品のVelcade(bortezomib)と、dexamethasoneを三剤併用する。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.37~0.38と、二剤併用のみより有意に優れていた。

Darzalexはジョンソン・エンド・ジョンソンがデンマークのジェンマブからライセンスした抗CD38完全ヒト化抗体。EUでは16年にRevlimidのような免疫調節薬及びVelcadeを既に使った患者に単剤投与するサルベージ用途で承認された。

リンク: ジェンマブのプレスリリース(4/28付け)

BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)は頭頸部扁平上皮腫に適応拡大。白金ベースのレジメンによる治療中・治療後に進行した患者に用いる。3mg/kgを2週間に一回投与する。第三相試験では延命効果が医師が選んだ薬(Erbitux(cetuximab)など)を投与した群を有意に上回った。

リンク: BMSのプレスリリース





今週は以上です。

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