【ニュース・ヘッドライン】
- MERSについて
- ASCO:オプジーボとYervoyの併用データ
- ASCO:ノバルティスのCAR-Tがリンパ腫に良績
- Imbruvicaの一次治療試験が成功
- JNJ、抗CD38抗体の承認申請に着手
- Keytrudaの適応拡大申請が受理
- FDA諮問委員会が女性の性的不全治療薬を支持
【今週の話題】
MERSについて
(2015年6月7日)
MERS(中東呼吸器症候群)は2012年にサウジアラビアで発見された感染症。当時は2002~3年に流行したSARSの再来かと心配したが、幸い、同国を中心とした小規模・散発的な発生に留まっている。
この二つはどちらもコロナウイルスによる感染症だが、違いは、MERSは容易には感染しないこと。リスクが高いのは濃厚接触者で、患者の家族や医療従事者の感染例が多い。もう一つの特徴は死亡率の高さ。SARSは約8000人が感染しその1割が死亡した。MERSはこれまでに1190人の感染が確認され、少なくとも444人が死亡した(WHOの6月5日付け報告による)。SARSと異なり遠く離れた国の病気と油断していたが、犠牲者の数ではそれほど変わらないのである。
SARSと同様に、抗ウイルス薬もワクチンも存在しない。数年の流行で終わってしまう感染症は有望な薬を見つけて大規模な臨床試験を行う頃には終息してしまい、また、開発資金も集めにくいことがボトルネックだ。SARS流行時はインターフェロン(アルファやベータ)やribavirinを用いるケースもあったが、小規模な臨床試験では特別な効果は見られなかったようだ。
結局、WHOの資料にもあるように、水分補給や解熱剤、鎮痛剤、呼吸補助、重複感染なら抗生物質と、患者の症状に合わせた支持療法を行うくらいしか治療法はない。
それでも、in vitroの研究で活性を示したものはある。第一は、代謝拮抗剤。Chanらの試験ではミコフェノール酸(ロシュ/中外のセルセプトやノバルティスのMyfortic)やインターフェロンベータ1b、ribavirinが活性を示した。セルセプトは免疫抑制剤として承認されている薬なので本当に効くのか分からないが、承認用量の数十分の一で足りる可能性があるので希望が残っているのではないか。第二は、抗体。TangらとJiangらが夫々にスクリーニングを行い複数の候補を発見したようだ。
MERSやエボラは生物兵器として用いられる可能性があるので薬やワクチンを開発する大義名分がある。第一相まで進めておいて、次に流行した時に第二相、三相を行うという方法もあるだろう。メキシコで発生した新型インフルエンザ様疾患が1~2ヶ月で日本に上陸したように、国際交流が活発な今日では対岸の火事と傍観していられない。素早く決断し実行することが重要だ。
リンク: ファクトシート:MERSコロナウイルス(WHO)
リンク: Chanらの論文(Journal of Infecttion、PubMed抄録)
リンク: Tangらの論文(PNAS誌)
リンク: Jiangらの論文(Science Translational Medicine、PubMedの抄録)
【新薬開発】
ASCO:オプジーボとYervoyの併用データ
(2015年6月1日発表)
BMSは、切除不能悪性黒色腫用薬Yervoy(ipilimumab)とOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の併用一次治療試験の結果をASCO米国臨床腫瘍学会で発表した。
併用群とOpdivo単剤投与群のPFS(無進行生存期間)をYervoy単剤投与群と比較したCheckMate-067試験で、各群のメジアン値は11.5ヶ月、6.9ヶ月、2.9ヶ月、ハザードレシオは併用が0.42(99.5%信頼区間0.31-0.57)、Opdivo単剤が0.57(同0.43-0.76)となり、どちらも有意だった。
この治験の共同主評価項目は上記の二種類の解析と未発表の全生存解析だが、探索的に行われた併用とOpdivo単剤の比較もハザードレシオ0.74(95%信頼区間0.60-0.92)だった。主評価項目ではないので統計学的に有意とは言えないが、良い数字である。ところが、PD-L1発現状況に基づくサブグループ分析で最も大きな便益を示したのは低/無発現癌だった。
この二薬の併用は極めて高価であり、グレード3/4の薬物関連有害事象の発生率も各群55.0%、16.3%、27.3%と高まる。もしPD-L1が応答性予測因子になるのならば、事前に検査してから適否を検討すべきだろう。
BMSは、この併用一次治療をFDAに適応拡大申請し、受理されたことも発表した。FDAが優先審査して9月30日までに回答する予定。第二相試験のORR(客観的反応率)データに基づくものだが、今回の試験も審査対象になるのではないか。
Opdivoの効果とPD-L1発現の関連が示唆されたのは非扁平上皮非小細胞性肺癌に続く二回目だ。MSDやロシュの抗PD-1/抗PD-L1抗体に関してはこれまでも指摘されていたことだが、なぜOpdivoは今まで分からなかったのだろうか?PD-L1発現を検査するアッセイはものによって結果が異なると言われており、これが原因かもしれない。
リンク: BMSのプレスリリース
リンク: 同、適応拡大申請受理
ASCO:ノバルティスのCAR-Tがリンパ腫に良績
(2015年6月1日発表)
ノバルティスは2012年にCAR-T(キメラ抗原受容体-Tセル療法)の老舗であるペンシルベニア大学の研究者と共同研究開発提携を結び、CD19を標的とするCART-19/CTL019の臨床開発を進めている。小児急性リンパ芽球性白血病で第二相試験に進んだが、ASCOでは再発性難治性リンパ腫の第二相試験のデータも公表された。
びまん性大細胞型Bセルリンパ腫と濾胞性リンパ腫の成人患者を組入れた試験で、19人中11人が完全反応、2人が部分反応だった。びまん性大細胞型Bセルリンパ腫はORR(客観的反応率)が50%、濾胞性リンパ腫は100%だった。CAR-Tに付き物のグレード3以上のサイトカイン放出症候群は2人で発生した。
CAR-Tは腫瘍特異的抗原に結合する抗体フラグメントとTセル受容体の共刺激伝達領域刺激因子を繋げたものを作り出す遺伝子を患者から採取したTセルに導入し、培養したもの。CTL019は再発難治性小児急性リンパ芽球性白血病でFDAからブレークスルー・セラピー指定を受けている。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
Imbruvicaの一次治療試験が成功
(2015年6月4日発表)
アッヴィ(NYSE:ABBV)が先月、210億ドルで買収したファーマサイクリクスは、Imbruvica(ibrutinib)の第三相慢性リンパ性白血病/小リンパ性白血病一次治療試験が成功したと発表した。65歳以上の患者269人をImbruvica群とchlorambucil群に無作為化割付してPFS(無進行生存期間)を比較したオープンレーベル試験で、主評価項目も、全生存期間や反応率でも、Imbruvicaが優れていた由。データは今後発表される予定。
ImbruvicaはBセルのサバイバルに関わるbtkという酵素を阻害する経口剤。13年にマントルセルリンパ腫の二次治療薬として、14年には慢性リンパ性白血病/小リンパ性白血病の二次治療薬(特定の遺伝子変異を持つ癌には一次治療可)として、承認された。今回の試験成功を受けて、高齢者の一次治療に適応拡大申請することになりそうだ。
Imbruvicaはジョンソン・エンド・ジョンソンと共同開発・販売している。
リンク: ファーマサイクリクスのプレスリリース(PR Newswire)
【承認申請】
JNJ、抗CD38抗体の承認申請に着手
(2015年6月5日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンはHuMax-CD38(daratumumab)のローリング承認申請を米国で開始したと発表した。
薬効のエビデンスとして使われるのはASCOで発表された第二相試験。多発骨髄腫でプロテアソーム阻害剤(JNJ/武田のVelcadeなど)と免疫調停剤(セルジーンのRevlimidなど)の両方に反応しなかった、メジアンで5レジメンによる前治療を受けた患者106人を対象とした。
VGPR(大変良好な部分反応)12%、独立査読委員会の判定に基づくORR(客観的反応率)29%、メジアン反応持続期間7.4ヶ月と、サルベージ療法としては良好な結果が出た。深刻な有害事象の発生率は30%、有害事象による治験離脱は4.7%だった。
CD38は多発骨髄腫の表面に発現する膜貫通型の外酵素で、daratumumabが結合するとアポトーシスが誘導される由。デンマークのジェンマブがトランスジェニックマウス法で創製した完全ヒト化抗体で、2012年にJNJに世界独占開発販売権を供与した。
リンク: JNJのプレスリリース
リンク: JNJのプレスリリース(ASCOのデータ発表について、5/30付)
Keytrudaの適応拡大申請が受理
(2015年6月1日発表)
MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。優先審査を受け、10月2日までに可否が決まる予定。再発性非小細胞性肺癌で、白金薬レジメンや、適応になる場合はEGFR阻害剤やALK阻害剤による前治療を受けた患者が対象。用量/投与スケジュールは既承認の再発性悪性黒色腫と同じで、2mg/kgを3週間に一回、点滴静注する。DAKO社がPD-L1発現検査をPMA(販売前申請)したことも併記されているので、おそらく、陽性患者だけを対象にするのだろう。
リンク: MSDのプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA諮問委員会が女性の性的不全治療薬を支持
(2015年6月5日発表)
FDAは骨・再生産・泌尿器学薬諮問委員会と薬品安全性リスク管理委員会の共同会議を開催し、米国のSprout Pharmaceuticalsが承認申請したADDYI(flibanserin)を検討した。5年前の委員会では11人の委員全員が承認に反対したが、今回は賛成18人、反対6人と多数が支持した。一歩前進だが、まだ波乱の余地は残っていそうだ。
flibanserinは5-HT1Aにはアゴニスト、5-HT2Aにはアンタゴニストとして作用し、ドパミンとノルエピネフィリンを増強しセレトニンを抑制する。ベーリンガー・インゲルハイムが抗鬱剤として開発したが2001年に中止。その後、被験者の女性から性的欲望低下障害が改善したという声があったため大規模な第三相試験を実施したところ、穏やかな効果が見られた。しかし、効果が限定的であることや失神などのリスクが見られることから承認されず、この用途でも2010年に開発中止となった。
権利を取得したSprout社が再承認申請したが再び審査完了通知を受領。しかし、異議申立が成功し、薬物相互作用試験や運転シミュレータ試験を実施した上で今年2月に再申請に漕ぎ着けたという経緯がある。
承認されれば粘り勝ちとなるが、諮問委員会の大多数はREMSと呼ばれる副作用対策プログラムの導入を求めた模様なので、広く使われる薬にはならないだろう。女性の性的不全治療薬が承認されれば初。
リンク: Sproutのプレスリリース
今週は以上です。
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