2012年4月8日

海外医薬ニュース週末版 2012年4月8日号




ニュース・ヘッドライン

  • 塩野義製薬が創製した抗HIV薬の第三相試験が成功
  • バイエルのregorafenibはGIST試験も成功
  • ペリフォシンの第三相試験がフェール
  • apaziquoneの第三相試験はフェール
  • UCBとアムジェンが抗sclerostin抗体で第三相試験を開始
  • FDA諮問委員会がアステラス製薬のベタニスを支持
  • アムジェンとアストラゼネカが炎症疾患領域で提携


新薬開発



塩野義製薬が創製した抗HIV薬の第三相試験が成功

塩野義製薬とViiVヘルスケア社は、両社が共同開発しているインテグラーゼ阻害剤、S/GSK1349572(dolutegravir)の最初の第三相試験が成功したことを発表した。抗ウイルス療法を初めて受けるHIV/AIDS患者を組入れて奏効率をIsentress(raltegravir、和名アイセントレス)と比較したもので、両群とも核酸系逆転写阻害剤などを併用した。48週時点の奏効率は88%となり、Isentress群の85%と比較して非劣性だった(95%信頼区間の下限が-2.2%と、非劣性マージンとして設定された-10%を上回った)。

インテグラーゼ阻害剤はHIVウイルスのゲノムが宿主細胞のゲノムに組み入れられる過程を阻害する新しいタイプの抗HIV薬で、MSD(メルク)のIsentressが第一号。有害事象が発生して今回の治験を離脱した患者は両群とも2%に留まっており、忍容性は比較的良い。Dolutegravirはin vitro試験でIsentress抵抗性ウイルスの多くに活性を維持しており、また、服用回数が一日二回ではなく一回なのでピルバーデンが若干改善する。今回の試験の他にも複数の試験が進行中で、承認申請は2013年頃になりそうだ。

ViiVヘルスケアはグラクソ・スミスクラインとファイザーが抗HIV薬と開発品を持ち寄って設立した合弁会社。グラクソは塩野義製薬と広範な分野で開発提携を結んでおり、dolutegravirも元々は二社の共同開発プロジェクトだった。

リンク:塩野義製薬とViiVヘルスケアのプレスリリース



バイエルのregorafenibはGIST試験も成功


バイエルはBAY 73-4506(regorafenib)のGIST(消化管間質腫瘍)試験が成功したと発表した。既に結腸直腸癌試験も成功しており、バイエルは2012年上期中に承認申請する予定だ。



今回の試験は転移性/切除不能なGISTを罹患し、承認されている薬(グリベックやスーテント)による治療を既に受けた患者を組入れて、PFS(無増悪生存期間)をプラセボと比較したもの。どの程度の効果があったのかは明らかではない。学会発表を計画しているのだろう。



リンク:バイエルのプレスリリース


ペリフォシンの第三相試験がフェール

米国の新興製薬会社であるKeryx Biopharmaceuticals(ケリクス バイオファーマシューティカルズ、Nasdaq:KERX)はKRX-0401(perifosine)の第三相試験がフェールしたことを発表した。KRX-0401はAeterna Zentaris(エテルナゼンタリス、Nasdaq:AEZS)からライセンスした、PI3K/Akt阻害剤の中で開発が最も進んでいる化合物で、昨年11月にヤクルトが日本の独占開発販売権を取得したばかりだ。

この試験は難治性結腸直腸癌の患者を組入れて、Xeloda(capecitabine、和名ゼローダ)併用群とXelodaだけの群の全生存期間を比較したもの。多発骨髄腫でも第三相試験が進行中。

リンク:Keryx社ののプレスリリース



apaziquoneの第三相試験はフェール

米国の新興製薬会社であるSpectrum Pharmaceuticals社は、apaziquoneの膀胱癌第三相臨床試験がフェールしたと発表した。この試験は低グレード非浸潤膀胱癌のTUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術)後のアジュバント療法としての効果を調べたもので、主評価項目は2年再発率。プレスリリースの書き振りから判断すると二本ともフェールした模様だ。二本のプール分析ではp値が0.0174とのことだが、個々の試験がフェールしたのなら意味は無い。共同開発しているアラガン社にとっても残念な結果になった。

Spectrum Pharmaceuticalsは、同じく米国の新興製薬会社であるAllos Therapeuticsと買収で合意したことも発表した。Allosは葉酸系代謝拮抗剤Folotyn(pralatrexate)を再発性難治性末梢T細胞リンパ腫用薬として2009年に発売。売上高は2010年3500万ドル、2011年は5000万ドルと着々と増加している。買収の条件は一株当り現金1.82ドルと、CVR(後発的価値権)。CVRは達成報奨金に類したもので、今回の場合、Folotynが2012年にEUで承認され、2013年末までにEU主要国のうち3ヶ国以上で保険対象薬として発売された場合、0.11ドルの現金が支払われる。

FDAとは異なり、EUは、血液癌に用いる薬を小規模な単群試験の反応率(奏効率)だけに基づいて承認することに後ろ向きだ。Folotynも今年1月にCHMPが否定的意見を出したので、年内の承認は難しいだろう。CVRの価値をゼロとすると、買収総額は2億600万ドル、Allosが2011年末時点で保有していた現金を差引くと、1億800万ドルとなる。

リンク:両社のプレスリリース


UCBとアムジェンが抗sclerostin抗体で第三相試験を開始

ベルギーのUCBとアメリカのアムジェンは、CDP7851/AMG 785(romosozumab)の閉経後骨粗鬆症第三相試験を開始した。5000人以上を組入れて、椎骨損壊リスクを偽薬と比較する。結果が出るのは2015年末の見込み。

CDP7851/AMG 785の標的であるsclerostinは骨形成を阻害する蛋白で、この蛋白に変異を持つ人は骨密度が異常に上昇する。両社は2002年に抗sclerostinヒト化抗体の共同開発提携を結んだ。

アムジェンは抗RANKL完全ヒト化抗体denosumab(デノスマブ)を同じ用途に販売しているが、当初期待されたほど売れていない。命に直ぐに係わる病気ではないことや、血球細胞に与える影響が不透明であることなどが影響しているのだろう。前者は抗sclerostin抗体にも当て嵌まるので、よほど効果が高くない限り、商業的な見通しは立てにくい。

リンク:両社のプレスリリース


承認申請・承認



FDA諮問委員会がアステラス製薬のベタニスを支持

アステラス製薬が過活動膀胱治療薬として承認申請したYM178(mirabegron、和名ベタニス)をFDAの再生産医療薬諮問委員会が検討し、12人の委員のうち7人が便益がリスクを上回ると判定した。下回ると評価した委員は4人、棄権が1人だった。FDAは6月29日までに承認の可否を決する予定。



YM178は自社開発のβ3作動剤。膀胱排尿筋のβ3アドレナセプターを刺激して不随意な膀胱収縮を抑制し、失禁を防ぐ。効果は穏やかだが、副作用も比較的小さい。治験では血圧や心拍数が偽薬比で若干上昇した。稀に重度肝障害やスティーブンス・ジョンソン症候群も発生したため、市販後に安全性確認研究・調査が行われることになりそうだ。


アステラスは尿が出難い患者向けのタムスロシンと尿が漏れてしまう患者向けのソリフェナシンという二つのベストセラーを持っている。一見すると効果が正反対だが、タムスロシンを過活動膀胱の治療に用いることもあるようだ。排尿時に膀胱が空になれば失禁も減るかもしれないからだ。YM178は日本では昨年、承認・発売されたところだが、既存の薬に十分に反応しない患者に対する選択肢の一つになりそうだ。何れも効果は穏やかなので、併用も開発課題になりうるだろう。



リンク:MedPageTodayの報道(要登録)


製薬会社の動き



アムジェンとアストラゼネカが炎症疾患領域で提携

アムジェンとアストラゼネカは、アムジェンの5種類の抗体医薬を炎症疾患向けに共同開発することで合意した。このうち、AMG 827(brodalumab)は年内に第三相試験が始まる予定。アストラゼネカは5000万ドルの頭金を払い、開発費や利益を折半する(2012~2014年の開発費は65%を負担)。開発費負担を緩和したいアムジェンと、バイオ薬パイプラインを強化したいアストラゼネカの利害が一致した。尚、協和発酵キリンが持つAMG 827のアジアの開発販売権や、武田薬品が保有するAMG 557の日本の権利は影響を受けない。

4月1日号で書いたように、AMG 827はIL-17受容体を標的とする完全ヒト抗体で、中重度乾癬の第二相試験論文がNew England Journal of Medicine誌に刊行されたばかりだ。アストラゼネカは皮膚科と呼吸器疾患用途で北米以外の販売を主導する。

リンク:両社のプレスリリース


今週は以上です。

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