2016年6月26日

2016年6月26日


【ニュース・ヘッドライン】

  • ラジカット、米国に再チャレンジ 
  • イデベノン、欧州で筋ジストロフィーに適応拡大申請 
  • CHMPが遺伝子療法などの承認を支持 
  • 米国で二次性副甲状腺機能亢進症治療薬が承認 
  • アデムパスをPH-IIPに用いるのは禁忌に 
  • 免疫チェックポイント阻害剤に関節リウマチのリスク 


【承認申請】


ラジカット、米国に再チャレンジ
(2016年6月20日発表)

田辺三菱製薬は、米国でエダラボンをALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬として承認申請したと発表した。承認されたらこの疾患ではサノフィのRilutek(riluzole)以来20年振りの新薬となる。このフリーラジカル・スカベンジャーは2001年に日本で脳梗塞急性期治療薬として承認された。海外で第三相に進んだ薬は全てフェールした難しい分野なので、世界中から導入の申し込みが殺到し欧米で実用化されても不思議はなかったが、なぜか実現しなかった。

ALSは日本で二本目の薬効確認試験が成功し、昨年、適応拡大された。米国申請も日本のデータに基づく模様だ。通常なら患者や医療風土が異なるかもしれないので欧米試験が求められるところだが、難病であり希少疾患なので、ハードルが引き下がる可能性がある。

Rilutekは延命効果が認められて承認に至った(実際はプロトコルに定めた解析方法は二本ともフェールしたが代替的な解析が受け入れられた)。エダラボンの効能は病状判定スコアの悪化が偽薬群より2.5ポイント(ベースライン値の6%に相当)小さいことなので、臨床的にどの程度価値があるのかがポイントになろう。但し、QOL指標などでも有意な差があったようなので、二の矢三の矢がありそうだ。

脳梗塞試験の論文は承認後も中々刊行されず、やっと掲載されたのは超一流誌ではなかった。ALS試験の成功も快挙なのだから、早く論文刊行してほしい。

リンク: 田辺三菱製薬のプレスリリース

イデベノン、欧州で筋ジストロフィーに適応拡大申請
(2016年6月21日発表)

サンセラ・ファーマシューティカルズ(SIX:SANN)はidebenoneをデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に用いる適応拡大申請を欧州で行い、受理されたことを発表した。52週間の臨床試験ではピークフロー(PEF %予測値)が53%から50%に悪化したが偽薬群の9ポイント悪化より有意に小さかった(p=0.04)。

イデベノンは86年に脳梗塞脳出血後遺症治療薬アバンとして日本で承認されたが薬効再試験が成功せず98年に承認取消となった。欧州の一部ではサプリ用途も含めて根強い人気があり、昨年、サンセラがレーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)の治療薬としてEUの初承認を取得した。

リンク: サンセラのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが遺伝子療法などの承認を支持
(2016年6月24日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品専門家委員会、CHMPは、6月の会合で、ハプロ造血幹細胞移植附随療法の条件付き承認などについて肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されるだろう。

ところで、英国の国民投票を受けて、EMAの本拠を英国から移す圧力が高まっているようだ。EUは他の加盟国の追随を防ぐために足抜けを決めた英国に厳罰を与え、見せしめとしなければならない。欧州議会議員とか、オリンピック委員会とか、東京都知事とか、おいしい地位を失いたくない気持ちは庶民もセレブも同じである。

リンク: EMAのリリース

ミラノのMolMed社のZalmoxisは、ex vivo遺伝子療法。深刻な血液癌でHLAが片方だけ適合するハプロ造血幹細胞移植を受ける成人に用いる。ドナーの血液から精製したT細胞に短縮低親和性ヒト神経成長因子と単純ヘルペスIウイルス・チミジンキナーゼの遺伝子を導入することによって、作用をオフにできないという細胞療法・遺伝子療法の弱点を克服したもの。

ハプロ移植はドナーになれる近親者が多いのと、患者の癌化した血液細胞を攻撃する力が強いという長所を持つが、正常な細胞を攻撃してしまう移植片対宿主病(GvHD)のリスクがある。Zalmoxisなら抗ヘルペスウイルス薬であるganciclovirを投与してやれば導入したT細胞を除去することができる。

30人に投与した臨床試験では、23人が免疫再建に成功した。GvHDが10人で発生したが、うち9人はganciclovirの投与を受け、死亡や長期的深刻な障害という転帰を免れた。もう一本の試験と合わせて、1年生存率は49%と、ハプロ造血幹細胞移植を受けた140例のデータベース値である37%を上回った。

MolMedは20年前にベーリンガー・マンハイムとScience Park Rafの細胞療法分野での合弁として設立された。今年5月にEUで承認されたADA-SCID患者の自家遺伝子療法、StrimvelisもMolMedが生産(患者から採取したCD34陽性細胞にヒトADAの遺伝子を導入)する。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: EMAのリリース
リンク: MolMedのプレスリリース(pdfファイル)

テバ(NYSE:TEVA)のCinqair(reslizumab)も肯定的意見を受けた。抗IL-5ヒト化抗体で、重度の管理不良好酸球性喘息症に用いる。主な有害事象はCPK上昇、筋痛、アナフィラキシー反応など。臨床試験では悪性新生物の発生に群間の不均衡が見られた。類薬ではグラクソ・スミスクラインの抗IL-5抗体、Nucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)が昨年、欧米で承認されている。

リンク: EMAのリリース

適応拡大では、MSDの抗PD-1抗体、Keytruda(pembrolizumab)をPD-L1陽性非小細胞性肺癌の二次治療に用いることが肯定的意見を受けた。臨床試験ではORR(客観的反応率)41%という高い成績を上げた。

リンク: EMAのリリース(pdfファイル)

ノバルティスの抗IL-1ベータ抗体、Ilaris(canakinumab、和名イラリス)を活性期スティル病に用いる適応拡大も支持された。スティル病は慢性関節炎と皮疹、発熱などを伴う難病で、小児発症型と成人発症型があるが、Ilarisは両方に効果があるようだ。

リンク: EMAのリリース(pdfファイル)

更に、ロシュの抗IL-6受容体抗体、RoActemra(tocilizumab)を重度で活性期、進行性のリウマチ性関節炎でMTXによる治療をまだ受けていない成人患者に用いることも支持された。

リンク: EMAのリリース(pdfファイル)

また、MSDのPAR-1阻害剤、Zontivity(vorapaxar)を症候性末梢動脈疾患に用いることも支持された。

リンク: EMAのリリース(pdfファイル)

一方で、Arzerra(ofatumumab、和名アーゼラ)を慢性リンパ性白血病の治療後に維持療法として用いることは否定的意見となった。CHMPによると、主評価項目であるPFS(無進行生存期間)が対照群より有意に長かったが、全生存期間は改善せず、QOLの向上も見られなかった由。意外な結果になった。

Arzerraは抗CD20完全ヒト化抗体で、デンマークのジェンマブが元々はグラクソ・スミスクラインと共同開発したが、GSKは腫瘍学事業をノバルティスに売却した。

リンク: EMAのリリース(pdfファイル)

CHMPは5月の会合で武田薬品が再発性難治性多発骨髄腫用薬として申請したNinlaro(ixazomib cirate)に否定的意見を纏めたが、武田から再審査請求を受けたことを明らかにした。米国では承認されており、何が問題なのか、分からないのは私だけではないだろう。

【承認】


米国で二次性副甲状腺機能亢進症治療薬が承認
(2016年6月21日発表)

Opko Health(NYSE:OPK)は、FDAがRayaldee(calcifediol)を二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として承認したと発表した。ステージ3~4(透析期より前の段階)の慢性腎疾患でビタミンD欠乏を伴う患者に用いる。米国の対象患者は900万人と推定されている。臨床試験では血漿副甲状腺ホルモン量削減成功率やビタミンD欠乏解消率が偽薬群を上回った。

リンク: Opkoのプレスリリース

【医薬品の安全性】


アデムパスをPH-IIPに用いるのは禁忌に
(2016年6月24日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAは、バイエルのAdempas(riociguat、和名アデムパス)のレーベルを変更し、特発性間質性肺炎に伴う症候性肺高血圧症(症候性PH-IIP)の治療に用いることを禁忌にすると発表した。第二相試験の結果が悪かったため。

Adempassは可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤で、酸化窒素合成酵素が血管平滑筋を弛緩するパスウェイを増強する。13年に米国で、14年にEUでも、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)と肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療に承認された。この二つは肺高血圧症のWHO分類で夫々グループ4と1に属する。今回のPH-IIPはグループ3に属し、比較的予後が悪い。

問題の第二相試験では、呼吸能力低下や肺感染症などの深刻な有害事象や死亡例が偽薬群より多く発生したため、予定より早く打ち切られた。運動機能を改善する効能は見られなかった。第二相なので信頼性は第三相ほどではないが、被害の重大さを踏まえて、オフレーベル使用しないよう警告したのだろう。

リンク: EMAのプレスリリース

免疫チェックポイント阻害剤に関節リウマチのリスク
(2016年6月23日発表)

抗癌剤として用いられている抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体はリウマチ性関節炎のリスクを高めるという論文がAnnals of Rheumatic Diseasesに掲載された。Johns Hopkinsのリウマチクリニックの疫学研究で、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)やYervoy(ipilimumab)の副作用でリウマチ性免疫関連有害事象を発症した患者が過去4年間に13人、特定された。

意外性はなく、免疫関連有害事象ならもっと深刻なものも数多いが、このような警告は重要だ。これまでの抗癌剤は免疫を弱める副作用を持つものが多かったので、医師は自己免疫疾患の経験が乏しいかもしれないからだ。患者も癌の病状に気を取られて関節痛を訴えるのを失念するかもしれない。末期癌なら後遺症に配慮する必要はないかもしれないが、今後は治癒目的の切除術後の附随療法にも用いられる可能性があるので、QOLの悪化にも目を配らなければならない。

新しい作用機序には新しい副作用が付き物だ。審査機関も製薬会社も研究者も、そしてメディアも、便益だけでなく副作用リスクを十分に伝えなければならない。

リンク: Cappelliらの治験論文抄録(Ann Rheum Dis)
リンク: Johns Hopkinsのプレスリリース




今週は以上です。

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2016年6月19日

2016年6月19日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ADA:ビクトーザはMACEを13%削減 
  • ファイザー、抗CD22ADCのALL試験が成功 
  • AriadもALK阻害剤を承認申請 
  • マラソン社、筋ジストロフィー用薬を米国で承認申請 
  • ロシュ、Gazyvaが欧州でも適応拡大 
  • FDAがSGLT2阻害剤の急性腎障害を警告 


【今週の話題】


ADA:ビクトーザはMACEを13%削減
(2016年6月13日発表)

ノボ ノルディスクのGLP-1作用剤、Victoza(liraglutide、和名ビクトーザ)のLEADER心血管アウトカム試験の結果がADA米国糖尿病学会とNew England Journal of Medicine誌で発表された。Victozaで血糖値を矯正した群はVictoza以外の薬だけを投与した群と比べてMACE(主要有害心血管イベント)が13%少ないという、大変良い結果になった。

LEADER試験は二型糖尿病で心血管リスクの高い患者9340人をVictozaを一日一回皮注する群と偽薬皮注群に無作為化割付して、心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡のリスクをメジアン3.8年間に亘って追跡したもの。両群とも、他の血糖治療薬等を併用可。患者背景は、平均64歳、HbA1c8.7%、BMIは32.5kg/m2。心血管疾患歴が81%、リスク因子のみが19%。被験者の35%が欧州、30%が北米、7%がアジアの施設で組み入れられた。

結果は、主評価項目である心血管疾患死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合評価項目がハザードレシオ0.87、95%信頼区間0.78~0.97、発生率は13.0%対14.9%となり、Victozaは他の二型糖尿病薬と比べて劣っていない(非劣性)ことが確認された。シーケンシャルに実施された優越性解析も成功、リスクを有意に削減することが明らかになった。

サブ分析もおおむね良好。心血管疾患死のリスクはハザードレシオ0.78、95%信頼区間0.66~0.93、発生率4.7%対6.0%。全死亡は100人年当り2.1対2.5でp=0.02、全心筋梗塞(サイレントMIを含む)は1.6対1.9でp=0.04、脳卒中は1.0対1.1でp=0.16。サブグループ分析で交絡p値が0.05を下回ったのは心血管疾患歴(ない患者はハザードレシオが1を上回る)と腎機能(60ml/分/1.73m2以上では信頼区間が1を跨ぐ)程度。

但し、地域別の集計で北米のハザードレシオが1.01であることは気にかかる。患者のコンプライアンス(指示通りに注射する)があまりよくなかった模様だが、米国でレーベル追加申請を行う時にボトルネックになるかもしれない。治療方針、人種、スタチンやアスピリンなど他の薬の服用状況などが国によって異なるかもしれないからだ。また、日本ですらKYOTO HEART STUDYやJIKEI HEART STUDYのような不正が起きたのだから、規制が厳しい国のデータは軽視できない。

有害事象では、膵炎は両群同程度、悪性新生物も同程度だったが膵臓腫瘍は13人対5人(発生率は0.3%対0.1%)だったことが気にかかる。

血糖治療薬の心血管疾患予防効果は、希望と失望が交錯している。DPP試験でmetforminに兆候が見られたため様々な試験が行われたが、何れも有意な予防効果を示すことができず、無理やり下げるのは却って有害であることを示唆した試験もあった。

諦めた頃になってやっと成功したのがSGLT2阻害剤のJardiance(empagliflozin、和名ジャディアンス)だ。EMPA-REG試験でハザードレシオ0.86と、今回のVictozaに匹敵する効果を示した。心血管死のハザードレシオは0.62とVictozaより良いが、95%信頼区間は0.57~0.82でかなり重なっており、似たようなものと考えたほうが良いだろう。

こうなると、心血管アウトカム試験はFDAの要求に応じて、いやいやながら、最低限の予算と時間で実施するものではなくなり、販売競争を勝ち抜くために何としてでも有意差を出さなければならなくなった。報道によるとPF-04971729(ertugliflozin)を共同開発しているファイザーとMSDは心血管アウトカム試験の目標組入れ数を倍増して優越性解析も行うことを決めた由。

JardianceとVictozaのデータは有意と言っても95%上限は1に近い。今後、様々な新薬のデータが揃うにつれて、JardianceやVictozaのデータがフェイクなのか、リアルなのか、クラスイフェクトなのか、ユニークなのかが次第に判明するだろう。

リンク: Marsoらの抄録(NEJM)
リンク: ノボ ノルディスクのプレスリリース

【新薬開発】


ファイザー、抗CD22ADCのALL試験が成功
(2016年6月12日発表)

ファイザーはCMC-544(inotuzumab ozogamicin)の第三相急性リンパ性白血病試験の論文がNew England Journal of Medicine誌に掲載されたこと、及び、アップデート・データがEHA欧州血液学協会会議で発表されたことを明らかにした。承認申請に向けて当局と相談中。

CMC-544は英国のセルテック(後にUCBが買収)がワイス(ファイザーが買収)と共同開発したADC(抗体薬物結合剤)で、腫瘍化したB細胞が発現するCD22に結合するヒト化抗体と、抗CD33ADCであるMylotarg(gemtuzumab ozogamicin、和名マイロターグ)に使われているのと同じ細胞毒を結合したもの。最初に非ホジキン型リンパ腫で第三相入りしたがフェールした。

今回の第三相は、再発性難治性のCD22陽性急性リンパ性白血病を組み入れて、反応率と延命効果を化学療法(cytarabineなどを併用)と比較したもの。反応率(完全寛解、血液学的回復が不十分な症例も含む)は80.7%となり、化学療法群の29.4%を有意に上回った。幹細胞移植に進んだ患者の比率は41%対11%。一方、もう一つの主評価項目である全生存期間はメジアン7.7ヶ月対6.7ヶ月、ハザードレシオ0.77で有意な差はなかった。

有害事象では、静脈閉塞性肝疾患の発生率が11%と化学療法群の1%を大きく上回った。

リンク: ファイザーのプレスリリース
リンク: Kantarjianらの治験論文

【承認申請】


AriadもALK阻害剤を承認申請
(2016年6月17日発表)

Ariad Pharmaceuticals(Nasdaq:ARIA)は、AP26113(brigatinib)のローリング承認申請に着手したと発表した。まず前臨床に係る書類を提出し、残りのCMC(化学製造管理)や臨床試験の書類は第3四半期(7-9月)に提出する予定。

ALK阻害剤で、Xalkori(crizotinib、和名ザーコリ)に反応しなかったALK陽性非小細胞性肺癌に用いる。第二相試験では180mg(一日一回経口投与)群110人に対する確認客観的反応率が54%、メジアンPFS(無進行生存期間)は12.9ヶ月だった。この適応でFDAからブレークスルー・セラピー指定と希少疾患用薬指定を受けている。

リンク: Ariadのプレスリリース

マラソン社、筋ジストロフィー用薬を米国で承認申請
(2016年6月14日発表)

米国イリノイ州の希少疾患用薬開発会社、マラソン・ファーマシューティカルズは、MP-104(deflazacort)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬としてFDAに承認申請した。経口投与用のグルココルチコイドで、欧州や南米、アジアの一部で承認されているがDMD用途は未承認の模様。オフレーベルでprednisoneを用いることがある模様で、米国未承認のdeflazcortなら新薬の価格で販売できるという思惑かもしれない。

米国で希少疾患用薬指定、ファーストトラック指定、希少小児疾患指定を受けている。このうち、希少小児疾患指定は承認時に優先審査バウチャーがもらえるので経済的価値が著しく高い。

リンク: マラソン社のプレスリリース

【承認】


ロシュ、Gazyvaが欧州でも適応拡大
(2016年6月16日発表)

ロシュはGazyva(obinutuzumab)を濾胞性リンパ腫に用いる適応拡大がEUに承認されたと発表した。Rituxan(rituximab)に反応しなかった患者にbendamustine併用コースを施行し、その後もGazyvだけの維持療法を最長2年間続ける。第三相試験ではbendamustineだけの群に対するPFS(無進行性生存期間)のハザードレシオが0.48となった。

Gazyvaは抗CD20ヒト化抗体で、抗CD20キメラ抗体であるRituxanとは結合箇所が異なり、また、フコースが付与されていないためADCC(抗体依存的細胞傷害)活性が高い。最初の適応症である慢性リンパ性白血病では直接比較試験でRituxanを上回る効果を示した。非ホジキン型リンパ腫でも将来は取り替わるだろう。

リンク: ロシュのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDAがSGLT2阻害剤の急性腎障害を警告
(2016年6月14日発表)

FDAは、Invokana(canagliflozin、和名カナグル)とFarxiga(dapagliflozin、和名フォシーガ)の急性腎障害リスクについて警告強化を発表した。この二剤による治療を開始する場合は急性腎障害のリスク因子を検討する。具体的には、血量低下、慢性腎不全、慢性心不全、そして利尿薬、ACE阻害剤、ARB、あるいは非ステロイド抗炎症薬の同時服用などである。投薬前に腎機能を評価し、その後も定期的に監視する。急性腎障害が発生したら速やかに薬を止めて腎臓を治療する。

13年3月から15年10月までに急性腎障害の確認可能例が101件、FDAの市販後有害事象報告システムに報告された。うち73例はInvokana、28例はFarxiga。過半は投与開始から1ヶ月以内の発症で、投与中止後に多くは改善した。101人の転帰は 死亡4人、透析15人。同時服用薬は51人がACE阻害剤を、26人は利尿薬を服用していた。尚、canagliflozinやdapagliflozinを服用する患者は合わせて年150万人に達するので、発生頻度は高くはない。

この二剤はSGLT2という輸送酵素を阻害することによって、腎臓で漉し取られたグルコースが再び血液中に戻るのを妨げる。SGLT2阻害剤はもう一つ、ベーリンガー・インゲルハイムがイーライリリーと共同開発販売しているJardiance(empagliflozin、和名ジャディアンス)もあるが、今回の警告強化の対象ではない。

別扱いの理由はわからないが、EMPA-REGアウトカム試験の裏付けだろう。丁度、糖尿病性腎症の進行を遅らせる効果を検討したサブスタディ論文が刊行されたところだ。ごく稀にしか発生しない有害事象は数千人規模の長期アウトカム試験でも検出するのは困難だが、データが悪くなければある程度、安心できる。おそらく、市販後有害事象報告もそれほど多くないのだろう。

EMPA-REG試験では心血管疾患リスク削減効果も見られた。metforminやpioglitazoneが類薬で唯一、生き残ったように、SGLT2阻害剤でもサバイバルゲームが始まったのだろうか。

リンク: FDAの安全性警告
リンク: WannerらのEMPA-REG腎臓サブスタディ論文(NEJM)

今週は以上です。



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2016年6月12日

2016年6月12日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO:トップニュースはDarzalex 
  • ASCO:抗PD-1抗体はMSI-H型結腸直腸癌に有効な可能性 
  • ASCO:BRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用はBRAF変異型NSCLCに有効 
  • EHA:Blincytoの市販後薬効確認試験が成功 
  • FDA諮問委員会がCDI再燃予防薬の承認を支持 
  • 米国でコレラの経口ワクチンが承認 
  • ロシュ、日本のエビデンスでEUで承認取得 


【新薬開発】


ASCO:トップニュースはDarzalex
(2016年6月5日発表)

Darzalex(daratumumab)の多発骨髄腫三次治療試験の結果がASCO米国臨床腫瘍学会で、二次治療試験の結果がEHA欧州血液学協会会議で、それぞれ発表された。武田薬品/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib、和名ベルケイド)乃至はセルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide、和名レブラミド)をステロイドと併用する標準的な併用レジメンに更にDarzalexを追加したところ、PFS(無進行生存期間)が大きく向上した。

多発骨髄腫用薬は98年に米国でサリドマイドが正式に承認されて以降、新薬が続々と登場し、二剤併用が一般的になっただけでなく、三剤併用も複数、開発された。その中でもDarzalexのデータは良く、今回のASCOの白眉という声が多いようだ。Velcadeや武田薬品のNinlaro(ixazomib cirate)のようなプロテアソーム阻害剤でも、Revlimidやサリドマイドのような免疫調整薬でもない第三の作用機序を持つので、出番が多そうだ。

Darzalexはデンマークのジェンマブ社がメダレックス社のトランスジェニックマウス技術を用いて創製した抗CD38完全ヒト化抗体。多発骨髄腫の表面に過剰発現する膜貫通型外酵素、CD38に結合してアポトーシスを誘導する。12年にジョンソン・エンド・ジョンソンが世界独占開発販売権を取得、15年に米国で、16年に欧州で、多発骨髄腫の四次治療薬として単剤投与が承認された。

ASCOで発表された三次治療試験は、Velcadeとdexamethasoneの併用と、三剤併用のPFSを比較した。中間解析でハザードレシオ0.39となり、成功認定された。メジアンPFSは二剤併用が7.16ヶ月、三剤併用は未到達。ORR(客観的反応率)は63%対83%、完全反応率は19%対43%と何れも有意に改善した。

EHAで発表された二次治療試験は、Revlimidと低量dexamethasoneを併用するRdレジメンと三剤併用のPFSを比較。こちらも中間解析でハザードレシオ0.37となり成功認定された。ORRは76%対93%、完全反応率は9%対19%で有意に優れていた。

主な有害事象は、好中球減少症や血小板減少症などの骨髄抑制。Velcade併用試験では末梢知覚神経症が二剤併用群と比べても増加した。治療時発現有害事象による治験離脱は両群大差なかったようだ。

リンク: Dimopoulosらの抄録(EHA第21回会議)
リンク: JNJのプレスリリース(6/10付)
リンク: Palumboらの抄録(ASCO 2016)
リンク: JNJのプレスリリース(6/5付)

ASCO:抗PD-1抗体はMSI-H型結腸直腸癌に有効な可能性
(2016年6月5日発表)

BMS(が買収したメダレックス社)が小野薬品と共同開発したOpdivo(nivolumab)やMSDのKeytruda(pembrolizumab)のような抗PD-1抗体は、マイクロサテライト不安定性(MSI)結腸直腸癌に有効であることを示唆する治験結果がASCOで発表された。

ゲノム配列のうち、同じ塩基配列が何度も繰り返される箇所はDNA複製時に間違えが起きやすい。通常は修復機構が働くが、関連遺伝子に機能低下多型を持つ人は、複製ミスが残りやすくなる。腫瘍化した細胞は活発に遺伝子複製、分裂するため、ミスが増えていく。腫瘍細胞と正常な細胞の繰り返し箇所を比較して、反復回数が大きく異なる患者(MSI-Hと呼ばれる)は複製ミス修復機能低下多型を持つと推測できる。結腸直腸癌の場合、早期転移性患者の15%、末期患者の4%が該当する模様だ。

OpdivoはCheckMate-142という第二相試験で検討された。再発性転移性結腸直腸癌でMSI-Hの患者では、ORR(客観的反応率)が単剤投与で25.5%、Yervoy(ipilimumab)併用で33.3%、6ヶ月無進行生存率は各45.9%と66.6%、9ヶ月生存率は75.0%と85.1%だった。

KeytrudaはJohns Hopkins Kimmel Cancer CenterとMSDが協力して実施した第二相試験の結果が発表。再発性急進行性転移性結腸直腸癌のうち、DNAミスマッチ修復(MMR)が不十分な癌と十分な癌、そして、MMR不十分な結腸直腸以外の癌に単剤投与したところ、ORRは各57%、ゼロ、53%となった。一群20~30人の小さな試験だが、MMRがKeytrudaの有効性予測因子であることを示唆している。尚、MMRの評価はマイクロサテライト不安定性に基づくものなので、BMSの試験と基準が同じではないかもしれないが似たようなものと考えてよいだろう。

リンク: BMSのプレスリリース(6/5付)
リンク: MSDのプレスリリース(6/6付)

ASCO:BRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用はBRAF変異型NSCLCに有効
(2016年6月6日発表)

ノバルティスはグラクソ・スミスクラインとアセットスワップを行い、ワクチン事業を譲渡する代わりに抗癌剤事業を取得した。商品群の一部であるBRAF阻害剤Tafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMEK阻害剤Mekinist(trametinib)はBRAF遺伝子にV600E変異のある転移性黒色腫の治療薬として承認されているが、同じ変異を持つ非小細胞性肺癌にも有効である可能性が示唆された。このような変異があるのは1~2%だけである模様なので、検査の費用対効果も検討課題になりそうだ。

Plancahrdらの抄録やノバルティスのプレスリリースによると、第二相試験でBRAFV600E変異陽性の転移性非小細胞性肺癌の二次治療に用いたところ、確認ORR(客観的反応率)63%、メジアン反応持続期間は9ヶ月、メジアンPFSは9.7ヶ月だった。適応拡大申請に向かうことになりそうだ。

リンク: D. Planchardらの抄録(ASCO 2016)
リンク: ノバルティスのプレスリリース

EHA:Blincytoの市販後薬効確認試験が成功
(2016年6月10日発表)

アムジェンは、EHAでBlincyto(blinatumomab)の第三相試験の結果を発表した。フィラデルフィア染色体陰性で、再発性難治性の前駆B急性リンパ性白血病の患者をBlincyto群と標準療法群(4種類の薬から担当医が選択)に割り付けて全生存期間を比較したところ、ハザードレシオが0.71、階層化p値0.012、メジアン生存期間は各群7.7ヶ月と4.0ヶ月となった。

BlincytoはB細胞のCD19に結合する抗体可変領域と細胞傷害性T細胞のCD3エプシロンに結合する可変領域を持つBiTE抗体で、副刺激なしに細胞傷害性T細胞を活性化する。12年に11.6億ドルで買収したマイクロメットの開発品で、紆余曲折したが、14年に米国で、15年にはEUでも、再発性難治性前駆B急性リンパ性白血病用薬として承認された。日本ではアムジェンとアステラス製薬の提携対象になっている。

第二相試験に基づく承認なので、第三相試験で延命又はそれに準ずる効果を確認しないと承認取り消しになるが、今回の成功で本承認の道が開けた。

尚、米国では命に係ることもあるサイトカイン放出症候群が枠付き警告されている。

リンク: アムジェンのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がCDI再燃予防薬の承認を支持
(2016年6月9日発表)

FDAの抗菌剤諮問委員会は、MSDがクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の再燃予防薬として承認申請したZinplava(bezlotoxumab)を検討し、16名の委員のうち10名が承認に賛成、5名が反対、1名が棄権した。難しいところだが、承認されない可能性も残っているように感じられる。審査期限は7月23日。

CDIは多くの国で感染例が増えており、米国では2011年に50万人が感染、29000人が死亡したと推測されている。治療が奏功しても2~3割は再燃してしまうようだ。

Zinplavaはクロストリジウム・ディフィシルのB毒素に対する完全ヒト化中和抗体。マサチューセッツ・バイオロジック・ラボラトリーズがメダレックス(現在はBMS傘下)と共同開発し、09年にMSDに世界開発販売権を供与した。第三相試験ではA毒素に対する完全ヒト化中和抗体、actoxumabを単剤投与・併用する群も設定されたが、無効だった。

第三相は二本実施され、夫々、偽薬、単剤、または両剤を一回投与した後に12週間追跡して再燃リスクを比較した。偽薬群の再燃率は25~28%だったが、Zinplava群は15~18%、併用群も14~16%となり、有意な差があった。尚、再燃率の分母は初期治療非奏功例も含んでいるので、本当に重要な指標である「初期治療が奏功した患者のうち再燃しなかった患者の比率」と比べるとオーバーステートされている。

FDAの懸念は、Zinplava群の初期治療奏効率が偽薬群より見劣りしたことだ。初期治療が成功し且つ再燃しなかった患者の比率(グローバルキュア率)は一本の試験では見劣りした。Zinplavaが初期治療の妨げになる可能性を示唆しているのかもしれない。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認】


米国でコレラの経口ワクチンが承認
(2016年6月10日発表)

FDAはPaxVaxのVaxchoraを承認した。コレラ菌O1型の弱毒化生ワクチンで、18~64歳のコレラ流行国渡航者が少なくとも10日前に、一回、経口接種する。臨床試験では、18~45歳の抗体保有率が93%、46~64歳は90%となった。

流行地居住者や感染・ワクチン接種により既に免疫を持っている人に対する効果は確認されていない。O139などO1血清グループ以外の菌に対する効果も確認されている。

PaxVaxは、熱帯病バウチャー制度に基づく優先審査バウチャーを取得した。最近では2億ドル以上の価格で譲渡された事例もあり、ワクチンを売るより大きな利益になるだろう。

リンク: FDAのリリース
リンク: ParVaxのプレスリリース

ロシュ、日本のエビデンスでEUで承認取得
(2016年6月8日発表)

ロシュは、Tarceva(erlotinib)とAvastin(bevacizumab)を併用でEGFR活性化変異陽性の末期転移性再発性非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療に用いることがEUで承認されたと発表した。承認の根拠となった日本で実施された第二相試験、JO25567試験では、併用群のメジアンPFS(無進行生存期間)が16.0ヶ月、Tarceva単剤投与群は9.7ヶ月、ハザードレシオは0.54だった。

尚、この二剤を非小細胞性肺癌の二次治療に用いる欧米の試験はフェールした。

リンク: ロシュのプレスリリース




今週は以上です。

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2016年6月5日

2016年6月5日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO:オプジーボとヤーボイの併用は肺癌に有効 
  • ASCO:Keytrudaも併用データ発表 
  • ヴァーテックス、Orkambiを小児向けに適応拡大申請 
  • テバのハンチントン舞踏病用薬は審査完了 
  • バイオマリン、DMD用薬の開発を中止 
  • Fabry病の経口薬がEUで承認 
  • イムブルビカ、EUでCLL一次治療に承認


【新薬開発】


ASCO:オプジーボとヤーボイの併用は肺癌に有効
(2016年6月4日発表)

BMSは、非小細胞性肺癌で初めて薬物療法を受ける患者に抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)と抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)を併用した後期第一相試験の結果をASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表した。

OpdivoもYervoyも、活性化した免疫細胞を抑制する副刺激をブロックすることによって腫瘍に対する免疫の弱体化を防ぐ。標的が異なるのでシナジーが生まれる可能性があり、また、化学療法は免疫を弱体化させるものが多いので、併用するなら免疫強化療法同士のほうが良いような感じがする。

今回のデータを見ると、PD-L1発現度が低いとモノも併用も効果はそれほどでもないが、発現度が高まるにつれてOpdivoモノセラピーだけでなくYervoy併用による上乗せも大きくなっている。シナジーの表れなのかもしれない。症例数が少なく、モノセラピー群は無作為化割り付けではないので、今後の検証が必要だろう。

この二剤を単純に併用すると毒性が高まり多くの患者が脱落してしまう。試行錯誤を経て、この試験ではOpdivoを3mg/kg、2週間に一回投与し、Yervoyは1mg/kgを6週間に一回投与する群と同量を12週間に一回投与する群をテストした。結果は、cORR(確認客観的反応率)が各39%と47%となった。Opdivo単剤投与群は23%だった。グレード3以上の治療関連有害事象発生率は各33%と37%で、単剤群は19%だった。

併用は12週毎のほうが数値が良いが、BMSは6週毎を至適と結論。第三相試験では、Opdivoモノ、Opdivo2週間毎とYervoy6週毎、Opdivoと白金ベースダブレットの三剤併用の三レジメンを標準療法である白金ベースダブレットと比較する予定。

さて、PD-L1発現度合とcORRの相関性を見ると、1%未満の症例(各群7~14人)では6週毎群は0%、12週毎群は30%、モノセラピーは14%。1~50%(21~32人)では夫々57%、57%、28%。50%以上(6~12人)は86%、100%、50%となっている。

どちらも高価な薬なので、世間の常識で考えれば安価な薬より効果が高くて当たり前だ。至適用法や最適な患者特性を十分に検討することが望まれる。Yervoyを6週毎より12週毎のほうが安上がりなので、本当に6週毎が至適なのか、未練が残る。

リンク: BMSのプレスリリース

ASCO:Keytrudaも併用データ発表
(2016年6月4日発表)

MSDの抗PD-1抗体であるKeytruda(pembrolizumab)も非小細胞性肺癌一次治療の後期第一相併用試験のデータがASCOで発表された。ORRは57%。数値が最も高かったのはcarboplatinとpemetrexedのレジメンに併用したコフォートで24人中17人、71%が反応した。代表的な一次治療レジメンであるcarboplatinとpaclitaxelに併用した群では52%、更にbevacizumabも併用した群では48%だった。

この試験でもPD-L1発現状況との相関性が探索された。発現度50%以上のほうがORRが高かったが差は大きくない。PD-L1発現度が応答性予測因子として有効か否かは、これまでにも数多く検討されてきたが、未だに判然としない。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認申請】


ヴァーテックス、Orkambiを小児向けに適応拡大申請
(2016年5月31日発表)

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)はOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)の対象年齢拡大申請がFDAに受理されたと発表した。昨年7月にF508変異ホモ接合型嚢胞性線維症で12歳以上の患者向けに承認されたが、6~11歳に拡大するもの。lumacaftorはCFTRコレクターと呼ばれており、嚢胞性線維症に関連するCFTRが細胞の表面に移行して機能するようエスコートする。ivacaftorはCFTRポテンシエイターと呼ばれており、機能を改善する由。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


テバのハンチントン舞踏病用薬は審査完了
(2016年5月31日発表)

テバ・ファーマシューティカルズ(NYSE:TEVA)は SD-809(deutetrabenazine)をハンチントン舞踏病用薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領したと発表した。代謝物について血中濃度を検討するよう求められた由。

SD-809はテバが昨年、35億ドルで買収したAuspex Pharmaceuticalsの開発品で、米国で08年に承認されたXenazine(tetrabenazine)の水素基の一部を重水素に置換することによって、作用の長期化や忍容性の向上、遺伝子多型による個人差や薬物相互作用の緩和を図ったもの。今回問題になった代謝物はtetrabenazineでも生成される由であり、おそらく、FDAは、前回解明しきれなかった謎に今度こそ答えを出すつもりなのだろう。

リンク: テバのプレスリリース

バイオマリン、DMD用薬の開発を中止
(2016年5月31日発表)

バイオマリン(Nasdaq:BMRN)は、Kyndrisa(drisapersen)と第一世代のフォローオンの開発中止を発表した。欧米で承認申請したが、米国は1月に審査完了通知を受領。EUもCHMPの5月の会議で否定的評価の見込みになった模様であり、承認申請撤回となった。

KyndrisaはDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)用薬で、ジストロフィン遺伝子のエクソン51が関係するタイプの患者向けに開発された。臨床試験ではジストロフィンが若干増えたがそれほどでもなく、運動機能の改善も限定的だった。忍容性面では命に係る血小板減少症や腎障害、点滴箇所反応などが見られた。

予想されたことだが、いざ発表されると、ため息が出る。類薬であるSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のAVI-4658(eteplirsen)の承認審査も遅れている。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

【承認】


Fabry病の経口薬がEUで承認
(2016年5月31日発表)

Amicus Therapeutics(Nasdaq:FOLD)は、Galafold(migalastat)がEUでFabry病用薬として承認され、ドイツで発売したと発表した。Fabry病はalpha-galactosidase Aの遺伝子(GLA)の変異により脂肪の一部が分解されずに組織に蓄積する。症状は区々だがやがて臓器障害を合併する。欧州では 2001年にジェンザイムのFabrazyme(agalsidase beta)が承認され、治療ができるようになった。

Galafoldは折り畳み異常が原因で作用すべき場所に移行できない蛋白をエスコートする、ファーマシューティカル・シャペロンという不思議な作用を持つ小分子薬で、一日二回の経口投与であることが長所。GLAの800種類の変異のうち269種類を持つ、35~50%の患者に有効。該当するかどうかは下記のサイトでチェックする。米国は臨床試験で臨床的効用を確認するようFDAに求められており、承認申請予定時期が延び延びになっている。

リンク: Amicusのプレスリリース
リンク: Galafold有効性情報サイト

イムブルビカ、EUでCLL一次治療に承認
(2016年5月31日発表)

アッヴィは、Imbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)を慢性リンパ性白血病(CLL)の一次治療に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。米国でも3月に承認されている。Btkという酵素を阻害する小分子薬で、EUでは14年にCLLとマントル細胞リンパ腫の再発治療に、15年には非ホジキン型リンパ腫の一種であるワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症向けに、承認されている。欧州ではジョンソン・エンド・ジョンソンが販売。

リンク: アッヴィのプレスリリース




今週は以上です。

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