2024年11月30日

第1083回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 懐かしい抗鬱剤のナルコレプシー試験が成功 
  • MSD、Winrevairのもうちょっと重症の試験が成功 
  • トルカブの前立腺癌試験が成功 
  • ASH:インサイトの抗CD19抗体の三剤併用試験 
  • Cassava社、アルツハイマー試験がフェール 
  • Biohaven社、脊髄筋萎縮症の第3相がフェール 
  • ロシュ、抗TIGHT抗体の第3相がまたフェール 
  • GSK、抗BCMA抗体薬物複合体を再承認申請 
  • アムヴトラを心筋症型に適応拡大申請 
  • アルドース還元酵素阻害剤の承認審査が完了 
  • EUでOcalivaの条件付き承認が失効 
  • BridgeBioのTTR安定化剤が承認 
  • FDA、Skysona患者における血液癌症例を検討 
  • EUもアステラスのVMS治療薬の規制強化へ 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


懐かしい抗鬱剤のナルコレプシー試験が成功
(2024年11月26日発表)

Axsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、AXS-12(reboxetine)の第3相ナルコレプシー試験、ENCOREが成功したと発表した。先に成功した第3相SUMPHONY試験の被験者のうち68人を組入れて全員に6ヶ月間投与した後に、偽薬スイッチ群と継続投与群に無作為化割付けして3週間の盲検対照試験を行ったところ、週間脱力発作頻度が偽薬群は10.29回増加したが試験薬群は1.32回の増加に留まり、有意な差があった。日中の眠気や集中力評価でも有意差があった。米国で承認申請に向けて当局と相談する考え。同社によると、特許は少なくとも2039年まで有効、希少疾患薬指定を受けているので承認されれば7年間の排他権を獲得できる。

選択的ノルエピネフリン再取込阻害剤。ファルマシアが97年にEUで抗鬱剤として承認取得したが、米国は2回の承認可能通知を経て01年に非承認通知を受領した。Axsomeはファルマシアを03年に買収したファイザーから20年に開発商業化権を取得した。SYMPHONY試験では第5週の週間脱力発作頻度が偽薬群は66%減、試験薬群は83%減で率比は0.49、p=0.18だった。

リンク: Axsome社のプレスリリース


MSD、Winrevairのもうちょっと重症の試験が成功
(2024年11月25日発表)

MSDはWinrevair(sotatercept-csrk)の第3相ZENITH試験の独立データ監視委員会が中間解析で繰上げ終了を勧告したと発表した。オープンレーベル延長試験に移行して、全員が試験薬による治療を受けられるようにする。

WinrevairはactivinのIIa型受容体とIgG1の融合蛋白で、24年に米欧で成人の肺動脈高血圧症(WHOグループI)用薬として承認された。日本でも先日、承認申請。米国ではWHO機能分類に基づく限定は課されていないが、エビデンスとなった第3相STELLAR試験はIIとIIIに分類される患者324人を組入れており、主評価項目の6分歩行テストと、副次的複合評価項目の死亡/臨床的悪化リスクの両方で偽薬比良績を上げた。

今回の試験はIIIとIVで死亡リスクが高い患者172人を組入れて、全死亡/肺移植/増悪による24時間以上の入院のリスクを偽薬と比較した。有害事象や深刻有害事象の群間の偏りは見られなかった。

肺動脈高血圧症(WHOグループI:特発性、遺伝性、結合組織関連のもの)におけるWHO機能分類はメジアン生存期間と関連性が見られ、I(身体活動に制約なし)とII(呼吸困難などが通常身体活動で発生)は6年、III(通常以下の身体活動でも発生)は2.5年、IV(安静時でも呼吸困難など)は6ヶ月と言われる。IVの場合は延命効果が最も重要に感じられるが、どうだったのだろうか?そもそもIVの組入れ数はどの程度あったのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


トルカブの前立腺癌試験が成功
(2024年11月25日発表)

アストラゼネカはTruqap(capivasertib)の第3相CAPItello-281試験で主目的を達成したと発表した。PTEN欠乏型de novo転移性(診断当初から転移が見られる)ホルモン感受前立腺癌(HSPC)の一次治療としてabirateroneとアンドロゲン枯渇療法の併用レジメンに追加する便益を検討したもので、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)が偽薬比で統計的に有意な、かつ臨床的に意味のある、延長を示した。PTEN欠乏denovo mHSPCは米国で年5万人程度が診断されるとのこと。

TruqapはPI3Kカスケードを調停するAKTの阻害剤。23年に米国でPIK3CAやATK1、PTENに変異のあるホルモン受容体陽性her2陰性の局所進行/転移乳癌の二次治療薬としてfulvestrantと併用することが承認された。今年は日欧でも承認された。

リンク: 同社のプレスリリース


ASH:インサイトの抗CD19抗体の三剤併用試験
(2024年11月25日公開)

ASH(米国血液学会)の抄録が一般公開され、インサイトが8月に成功発表した第3相inMIND試験のトップラインが判明した。Fc加工抗CD19ヒト化抗体であるMonjuvi(tafasitamab-cxix)の濾胞性リンパ腫における便益を検討したもので、抗CD20抗体歴を持つCD19陽性CD20陽性の難治・再発濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫を組入れて、lenalidomide及びrituximabのレジメンに追加する効果を検討したもので、主評価項目である濾胞性リンパ腫サブグループにおけるPFS(無進行生存期間、治験医評価)がメジアン22.4ヶ月と偽薬追加群の13.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.43だった。盲検独立評価によるPFSも成功した。全生存期間の解析は未成熟だがハザードレシオは0.59と好ましい方向を向いている。深刻有害事象の発生率は36%(偽薬追加群は32%)。

Monjuviは20~21年に米欧で、lenalidomide併用でびらん性大細胞型B細胞リンパ腫に用いることが加速承認/条件付き承認された。元々はMorphoSysからライセンスしたものだが、先方がノバルティスに買収されたため、契約条件に則り権利を完全取得した。

リンク: Sehnらの抄録(ASH 2024 LBA-1)


Cassava社、アルツハイマー試験がフェール
(2024年11月25日発表)

米国テキサス州のCassava Sciences(Nasdaq:SAVA)は、simufilamの一本目の第3相軽中度アルツハイマー病試験がフェールしたと発表した。100mgフィルムコート錠を一日二回、52週間投与し効果を偽薬と比較したが、ADAS-cog12の増加は2.8点(偽薬は3.2点)、ADCS-ADLの低下は3.3点(同3.8点)と、何れもほんの少し良かっただけでp値は各0.43と0.40だった。もう一本、50mgもテストする第3相が進行していたが中止を決定した。

simufilamは後期第2相がフェールしたが、別の研究者のラボで再解析したところ良好な成績に転じ、第3相に進んだ。この研究者はsimufilmの共同発明者で同社のコンサルタントでもあるため利益相反があるが、開示しないまま成功発表し資金調達に進んだことなどからSEC(米国証券取引委員会)の捜査を受け、4000万ドルを支払う結果となった。また、この研究者などがJournal of Neuroscience、PLOS One、そしてAlzheimer's Research and Therapyで発表した論文が次々と撤回された。このため、第3相の成否が別な意味で注目されていた。

試験成績と合わせて資金調達も発表するのはバイオ企業の一般的な所作だが、Cassavaの事例を見ると、くれぐれも公正開示に配慮したほうが良いだろう。

リンク: 同社のプレスリリース


Biohaven社、脊髄筋萎縮症の第3相がフェール
(2024年11月25日発表)

Biohaven Pharmaceutical(NYSE:BHVN)はBHV-2000(taldefgrobep alfa)の第3相脊髄筋萎縮症(SMA)試験がフェールしたと発表した。但し、臨床的に意味のある差が見られたことや被験者の87%を占めたカフカス人種サブグループにおけるデータは良好なものだった。FDAと今後を相談する考え。

ブリストル マイヤーズ スクイブからライセンスした、アドネクチンとIgG1のFc領域の融合蛋白。筋骨格細胞の成長を抑制するミオスタチンに特異的に結合する。ロシュがライセンスしてデュシェンヌ型筋ジストロフィーの第2/3相試験を実施したが中間解析で無益認定され、権利を返還した経緯を持つ。

SMA用薬の開発では、前駆体であるプロミオスタチンを標的とするScholar Rock(Nasdaq:SRRK)の抗体、SRK-015(apitegromab)が第3相試験でHFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)を偽薬比有意に改善、25年第1四半期に承認申請の予定だ。一方、Biohavenは追随できなかった。

尚、Biohaven社はファイザーに買収されたが、狙いの片頭痛領域以外のパイプラインは新生Biohavenとして22年にスピンアウトされた。

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、抗TIGHT抗体の第3相がまたフェール
(2024年11月26日発表)

ロシュはRG6058(tiragolumab)の第3相非小細胞性肺癌Tecentriq(atezolizumab)併用試験で全生存期間の最終解析がフェールしたと発表した。少なくとも数値上は良好に推移していたはずなので意外な結果だ。

このSKYSCRAPER-01試験は日本も含む世界の医療施設で一次治療を受けるPD-L1高発現局所進行切除不能/転移非小細胞性肺癌の患者534人を組入れて、偽薬またはRG6058(600mg3週毎)をTecentriq(1200mg3週毎)と併用し、PFS(無進行生存期間)と全生存期間を比較した。PFSは22年にフェールしたが、全生存期間の中間解析は未成熟ながら数値上は上回る、と報じられ、手違いがあった模様で23年に公表された第2次中間解析はハザードレシオ0.81(95%上限1.03)、メジアン値は偽薬群16.7ヶ月、試験薬群は22.9ヶ月というものだった。

抗PD-(L)1抗体とシナジーが期待された抗TIGHT抗体だが、これまでに複数のコンパウンドの複数の第3相がフェールしている。RG6058とTecentriqの併用は、SKYSCRAPER-06試験(局所進行切除不能/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌一次治療、pemetrexed及び白金薬と併用)とSKYSCRAPER-02C試験(進展型小細胞性肺癌一次治療、carboplatin及びetoposideと併用)が既にフェールしている。SKYSCRAPER-08試験(中国などアジアでの切除不能/転移食道扁平上皮腫一次治療、paclitaxel及びcisplatinに併用)は成功したが、今日の標準療法であるKeytruda(pembrolizumab)が対照群で採用されておらず、4剤対2剤の比較であるため受け止めが難しい。Keytrudaの3剤併用試験の数値と見比べると良さそうに見えるが、承認申請したという話は聞かない。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


GSK、抗BCMA抗体薬物複合体を再承認申請
(2024年11月25日発表)

GSKはBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)を多発骨髄腫の二次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は25年7月23日。BioWaの技術で開発したBCMAを標的とする抗体と、薬物の複合体。Velcade(bortezomib)またはPomalyst(pomalidomide、そしてdexamethasoneと3剤併用する。

20年に多発骨髄腫のサルベージ・セラピーとして単剤投与する用法で米国で加速承認、EUでも条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験に位置付けられたDREAMM-3試験(3次治療、単剤v.s. pomalidomide・dexamethasone併用)がフェールし、23年2月に米国で、今年3月にはEUでも、承認取消となっていた。前後して、DREAMM-7試験と同8試験が成功、EUでは7月に承認申請受理、日本でも9月に申請されたところだ。

リンク: GSKのプレスリリース


アムヴトラを心筋症型に適応拡大申請
(2024年11月25日発表)

Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)は米国でAmvuttra(vutrisiran)をATTR-CM(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査バウチャを利用したため審査期限は25年3月23日になった。日本でも11月に一変申請された。第3相試験で全死亡・心血管イベントを偽薬比28%抑制、全死亡だけの解析でも、tafamidis服用者や非服用者だけの解析でも、同様な結果だった。

トランスサイレチンの遺伝子を標的とする短鎖RNA介入薬。22年に米欧日でトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー用薬として承認された。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


アルドース還元酵素阻害剤の承認審査が完了
(2024年11月27日発表)

米国NY州のApplied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はAT-007(govorestat)を古典的ガラクトース血症の治療薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。FDAは審査の途中で重要な追加資料が提出された場合に審査期間を最大3ヶ月、延長することができるが、今回の事例では申請の3ヶ月後という異例の早さで延長されており、前途が危ぶまれた。一方で、当初は検討されていた諮問委員会上程が結局見送られ、良いほうに向かっているようにも感じられた。会社側はFDAの指摘事項などを開示しておらず、不透明感が更に高まっている。

ガラクトース血症は常染色体劣性遺伝子疾患。ガラクトースをグルコースに分解する酵素が欠乏、ガラクチトールなどの毒性代謝物が組織に蓄積する。AT-007はガラクトースをガラクチトールに変換するアルドース還元酵素の中枢神経浸透性、選択的な阻害剤。2~17歳の患者を組入れた第3相がフェールしたが日常生活機能や行動機能、認知機能などの指標は好ましい変化を見せた。

SORD欠乏症の第2/3相試験も有望な結果になった模様で、25年第1四半期に承認申請する考え。

リンク: 同社のプレスリリース


EUでOcalivaの条件付き承認が失効
(2024年11月24日発表)

英国のAdvanz Pharmaは、EUでOcaliva(obeticholic acid)の承認が取消されたと発表した。16年に、ウルソデオキシコール酸に十分応答しない原発性胆汁性胆管炎の治療薬として承認されたが、承認継続の条件である市販後薬効確認試験がフェールし、今年8月に欧州委員会が取消した。欧州連合一般裁判所が暫定的停止命令を出し一旦はペンディングとなったが、この命令が更新されなかったため、即時承認取消となった。同社は引き続き係争する考え。また、EU加盟国の承認を条件に、人道的供給制度による提供も考えている。

米国のIntercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)からライセンスした、ウルソデオキシコール類縁体。米国でも16年に加速承認されたが、取消されるのではないか。

リンク: Advanz社のプレスリリース

【承認】


BridgeBioのTTR安定化剤が承認
(2024年11月25日発表)

FDAは、米国カリフォルニア州のBridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)のAttruby(acoramidis)を成人の変異型または野生型ATTR-CM(トランスサイレチン調停アミロイドーシスによる心筋症)の治療薬として承認した。臨床試験で全死亡/心血管疾患入院のハザードレシオが0.645だった。メーカー側はこれまで塩酸塩ベースで400mgのフィルムコート錠2錠を一日二回ずつ服用、としていたが、レーベルでは356mgフィルムコート錠と記されている。尚、ATTR-CMのカッコ内の説明が上記Amvuttraに関する記述と一致しないが、レーベルの記載に従った(もともとATTR調停疾患の和名は英語の直訳とやや異なっている)。

第3相ATTRibute-CM試験で主評価項目である心血管関連イベントのWin Ratioが偽薬比1.8、p<0 .0001="" br="" in="" ratio="">
報道によると、薬価は28日分が$18,759と、ファイザーのVyndaqel/Vyndamax(tafamidis meglumine/tafamidis)並みに設定された。臨床試験に参加した患者には生涯に亘り無償提供する。

バイエルが商業化権を持つ欧州でも承認申請中。日本はアストラゼネカの子会社が19年に開発商業化権を取得した。Kumar創業者兼CEOはプレスリリースの中で次は欧州、日本、そしてブラジルとと言っている。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: BridgeBio社のプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、Skysona患者における血液癌症例を検討
(2024年11月27日発表)

FDAは、22年に承認したcALD(脳副腎白質ジストロフィー)の遺伝子療法、Skysona(elivaldogene autotemcel)の血液癌リスクについて、レーベル変更のような措置が必要か検討していることを明らかにした。既知のリスクであるが、懸念されたとおりに、治療後の追跡期間が延びるにつれて、発症例が増えてきたため。深刻な疾患なので承認を取消すような話にはならないのではないか。

cALDは進行性不可逆的神経変性疾患を齎すX染色体性遺伝子疾患。治療しないと5年内に死亡と言われる。Skysonaはbluebird bio(Nasdaq:BLUE)が開発したex vivo遺伝子療法。患者で欠乏するABCD1遺伝子の相補DNAを、レンチウイルス・ベクターを用いて患者から採取したCD34陽性造血幹細胞に導入し、培養して患者に投与する。臨床試験成績の事後的解析に即して、4~17歳の早期活性期患者が適応になる。発症後に主要な機能障害を被らずに24ヶ月生存する確率が推定72%(n=11)と、自然歴データの43%(n=7)を上回った。

最も重要な副作用が血液学的腫瘍。承認時点では、二本の試験合計で67人中3人がMDS(骨髄異形成症候群)を発症していた。3例ともウイルスベクターが癌原遺伝子(癌遺伝子に変わる可能性のある遺伝子)に組み込まれており、少なくとも2例ではSkysonaがMDSのドライバーとなった可能性があるようだ。挿入されるのが癌原遺伝子であるせいか、治療から発症まで時間がかかり、MECOM遺伝子に統合した2人は1年後と2年後、MECOMのパラログ(遺伝子重複により変化したもの)であるPRDM16に統合した、第1号被験者は、7.5年後だった。このため、時間が経つにつれて発症例が増加することが当初から危惧されていた。

実際、10月にNew England Journal of Medicineに掲載された論文では、67人中7人に罹患率が上昇している。うちMDSは6人、AML(急性骨髄性白血病)が1人で、造血幹細胞移植後に移植片対宿主病を発症した1人が死去した。

尚、EUでは米国より早く21年に承認されたが、bluebird社は、もう一つの遺伝子治療薬も含めて、薬価に不満を示し承認返上した。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Duncanらの論文(New England Journal of Medicine、24年10月9日)


EUもアステラスのVMS治療薬の規制強化へ
(2024年11月29日発表)

EMA(欧州薬品庁)のファーマコビジランス委員会、PRACは、11月の会議で、アステラス製薬の閉経期中重度VMS(血管運動神経症状)治療薬、Veoza(fezolinetant、米国名Veozah)について、肝障害リスクに注意を促すDHPC(直接的医療従事者向け通信;ドクターレター)を発出することで合意した。EMA内の手続きを経てメーカーが送付する。

このNK3受容体拮抗を投与すると肝機能検査値異常が表れることがあるが、23年に米欧で承認された段階では、総ビリルビンの異常上昇(2xULN)を伴い肝障害が懸念される症例は発生していなかった。しかし、市販後報告が寄せられたことから、米国では今年8月に警告・事前注意事項が強化され、当該症例は発生しておらず投与を続けても数値が治療開始前の水準に戻るという文言がレーベルから削除され、肝機能検査を行うタイミングは開始前、開始の3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後の4回だったが1ヶ月後、2ヶ月後が追加され、投与を中止すべき閾値が示された。

今回、PRACも、1ヶ月後と2ヶ月後の検査を追加する考え。

患者は、肝障害に関連しているかもしれない兆候症状が表れたら、服用を止めて医療従事者に相談する。具体例として、PRACのリリースは、疲労、掻痒、黄疸、暗色尿、食欲低下、腹痛を挙げている。米国のレーベルでは、更に、悪心嘔吐、白色便も列挙している。

リンク: EMAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年11月推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群
24年12月推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)
24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)
25Q1推第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan、her2低/極低転移性乳癌追加)
25Q1推アストラゼネカのCalquence(acalabrutinib、未治療マントル細胞腫追加)
25年1月ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、FLOW糖尿病性腎症アウトカム試験追加)
25/1/2Vertexのvanzaトリプル(vanzacaftor、tezacaftor、deutivacaftor、嚢胞性線維症)
25/1/15Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
25/1/17アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌追加)
25/1/25エーザイのLeqembi(lecanemab、維持用量用量追加)
25/1/29第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、HR陽性her2陰性切除不能/転移乳癌)
25/1/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)
25/1/30VertexのVX-548(suzetrigine 、急性疼痛)
25/1/31Axsome TherapeuticsのAXS-07(急性片頭痛)


今週は以上です。

2024年11月23日

第1082回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 次期厚生省長官の挑戦状 
  • SGLT阻害剤の一型糖尿病承認が遅延、リストラへ 
  • 破産したワクチン・メーカーが自主回収に着手 
  • CETP阻害剤の第3相、二本目も成功 
  • 抗CD40L抗体のSLE試験が成功 
  • GSK、iBAT阻害剤のPBC掻痒緩和試験が成功 
  • 経口IL-23受容体拮抗剤の第3相が成功 
  • トレムフィア皮下注用を導入療法にも申請 
  • Arrowhead社、家族性カイロミクロン血症のRNA介入薬を承認申請 
  • FDA諮問委員会、Xa阻害剤中和薬の功罪を検討 
  • Jazzのher2陽性胆道癌用薬が承認 
  • ビンゼレックスが米国でも化膿性汗腺炎に適応拡大 
  • 初のメニン阻害剤が承認 
  • 諮問委員会、クロザピンのREMS緩和を支持 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


次期厚生省長官の挑戦状
(2024年10月26日書き込み)

『FDAの公衆衛生戦争は間もなく終わる。サイケデリックやペプチド、幹細胞、生乳、高気圧酸素療法、キレート化合物、イベルメクチン、ヒドロキシクロロキン、ビタミン、クリーン・フード(加工度の低い食品)、日射、エクササイズ、ニュートラシューティカルズなどに対する強力な抑圧のことだ。人々の健康を推進するものだが、製薬会社が特許を取得できない。もし諸君がFDAで現在のシステムの一部として働いているならば、二つのメッセージを送りたい。1、君たちの記録を保管せよ。2、荷物を鞄に詰めよ。』

(大統領はワクチンに慎重。FDA長官有力候補はCOVID-19にワクチンは不要と主張したことがある。レイマンズ・コントロールは民主主義の根幹と学校で習ったが、分業の効用も習った。)

リンク: Robert F. Kennedy Jr.のXにおける書き込み


SGLT阻害剤の一型糖尿病承認が遅延、リストラへ
(2024年11月22日発表)

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)は、心不全治療薬Inpefa(sotagliflozin)の販売部隊をリストラし、臨床開発に注力すると発表した。既存患者向けの製造販売は継続する。肥大性心筋症の第3相や他のコンパウンドの開発は続行する。

19年に米国で心不全や心血管リスク因子を持つ二型糖尿病や慢性腎疾患の合併症リスクを抑制する薬として承認されたが、元々の目標適応症である一型糖尿病用途は19年に審査完了通知を受領し、二回目のチャレンジも、12月のPDUFAデートを前にして、FDAから申請に欠陥があるため承認審査の最終段階であるレーベルの内容や市販後コミットメントに関する協議に進むことができないという通知を受領した。一型糖尿病では特にケトアシドーシスのリスクが高まることが難点。19年にFDA諮問委員会では8対8で賛否が分かれたが、今年10月の諮問委員会では3対11で反対が大勢を占めた。今回も審査完了に終わると決まったわけではないが、営業体制を維持しても無駄に終わる可能性があると考えたのだろう。

欧州では19年に一型糖尿病の血糖治療薬として承認されたが、認可保有者であるGuidehouse Germany GmbHの要請に基づき、22年に取消された。

リンク: 同社のプレスリリース

破産したワクチン・メーカーが自主回収に着手
(2024年11月15日発表)

米国マサチューセッツ州のVBI Vaccinesは、B型肝炎ワクチンPreHevbrioの自主回収を開始すると発表した。直ちに流通や使用を中止しなければならない。臨床試験で抗体陽転率がGSKのEngerix-Bと非劣性であることを確認し21年に米国で、22年にはEUでも承認を取得したが、23年の売上高が310万ドルと低迷、今年7月にカナダで債務整理法の適用を、米国でも破産法第15章の適用を、申請した。身売りなどの戦略的オプションを検討しているはずだが、なけなしの製品を自主回収するということは、供給継続を諦めたのだろうか?尚、Nasdaqは8月に上場廃止になっている。

リンク: 同社のプレスリリース

【新薬開発】


CETP阻害剤の第3相、二本目も成功
(2024年11月20日発表)

オランダのNewAmsterdam Pharma(Nasdaq:NAMS)は、CETP阻害剤obicetrapibとNPC1L1阻害剤ezetimibeの固定用量合剤(FTC)のLDL-C低下作用を検討した第3相試験で主目的を達成したと発表した。単剤の試験は既に一本が成功、もう一本は年内に開票予定で、25年に承認申請に向かいそうだ。

このTANDEM試験は米国の施設でヘテロ接合型家族性高脂血症やアテローム硬化性心血管疾患及び高リスク患者で最大忍容量のコレステロール治療薬を服用してもLDL-C値が70mg/dL以上の患者407人を、偽薬、ezetimibe 10mg、obicetrapib 10mg、FDC 10/10mgの4群に無作為化割付けして12週間投与し、LDL-C低下作用を比較した。偽薬調整後低下率は各群20.7%、31.9%、48.6%となり、FDCは偽薬群や各単剤投与群を有意に上回った。共同主評価項目であるobicetrapib単剤群と偽薬群の比較も成功した。薬物関連治療時発現有害事象やそれに伴う投与中止はobicetrapib単剤投与群だけやや高いが、イベント数が一桁と少ないため、ノイズの可能性も否定できないだろう。

一本目のBROOKLYN試験では偽薬調整後で36.3%低下した。HDL-Cは同138.7%増、スタチンが殆ど作用しないLp(a)は同45.9%低下した。薬物関連治療時発現有害事象の発生率は6.8%(偽薬群は4.3%)、同深刻有害事象は6.8%(同5.6%)、同投与中止は14.4%(7.6%)でいずれも偽薬群より低かった。

日本の施設も参加する心血管アウトカム試験、PREVAILは26年頃の開票の見込み。

obicetrapibは2013年にDezima Pharmaが田辺三菱製薬から導入。Dezimaは15年にアムジェンが買収し後期第2相試験を実施したが、類薬の第3相がフェールしたせいか、20年にNewAmsterdamに売却した。

リンク: NewAmsterdamのプレスリリース


抗CD40L抗体のSLE試験が成功
(2024年11月19日発表)

UCBとバイオジェンは、CDP7657(dapirolizumab pegol)が第3相SLE(全身性エリテマトーデス)試験で主目的を達成したと発表した。もう一本開始して、成功なら承認申請する考え。

CD40Lに結合する、PEG化抗体フラグメント。このPHOENYCS GO試験は中重度活性期SLE患者321人を組入れて偽薬または試験薬を48週間投与した。主評価項目は複合評価奏効率で、BILAG(British Isles Lupus Assessment Group) Disease Activity Index 2004が改善し、悪化した臓器がなく、SLEDAI-2000やPGAに基づく評価が悪化しなければ奏効と判定した。結果は49.5%と偽薬群の34.6%を有意に上回った。

副次的評価項目の筆頭であるBICLA奏効率は46.6%対38.3%で有意差なし。SRI-4やSLEDAI-2Kでは高度な有意差が見られたが、上位解析がフェールしたため統計学的に有意とは言えなくなってしまった。

治療時発現有害事象は各群82.6%と75.0%。日和見感染症の発生率は各2.8%と0.9%。血栓塞栓症の有無には言及されていない。

バイオジェンとその前身企業はBG-9588(ruplizumab)とIDEC-131/E6040(toralizumab)の二種類の抗CD40L抗体を開発したことがあるが、血栓塞栓リスクで開発中止となり、2003年にUCBから上記の共同開発権を取得した。承認申請に手が掛かるまでずいぶん時間がかかった。

リンク: 両社のプレスリリース


GSK、iBAT阻害剤のPBC掻痒緩和試験が成功
(2024年11月19日発表)

GSKは、GSK2330672(linerixibat)の第3相GLISTEN試験が成功したと発表した。米日ポーランドなどの施設で中重度胆汁鬱滞性掻痒症を伴う原発性胆汁性胆管炎(PBC)の成人238人を組入れて24週後の月間掻痒尺度(0~10、大きいほど重い)を偽薬と比較したところ、統計的に有意な差があった。数値は学会などで発表する考え。尚、最近よく見る、臨床的に意味のある、という文言は記されていない。

類薬ではAlbireo Pharma(Nasdaq:ALBO)のBylvay(odevixibat)が21年に米欧で承認されたが、適応は進行性家族性肝内胆汁鬱滞症(PFIC)で、同一ではない。PBC用薬は承認取消が危惧されるIntercept PharmaceuticalsのOcaliva(obeticholic acid)以外に、PPARアゴニストであるGenfit(Nasdaq:GNFT)のIqirvo(elafibranor)が今年6月に米国で、9月にはEUでも、承認され、CymaBay Therapeutics(Nasdaq:CBAY)のLivdelzi(seladelpar)も今年8月に米国で承認されたが、効能はアルカリフォスファターゼ(ALP)の減少で掻痒緩和効果は見られない。

リンク: GSKのプレスリリース


経口IL-23受容体拮抗剤の第3相が成功
(2024年11月18日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ-2113(icotrokinra)の最初の第3相プラク乾癬試験二本で目的を達成したと発表した。実薬対照試験も進行中で25年上期に開票する見込み。前後して承認申請されるのではないか。

米国カリフォルニア州のProtagonist Therapeutics((Nasdaq:PTGX)からライセンスした、経口IL-23受容体拮抗ペプチド。STAT3リン酸化やインターフェロン・ガンマの生成を抑制し、炎症を緩和する。二本のうちICONIC-LEAD試験は12歳以上の中重度プラク乾癬患者を組入れて一日一回、16週間投与した。共同主評価項目のうち、PASI90(Psoriasis Area and Severity Indexが90%以上改善)達成率は偽薬群の4.4%を上回る49.6%だった。IGA奏効率(医師による全般的評価スコア(レンジは0~5点)が0または1に改善し、かつ、ベースライン比2点以上改善)は各群8.3%と64.7%だった。第24週には更に上昇した。治療時発現有害事象は各群同程度だった。

もう一本のICONIC-TOTALは特定の部位(頭皮、生殖器、手掌、足裏)に中等度以上の患部があるプラク乾癬に対する効果を検討した。主評価項目が罹患部位ごとに異なるせいか、IGAベースの解析が偽薬比有意だったことだけ公表された。

残りの第3相試験、ICONIC-ADVANCEの1と2は、中重度プラク乾癬の偽薬対照試験だが、副次的評価項目としてブリストル マイヤーズ スクイブのTYK阻害剤Sotyktu(deucravacitinib)との比較も行っている。25年には乾癬性関節炎の第3相も開始する予定。

リンク: JNJのプレスリリース

【承認申請】


トレムフィア皮下注用を導入療法にも申請
(2024年11月22日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗IL-23p19サブユニット抗体Tremfya(guselkumab)の皮下注用製剤を成人の中重度活性期潰瘍性大腸炎の導入療法として用法追加申請した。400mgを第0、4、8週に投与する。ASTRO試験で第12週寛解率が偽薬比で統計的に有意に、且つ臨床的に意義のある差で、上回った。

Tremfyaは米国で成人の中重度活性期乾癬、活性期乾癬性関節炎、中重度活性期潰瘍性大腸炎の治療薬として承認され、中重度活性期クローン病に適応拡大申請中。このうち、潰瘍性大腸炎は導入療法として点滴静注用製剤を200mgずつ、第0、4、8週に投与し、維持療法で皮下注用製剤を100mg8週毎、または200mg4週毎、投与する用法。今回の申請が承認されれば、最初から皮下注で治療できることになる。

ライフ・サイクル・マネジメントを兼ねて皮下注用新製剤を上市する例が増えているが、Tremfyaはヒアルロン酸分解酵素を添加する技術を用いていない。

ところで、なぜ最初から導入も維持も皮下注で承認申請しなかったのだろうか?また、他の適応では使えないのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


Arrowhead社、家族性カイロミクロン血症のRNA介入薬を承認申請
(2024年11月18日発表)

米国カリフォルニア州のArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR) は、ARO-APOC3(plozasiran)を家族性カイロミクロン血症用薬としてFDAに承認申請したと発表した。25年に他の地域でも申請する考え。

カイロミクロン症では、VLDLなどが保持するトリグリセライド(TG)の分解がアポリポ蛋白C-IIIにより妨げられ、TG値などが上昇する。急性膵炎などのリスク因子。plozasiranはこのアポC-IIIを『沈黙』させるRNA介入薬。第3相試験で25mgまたは50mgを3ヶ月毎皮下注したところ、第10月の空腹時TG値が偽薬比で夫々メジアン80%と78%低下した。二群のプール分析で急性膵炎のリスクも有意に抑制した。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、Xa阻害剤中和薬の功罪を検討
(2024年12月21日報道)

FDAはCTGTAC(細胞、組織、遺伝子療法諮問委員会)を招集し、アストラゼネカが市販後コミットメントを充足するために提出した、AndexXa(不活化凝固因子Xa(遺伝子組換え)-zhzo)のANNEXA-1試験について意見を聞いた。票決が行われなかったためコンセンサスは不明だが各種報道によると、適応対象を抑え気味にすることを好む意見が多かったようだ。

AndexXaはXa阻害剤の中和薬。Xa阻害剤は血栓塞栓性疾患のリスクを抑制するが、止血も抑制するため、出血事故時には作用を止める必要がある。AndexXaは血液凝固第Xa因子の類縁体で、rivaroxabanやapixabanを服用している患者が命に係わる/管理不能な出血を被った時の中和薬として米国で加速承認、EUで条件付き承認、日本(エドキサバントシル酸塩水和物の中和も含む)で承認されている。第3相ANNEXA-4単群試験で評価可能47人中79%が12時間内に止血に成功した。一方で、67人中18%で血栓性事故が発生した。

ANNEXA-1試験は上記2剤を服用してから15時間内に脳内出血を発症した成人452人を組入れて臨床的便益と危険を偽薬と比較したもの。主評価項目の止血奏効率(複合評価項目)は67%と通常医療群の53%を有意に上回ったが、内訳を見ると、便益は専ら血腫の増加抑制で、神経学的、機能的評価尺度に基づく臨床的評価は大差なかった。危険面では30日血栓性イベント発生率が14.6%と対照群の6.9%を大きく上回り(New England Journal of Medicine誌に掲載された論文抄録の数値より大きい)、血栓関連死亡率も2.5%対0.9%で上回った。

加速承認を受けた製薬会社は市販後薬効確認試験を実施して便益と危険を確認する責務があり、通常は、その結果に基づき加速承認が本承認に切り替わる。しかし、今回は、加速承認取消の当否は諮問対象外だった。

Xa阻害剤は血栓塞栓を抑制するが出血事故のリスクが高まる。当然、中和すると出血を抑制できるが血栓塞栓のリスクが高まる。ワン・サイズ・フィット・オールではないので、医師と患者が相談して裁量することが望まれる。しかし、基準も示さずに丸投げするのは無責任の誹りを免れない。着地点を見つけるのは難行だ。

リンク: MedPage Todayの報道

【承認】


Jazzのher2陽性胆道癌用薬が承認
(2024年11月20日発表)

FDAは、Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)のZiihera(zanidatamab-hrii)を治療歴のある切除不能/転移her2陽性胆道癌用薬として加速承認した。IHC法のher2発現検査で3+なら適応になる。

抗her2抗体はtrastuzumab系とpertuzumabで結合するエピトープが異なるが、Ziiheraは夫々のエピトープに結合する部位を持つ二重特異的抗体。第2相HERIZON-BTC-01試験でgemcitabineによる治療歴を持ちher2標的薬歴のないher2陽性(IHC法で2+と3+)胆道癌80人(うち52人はアジア人種)に20mg/kgを2週毎点滴静注したところ、cORR(確認客観的反応率、独立中央評価)が41.3%、メジアン反応期間は12.9ヶ月だった。her2発現度に基づく事後的解析で、3+におけるcORRは51.6%、メジアン反応持続期間は14.9ヶ月だったが、2+では各5.6%(達成は1名のみ)と7.5ヶ月で、後者は組入れが少ないとはいえ、物足りないものだった。そのせいか、FDAは3+のみを適応とした。

尚、第一三共/アストラゼネカの抗her2抗体薬物複合体Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)もher2発現が3+の固形癌で他に適切な治療法がない場合に用いることが承認されており、このうち胆道癌における治験成績はcORR(独立中央評価、n=22)が45.5%だった。

zanidatamabはZymeworks(NYSE:ZYME)が創製、Jazzが米欧日などの、BeiGeneが中韓豪新の、開発商業化権を取得して共同開発している。

リンク: FDAのプレスリリース


ビンゼレックスが米国でも化膿性汗腺炎に適応拡大
(2024年11月20日発表)

UCBはBimzelx(bimekizumab-bkzx)が米国で中重度化膿性汗腺炎に適応拡大したと発表した。EUでは4月に、日本では9月に、承認されている。Bimzelxの用量はプラク乾癬が320mg、乾癬性関節炎などには160mgと二種類あるが、化膿性汗腺炎は前者。初承認当時は160mg製剤しかなかったため乾癬では一度に二回、皮下注する必要があったが、10月に320mgのシリンジとオートインジェクターが米国でも承認されている。

リンク: UCBのプレスリリース


初のメニン阻害剤が承認
(2024年11月15日発表)

FDAは、米国マサチューセッツ州のSyndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)が申請したRevuforj(revumenib)を承認したと発表した。menin阻害剤の第1号で、KMT2A(リジン・メチルトランスフェラーゼ2A)遺伝子転座のある1歳以上の難治/再発急性白血病に用いる。第1/2相AUGMENT-101試験で奏効率(完全寛解、但し血液学的回復が部分的な症例も含む)が21.2%、メジアン反応持続期間は6.4ヶ月だった。警告事項は致死例もある分化症候群。警告・事前注意事項は更にQT延長と胚胎毒性。

投与量は体重やCYP3A4強阻害薬の同時使用の有無に応じて決定する。25mg、110mg、160mgの3種類の錠剤が承認されたが、体重40kg未満に用いる25mg錠は発売が25年に遅れるため、それまではexpanded access programを通じて入手する。

同社はUCBからライセンスして慢性移植片対宿主病治療薬として開発したNiktimvo(axatilimab-csfr)も8月に米国で承認されており、新興企業の中でも著しい成果を挙げた。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


諮問委員会、クロザピンのREMS緩和を支持
(2024年11月19日開催)

FDAは精神薬理学薬諮問委員会と薬品安全性リスク管理諮問委員会の共催会議を開き、統合失調症用薬clozapineに関するREMS(リスク評価緩和戦略)プログラムについて意見を聞いた。ANC(好中球絶対数)検査結果を処方者が薬局に頻繁に連絡しなければならない現行規制に関して、15人の委員のうち14人が不必要と回答した。検査自体は従来通り、頻繁に実施しなければならない。

clozapineは米国では1989年に承認され、治療抵抗性統合失調症の貴重な選択肢になった。退役軍人会からも強い後押しを受け、連邦議員が価格に文句を付けたこともあった。好中球減少症は最も重要な副作用で、当初から様々な警告や対策が導入されていたが、2015年にFDAがREMSを導入すると、内容に厳しさに処方をためらう動きもみられるようになった。21年にメーカー各社のシステムが統合された時には、患者情報が継承されないなどのトラブルが頻発、APA(米国心理学会)が懸念を表明する事態に至った。今日ではclozapineのREMSのアクティブ登録者数が処方側35,000人超、薬局27,000超、患者149,000人超の規模に達しているが、適応になる患者は100万人前後と推測されており、REMSを逃れて治療を受けている患者も40,000人前後いると推測されている。

今回、規制継続の是非が問われたのは、ANC検査義務に関する医療従事者研修と、ANC検査成績を医師が処方時に連絡・システム登録し薬剤師が調剤時に確認する責務。規制緩和の理由づけは好中球減少症に関する意識の向上と対処法の普及だが、導入当初から厳格に順守しなくても容認されていた模様なので、現状追認という面もあるのだろう。ANCリスクが低下したわけではなく、従来通り、開始当初は週一回、半年経ったら二週毎、さらに半年経ったら月一回のANC検査を行う必要がある。

リンク: FDAの諮問委員会関連情報
リンク: MedPageTodayの報道(11/20付)

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24/11推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
24/11/28Applied TherapeuticsのAT-007(govorestat、ガラクトース血症)
24/11/29BridgeBio Pharmaのacoramidis(ATTR心筋症)
24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群
24年12月推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)
24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)




今週は以上です。

2024年11月16日

第1081回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • GLP-1作用剤は2型糖尿病の診断を遅らせる作用 
  • Adaptimmune、NY-ESO-1志向T細胞療法の治験成績を発表 
  • menin阻害剤が別のタイプのAMLにも良績 
  • メルク、TGCT用薬の第3相が成功 
  • コセルゴは大人にも有効 
  • 抗TIGHT抗体の中止された第3相が良好な結果に 
  • タミバロテンのMDS試験がフェール 
  • Eyenovia社、近視用薬の第3相がフェールし戦略オプションを検討 
  • Regeneron、デュピクセントを蕁麻疹に再申請 
  • Dato-Dxdの申請取下げ/別件申請 
  • 遅報:卵巣癌の二新薬併用を承認申請 
  • Ocalivaは本承認されず 
  • CHMP、抗癌剤やアルツハイマー用薬などに肯定的意見 
  • AADC欠損症の遺伝子療法が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


GLP-1作用剤は2型糖尿病の診断を遅らせる作用
(2024年11月13日発表)

イーライリリーは、治験論文刊行などに合わせて、GIP/GLP-1作用剤tirzepatideの第3相SURMOUNT-1試験における糖尿病予防サブスタディの概要を発表した。この試験は日本も含む米州中印などの施設で、肥満症またはリスク因子を持つオーバーウェイト、但し糖尿病ではない成人2500人超を組入れて、週一回皮下注の体重減少効果を偽薬と比較したものだが、副次的評価項目として前糖尿病サブグループ1032人の2型糖尿発症リスクを176週に亘り追跡した。3用量群のプール分析で、リスクを偽薬比93%抑制した(treatment-regimen estimandベース、efficacy estimandベースでは94%抑制)。176週までに2型糖尿病を発症した患者の比率は試験薬群が1.3%、偽薬群は13.3%だった。

類似したデザインの試験はこれまでに数多く実施されたが、評価が難しいのは、発症を抑制したのか、発症をごまかしたのか、良く分からないことだ。tirzepatideは二型糖尿病治療薬Mounjaroとして承認されているので、治療ガイドラインに即して診断すると、試験薬群の患者は投与を開始した段階で糖尿病と判定されることになる。臨床的な意義の点では、本試験は、二型糖尿病発症の前に血糖治療を開始する便益を検討する試験と位置付けることが可能であり、その評価項目としては、腎症や心血管疾患などのハードなアウトカムが相応しい。とはいえ、3年間で13%しか発症しない患者層なので、合併症のリスクを追跡していたら有意差が出るまで何年かかるか分からない。

類似した前例では、FDAは、投与を打ち切った後も効果が残っているかを重視する姿勢を示した。そのせいか、今回の試験では176週の投与を完了した後に更に17週間、二型糖尿病発症リスクを観察した。193週までの発症率は試験薬群が2.4%、偽薬群が13.7%だった。単純比較すると、投与を止めた後に試験薬群は1.1%、偽薬群は0.4%が発症したことになる。追加観察期間が4ヶ月程度とあまり長くないことを考えると、不可逆的な、疾病装飾的な作用を持つというほどでもないように感じられる。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Jastreboffらの治験論文抄録(NEJM)


Adaptimmune、NY-ESO-1志向T細胞療法の治験成績を発表
(2024年11月13日発表)

英国本社のAdaptimmune(Nasdaq:ADAP)は、letetresgene autoleucel(通称lete-cel)のIGNYTE-ESO試験におけるサブスタディ2のアップデート・データをCTOS(結合組織腫瘍学会)で発表した。米国で25年末までにローリング承認申請に着手する考え。

HLA-Aの02:01、02:05、02:06アレルが提示するNY-ESO-1腫瘍抗原を認識するT細胞受容体などを自家CD4/CD8陽性T細胞にex vivoで導入した細胞療法。今回のpivotal試験は、これらのアレルを持ちNY-ESO-1陽性の10歳以上の転移/切除不能な滑膜肉腫/MRCLE(粘液型円形細胞・脂肪肉腫)を組み入れたもので、サブスタデイ1は一次治療、2はanthracyclineなどの治療歴を持つ患者が対象。ORR(客観的反応率、解析対象は商業プロセス産品を用いた62人)は42%で滑膜肉腫(34人)でもMRCLS(30人)でも同程度だった。完全反応は6人、部分反応は21人。メジアン反応持続期間は12.2ヶ月だった。

同社は今年8月にも米国でTecelra(afamitresgene autolecel)が特定のHLAアレルを持ちMAGE-A4陽性の滑膜肉腫/MRCLE用薬として承認されており、多くの会社が挫折した技術分野で成果を上げ始めている。

リンク: 同社のプレスリリース


menin阻害剤が別のタイプのAMLにも良績
(2024年11月12日発表)

米国の医薬品開発会社Syndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)は、SNDX-5613(revumenib)の第2相AUGMENT-101試験でNPM1変異AML(急性骨髄性白血病)コフォートの解析が成功したと発表した。メジアン2次治療歴を持ち75%がvenetoclax歴も持つ難治再発型の患者64人のうち、15人(23%、95%下限14%)がCR/CRh(完全寛解/血液学的回復が部分的である点以外は完全寛解)を達成した。メジアン維持期間は4.7ヶ月と、この疾患の常だが、あまり長くない。G3以上の治療関連有害事象はQT延長、熱性好中球減少症、分化症候群、血小板減少など。

このmenin阻害剤は同試験のKMT2再編成コフォートのデータに基づき昨年12月に米国で承認申請されている。審査期限は12月26日。承認されたら25年上期にNPM1変異型に適応拡大申請する考え。急性白血病のうちKMT2再編成は5-10%、NPM1変異は30%で見られるとのことで、両方承認なら4割をカバーできるようになる。

同社は新患NPM1変異/KMT2再編成急性白血病の標準療法併用試験を年内に着手する考え。

リンク: 同社のプレスリリース


メルク、TGCT用薬の第3相が成功
(2024年11月12日発表)

ドイツのメルクは、上海のAbbisko Therapeutics(Abbisko Cayman Limited(2256.HK)の子会社)が開発した経口CSF-1R阻害剤、ABSK021(pimicotinib)の第3相MANEUVER試験で主目的などを達成したと発表した。中国などで承認申請するだろう。欧米などのオプト・イン・オプションを行使するかどうかは不明だが、先行二品と見比べて悪くはなさそうに感じられる。

この試験は切除不能腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の患者におけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)を偽薬と比較した。中国、欧州、北米で各45人、28人、21人を組入れた。50mgを一日一回、経口投与した試験薬群は54.0%となり、偽薬群の3.2%を有意に上回った。副次的評価項目の疼痛や凝りも有意に改善した。胆汁鬱滞性肝毒性は見られなかった。尚、第一三共の類薬、Turalio(pexidartinib)は米国では19年に承認されたがEUでは肝毒性や症状改善作用が小さいことなどから承認されなかった。

このほかに小野薬品が6月に24億ドルで買収したDeciphera PharmaceuticalsもDCC-3014(vimseltinib)を欧米で承認申請中。こちらも肝毒性は見られないようだ。

TGCTはCSF-1が遺伝子転座により過剰発現し受容体に集積する。切除が第一選択。悪性腫瘍ではないので安全性も重要。

リンク: メルクのプレスリリース


コセルゴは大人にも有効
(2024年11月12日発表)

アストラゼネカはMSDと共同開発販売しているMEK1/2阻害剤Koselugo(selumetinib)が、成人神経線維腫症1型の第3相試験で主目的を達成したと発表した。対象年齢拡大申請に向かうのではないか。

20~22年に米欧日で神経線維腫症1型の小児における症候性、切除不能な叢状神経線維腫の治療薬として承認されている。対象年齢は、米国が2歳以上、EUは3歳以上、日本は注意事項として3歳未満及び19歳以上における有効性や安全性は確認されていないことに言及と、若干異なっている。エビデンスはNCI(米国立がん研究所)が主導した第2相試験。

今回の第3相KOMETは145人を試験薬と偽薬に無作為化割付けしてcORR(確認客観的反応率、独立中央評価)を比較した。統計的に有意且つ臨床的に意味のある優越性が示されたとのこと。

神経線維腫症1型は3000~4000人に一人の常染色体性優性遺伝性疾患。RAS~PI3K/AKT経路を抑制すべきニューロフィブロミンの変異が見られる。小児で発症するが患者数は成人が7割を占める由。

類薬ではファイザーからスピンアウトしたSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)がアロステリックMEK1/2阻害剤mirdametinibを小児と成人の切除不能神経線維腫症1型関連叢状神経線維腫用薬として米国で承認申請中で、審査期限は来年2月28日。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


抗TIGHT抗体の中止された第3相が良好な結果に
(2024年11月5日発表)

米国カリフォルニア州の医薬品開発会社、Arcus Biosciences(Nasdaq:RCUS)は、抗TIGHT抗体AB154(domvanalimab)と抗PD-1抗体AB122(zimberelimab)を併用で局所進行/転移非小細胞性肺癌のフロントライン治療に用いたARC-10試験の第1部における成績をSITC(がん免疫療法学会)年次総会で発表した。PD-L1を強度発現(TPS≧50%)する、分子標的薬が適応にならない患者における、併用(以下、DZ群)やzimberelimab単剤(Z群)の効果を白金ベース化学療法(CT群)と比較したもので、途中で打ち切られたためn=95と小規模な解析になってしまったが、点推定値自体は良好だ。ギリアド・サイエンシズと提携して進行している第3相STARプログラムの結果に期待がかかる。

DZ群、Z群、CT群のメジアン生存期間はそれぞれ未達、24.4ヶ月、11.9ヶ月で、DZ群はCT比のハザードレシオが0.43(95%信頼区間0.20-0.93)、Z群比では0.64(同0.32-1.25)、Z群はCT比で0.63(0.30-1.29)だった。一方、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオはそれぞれ0.69、0.69、1.07とチグハグ。3群のcORR(確認客観的反応率)は44.7%、35.0%、35.3%だった。

Keytrudaは類似した試験でCT比ハザードレシオが全生存期間は0.6、PFSは0.5だった。今回のZ群とCT群の全生存期間ハザードレシオの点推定値はこれと同程度であり、そのZ群よりDZ群はさらに良かったので、良好な結果と考えられる。

この種の癌の第一選択はMSDのKeytruda(pembrolizumab)なのでパート1はKeytrudaがこの用途で承認されていない国で、各群2:2:1割付けして実施した。打ち切りとなったのはFDAがCTではなくKeytruda対照とするよう求めたため。

ギリアド提携で開始したSTAR-121試験はEGFR/ALK変異の無い局所進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療として上記二剤を化学療法と併用し、標準療法であるKeytruda・化学療法併用とPFS(無進行生存期間)や全生存期間を比較する。治験登録によると27年に主解析が行われる見込み。局所進行切除不能/転移性の胃、食道、胃食道接合部腺腫を組入れてFOLFOX/CAPOXに二剤を追加する効果をOpdivo追加と比較するSTAR-221試験も進行中で、全生存期間の解析結果が26年にも判明する見込みだ。

抗TIGHT抗体は抗PD-(L)1抗体とのシナジーが期待される抗体の一つだが、これまでの成果は判然としない。domvanalimabはFc領域を沈黙化する工夫を施しており、承認第1号の期待がかかっている。

リンク: Arcus社のプレスリリース


タミバロテンのMDS試験がフェール
(2024年11月12日発表)

米国マサチューセッツ州ケンブリッジの医薬品開発会社、Syros Pharmaceuticals(Nasdaq:SYRS)は、SY-1425(tamibarotene)の第3相RARA遺伝子過剰発現新患高リスクMDS(骨髄異形成症候群)試験がフェールしたと発表した。融資が引き上げられたら現金枯渇の危機を迎えることになる。

このSELECT-MDS-1試験はazacitidineに追加して寛解率を向上することを図った。偽薬追加群は過去の試験と大差ない18.8%となったが、併用群は23.8%に留まり、p=0.208だった。

Oxford Financeから融資を受ける際に本試験がフェールしたら債務不履行扱いにする旨、合意していたたため、4360万ドルの繰上げ弁済を求められる可能性が高い。同社の24年9月末の現金・現金等価物残高は5830万ドル。

tamibaroteneは日本で発見されたレチノイン酸受容体アルファ作動薬 。日本で05年に再発・難治性急性前骨髄球性白血病アムノレイクとして発売された。Syrosは15年に現在はラクオリア創薬の子会社であるテムリック社から欧米市場における開発販売権を取得した。

リンク: Syrosのプレスリリース


Eyenovia社、近視用薬の第3相がフェールし戦略オプションを検討
(2024年11月15日発表)

米国NY州の眼科用薬開発販売会社、Eyenovia(Nasdaq:EYEN)は、MicroPine(atropine点眼薬)の第3相CHAPERONE試験が独立データ監視委員会による中間解析評価で主目的達成しなかったと明らかにした。臨床試験を中止すると共に、株主価値最大化に向けた戦略オプション(合併など)の検討を開始した。

同社は薬剤を角膜を覆うように分布させるOptijet技術を持ち、23年に米国でMydCombi(tropicamide、phenylephrine hydrochloride)が目の検査や手術時の瞳孔散大措置用薬として 承認された。Optijetは千寿製薬にも技術供与されている。

今回の試験は低用量のatropine(0.01%または0.1%)を用いて小児進行性近視の3年間の進行を、視力検査で0.5ディオプター未満に抑えることを狙った。中間解析をファイナル・アンサーにしたのは、おそらく、資金面の制約だろう。

リンク: Eyenoviaのプレスリリース

【承認申請】


Regeneron、デュピクセントを蕁麻疹に再申請
(2024年11月25日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はDupixent(dupilumab)を特発性慢性蕁麻疹の治療に用いる適応拡大を米国で再申請した。抗H1ヒスタミンに十分応答しない12歳以上の小児と成人に用いる。審査期限は25年4月18日。

23年3月の初回申請は審査完了通知を受領したが、LIBERTY-CSU CUPID試験のスタディCが成功し、スタディAと合わせてエビデンスが二本揃った。この二本はバイオ薬未経験の患者を組入れて、それまで用いていた薬にDupixentを追加したもの。間のスタディBは抗IgE抗体Xolair(omalizumab)に不十分応答/不耐の患者を組入れて標準療法のみの群と比較したもので、中間解析で無益認定されたが盲検続行したところ、主評価項目のISS7改善はp値が0.0449(アルファの配分は0.043なのでフェール)、副次的評価項目のUAS7はp=0.0390(主評価項目がフェールしたので正式な検定ではない)と、あと一歩だった。日本ではスタディAとBを元にバイオ薬歴不問で承認されたが、米国は認められなかった。

リンク: 同社のプレスリリース


Dato-Dxdの申請取下げ/別件申請
(2024年11月12日発表)

第一三共はアストラゼネカと共同開発しているDS-1062(datopotamab deruxtecan、通称Dato-DXd)の米国における承認申請の一部を取下げ、やや異なった適応で新たに承認申請した。FDAのフィードバックを考慮したもので、ある程度、予想されたことだ。EMA(欧州医薬品庁)の判断も注目される。

この抗TROP2抗体医薬複合体は、成人の治療歴のある局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌と、成人の全身性治療歴のある切除不能/転移、ホルモン受容体陽性、her2陰性乳癌用薬として、欧米で承認申請され2月に受理された。日本でも3月に後者の適応症で申請されている。

肺癌用途におけるエビデンスとなったTROPION-Lung01試験では、扁平上皮腫サブグループにおけるPFS(無進行生存期間)がメジアン2.8ヶ月とdocetaxel群の3.9ヶ月を下回り、ハザードレシオは1.38だったが、承認申請されたそれ以外の癌(腺腫など)ではメジアン5.6ケ月対3.7ヶ月、ハザードレシオ0.63と、良好だった。その時点では非扁平上皮腫サブグループの全生存期間のハザードレシオは0.77と、未成熟ではあるものの好ましい方向を向いていたが、最終解析では0.84(95%信頼区間0.68-1.05)、メジアン14.6ヶ月と12.3ヶ月と、便益が縮小してしまった。尤も、実薬対照試験であることや検出力が低下するサブグループ分析であることを考えれば、ハザードレシオが物足りなく95%上限が1を少し位上回っても大目に見てもらえる可能性はあるように感じられた。

似たような薬であるギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)も似たような第3相がフェールしており、こちらは、非扁平上皮腫サブグループでも便益が見られなかった。薬の違いなのか、試験のデザインや実施環境の違いなのか、良く分からないが、DS-1062の評価に影を落としても不思議はない。

新しい目標適応症は成人の治療歴(EGFR標的薬を含む)を持つ局所進行/転移EGFR変異陽性非小細胞性肺癌。第2相のTROPION-Lung05と上記Lung01、そして初期段階のTROPION-PanTumor01試験に基づき加速承認を求めた。データは現時点では不明で、12月6日にESMO Asia学会で3本のプール分析結果が発表される予定。

リンク: 両社のプレスリリース


遅報:卵巣癌の二新薬併用を承認申請
(2024年10月31日発表)

米国のVerastem Oncology(Nasdaq:VSTM)はRAF/MEK阻害剤VS-6766(avutometinib)とFAK(焦点接着斑キナーゼ)阻害剤VS-6063(defactinib)を併用で治療歴のある難治LGSOC(低グレード漿液性卵巣癌)の治療レジメンとして用いるローリング承認申請を完了した。前者は3.2mgを週二回、後者は200mgを一日二回、28日サイクルで21日経口投与した試験で、cORR(確認客観的反応率、n=109)が27%だった。KRAS変異を持つ57人では37%、野生型の52人では15%だった。G3以上の有害事象はクレアチニン・フォスフォキナーゼ値上昇など。第3相は欧米豪韓の施設で白金レジメンによる治療歴を持つ難治LGSOCにおけるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を医師の選んだ薬(pegylated liposomal doxorubicinなど)と比較している。

avutometinibは20年に中外製薬からライセンス、defactinibは12年にファイザーからライセンスしたもの。

リンク: Verastemのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Ocalivaは本承認されず
(2024年11月12日発表)

Alfasigmaの傘下に入ったIntercept Pharmaceuticalsは、16年に米国で難治原発性胆汁性胆管炎の治療薬として加速承認されたOcaliva(obeticholic acid)を本承認に切り替えるべく申請していたが、審査完了通知を受領した。FDAは安全性について引き続き検討する考えなので、承認取消の可能性はまだ残っているだろう。

市販後薬効確認試験であるCOBALT試験では、肝臓関連有害事象イベントのハザードレシオが偽薬比0.84(95%信頼区間0.61-1.16)とフェールした。市販後に非代償性肝硬変などが禁忌になったが、引き続き適応となる被験者の半分弱に当たる症例の解析でも同0.88(0.47-1.65)と、まあ似たような結果になった。適応変更を受けて、検出力を確保するために途中で様々な評価対象イベントが追加されたが、肝移植・死亡だけをカウントした副次的評価項目を見ると、intent-to-treatではハザードレシオ1.18(0.72-1.93)、適応サブグループでは4.77(1.03-22.09)と悪かった。また、この薬の難点である薬物誘導性肝障害の発生率はintent-to-treatで11%(偽薬群は5%)、適応サブグループでは5%(同1%)だった。

9月の諮問委員会に上程されたが、便益が棄権を上回ると判定した委員は1名のみで、10名はNoと回答、3人はどちらとも言えないとして棄権した。

EUは16年に条件付き承認したが、今年8月に取消となった。但し、理由は不明だが9月にEUの一般裁判所が取消の一時的差止命令を出したため、撤回された。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMP、抗癌剤やアルツハイマー用薬などに肯定的意見
(2024年11月15日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月14日の会合で、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

ブリストル マイヤーズ スクイブのAugtyro(repotrectinib)は成人のROS1陽性進行非小細胞性肺癌と12歳以上のNTRK遺伝子融合のある進行固形癌(但し、NTRK阻害剤歴を持つ、またはNTRK標的薬以外の薬は不応不適の場合)に条件付き承認することが支持された。何れもORR(客観的反応率)と反応持続期間のデータに基づく。22年にTurning Point Therapeuticsを株式価値41億ドルで買収して入手した大環状ROS1/TRK/ALKチロシンキナーゼ阻害剤で、米国は23年11月に、日本では今年9月に、初承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース

InflaRx(Nasdaq:IFRX)のGohibic(vilobelimab)はC5a補体に結合するキメラ抗体。SARS-CoV-2による急性呼吸逼迫症候群を発症し全身性コルチコステロイド治療と侵襲性人工呼吸措置(ECMO(体外式膜型人工肺)を含む)を受けている患者向けに例外的条項に基づいて承認することが支持された。臨床試験は途中でFDA勧奨に基づき治験実施施設による階層化を導入したのが裏目に出たのか有意水準に届かなかったが、オリジナルの解析計画に基づく事後的解析では28日死亡のハザードレシオが0.674、p=0.027と良好なものになっていた。米国で23年4月にEUA(非常時使用認可)を受けている。

リンク: EMAのプレスリリース

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Cilag InternationalのLazcluze(lazertinib)とRybrevant(amivantamab-vmjw)は、EGFRにex19delやex21 L858R変異を持つ成人の進行非小細胞性肺癌の一次治療に二剤併用することが支持された。前者は韓国企業からライセンスした変異EGFR阻害剤で今回が初肯定的意見。後者はEGFRとMETの二重特異性抗体で21年にEGFRにex20ins活性化変異を持つ非小細胞性肺癌に承認されている。この併用法は8月に米国で承認、日本ではRybrevantは承認済み、併用は承認申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

CHMPは、メーカー側の請求により再審査を行い、エーザイ/バイオジェンのLeqembi(lecanemab)に関する肯定的意見をまとめた。7月に否定的意見を出したが、外部の意見なども踏まえて、副作用を被り易いApoE4ホモ接合型の患者を適応外とした上で譲歩した。臨床試験ではARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫)の発生率が12.6%、ARIA-H(同、出血)が16.9%だったが、二つの遺伝子のうちApoE4型が一つだけ、または無いサブグループでは各8.9%(偽薬群は1.3%)と12.9%(同6.9%)と若干低かった。便益の程度はApoE4ホモ接合型を除外しても大差なく、CDR-SBの悪化は1.22(偽薬群は1.75)だった。適応を制限してもリスクがなくなるわけではないので、米国同様に、第1、5、7、14回目の投与の前にMRI検査を行う必要がある。

ApoE4多型は老人性アルツハイマー病のリスク因子で、治療や予防のニーズが特に高い。ARIAはMRI検査所見の一つで、ほとんどは症状を伴わないので、ホモ接合型を除外するかどうかは難しい判断だろう。米日は除外せず使うかどうかは医師や患者の判断に委ねた。一方、英国は、ApoE4ホモ接合型を適応外として承認した。

lecanemabは2007年12月にエーザイがスウェーデンのBioArctic Neuroscienceからライセンスした抗アミロイド・ベータ抗体。

リンク: EMAのプレスリリース(11/14付)

以下の適応・用法追加も肯定的意見を受けた。

  • サノフィのSarclisa(isatuximab)・・・成人の幹細胞移植不適な未治療多発骨髄腫にbortezomib、lenalidomide、dexamethasoneと併用。米国では9月に承認、日本でも一変申請中。
  • サノフィのKevzara(sarilumab)・・・2歳以上の伝統的合成DMARDsに応答不十分な活性期多関節炎型若年性特発性関節炎。プリフィルドではない製品も追加される。米国で6月に承認された時は幼小児に適さないプリフィルドのシリンジやペンしかなかったため体重63kg以上の患者に適応限定された。
  • MSDのKeytruda(pembrolizumab)・・・成人の切除不能非上皮性悪性胸膜中皮腫の一次治療に白金薬及びpemetrexedと併用。米国では上皮型か否かを問わず9月に承認されたが、上皮型の全生存期間ハザードレシオは0.89と、それ以外の0.57と比べて見劣りした。
  • ブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)・・・成人の高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能不全(dMMR)の切除不能/転移結腸直腸癌の一次治療に二剤併用。
  • アストラゼネカのTagrisso(osimertinib)・・・成人のEGFRにex19del/ex21 L858R変異を持つ局所進行切除不能非小細胞性肺癌で、白金薬ベースの化学放射線療法中に、またはその後に、進行していない患者の維持療法

  • 新薬の否定的意見は一件、CHMPが承認に後ろ向きで申請撤回となったのが二件、公表された。

    Legacy Healthcare (France) S.A.S.は、ガラナの種、カカオの種、玉ねぎの抽出物とレモンを配合した局所スプレー製剤、Cinainuを2-17歳の中重度円形脱毛症向けに承認申請したが、否定的意見となった。CHMPは、治験成績が不十分、治験品と市販用製品の同等性が示されていない、など様々な難点を列挙している。

    アステラス製薬が23年に59億ドルで買収したIveric BioはC5阻害剤avacincaptad pegolの開発に成功し23年8月に米国で地図状萎縮治療薬として承認獲得したが、EUでは申請撤回となった。CHMPは臨床的に意味のある視力の改善に繋がらないことなどから後ろ向きな姿勢を示した。他社の類薬も米国で承認されたがEUはダメだった。

    大塚製薬のInaqovi(decitabine、cedazuridine)はある種の新患急性骨髄性白血病の治療薬として既に承認されているが、米国(Inqovi名)で初承認された時の適応であるMDS(骨髄異形成症候群)とCMML(慢性骨髄探求性白血病)は申請撤回となった。CHMPは便益が確立したとは言えないと評価しているようだ。

    【承認】


    AADC欠損症の遺伝子療法が承認
    (2024年11月13日発表)

    PTCセラピューティクス(Nasdaq:PTCT)は、FDAがKebilidi(eladocagene exuparvovec-tneq)をAADC(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)欠損症の治療薬として加速承認したと発表した。年齢や重症度に基づく適応限定はない。脳内に投与する遺伝子療法の承認は初。希少疾患優先審査バウチャを取得した。

    この疾患は常染色体性劣性遺伝疾患で、ドパミンを前駆体から生成するのに必要な脱炭酸化酵素の遺伝子(DOC)に変異があり、ドパミンが欠乏、乳児期から発達遅延や運動障害を示す。Kebilidiはアデノ随伴ウイルス2型をベクターとしてDOCを導入するもので、定位脳手術により被殻内に点滴投与する。台湾や米国、イスラエルで13人の小児重症患者を組入れた第2相試験で、薬効評価対象12人中8人(67%)が第48週に新たな粗大運動(定頸、座位など)マイルストーンを達成した。自然歴43例ではメジアン7.2歳まで追跡しても達成例はなかった。

    警告事前注意事項は施術関連合併症とジスキネジア。

    市販後薬効確認は被験者の長期追跡試験。最近よく見られるように、超希少難病なので緩和されている。

    欧州では22年にUpstaza名で例外的条項に基づき承認された。米国承認が遅れたのはFDAが市販品と臨床試験品の同等性確認を求めたため。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



    PDUFA
    24/11推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
    24/11/28Applied TherapeuticsのAT-007(govorestat、ガラクトース血症)
    24/11/29BridgeBio Pharmaのacoramidis(ATTR心筋症)
    24/11/29Jazz PharmaceuticalsのZW25(zanidatamab、her2+胆道癌)
    24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群
    24年12月推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)
    24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
    24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
    24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
    24/12/26Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病)
    24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
    24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
    24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
    24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
    24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)
    諮問委員会
    24/11/19DSRMAC/PDAC:非定型向精神薬clozapine(流通処方制限の緩和)
    24/11/21CTGTAC:アストラゼネカのAndexxa(遺伝子組換え不活化血液凝固Xa因子-zhzo)



    今週は以上です。

    2024年11月9日

    第1080回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • FDA、経口フェニレフリンをOTC薬から除外へ 
    • テゼスパイアの副鼻腔炎試験が成功 
    • Intra-Cellular Therapies、ポスト・マーケティング試験が成功 
    • ASH:新規CAR-Tの承認申請用多発骨髄腫試験が良好に推移 
    • ASH:BTK阻害剤のITP試験が成功 
    • サレプタ、ペプチド結合DMD薬の開発を中止 
    • 中国企業がEGFR阻害剤を承認申請 
    • JNJ、ダラキューロをくすぶり型多発性骨髄腫に適応拡大申請 
    • HAEのアンチセンス薬を承認申請 
    • Merus、her2xher3二重特異性抗体の審査期間が延長 
    • 新規CAR-Tが承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    FDA、経口フェニレフリンをOTC薬から除外へ
    (2024年11月7日発表)

    FDAは、フェニレフリン塩酸塩とフェニレフリン酒石酸塩を経口OTC薬の配合成分として認めない旨の法令案(proposed order)を連邦官報で公開した。パブコメは25年5月7日まで。その後、最終決定することになりそうだ。

    鬱血除去剤は風邪薬やアレルギー用薬の配合成分として広く用いられているが、あまり良い記憶がない。PPA(phenylpropanolamine)は脳卒中のリスクが高まることが判明、pseudoephedrineに切り替えが進んだが、2003年頃から不適切使用が問題になり、処方は不要だが薬剤師の説明を受けた上で所定の数量だけ購入できるbehind-the-counter薬化された。代わりにover-the-counter薬の主役に立ったのがphenylephrineで、22年の販売量は2.4億箱/ボトルとpseudoephedrineの5倍近くに達している。

    ところが、07年以降に実施された季節性アレルギー鼻炎などの症状改善試験が三本ともフェールした。経口投与時の生物学的利用率が従来言われていた38%と全く異なる1%足らずであることが判明し、10~40mgを4時間毎経口投与するだけでは足りないことが原因と考えられている。FDAは23年9月に諮問委員会を招集し意見を求めたが、全員が薬効なしと判定した。用量を増やして再試験するのは、副作用が増える可能性があることや、代替品もあることから、すべての委員が反対した。

    総合感冒薬は他の活性成分を配合するか、鬱血除去剤は配合しないかの選択になる。点鼻用のphenylephrineは、従来通り、販売可能。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: FDAの法令案

    【新薬開発】


    テゼスパイアの副鼻腔炎試験が成功
    (2024年11月8日発表)

    アストラゼネカとアムジェンは、夫々、Tezspire(tezepelumab-ekko)が第3相CRSwNP(鼻ぽりーぶを伴う慢性副鼻腔炎)試験で主目的を達成したと発表した。データは学会などで発表する。適応拡大申請も行うだろう。

    TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)に結合する抗体で、21~22年に米欧日で管理不良重症喘息症用薬として承認された。今回のWAYPOINT試験は成人の点鼻ステロイド不応重度CRSwNPを対象に、ポリープのサイズや鼻詰まりを改善する効果を検討した。

    難治CRSwNPではRegeneron Pharmaceuticalsの抗IL-4Rサブユニット抗体Dupixent(dupilumab)が19~20年に、GSKの抗IL-5抗体Nucala(mepolizumab)が21~24年に、夫々、米欧日で承認されており、どれを最初に使うべきか、悩ましくなってきた。

    リンク: アストラゼネカのプレスリリース


    Intra-Cellular Therapies、ポスト・マーケティング試験が成功
    (2024年11月5日発表)

    Intra-Cellular Therapies(Nasdaq:ITCI)はCaplyta(lumateperone)の第3相維持療法試験(304試験)で主目的を達成したと発表した。19年に米国で成人の統合失調症治療薬として承認された時にコミットした試験で、Caplytaによる治療に応答した228人を偽薬スイッチ群と継続投与群に無作為化割付けして症状再発リスクを26週間に亘り比較したもの。結果は、ハザードレシオが0.37、各群の再発リスクは38.6%と16.4%となり、長期継続投与の有効性が示された。

    Caplytaは5-HT2A受容体とドパミンD2受容体のアンタゴニスト。承認のエビデンスは第3相二本のうち一本と後期第2相。双極性障害に伴う鬱病を治療した第3相も二勝一敗となり21年に米国で承認された。鬱病試験は二本とも成功し、適応拡大申請の予定。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ASH:新規CAR-Tの承認申請用多発骨髄腫試験が良好に推移
    (2024年11月5日発表)

    米国カリフォルニア州の医薬品開発会社、Arcellx(Nasdaq:ACLX)は、12月に開催されるASH(米国血液学会)の抄録が公開されたのを受けて、CART-ddBCMA(anitocabtagene autoleucel)の承認申請用第2相iMMagine-1試験の途中経過を公表した。

    CART-ddBCMAはBCMAを標的とするキメラ抗原受容体-T細胞療法で、短鎖可変領域抗体フラグメントに代えて免疫原性が低く安定的な合成タンパク、Dドメインを、4-1BB、CD3ゼータと共にT細胞に導入している。

    当試験は異なった作用機序を持つ3種類以上の医薬品による治療歴を持つ患者110人を組入れる計画だが、今回は58人のデータ。ORR(全般的反応率、独立評価委員会方式)は95%、CR/sCR(完全反応/厳格完全反応)は62%で、先行類薬と見比べても良好だ。G3/4サイトカイン放出症候群(CRS)は発生せず、G3のICANSの発生率も2%に留まった。但し、有害事象による死亡が3人あり、原因は後腹膜出血、CRS、真菌感染症となっており、一部は試験薬関連とのこと。CRSはG3/4はなかったがG5があったということなのだろうか?

    同社はギリアド・サイエンシズの子会社のKite Pharmaと共同開発商業化提携を結んでおり、米国では共同販売、米国外はKiteが販売する計画。

    リンク: Arcellxのプレスリリース
    リンク: Freemanらの抄録(ASH 2024、No. 1031)


    ASH:BTK阻害剤のITP試験が成功
    (2024年11月5日公開)

    サノフィは4月にSAR444671(rilzabrutinib)の第3相免疫性血小板減少症(ITP)試験が成功し今年下期に欧米で承認申請する計画であることを明らかにしたが、ASH(米国血液学会)の抄録が公表され、概要が明らかになった。このLUNA3試験はメジアン4治療歴を持ち既存治療不応の慢性ITP患者に偽薬または400mgを一日二回経口投与し、持続的血小板反応(24週の治療期間の後半12週中8週以上で血小板数が50000/マイクロリットル以上)を比較した。偽薬群はゼロだったが試験薬群は23%が達成した。試験薬群はレスキュー治療や出血のリスクが低下し、身体疲労も改善した。12月8日にPlenary Scientific Sessionで詳細発表される予定。

    SAR444671は20年にPrincipia Biopharmaを37億ドルで買収して入手した、高度選択的、可逆的、共有結合性のBTK阻害剤。天疱瘡の第3相はフェールした。喘息症でも第3相に進む予定。

    リンク: Kuterらの抄録(ASH 2024、No. 5)


    サレプタ、ペプチド結合DMD薬の開発を中止
    (2024年11月6日発表)

    Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)は、24年第3四半期決算発表に合わせて、SRP-5051(vesleteplirsen)をはじめとするPPMO(ペプチド結合フォスフォロジアミデート・モルフォリノ・オリゴマー)技術に基づく化合物の開発を中止すると発表した。低マグネシウム血症のリスクが見られたため。

    SRP-5051は、16年に米国でエクソン51スキップに応答するデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として承認されたExondys 51(eteplirsen)と同様な、エクソン51スキップ薬。PMOにペプチドを結合して組織浸透性を高め、効果や持続性を向上するPPMO技術のリード・コンパウンドだ。第2相試験でWestern blot法によるジストロフィン発現がExondys 51群より大きく増加し注目されたが、深刻な低マグネシウム血症が1名で発生、22年にFDAが治験停止を命じた。検査強化などを導入し再開が認められたが、一度発生すると投与を止めても持続することや、FDAが早期の加速承認申請に後ろ向きであることを考慮し、開発中止を決めた。

    リンク: 同社の24年第3四半期決算プレスリリース

    【承認申請】


    中国企業がEGFR阻害剤を承認申請
    (2024年11月8日発表)

    中国のDizal Pharmaceutical(SHEX:688192)は米国でDZD9008(sunvozertinib)をEGFRにエクソン20挿入変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌用薬として承認申請した。白金ベースの化学療法に不応/再発した患者が対象。今年のASCO(米抗臨床腫瘍学会)発表によると、中国や米国、日韓などで実施された第2相WU-KONG1B試験で、cORR(確認客観的反応率、独立評価委員会査読)が41%、完全反応率は3%だった。メジアン追跡期間が5.5ヶ月と短く、反応持続期間は未だメジアン値に達していない。治療時発現有害事象は下痢、ラッシュ、クレアチンフォスフォキナーゼ値上昇など。同適応症の第3相一次治療化学療法対照試験が進行中(日本の施設は参加していない)。

    DZD9008は選択的不可逆的EGFR阻害剤。上記試験では200mgもテストしたが、300mg一日一回が至適用量とのこと。中国では別の試験に基づき23年8月に同適応症で条件付き承認された。

    リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)


    JNJ、ダラキューロをくすぶり型多発性骨髄腫に適応拡大申請
    (2024年11月8日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗CD38抗体daratumumabの皮下注用製剤を欧米で高リスクくすぶり型多発性骨髄腫に適応拡大申請した。日本も参加した第3相AQUILA試験で成人患者390人を組入れてPFS(活性期多発性骨髄腫に進行又は死亡)を積極的監視療法と比較したところ、有意に上回った。先日公開された、12月のASH(米国臨床腫瘍学会)の抄録によると、ハザードレシオは0.49、メジアン値は未達(積極的監視群は41.5ヶ月)だった。5年生存率は93%(同86.9%)でハザードレシオ0.52(95%信頼区間0.27-0.98)と好ましい傾向が見られた。G3/4治療時発現有害事象の発生率は40.4%(同30.1%)、致死例の発生率は1.0%(同2.0%)だった。

    この皮下注用製剤の製品名は米国ではDarzalex Faspro、EUではDarzalex SC、日本ではダラキューロ。

    リンク: 同社のプレスリリース
    リンク: Dimopoulosらの抄録(ASH 2024、No. 773)


    HAEのアンチセンス薬を承認申請
    (2024年11月4日発表)

    Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は米国でdonidalorsenを承認申請し受理されたと発表した。12歳以上の小児成人の遺伝性血管浮腫(HAE)による発作を抑制する。審査期限は25年8月21日。

    HAE発作に関連するprekallikreinの遺伝子の翻訳・生成を妨げる、アンチセンス薬。80mgを8週または4週毎に皮下注した第3相試験で24週間のHAE発作頻度が夫々偽薬比55%と81%、低かった。

    欧州でもライセンシーの大塚製薬が24年内に承認申請する見込み。

    リンク: Ionisのプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    Merus、her2xher3二重特異性抗体の審査期間が延長
    (2024年11月5日発表)

    オランダ本社のMerus(Nasdaq:MRUS)は米国でMCLA-128(zenocutuzumab)をNRG1融合陽性の非小細胞性肺癌や膵管腺腫用薬として承認申請しているが、審査期限が来年2月4日に3ヶ月延期されたと発表した。CMC(化学、製造、管理)に関する追加情報を提出したことに伴うものとのことだが、詳細は不明。

    NRG1はher3のレガンドであるneuregulinの遺伝子で、上記癌の1%前後で癌原性遺伝子融合が見られる。MCLA-128はher2とher3を標的とする二重特異性抗体。neuregulinをブロックしてPI3K/AKT/mTOR経路の活性化を妨げる。22年のASCO(米国臨床腫瘍学会)発表によると、2週毎に750mgを2~4時間点滴静注した第1/2相eNRGy試験と日本を含む17ヶ国で実施した早期アクセスプログラムの合計でNRG1融合陽性非小細胞性肺癌は46人中16人(35%)、同膵管腺腫は19人中8人(42%)、がORR(客観的反応率、試験医評価)を達成した。至適用量を投与した208人におけるG3/4治療関連有害事象の発生率は5%、G5は一名(点滴関連反応)だった。23年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)発表によると、非小細胞性肺癌79人におけるORRは37.2%、メジアン反応持続期間は14.9ヶ月だった。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認】


    新規CAR-Tが承認
    (2024年11月8日発表)

    FDAは英国のAutolus Therapeutics(Nasdaq:AUTL)が申請したAucatzyl(obecabtagene autoleucel)を成人の難治/再発前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病用薬として承認した。CD19を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法で、CD19に結合した後の遊離が早いため副作用が起きにくいとされる。9日置いて二回に分けて投与する点もユニーク。FDAは6月にCAR-T各種製品のREMS(リスク評価緩和戦略)を簡素化したが、今回初めて、REMSを課さなかった。

    第2相FELIX試験で65人中42%が3ヶ月以内に完全寛解を達成した。メジアン完解持続期間は14.1ヶ月。他のCAR-Tと同様にCRS(サイトカイン放出症候群)やICANS(免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群)、そして二次性血液学的腫瘍のリスクが枠付き警告されているが、G3以上の発現率は、CRS(G3のみ)は3%と低く、神経学的毒性(G5あり)は12%だった

    リンク: FDAのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24/11推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
    24/11/13PTC TherapeuticsのUpstaza(eladocagene exuparvovec、AADC欠損症)
    24/11/28Applied TherapeuticsのAT-007(govorestat、ガラクトース血症)
    24/11/29BridgeBio Pharmaのacoramidis(ATTR心筋症)
    24/11/29Jazz PharmaceuticalsのZW25(zanidatamab、her2+胆道癌)
    24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群)
    24年12月推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)
    24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
    24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
    24/12/20第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、非扁平上皮非小細胞性肺癌)
    24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
    24/12/26Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病)
    24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
    24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
    24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
    24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
    24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)
    諮問委員会
    24/11/19DSRMAC/PDAC:非定型向精神薬clozapine(流通処方制限の緩和)
    24/11/21CTGTAC:アストラゼネカのAndexxa(遺伝子組換え不活化血液凝固Xa因子-zhzo)



    今週は以上です。

    2024年11月2日

    第1079回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • Sage、産後鬱病治療薬の販売を中止へ 
    • ノボ、セマグルチドの第3相MASH試験が成功 
    • 抗インターフェロン・ガンマのマクロファージ活性化症候群試験が成功 
    • ゾコーバの同居人感染予防試験が成功 
    • ケサンラの緩徐漸増法がARIA-Eを抑制 
    • エムパベリの適応拡大試験が成功 
    • ノバルティス、新規抗IgE抗体の開発を断念 
    • エーザイ、レケンビの維持療法用皮注用製剤を承認申請 
    • PTC、米国でナンセンスDMD用薬を承認申請 
    • ノバルティス、放射性医薬をプリキモに適応拡大申請 
    • 劣性栄養障害型表皮水疱症の遺伝子療法を再申請 
    • ファビハルタを日中欧でC3腎症に適応拡大申請 
    • テリックス、PET造影剤を承認申請 
    • FDA諮問委員会、sotagliflozinの適応拡大を支持せず 
    • アステラス、欧州で地図状萎縮用薬の申請を取り下げ 
    • ノバルティスのCML用薬が一次治療に加速承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    Sage、産後鬱病治療薬の販売を中止へ
    (2024年10月29日発表)

    Sage Therapeutics(Nasdaq:SAGE)は、19年に米国で産後鬱の治療薬として承認されたZulresso(brexanolone)の販売を、24年一杯で終了することを決定した。24年1-9月の売上高は300万ドル。連続点滴ではなく経口投与できるZurzuvae(zuranolone)が産後鬱だけに承認され市場が大きい鬱病全般には承認されなかったために、製品ラインアップの整理や全社的なリストラが必要になった。

    両製品はGABA A選択的ポジティブ・アロステリック・モジュレーター。Zulressoは60時間点滴静注、Zurzuvaeは一日一回、5日間、経口投与する。Zurzuvaeは鬱病試験も第3相が二勝一敗だったので承認されても不思議はなかったが、審査完了通知を受領した。治療効果が小さいと判定されたのではないかとの見方もあるようだ。日本ではZurzuvaeをライセンスした塩野義製薬が9月に日本で鬱病薬として承認申請した。

    リンク: Sageのプレスリリース

    【新薬開発】


    ノボ、セマグルチドの第3相MASH試験が成功
    (2024年11月1日発表)

    ノボ ノルディスクは皮下注用semaglutideの第3相MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)試験のパート1で共同主評価項目を達成したと発表した。25年上期に欧米で承認申請する考え。このESSENCE試験はステージ2または3の肝線維化を伴うMASH患者1200人を組入れて偽薬または2.4mgを週一回、皮下注し、病状進行を240週間追跡するもの。パート1は最初の800人を72週追跡し、肝線維症改善奏効率と脂肪肝炎解消奏効率を群間比較した。尚、肝線維症と脂肪肝炎のうち片方が改善してももう片方が悪化したら奏功とは判定されない。結果は、前者が各群22.5%と37.0%、後者は34.1%と62.9%で、何れも試験薬が有意に上回った。

    3月に米国でMASH治療薬として加速承認されたMadrigal Pharmaceuticals(Nasdaq:MDGL)の甲状腺ホルモン受容体ベータ・アゴニストRezdiffra(resmetirom)は、類似した第3相で、52週時点の前者の奏効率が23~28%(偽薬群は13~15%)、後者は24~36%(同9~13%)だった。幅があるのは評価者により多寡があるため。ノボの試験とは投与期間が異なり、奏効判定基準が同じとは限らないので、比較は難しい。尚、Rezdiffraは一日一回経口投与する。

    semaglutideはGLP-1作用剤。米国では二型糖尿病にWegovy名で、肥満症向けはOzempic名で、経口投与用製剤が二型糖尿病向けにRybelsus名で、承認されている。

    リンク: ノボのプレスリリース


    Sobi、マクロファージ活性化症候群試験が成功
    (2024年10月30日発表)

    Sobi(STO:SOBI)は、emapalumab-lzsgの第3相マクロファージ活性化症候群(MAS)試験が成功したことをACR(米国リウマチ学会)で発表した。24年内に米国で適応拡大申請する予定。

    スイスのNovimmuneを買収して入手したインターフェロン・ガンマを標的とする抗体医薬で、18年に米国でGamifant名でHLH(原発性血球貪食リンパ組織球症)の治療薬として承認された。難治再発性の、進行性で従来治療不耐な患者27人(メジアン年齢1歳)に投与した臨床試験で反応率が63%だった。

    今回の試験は全身性若年性特発性関節炎などのStill病患者におけるMASの治療効果をテストしたもの。MASは発熱、肝脾腫、肝機能不全、血球減少症などを伴う疾患で、二次性HLHと分類されている。二本の試験のプール分析を行ったところ、第8週の完全反応率が53.8%(n=39)、72%の患者はステロイドの用量を1mg/kg/日以下に減量することができた。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ゾコーバの同居人感染予防試験が成功
    (2024年10月29日発表)

    塩野義製薬は、日本などでCOVID-19治療薬として承認されているゾコーバ(Xocova、ensitrelvir)の第3相曝露後発症予防試験、SCORPIO-PEP)で主目的を達成したと発表した。米国や日本などで実施されたグローバル試験で、COVID-19発症後72時間以内の患者と同居する12歳以上の非感染者約2400人を偽薬群とensitrelvir群に無作為化割付けして5日間投与し、初回投与から10日間のCOVID-19発症リスクを比較したところ、後者が有意に下回った。データは学会などで発表する予定。

    SARS-CoV-2が変遷しCOVID-19感染症が以前ほど重体化しにくくなり感染後も自宅で過ごすケースが増えたので、感染者だけでなく家族などにも服用させて流行の広がりを抑えるのは意味がある。特に、例えば妊婦や呼吸器/心血管疾患のようなリスク因子を持つ人には選択肢の一つになるかもしれない。いずれにせよ、有用性は両群の発症率次第だろう。

    類薬ではファイザーのPaxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)は曝露後予防試験がフェールした。

    リンク: 同社のプレスリリース(和文)


    ケサンラの緩徐漸増法がARIA-Eを抑制
    (2024年10月29日発表)

    イーライリリーはCTAD(アルツハイマー病臨床試験)カンファレンスで7~9月に米日で早期アルツハイマー病用薬として承認された抗アミロイド・ベータ抗体Kisunla(donanemab-azbt)の用量緩徐漸増試験の結果を発表した。テストした3用法のうち一つでARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫)の発生を4割以上抑制することができた。一部変更申請に向かうのではないか。

    この後期第3相TRAILBLAZER-ALZ 6試験は、早期症候性アルツハイマー病の成人約840人を3種類の用量漸増群と承認されている用法群に無作為化割付けして、ARIA-Eの発生率などを24週に亘り観察した。承認用法群では24%と、承認の根拠となったTRAILBLAZER-ALZ 2試験の24%と同程度だったが、一番良かった群(以下、至適用法群)では14%に留まり、他の2群では18%強だった。ARIA-EのリスクはApoE4多型を持つ人で高く、二つの遺伝子とも該当するホモ接合型では特に高まるが、至適用法群のホモ接合型患者における発生率は19%と承認用法群の57%を大きく下回った(因みに承認申請用試験におけるホモ接合型の発生率は50%)。

    リスクが低下しても効果まで低下したら悩ましくなるが、至適用法群のアミロイド・プラク水準は67%低下し、承認用法群の69%低下と同程度だった。

    ARIA-Eは多くが無症状だが、学会発表に関する一部報道によると、症候性ARIA-Eも抑制された模様だ。一方、ARIA-H(アミロイド関連画像異常ー出血)は大差なかったようだ。

    至適用法群で、ARIA-E発生後に卒中様症状を示しtPA治療を受けた患者が1名、脳実質内出血により死亡した。至適用法の弱点というよりは、抗アミロイド・ベータ抗体のこれまでの臨床試験で稀に見られた現象がこの用法でも発生したということだろう。おそらく、実医療でも発生するだろうから、抗アミロイド・ベータ治療を受けていることを緊急搬送先の脳卒中救急医にどのように使えるか、考える必要があるだろう。

    リンク: 同社のプレスリリース


    エムパベリの適応拡大試験が成功
    (2024年10月26日発表)

    Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq: APLS)と開発販売パートナーのSwedish Orphan Biovitrum(Sobi)は、Empaveli(pegcetacoplan)の第3相VALIANT試験で主目的等を達成したと8月に公表したが、詳細をASN(米国腎臓学会)で発表した。

    12歳以上のC3G(C3腎症)またはIC-MPGN(免疫複合体膜性増殖性糸球体腎炎)の患者124人を組入れて、1080mgを週二回皮下注したところ、26週間で蛋白尿(尿蛋白クレアチニン比のlog変換値)が偽薬比68.1%低下した。C3GでもIC-MPGNでも、青年でも成人でも、腎移植を受けた患者でもそれ以外でも、低下が見られた。副次的評価項目だが最も重要な指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)でも群間差が+6.3mL/分/1.73m2となり、名目p=0.03だった。

    重度有害事象発現率は4.8%(偽薬群は6.6%)、有害事象による治験離脱は両群同程度だった。髄膜炎菌性髄膜炎や被包性細菌による深刻感染症は見られなかった。

    25年初めに米国で適応拡大申請する考え。欧州でもSobiが25年内に申請する考え。

    EmpaveliはC5補体阻害剤。発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬として21年に米欧で、23年には日本でも、承認された。硝子体注射用製剤のSyfovreも加齢性黄斑変性による地図状萎縮の治療薬として23年に米国で承認された。

    リンク: 両社のプレスリリース


    ノバルティス、新規抗IgE抗体の開発を断念
    (2024年10月29日発表)

    ノバルティスは、24年第3四半期決算発表の中で、第3相段階だったQGE031(ligelizumab)の開発を打ち切ることを明らかにした。同社がジェネンテックと共同開発し重度難治喘息症などの治療に用いられているXolair(omalizumab)と同様な、免疫グロブリンEを標的とする抗体医薬で、親和性がXolairの88倍高いことが注目された。しかし、第3相慢性特発性蕁麻疹試験で掻痒改善効果がXolairを有意に上回らず、今年1月に第3相ピーナツ・アレルギー試験も中止された。

    同社は同じく抗IgE抗体のtalizumabの開発も中止しており、ネクスト・ゾレアをなかなか見つけられずにいる。

    リンク: ノバルティスの24年第3四半期決算補足情報(p.16に記載あり)

    【承認申請】


    エーザイ、レケンビの維持療法用皮注用製剤を承認申請
    (2024年10月31日発表)

    エーザイはバイオジェンと共同開発販売している早期アルツハイマー病用薬Leqembi(lecanemab-irmb)の皮下注用新製剤を、点滴静注用製剤による導入療法を終えた患者の維持療法として米国で承認申請した。オートインジェクターで360mgを週一回、15秒かけて投与する。点滴静注用製剤は10mg/kgを2週毎に1時間かけて投与するのでだいぶ簡便になる。もしかしたら自己注も可能になるかもしれない。

    皮下注は720mg週一回が10mg/kg2週毎静注と生物学的に同等と言われていたが、申請された量は半分だ。そういえば3月に承認申請された静注用製剤の維持療法(月一回)も、用量やタイミングが良く分からない。

    リンク: バイオジェンのプレスリリース


    PTC、米国でナンセンスDMD用薬を承認申請
    (2024年10月30日発表)

    PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)は7月にTranslarna(ataluren)をナンセンス変異のあるデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として再承認申請したが、無事、受理された。初回の申請はfile over protest(受理されなかったことに異議を申し立てた上で承認申請)によるもので、案の定、審査完了通知を受領したが、このような場合の再申請はPDUFA(処方薬ユーザー・フィー法)の適応対象外であるようで、審査期限(PDUFA日)は設定されない由。

    数奇な経緯を持つ薬で、EUでは14年に条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験である041試験で臨床的便益が確認されなかったため、9年後にEMA(欧州薬品庁)が年次更新を打ち切るよう勧告した。PTCが新しいデータを提出したことや手続き上の問題があったことから欧州委員会に差し戻されたものの、CHMP(医薬品専門家委員会)が今年10月に四たび否定的意見をまとめた。

    米国は16年に承認申請を却下(refuse to file)したが、17年にfile over protestが認められ受理を余儀なくされた。9月に開催された諮問委員会では11人の委員中10人が薬効の確認が不十分と判定、10月に審査完了となった。ところが、今回はFDAが前向きで、再申請に至った。筋ジストロフィーのような希少疾患やアルツハイマー病のような難病における新薬承認のハードルを引き下げたからだろう。同社のプレスリリースによると、041試験で72週間治療したところ、6分歩行距離(p=0.0248)、NorthStar Ambulatory Assessment(p=0.0283)、10メートル歩行走行(p=0.0422)、4段昇段(p=0.0293)などの評価項目で偽薬比有意な差が見られたとのこと。当方の理解とはだいぶp値が異なっている。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ノバルティス、放射性医薬をプリキモに適応拡大申請
    (2024年10月29日発表)

    ノバルティスは、24年第3四半期決算の中で、米国でPluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)の適応拡大申請を行ったことを明らかにした。現在はアンドロゲン受容体回路阻害剤とタクサン・ベースの化学療法による治療歴を持つ患者が適応だが、未だ化学療法は受けていない段階(プリキモ)での使用を求めるもの。第3相PSMAfore試験でPFS(無進行生存期間、放射線学的評価)がメジアン12ヶ月と、前治療とは異なるアンドロゲン受容体回路阻害剤を投与した群の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.41だった。

    ドイツの癌研究所DKFZとハイデルベルグ大学病院が共同開発した、PSMAに結合するライガンドと放射線核種を結合した放射性医薬。ノバルティスはEndocyte社を約21億ドルで買収して入手、22年に米欧で販売承認を取得した。

    リンク: ノバルティスのプレスリリース


    劣性栄養障害型表皮水疱症の遺伝子療法を再申請
    (2024年10月29日発表)

    Abeona Therapeutics(Nasdaq:ABEO)はEB-101(prademagene zamikeracel)を劣性遺伝性栄養障害型表皮水疱症(RDEB)の治療法として米国で再承認申請した。23年に申請したが、製造法やバリデーションに関する挙証が不十分として今年4月に審査完了通知を受領していた。承認審査におけるCMC(化学、製造、管理)に関わる問題は第3者には見当がつかないので、結果を見守るしかない。

    RDEBは真皮と表皮をつなぐ係留線維の構成成分である7型コラーゲンの遺伝子、COL7A1に機能喪失変異があり、皮膚に水疱やびらんが生じやすく、感染症や扁平上皮腫のリスクがある。食道などに生じると摂食減少、栄養障害を合併することがある。米国の推定患者数は3000人。EB-101は患者のケラチノサイトや前駆細胞にex vivoでCOL7A1遺伝子を導入、シート化して焼灼した病変床に縫合固定化するもの。第3相では治癒率や疼痛緩和が治療しなかった病変を大きく上回った。臨床試験ではインディアナ大学製と同社製の二種類のバッチを用いたため、同等性の確認を求められ承認申請が遅延した経緯がある。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ファビハルタを日中欧でC3腎症に適応拡大申請
    (2024年10月27日発表)

    ノバルティスは、ASN(米国腎臓学会)における学会発表に合わせて、Fabhalta(iptacopan)をC3G(C3腎症)の治療に用いる適応拡大申請を日本、中国、欧州で行い、米国でも年内に予定していることを公表した。

    23~24年に夜間ヘモグロビン血症治療薬として米欧日で承認された経口可逆的B因子阻害剤。適応拡大申請のエビデンスとなる第3相APPEAR-C3G試験で成人のC3腎症患者に200mgを一日二回、経口投与したところ、24時間尿蛋白クレアチニン比が6ヶ月で偽薬比35.1%低下した。副次的評価項目だが最も重要なeGFR(推算糸球体濾過率)は偽薬比2.2mL/分/1.73m2改善したが検出力不足だったのかp=0.19だった、

    リンク: 同社のプレスリリース


    テリックス、PET造影剤を承認申請
    (2024年10月24日発表)

    Telix Pharmaceuticals(ASX:TLX)は米国でPixclara(18F-floretyrosine)を神経膠腫のPET(陽電子放出断層撮影)造影剤として承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は来年4月26日。この種の造影剤がこの適応で承認されれば初。

    リンク: 同社のプレスリリース


    筋層非浸潤膀胱癌用薬を承認申請
    (2024年10月15日発表)

    UroGen Pharma(Nasdaq:URGN)は米国でUGN-102(mitomycin 0.18%)を低グレード中等リスクの筋層非浸潤膀胱癌用薬として承認申請し受理された。審査期限は来年6月13日。術後アジュバントなどに用いられているmitomycinの新製剤で、カテーテルなどで膀胱内に注入すると体内でゲル化し薬剤を長期にわたり放出する。第3相でDFS(無病生存期間)を第一選択の治療法であるTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)と比較したところ、UGN-102群(一回投与、TURBT併用可)のハザードレシオは0.45(95%信頼区間0.29-0.68)だった。UGN-102だけを施行した患者の第3月完全反応率は64.8%、TURBT群は63.6%だった。深刻有害事象の発現率は7.9%、治療時発現有害事象による死亡が2名(8%)発生した。

    同社は類似した製品であるJulmyto(mitomycin 0.4%)が20年に米国で成人の低グレード上部尿路上皮癌用薬として承認された。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    FDA諮問委員会、sotagliflozinの適応拡大を支持せず
    (2024年11月1日発表)

    FDAは10月31日にEMDAC(内分泌学代謝薬諮問委員会)を招集し、Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)が慢性腎疾患を伴う一型糖尿病の血糖治療薬として承認申請したZynquista(sotagliflozin)について意見を聞いた。便益が棄権を上回るか、という質問に3人がYES、11人がNOと回答した。審査期限は12月20日。

    このSGLT1/2阻害剤はInpefaというブランド名で、23年に米国で慢性心不全や心血管リスク因子を持つ二型糖尿病や慢性腎疾患などの心不全リスクを抑制する適応・効能で承認された。一型糖尿病用途は18年に当時のライセンシーのサノフィが欧米で承認申請したが、米国では承認されず、EUでは19年に承認されたが22年に申請取り下げとなった。

    ボトルネックとなったのは糖尿病ケトアシドーシスのリスク。二型糖尿病でも起こりうるが、一型では発生率が上がる。第3相試験ではnumber needed to halmが26だった(26人に投与すると一人が発症する)。今回の申請では適応を慢性腎疾患を伴う患者に限定したが、第3相ではeGFRが45~60mLの患者47人中3人と偽薬群の42人中ゼロを上回っており、糖尿病性ケトアシドーシスの懸念は払拭されていない。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アステラス、欧州で地図状萎縮用薬の申請を取り下げ
    (2024年10月28日発表)

    アステラス製薬はavacincaptad pegolをEUでも承認申請していたが、取り下げた。詳細は不明だが、Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)の類薬であるSyfovre(pegcetacoplan)もEUでは承認されなかった。CHMP(医薬品専門家委員会)が11月の会議後に取下げ時点における評価を公表するだろう。

    Iveric Bioを59億ドルで買収して入手した硝子体注射用C5阻害剤。米国で23年8月に加齢性黄斑変性による地図状萎縮の治療薬として承認された。

    Syfovreも米国では23年2月に同適応症で承認されたが、EUはCHMPが否定的意見をまとめ、Apellisが再審請求中。CHMPは、病変の拡大を抑制したが臨床的に意味のある便益は見られず、日常生活機能も改善しなかったことや、他の種類の加齢性黄斑変性を誘発するリスクが危惧されることなどを指摘している。

    リンク: アステラスのプレスリリース(和文)


    【承認】


    ノバルティスのCML用薬が一次治療に加速承認
    (2024年10月29日発表)

    FDAはノバルティスのScemblix(asciminib)を慢性期フィラデルフィア陽性慢性骨髄性白血病(Ph+CML-CP)の新患成人に用いる適応拡大を加速承認した。21~22年に米日欧で2種類以上のチロシン・キナーゼ阻害剤歴を持つPh+CML-CPなどに承認されたが、一次治療承認で対象患者数が6~7倍に増加する。尤も、競合も多く、同社自身が開発したimatinibも発売後23年経った今でも人気があるようだ。

    第3相ASC4FIRST試験で48週MMR(分子遺伝学的第奏効)率が67.7%と、標準療法群(imatinib、nilotinib、dasatinib、bosutinibの中から医師が選ぶ)の49.0%を大きく上回り、imatinibだけとの比較でも69%対40%と上回った。G3以上の有害事象や有害事象治験離脱は少なかった。

    リンク: FDAのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



    PDUFA
    24/11推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
    24/11/13PTC TherapeuticsのUpstaza(eladocagene exuparvovec、AADC欠損症)
    24/11/16Autolus TherapeuticsのAUTO1(obecabtagene autoleucel、急性リンパ芽球性白血病)
    24/11/28Applied TherapeuticsのAT-007(govorestat、ガラクトース血症)
    24/11/29BridgeBio Pharmaのacoramidis(ATTR心筋症)
    24/11/29Jazz PharmaceuticalsのZW25(zanidatamab、her2+胆道癌)
    24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群)
    24年12月推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)
    24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
    24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
    24/12/20第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、非扁平上皮非小細胞性肺癌)
    24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
    24/12/26Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病)
    24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
    24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
    24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
    24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
    24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)
    諮問委員会
    24/11/19DSRMAC/PDAC:非定型向精神薬clozapine(流通処方制限の緩和)
    24/11/21CTGTAC:アストラゼネカのAndexxa(遺伝子組換え不活化血液凝固Xa因子-zhzo)



    今週は以上です。