【ニュース・ヘッドライン】
- FDA、経口フェニレフリンをOTC薬から除外へ
- テゼスパイアの副鼻腔炎試験が成功
- Intra-Cellular Therapies、ポスト・マーケティング試験が成功
- ASH:新規CAR-Tの承認申請用多発骨髄腫試験が良好に推移
- ASH:BTK阻害剤のITP試験が成功
- サレプタ、ペプチド結合DMD薬の開発を中止
- 中国企業がEGFR阻害剤を承認申請
- JNJ、ダラキューロをくすぶり型多発性骨髄腫に適応拡大申請
- HAEのアンチセンス薬を承認申請
- Merus、her2xher3二重特異性抗体の審査期間が延長
- 新規CAR-Tが承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
FDA、経口フェニレフリンをOTC薬から除外へ
(2024年11月7日発表)
FDAは、フェニレフリン塩酸塩とフェニレフリン酒石酸塩を経口OTC薬の配合成分として認めない旨の法令案(proposed order)を連邦官報で公開した。パブコメは25年5月7日まで。その後、最終決定することになりそうだ。
鬱血除去剤は風邪薬やアレルギー用薬の配合成分として広く用いられているが、あまり良い記憶がない。PPA(phenylpropanolamine)は脳卒中のリスクが高まることが判明、pseudoephedrineに切り替えが進んだが、2003年頃から不適切使用が問題になり、処方は不要だが薬剤師の説明を受けた上で所定の数量だけ購入できるbehind-the-counter薬化された。代わりにover-the-counter薬の主役に立ったのがphenylephrineで、22年の販売量は2.4億箱/ボトルとpseudoephedrineの5倍近くに達している。
ところが、07年以降に実施された季節性アレルギー鼻炎などの症状改善試験が三本ともフェールした。経口投与時の生物学的利用率が従来言われていた38%と全く異なる1%足らずであることが判明し、10~40mgを4時間毎経口投与するだけでは足りないことが原因と考えられている。FDAは23年9月に諮問委員会を招集し意見を求めたが、全員が薬効なしと判定した。用量を増やして再試験するのは、副作用が増える可能性があることや、代替品もあることから、すべての委員が反対した。
総合感冒薬は他の活性成分を配合するか、鬱血除去剤は配合しないかの選択になる。点鼻用のphenylephrineは、従来通り、販売可能。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: FDAの法令案
【新薬開発】
テゼスパイアの副鼻腔炎試験が成功
(2024年11月8日発表)
アストラゼネカとアムジェンは、夫々、Tezspire(tezepelumab-ekko)が第3相CRSwNP(鼻ぽりーぶを伴う慢性副鼻腔炎)試験で主目的を達成したと発表した。データは学会などで発表する。適応拡大申請も行うだろう。
TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)に結合する抗体で、21~22年に米欧日で管理不良重症喘息症用薬として承認された。今回のWAYPOINT試験は成人の点鼻ステロイド不応重度CRSwNPを対象に、ポリープのサイズや鼻詰まりを改善する効果を検討した。
難治CRSwNPではRegeneron Pharmaceuticalsの抗IL-4Rサブユニット抗体Dupixent(dupilumab)が19~20年に、GSKの抗IL-5抗体Nucala(mepolizumab)が21~24年に、夫々、米欧日で承認されており、どれを最初に使うべきか、悩ましくなってきた。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
Intra-Cellular Therapies、ポスト・マーケティング試験が成功
(2024年11月5日発表)
Intra-Cellular Therapies(Nasdaq:ITCI)はCaplyta(lumateperone)の第3相維持療法試験(304試験)で主目的を達成したと発表した。19年に米国で成人の統合失調症治療薬として承認された時にコミットした試験で、Caplytaによる治療に応答した228人を偽薬スイッチ群と継続投与群に無作為化割付けして症状再発リスクを26週間に亘り比較したもの。結果は、ハザードレシオが0.37、各群の再発リスクは38.6%と16.4%となり、長期継続投与の有効性が示された。
Caplytaは5-HT2A受容体とドパミンD2受容体のアンタゴニスト。承認のエビデンスは第3相二本のうち一本と後期第2相。双極性障害に伴う鬱病を治療した第3相も二勝一敗となり21年に米国で承認された。鬱病試験は二本とも成功し、適応拡大申請の予定。
リンク: 同社のプレスリリース
ASH:新規CAR-Tの承認申請用多発骨髄腫試験が良好に推移
(2024年11月5日発表)
米国カリフォルニア州の医薬品開発会社、Arcellx(Nasdaq:ACLX)は、12月に開催されるASH(米国血液学会)の抄録が公開されたのを受けて、CART-ddBCMA(anitocabtagene autoleucel)の承認申請用第2相iMMagine-1試験の途中経過を公表した。
CART-ddBCMAはBCMAを標的とするキメラ抗原受容体-T細胞療法で、短鎖可変領域抗体フラグメントに代えて免疫原性が低く安定的な合成タンパク、Dドメインを、4-1BB、CD3ゼータと共にT細胞に導入している。
当試験は異なった作用機序を持つ3種類以上の医薬品による治療歴を持つ患者110人を組入れる計画だが、今回は58人のデータ。ORR(全般的反応率、独立評価委員会方式)は95%、CR/sCR(完全反応/厳格完全反応)は62%で、先行類薬と見比べても良好だ。G3/4サイトカイン放出症候群(CRS)は発生せず、G3のICANSの発生率も2%に留まった。但し、有害事象による死亡が3人あり、原因は後腹膜出血、CRS、真菌感染症となっており、一部は試験薬関連とのこと。CRSはG3/4はなかったがG5があったということなのだろうか?
同社はギリアド・サイエンシズの子会社のKite Pharmaと共同開発商業化提携を結んでおり、米国では共同販売、米国外はKiteが販売する計画。
リンク: Arcellxのプレスリリース
リンク: Freemanらの抄録(ASH 2024、No. 1031)
ASH:BTK阻害剤のITP試験が成功
(2024年11月5日公開)
サノフィは4月にSAR444671(rilzabrutinib)の第3相免疫性血小板減少症(ITP)試験が成功し今年下期に欧米で承認申請する計画であることを明らかにしたが、ASH(米国血液学会)の抄録が公表され、概要が明らかになった。このLUNA3試験はメジアン4治療歴を持ち既存治療不応の慢性ITP患者に偽薬または400mgを一日二回経口投与し、持続的血小板反応(24週の治療期間の後半12週中8週以上で血小板数が50000/マイクロリットル以上)を比較した。偽薬群はゼロだったが試験薬群は23%が達成した。試験薬群はレスキュー治療や出血のリスクが低下し、身体疲労も改善した。12月8日にPlenary Scientific Sessionで詳細発表される予定。
SAR444671は20年にPrincipia Biopharmaを37億ドルで買収して入手した、高度選択的、可逆的、共有結合性のBTK阻害剤。天疱瘡の第3相はフェールした。喘息症でも第3相に進む予定。
リンク: Kuterらの抄録(ASH 2024、No. 5)
サレプタ、ペプチド結合DMD薬の開発を中止
(2024年11月6日発表)
Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)は、24年第3四半期決算発表に合わせて、SRP-5051(vesleteplirsen)をはじめとするPPMO(ペプチド結合フォスフォロジアミデート・モルフォリノ・オリゴマー)技術に基づく化合物の開発を中止すると発表した。低マグネシウム血症のリスクが見られたため。
SRP-5051は、16年に米国でエクソン51スキップに応答するデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として承認されたExondys 51(eteplirsen)と同様な、エクソン51スキップ薬。PMOにペプチドを結合して組織浸透性を高め、効果や持続性を向上するPPMO技術のリード・コンパウンドだ。第2相試験でWestern blot法によるジストロフィン発現がExondys 51群より大きく増加し注目されたが、深刻な低マグネシウム血症が1名で発生、22年にFDAが治験停止を命じた。検査強化などを導入し再開が認められたが、一度発生すると投与を止めても持続することや、FDAが早期の加速承認申請に後ろ向きであることを考慮し、開発中止を決めた。
リンク: 同社の24年第3四半期決算プレスリリース
【承認申請】
中国企業がEGFR阻害剤を承認申請
(2024年11月8日発表)
中国のDizal Pharmaceutical(SHEX:688192)は米国でDZD9008(sunvozertinib)をEGFRにエクソン20挿入変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌用薬として承認申請した。白金ベースの化学療法に不応/再発した患者が対象。今年のASCO(米抗臨床腫瘍学会)発表によると、中国や米国、日韓などで実施された第2相WU-KONG1B試験で、cORR(確認客観的反応率、独立評価委員会査読)が41%、完全反応率は3%だった。メジアン追跡期間が5.5ヶ月と短く、反応持続期間は未だメジアン値に達していない。治療時発現有害事象は下痢、ラッシュ、クレアチンフォスフォキナーゼ値上昇など。同適応症の第3相一次治療化学療法対照試験が進行中(日本の施設は参加していない)。
DZD9008は選択的不可逆的EGFR阻害剤。上記試験では200mgもテストしたが、300mg一日一回が至適用量とのこと。中国では別の試験に基づき23年8月に同適応症で条件付き承認された。
リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)
JNJ、ダラキューロをくすぶり型多発性骨髄腫に適応拡大申請
(2024年11月8日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗CD38抗体daratumumabの皮下注用製剤を欧米で高リスクくすぶり型多発性骨髄腫に適応拡大申請した。日本も参加した第3相AQUILA試験で成人患者390人を組入れてPFS(活性期多発性骨髄腫に進行又は死亡)を積極的監視療法と比較したところ、有意に上回った。先日公開された、12月のASH(米国臨床腫瘍学会)の抄録によると、ハザードレシオは0.49、メジアン値は未達(積極的監視群は41.5ヶ月)だった。5年生存率は93%(同86.9%)でハザードレシオ0.52(95%信頼区間0.27-0.98)と好ましい傾向が見られた。G3/4治療時発現有害事象の発生率は40.4%(同30.1%)、致死例の発生率は1.0%(同2.0%)だった。
この皮下注用製剤の製品名は米国ではDarzalex Faspro、EUではDarzalex SC、日本ではダラキューロ。
リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Dimopoulosらの抄録(ASH 2024、No. 773)
HAEのアンチセンス薬を承認申請
(2024年11月4日発表)
Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は米国でdonidalorsenを承認申請し受理されたと発表した。12歳以上の小児成人の遺伝性血管浮腫(HAE)による発作を抑制する。審査期限は25年8月21日。
HAE発作に関連するprekallikreinの遺伝子の翻訳・生成を妨げる、アンチセンス薬。80mgを8週または4週毎に皮下注した第3相試験で24週間のHAE発作頻度が夫々偽薬比55%と81%、低かった。
欧州でもライセンシーの大塚製薬が24年内に承認申請する見込み。
リンク: Ionisのプレスリリース
【承認審査・委員会】
Merus、her2xher3二重特異性抗体の審査期間が延長
(2024年11月5日発表)
オランダ本社のMerus(Nasdaq:MRUS)は米国でMCLA-128(zenocutuzumab)をNRG1融合陽性の非小細胞性肺癌や膵管腺腫用薬として承認申請しているが、審査期限が来年2月4日に3ヶ月延期されたと発表した。CMC(化学、製造、管理)に関する追加情報を提出したことに伴うものとのことだが、詳細は不明。
NRG1はher3のレガンドであるneuregulinの遺伝子で、上記癌の1%前後で癌原性遺伝子融合が見られる。MCLA-128はher2とher3を標的とする二重特異性抗体。neuregulinをブロックしてPI3K/AKT/mTOR経路の活性化を妨げる。22年のASCO(米国臨床腫瘍学会)発表によると、2週毎に750mgを2~4時間点滴静注した第1/2相eNRGy試験と日本を含む17ヶ国で実施した早期アクセスプログラムの合計でNRG1融合陽性非小細胞性肺癌は46人中16人(35%)、同膵管腺腫は19人中8人(42%)、がORR(客観的反応率、試験医評価)を達成した。至適用量を投与した208人におけるG3/4治療関連有害事象の発生率は5%、G5は一名(点滴関連反応)だった。23年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)発表によると、非小細胞性肺癌79人におけるORRは37.2%、メジアン反応持続期間は14.9ヶ月だった。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
新規CAR-Tが承認
(2024年11月8日発表)
FDAは英国のAutolus Therapeutics(Nasdaq:AUTL)が申請したAucatzyl(obecabtagene autoleucel)を成人の難治/再発前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病用薬として承認した。CD19を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法で、CD19に結合した後の遊離が早いため副作用が起きにくいとされる。9日置いて二回に分けて投与する点もユニーク。FDAは6月にCAR-T各種製品のREMS(リスク評価緩和戦略)を簡素化したが、今回初めて、REMSを課さなかった。
第2相FELIX試験で65人中42%が3ヶ月以内に完全寛解を達成した。メジアン完解持続期間は14.1ヶ月。他のCAR-Tと同様にCRS(サイトカイン放出症候群)やICANS(免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群)、そして二次性血液学的腫瘍のリスクが枠付き警告されているが、G3以上の発現率は、CRS(G3のみ)は3%と低く、神経学的毒性(G5あり)は12%だった
リンク: FDAのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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24/11推 | 住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱) |
24/11/13 | PTC TherapeuticsのUpstaza(eladocagene exuparvovec、AADC欠損症) |
24/11/28 | Applied TherapeuticsのAT-007(govorestat、ガラクトース血症) |
24/11/29 | BridgeBio Pharmaのacoramidis(ATTR心筋症) |
24/11/29 | Jazz PharmaceuticalsのZW25(zanidatamab、her2+胆道癌) |
24年12月推 | Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群)・・・SR想定 |
24年12月推 | アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)・・・『4Q』 |
24年12月推 | ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎) |
24年12月 | BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加) |
24/12/20 | 第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、非扁平上皮非小細胞性肺癌) |
24/12/20 | Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病) |
24/12/26 | Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病)←3か月延期 |
24/12/27 | Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群) |
24/12/28 | XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌) |
24/12/29 | BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤・・・当初は25/2/28だった |
24/12/29 | Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成) |
24/12/30 | Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液) |
諮問委員会 | |
24/11/19 | DSRMAC/PDAC:非定型向精神薬clozapine(流通処方制限の緩和) |
24/11/21 | CTGTAC:アストラゼネカのAndexxa(遺伝子組換え不活化血液凝固Xa因子-zhzo) |
今週は以上です。