2022年11月12日

第1076回

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • anakinraが高リスク患者にEUA 
  • EUでサノフィの昆虫細胞培養型ワクチンが承認 
  • FDA諮問委員会、VERU-111の効果や安全性に懐疑的 
  • その他の領域: 
  • オニバイドの一次治療試験が成功 
  • AHA:ET阻害剤の降圧効果が明らかに 
  • AHA:エパデールの心血管アウトカム試験がフェール 
  • GSK、抗体薬物複合体の市販後薬効確認試験がフェール 
  • ALSの細胞療法を承認申請したが受理されず 
  • FDA諮問委員会、SABA・ICS合剤の成人適応を支持 
  • ゼジューラの適応範囲がまた縮小 
  • CHMP、抗癌剤などの適応拡大を支持 
  • PD-L1・CTLA4阻害レジメンが肺癌に適応拡大 
  • リジェネロンの抗PD-1抗体も肺癌一次治療CT併用が承認 
  • アドセトリスが2歳以上の青少年にも承認 
  • CHMP、JAK阻害剤の適応縮小を了承


【COVID-19関連】


anakinraが高リスク患者にEUA
(2022年11月8日発表)

FDAはSwedish Orphan Biovitrum(Sobi)のKineret(anakinra)を成人のCOVID-19肺炎の治療に用いることをEUA(非常時使用認可)した。酸素投与を受けていて、重度呼吸不全のリスクがあり、血漿可溶性ウロキナーゼ・プラスミノーゲン・アクティベータ受容体が亢進していそうな(likely to have an elevated suPAR)入院患者に、100mgを一日一回、10日間皮下注する(重度腎不全は一日おき5回に減量することを検討する)。

元々はアムジェンが抗リウマチ薬として実用化した遺伝子組換え型ヒト・インターロイキン-1受容体アンタゴニスト。今回のエビデンスはギリシャとイタリアの医療施設で実施された第3相無作為化割付二重盲検偽薬対照試験、SAVE-MORE。第28日のWHO臨床症状評価序数の調整偽薬比オッズ比が0.36、治癒退院オッズ比も0.36、重度呼吸不全/死亡のオッズ比0.46となり、主評価項目でも副次的評価項目でも有意だった。

リンク: FDAのプレスリリース


EUでサノフィの昆虫細胞培養型ワクチンが承認
(2022年11月10日発表)

サノフィがGSKと共同開発したCOVID-19ワクチン、VidPrevtyn BetaがEUで成人の追加免疫用に承認された(条件付き承認ではない)。ベータ株のスパイク蛋白遺伝子をバキュロウイルス・ベクターでヨトウガ由来の細胞に導入し量産した抗原に、GSKのAS03パンデミック・アジュバントを添加したもので、活性成分5mcgを一回筋注する。

免疫ブリッジング試験でオミクロンBA.1株に対する中和抗体量(GMT)がComirnatyの2.5倍、D614G変異株(欧米における野生株)に対しては1.4倍だった。

Comirnatyの二価ワクチンと比べてどうなのかは不明。

リンク: サノフィのプレスリリース
リンク: EUのプレスリリース


FDA諮問委員会、VERU-111の効果や安全性に懐疑的
(2022年11月9日発表)

FDAは肺アレルギー性疾患諮問委員会を招集し、Veru(Nasdaq:VERU)のVERU-111(sabizabulin)について意見を聞いた。5人の委員が便益が危険を上回ると判定したが、8人は否と回答した。FDAは肯定的である模様なので、この程度の差ならEUAされる可能性がありそうだ。

VERU-111は微小管阻害剤で、乳癌などがリード・インディケーションだった。作用機序は明確ではないが、同社は、インフルエンザ・ウイルスに関する試験論文に基づき、微小管はウイルスの細胞内移動にも関与すると主張している。

COVID-19のエビデンスは米州やブルガリアで中等症・重症で入院し急性呼吸逼迫症候群や死亡のリスクが高い204人を組入れた臨床試験。150人の中間解析で、9mgを一日一回、経口投与した群の60日死亡率が20%と、偽薬群の45%を大きく下回った。全てのサブグループ分析で試験薬のほうが良好だった。

否定的に判断した委員は、症例数が少なく、同時使用薬に群間の偏りがあり、安全性のデータベースが充実していないこと、そして作用機序が明確でないことなどを指摘した。

米国外では英国やオーストラリアで承認審査中。EUもドイツの要請に基づき承認申請前審査に着手した。

リンク: Veruのプレスリリース

【新薬開発】


オニバイドの一次治療試験が成功
(2022年11月9日発表)

イプセン(Euronext:IPN)は、Onivyde(irinotecan)の第3相膵癌一次治療試験が成功したと発表した。米国で適応拡大申請する予定。

トポイソメラーゼ阻害剤イリノテカンのPEG化ナノパーティクル・リポソーム製剤で、転移性膵癌の二次治療に5-FU/LVと併用することが米欧日で承認されている。今回のNAPOLI 3試験は未治療の転移膵管腺腫(mPDAC)を5-FU/LV及びoxaliplatinと併用するNalirifoxレジメンと、標準療法であるgemcitabineとnab-paclitaxelの併用レジメンに無作為化割付して全生存期間を比較したところ、臨床的にも意味のある差が見られた。

17年にMerrimack Pharmaceuticals(Nasdaq:MACK)から事業資産を取得したもの。欧州などの権利は14年にBaxter International(後にシャイア、そして武田薬品が買収)がMerrimackから取得したが、その後、どうなったのだろうか?

リンク: イプセンのプレスリリース


AHA:ET阻害剤の降圧効果が明らかに
(2022年11月7日発表)

イドルシアがジョンソン・エンド・ジョンソンと共同開発しているデュアル・エンドテリン受容体アンタゴニスト、aprocitentanの第3相難治高血圧症試験の結果がAHA(米国心臓協会)科学部会とLancet誌で発表された。治療効果が初めて明らかになったが、こんなものかという印象だ。

この試験は、事前に1971人にamlodipine、valsartan、hydrochlorothiazideの3剤合剤を4週間投与して、最大血圧が140 mmHg未満に下がらない抵抗性高血圧患者730人をスクリーニングした。パート1では偽薬、12.5mg、または25mgを4週間、追加投与して、血圧低下を比較した。次に、パート2で全員に25mgを32週間投与。最後に、パート3として、被験者を偽薬と25mgに再無作為化割付して血圧のリバウンド具合を比較した。

パート1では3群の最大血圧低下が11.5mm Hg、15.3mm Hg、15.2mm Hgとなり、2用量とも偽薬比有意な差があった。治療時発現有害事象が各群19%、28%、37%の患者で見られ、有害事象による治験離脱も0.8%、2.5%、2.0%で発生した。特徴的なのは浮腫/体液貯留。

FDAは、血圧というサロゲート・マーカーに基づいて降圧剤を承認する方針を決定する前に、諮問委員会で低下幅の閾値について意見を求めたが、回答は5mm Hgだった。4mm Hg足らずというのはがっかりだが、今回は4剤目の追加なので限界収穫逓減の法則を考慮する必要があるだろう。また、偽薬群がこんなに低下したのはレスキュー・メディスンの影響なのではないかとも思われる。他人ごとでなくなってきたので、知っている人がいたら教えてください。

リンク: JNJのプレスリリース


AHA:エパデールの心血管アウトカム試験がフェール
(2022年11月6日発表)

持田製薬の高純度EPA製剤、エパデール(イコサペント酸エチル)は、日本で実施された高脂血症治療試験、JELISが成功。トリグリセライド値が有意に低下しただけでなく、冠動脈疾患の初発・再発予防にも有効性を示した。しかし、今回、日本で実施された二次予防試験がフェールしたことがAHAで発表された。

多価不飽和脂肪酸は魚に多く含まれるEPAと肉に多く含まれるアラキド酸(AA)があるが、この血中比率が低い(肉と比べて魚の摂取が比較的少ない)人は冠動脈疾患のリスクが高いかもしれない。今回のRESPECT-EPA試験は、スタチンによる治療を受けている冠動脈疾患患者のうちEPA/AA比率0.4未満の2506人をエパデールの標準用量である1800mg/日を投与する群と対照群に無作為化割付してMACE(主要有害心血管事象)リスクを比較した。

6年追跡したところ、各群の発生率は10.9%と14.9%、ハザードレシオは0.785と数値上は良かったが、p=0.0547と有意水準には届かなかった。発生率が解析計画の前提より低かったことなどにより検出力が低下したことが響いたようだ。JELIS試験の二次予防サブグループ群のハザードレシオは0.77なので、点推定値は大差ない。

この試験が残念なのは、まず、偽薬対照試験ではないこと。イベント数や群間差が最も大きかった冠再建術は必ずしも客観的とは言えない指標だ。また、追跡期間が長いせいか、試験薬群の早期中止が解析対象1225人中398人、プロトコル違反が225人と多い。偽薬の制約が無い対照群は各267人と61人でやや少ない。2年追跡時点や4年追跡時点では群間差が殆どなく、4年時点のnumber at riskが各群793人と909人と減少していることと重ね合わせると、残存者バイアスの影響も考えられるのではないか。

リンク: 発表内容概要(ACCによる)


GSK、抗体薬物複合体の市販後薬効確認試験がフェール
(2022年11月7日発表)

GSKは、Blenrep(belantamab mafodotin-blmf)の第3相DREAMM-3試験がフェールしたことを明らかにした。3次以降の治療を受ける難治再発多発骨髄腫をBlenrep群と標準療法であるpomalidomideとdexamethasoneの併用群に無作為化割付してPFS(無進行生存期間)を非盲検下で比較したところ、メジアン値は11.2ヶ月対7ヶ月と上回ったものの、ハザードレシオは1.03で有意に上回らなかった。全生存期間の解析は未だ十分な数の被験者が死亡していないため未成熟だが、各21.2ヶ月、21.1ヶ月、1.14となっている。

Blenrepは協和キリンの子会社であるBioWaが創製した抗BCMA抗体と細胞毒をSeagenからライセンスしたリンカーで結合したもの。20年に欧米で難治再発多発骨髄腫の5次治療薬として承認された。米国は加速承認、EUは条件付き承認なので、今回の試験で薬効を確認する必要があった。

同社は一次治療や二次治療における三剤併用の第3相も実施しており、23年に結果が出る見込みなので、それまで承認の見直しを猶予してもらえる可能性もあるのではないか。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認審査・委員会】


ALSの細胞療法を承認申請したが受理されず
(2022年11月10日発表)

BrainStorm Cell Therapeutics(Nasdaq:BCLI)はNurOwnを全身性側索硬化症(ALS)の治療薬としてFDAに承認申請したが、受理されなかった。事前の会合でエビデンス不足を指摘されていたのでサプライズはない。

骨髄由来間葉系幹細胞を体外で神経栄養因子を多く分泌するよう処理した上で培養した細胞療法。第3相試験ではランイン期間中に急速進行性患者189人をスクリーニングし、偽薬または試験薬を8週毎に3回、髄腔内注射し、その後28週間の病状変化をALSFRS-Rスコアで評価した。主評価項目は奏効率(月平均で1.25点以上改善したら奏効とした)。偽薬群は27.%、試験薬は34.7%で数値上上回ったが仮説ほどの差はなく、p=0.453とフェールした。副次的評価項目であるALSFRS-Rの変化も、各▲5.88と▲5.52で悪化が小さかったが有意ではなかった。

後に、副次的評価項目の解析にプロトコル違反があったことが判明。病状が進行した患者を除外するとp=0.050であることを発表した上で、承認申請を断行した。

一方、FDAは、上記奏効率は偽薬群が27.7%、試験薬群は32.6%で差が小さく、試験薬群は死亡者が若干多いなど懸念すべき点もあるという極めて異例なプレスリリースを3月に出し、会社側の主張が独り歩きしないよう患者や支援団体、医療従事者に注意を促した。

リンク: 同社のプレスリリース


FDA諮問委員会、SABA・ICS合剤の成人適応を支持
(2022年11月9日発表)

FDAは肺アレルギー疾患用薬諮問委員会を招集し、アストラゼネカが喘息症の増悪発作治療薬として承認申請したPT027(albuterol、budesonide)について、意見を聞いた。40~50年前に承認された短期作用性ベータ2作用剤とステロイドの合剤で、新味はないが、第3相中重度喘息試験(MANDALA)で増悪時だけ用いても再増悪リスクを抑制できることを立証したのが画期的。軽中度喘息症のコントローラーとして一日4回吸入する試験も実施されたが、レスキュー用途が主眼のようだ。

諮問委員会の評決は、成人に関しては16対1で圧倒的多数が賛成、12-18歳は8対9で意見が分かれ、4-11歳は1-16で反対が圧倒的だった。MANDALA試験は3132人を180/160mcg群、180/80mcg群、そしてalbuterol 180mcg群の三群に無作為化割付したが、12-17歳の組入れは100人、4-11歳(高量群の割付なし)は83人と少数で、ハザードレシオの点推定値も良好なものではなかったことが影響した模様だ。

リンク: 同社のプレスリリース


ゼジューラの適応範囲がまた縮小
(2022年11月11日発表)

GSKはPARP阻害剤Zejula(niraparib)の米国における適応を変更したと発表した。難治卵巣癌で白金薬レジメンに反応した患者の維持療法に関しては、BRCAの生殖細胞系遺伝子に有害又はその疑いのある変異のある患者に限定する。

この適応が承認されたのはNOVA試験でPFS(無進行生存期間)が偽薬比有意に増加したため。当該変異を持つサブグループのPFSはメジアン21ヶ月対5.5ヶ月、ハザードレシオ0.27と大変良かったが、変異の無いサブグループでも9.3ヶ月対3.9ヶ月、0.45と、十分に良好だった。FDAは優先審査指定し、審査期限の3ヶ月前に承認した。

ところが、同試験の全生存期間の解析では、無変異サブグループのハザードレシオが1.06(95%信頼区間0.81-1.37)と、偽薬並みだった。この解析は検出力不足で、また、偽薬群は進行後にPARP阻害剤を用いることもできるなどノイズが多いが、他社のPARP阻害剤でも似たような懸念が浮上したことから、再検討の余地があった。FDAは11月22日に諮問委員会を招集し承認継続の当否を尋ねる予定だったがGSKが自発的撤回を承諾したためか、キャンセルした。

Zejulaは9月にある種の卵巣癌の4次治療薬としての承認も返上された。白金薬ベースの一次治療に反応した卵巣癌の維持療法は残っている。

12年にMSDからライセンスして開発・承認取得したTesaroを19年に買収して入手したもの。日本は17年に武田薬品が導入、20年に卵巣癌初回化学療法後の維持療法、白金感受性再発卵巣癌における維持療法、白金感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌に承認された。

リンク: GSKのプレスリリース


CHMP、抗癌剤などの適応拡大を支持
(2022年11月11日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の医薬品の適応拡大に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。尚、新製品はバイオシミラーやGE薬だけだった。

リンク: EMAのプレスリリース

・アストラゼネカのImfinzi(durvalumab):成人の切除不能/転移胆道癌一次治療(gemcitabine及びcisplatinと併用)

・同、Lynparza(olaparib):化学療法が臨床的に不適な成人の転移去勢抵抗性前立腺癌(abiraterone及びprednisone/prednisoloneと併用)

・サノフィのDupixent(dupilumab):全身性治療の対象となる成人の中重度結節性痒疹

・第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan):trastuzumabによる治療歴を持つher2陽性胃癌

・ロシュのXofluza(baloxavir marboxil):1-11歳の単純インフルエンザの治療と曝露後予防

・バイエルのEylea(aflibercept):未熟児網膜症(ゾーンIに留まる場合はステージが1+、2+、3または3+、IIの場合はステージ2+または3+、またはアグレッシブ後部型(AP-ROP)、が適応になる)。レーザー治療対照非劣性試験がフェールしたせいか、米国での適応拡大は遅れている。

・サノフィのPlavix/Iscover(clopidogrel):PCIを受けるST上昇型心筋梗塞(これまでは薬物療法を受けるSTEMIに限定されていた)

一方、承認申請の取り下げは4件あった。

Febseltiq(infigrtnib)はFGFRキナーゼ阻害剤。ノバルティスからライセンスしたBridgeBioPharma(Nasdaq:BBIO)の新薬開発子会社であるQED Therapeuticsが昨年、米国でFGFR2変異胆管癌の再発治療薬Truseltiqとして加速承認を得たが、提携先のHelsinn社は商業上の理由で提携解消を決め、欧州の申請も10月に取り下げてしまった。CHMPは効果や副作用、薬物動態、生産プロセスに関して疑問を持っていた由。

スペインのFerrer InternacionalのOrepaxam(treprostinil diolamine)はUnited Therapeuticsの肺動脈高血圧症治療薬Remodulinの新しい塩で、経口投与できることが特徴。CHMPは未だ審査中だったとのことで、純粋に申請者側の都合による撤回である様子だ。FerrerはRemodulin等の流通で提携しているので、この徐放性錠剤もUnited Therapeuticsの開発品なのかもしれない。

適応拡大申請の撤回は、まず、ロシュがBlueprint Medicines(Nasdaq:BPMC)から導入したGavreto(pralsetinib)。RET融合陽性進行非小細胞性肺癌用薬として昨年、条件付き承認されたが、進行/転移性のRET変異陽性甲状腺髄様腫とRET融合陽性甲状腺癌はCHMPが立証不十分と考えていた。米国では20年に加速承認されている。

ノバルティスのIlaris(canakinumab)は、承認用途であるクリオピリン関連周期性症候群と似たところのある希少疾患、Schnitzler症候群に適応拡大申請されていた模様だが撤回。20人規模の試験で治療後7日間の効果が検討されたとのことだが、CHMPは治験の正確性や有効性に疑問を持っていた由。

【承認】


PD-L1・CTLA4阻害レジメンが肺癌に適応拡大
(2022年11月10日発表)

FDAはアストラゼネカの抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)と抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)を成人の転移性非小細胞性肺癌に用いる適応拡大を承認した。白金薬ベースの化学療法と併用する。EGFR阻害剤やALK阻害剤が適応になる癌は対象外。

Imjudoは10月に切除不能肝細胞腫にImfinziと併用することが承認されているが、300mgを一回、60分点滴静注するだけだった。今回は75mg(体重30kg未満の場合は1mg/kg)を3週毎に4回、そして第16週にも一回投与するので、患者一人当たりの使用量が25%多くなる(途中離脱や減量がないならば)。

エビデンスとなるPOSEIDON試験では、二剤を白金薬ベースの化学療法(4サイクル)と併用した群はメジアン生存期間が14.0ヶ月と、化学療法(6サイクル)だけの群の11.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.77だった。G3/4有害事象は肺炎とラッシュが若干増加した。

リンク: FDAのプレスリリース


リジェネロンの抗PD-1抗体も肺癌一次治療CT併用が承認
(2022年11月8日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)はFDAがLibtayo(cemiplimab-rwlc)を成人の進行非小細胞性肺癌の一次治療に白金薬ベース化学療法と併用することを認めたと発表した。他の抗PD-1/PD-L1抗体と同様に、EGFR、ALK、またはROS1を阻害する薬が適応になる患者は対象外。

第3相試験では白金薬化学療法と偽薬を投じた群と比べて、全生存期間のハザードレシオが0.71、メジアン値は22ヶ月と対照群の13ヶ月を大きく上回った。

有害事象の発生率は深刻例が25%、致死的なものは6%だった。

LibtayoはPD-L1強陽性の進行非小細胞性肺癌やある種の進行皮膚扁平上皮種や基底細胞腫に単剤投与することも承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


アドセトリスが2歳以上の青少年にも承認
(2022年11月10日発表)

FDAはSeagen(Nasdaq:SGEN)のAdcetris(brentuximab vedotin)を2~17歳の未治療高リスク古典的ホジキンリンパ腫に用いることを承認した。AVEPCレジメン(doxorubicin、vincristine、etoposide、prednisone、cyclophosphamide)と併用する。臨床試験ではEFS(無イベント生存)のハザードレシオがAVEPC・偽薬併用群比0.41だった。

Adcetrisは成人の古典的ホジキンリンパ腫などに承認されているが、小児適応は今回が初。

リンク: FDAのプレスリリース


【医薬品の安全性】


CHMP、JAK阻害剤の適応縮小を了承
(2022年11月11日発表)

EUの薬品承認審査機関EMAの医薬品専門家委員会、CHMPは、市販後監視委員会であるPRACが勧告したJAK阻害剤5品の適応一部変更について了承した。予定通り、添付文書改訂が行われることになる。FDAに追随した格好だが、内容は緩やかになっている。

対象は、ファイザーのXeljanz(tofacitinib)とCibinqo(abrocitinib)、ガラパゴス(Euronext: GLPG)/ギリアド・サイエンシズのJyseleca(filgotinib)、イーライリリーのOlumiant(baricitinib)、そしてアッヴィのRinvoq(upadacitinib)。骨髄線維症などの治療に用いられているノバルティスのJakavi(ruxolitinib)やセルジーンのInrebic(fedratinib)は対象外。また、OlumiantをCOVID-19感染症の治療に一時的投与する場合も対象外。

65歳以上の患者や、心血管疾患や癌のリスク因子を持っている人、あるいは喫煙者/長期喫煙歴のある人は、代替的治療が無い場合に限定される。静脈血栓塞栓リスクのある人に用いる場合は注意が必要。もしこれらの患者に使う場合は用量を減らす(EUの承認用量は日本とほとんど同じ)。

適応制限の動機は、関節リウマチに関するXeljanzの市販後安全性確認試験とOlumiantの市販後観察的試験(B023)でMACE(心筋梗塞など、主要な有害心血管事象)や静脈血栓塞栓のリスクがTNFアルファ阻害剤より高かったため。

CHMPは、JAK阻害剤服用患者に対して、胸痛や締め付け感、息切れ、冷や汗、めまい、手足の脱力、発語不明瞭などを経験したら即座に医師に相談することと、皮膚癌のリスクに備えて定期的にチェックし新規成長部位に気付いたら医師に伝えるよう勧告している。

リンク: EMAのプレスリリース




今週は以上です。

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