2022年5月29日

第1052回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • NRxのVIPも危機的患者試験がフェール 
  • その他の領域: 
  • サル痘対策でワクチンを調達 
  • ファイザーのS1P受容体調節剤もUC試験成功 
  • ガンマ・セクレターゼ阻害剤のデスモイド腫瘍試験成功 
  • デュアルher2ブロックをher2+大腸癌に承認申請へ 
  • イドルシア/JNJ、新規ERAの血圧治療試験が成功 
  • こちらのJAK阻害剤も円形脱毛症試験が成功 
  • Biohaven社、trorilizoleは脊髄小脳失調症試験もフェール 
  • 血友病の遺伝子療法を承認申請 
  • Biohaven社、点鼻用CGRP阻害剤を承認申請 
  • リリーも抗IL23p19抗体を承認申請 
  • ロシュ、CD20/CD3二重特異性抗体を欧州で申請していた 
  • NX-1207の承認申請は受理されず 
  • 伝染性軟属腫用薬はCMOが足を引っ張り承認見送りに 
  • キムリア、米国でも濾胞性リンパ腫に承認 
  • IDH1阻害剤が一次治療に適応拡大 
  • 新作用機序の局所性乾癬治療薬が承認 
  • トレプロスチニルのドライパウダー製剤が承認 


【COVID-19関連】


NRxのVIPも危機的患者試験がフェール
(2022年5月25日発表)

NRx Pharmaceuticals(Nasdaq:NRXP)は、NIAID(米国立アレルギー感染症研究所)のACTIV-3b試験が打ち切りとなったことを明らかにした。COVID-19に感染し危機的状態の患者を組入れて、remdesivirなどの標準療法に同社のRLF-100(aviptadil)を加える効果を検討したが、中間解析で主評価項目(90日転帰の改善、死亡から生存退院まで6段階の序数で評価)のオッズ比が1.10、p=0.56、副次的評価項目の死亡率は37%、偽薬群は36%で有意差なしとなり、データ安全性監視委員会が無益認定した。

aviptadilは合成ヒト血管作動性腸管ペプチド(VIP)。SARS-CoV-2が肺胞細胞に侵入するのを妨げたり肺サーファクタントの分泌を促す効果が期待され、肺炎を合併した患者のP2b/3試験が実施されたがフェールした。同社は少数の症例のケース・コントロール試験のデータに基づきEUA(非常時使用認可)を求めたがFDAは認めなかった。

I-SPY COVID-19試験が継続しているが、この試験でテストされた他の試験薬はすべてフェールしており、生き残っているのは同剤だけである。

リンク: 同社のプレスリリース

【今週の話題】


サル痘対策でワクチンを調達
(2022年5月25日発表)

デンマークのBavarian Nordic(Nasdaq Copenhagen:BAVA)は、某国と天然痘ワクチンの調達契約を結んだと発表した。サル痘感染の拡大に備えて中短期備蓄に充てる考えのようだ。デンマーク・クローネ安の影響もあり、2022年の営業収入予想を期初の11~14億DKKから13~15億DKKに上方修正したことも公表した。日本円に換算すると18~36億円規模の上乗せになる。備蓄需要が中心と推測される特殊な製品なので価格は想像がつかないが、COVID-19ワクチンやインフルエンザ・ワクチンと同じ15~20ドル/回とすると、40~120万人分となり、調達規模としては決して大きくない。サブサハラ地域におけるエボラ・ワクチンと同様に、感染者の濃厚接触者に暴露後接種することを想定しているのだろう。

サル痘の感染はサブサハラ・アフリカが中心だが、今回は欧米豪加イスラエルで確認例が219例に増えている(5月24日現在、Our World in Dataによる)。うち英国が71例、スペイン51例、ポルトガルが39例。疑い例も入れると300例となっている(スペインの109例がトップ)。

同社の天然痘ワクチンJynneos(欧州ではImvamuneやImvanex)は米加ではサル痘予防にも承認されており、Emergent BioSolutionsが販売しているACAM2000と異なり弱毒化生ワクチンなので、注射する人が感染しないよう自ら接種する必要はなく、心筋炎/心膜炎の枠付警告もない。皮注して4週後にもう一回接種する。

CDC(米国疾病予防管理センター)によると、どちらも使えない場合はサノフィのワクチンをIND(治験認可)/EUA(非常時使用認可)ベースで接種することができる。

CDCは1970年代に天然痘ワクチンの一般向け接種勧奨を終了し、今日では、オルソポックスウイルスの研究者や検査技師、感染者発生時に対応する人たちなどに限定している。効果は数年持続するが、対象者は定期的な接種が必要になる。

尚、治療は18年にSIGA Technologies(Nasdaq:SIGA)のTPOXX(tecovirimat)が、21年にはChimerix(Nasdaq:CMRX)のTembexa(brincidofovir)が、天然痘治療薬として動物試験のデータに元ついて天然痘治療薬として承認された。Merck Mannualによると後者の類薬であるcidofovirの使用を考慮しても良い。tecovirimatはEUでは体重13kg以上の小児と成人のサル痘の治療に用いることが例外的環境状況に基づき承認されている。

リンク: Bavarian Nordicのプレスリリース

【新薬開発】


ファイザーのS1P受容体調節剤もUC試験成功
(2022年5月24日発表)

ファイザーはetrasimodの第3相潰瘍性大腸炎(UC)試験、ELEVATE UC 12とELEVATE 52試験の結果をDDW(Digestive Disease Week)で発表した。2mgを一日一回、経口投与して臨床的寛解率を偽薬と比較したところ、前者は12週時点で24.8%対15.2%、後者は12週時点で27.0%対7.4%、52週時点では32.1%対6.7%と、有意に上回った。内視鏡的評価など副次的評価項目もすべて成功した。主な有害事象は頭痛やUCの悪化、COVID-19感染など。徐脈や房室ブロックは見られなかった。年内に承認申請する考え。

類薬で先にこの適応が承認されたブリストル マイヤーズ・スクイブのZeposia(ozanimoc)は過去6ヶ月間に心筋梗塞、卒中、あるいは非代償性心不全による入院歴を持つ患者や房室ブロックは禁忌。S1P受容体調節剤のクラス・イフェクトなのでetrasimodも軽々には結論を出せないが、もし心臓副作用リスクが小さいなら差別化要因になりうる。

22年にエクイティ・バリュー67億ドルで買収したArena PharmaceuticalsがAPD334として開発した。クローン病やアトピー性皮膚炎などでも開発中。

リンク: ファイザーのプレスリリース

ガンマ・セクレターゼ阻害剤のデスモイド腫瘍試験成功
(2022年5月24日発表)

米国コネチカット州のSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)は、nirogacestatの第3相進行性デスモイド腫瘍試験が成功したと発表した。今年下期に米国で承認申請する予定。

デスモイド腫瘍は軟組織の稀だが衰弱性の腫瘍で、症状は疼痛や出血など様々。米国で年1000~1500人が診断される。20~44歳で診断されることが多く、女性が6~8割を占める。nirogacestatは選択的ガンマ・セクレターゼ阻害剤で、デスモイド腫瘍の成長に係るノッチを阻害する作用を持つ。NCI(米国立癌研究所)の第2相試験で効果が見られステージアップした。

第3相は成人患者142人を組入れて150mgを一日二回、経口投与して、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を偽薬と比較した。結果は、ハザードレシオが0.29、統計的に有意だった。詳細は学会で発表する考え。

ガンマ・セクレターゼ阻害剤はアルツハイマー病試験の症例が豊富だが、若い女性には特有のリスクがあるようだ。プレスリリースによると、再生産年齢の女性被験者の過半で卵巣機能障害が発生した。該当者は多いだろうから、詳細発表が待たれる。今回の試験は対象外だが、小児は受胎能に影響する可能性もあるようだ。

SpringWorks Therapeuticsは2017年にファイザーのアイディアに基づいて設立、ファイザーからライセンスしたコンパウンドを難病向けに開発している。

リンク: 同社のプレスリリース


デュアルher2ブロックをher2+大腸癌に承認申請へ
(2022年5月23日発表)

Seagen(Nasdaq:SGEN)はTukysa(tucatinib)の第2相her2陽性結腸直腸癌試験の結果を発表した。米国で加速承認を申請する考え。

Tukysaはher2チロシンキナーゼ阻害剤。19年に三種類以上のher2標的薬による治療歴を持つher2陽性局所進行/転移乳癌にtrastuzumab及びcapecitabineと併用する対照試験が成功、20年に米国で、21年にはEUでも承認された。

今回の試験は治療歴のあるher2陽性結腸直腸癌117人を組入れてTukysaとtrastuzumabを投与したところ、cORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が39.1%、メジアン反応持続期間は12.4ヶ月だった。

先行類薬の臨床試験では、trastuzumabでher2をブロックし、チロシン・キナーゼ阻害剤でher2発の細胞内シグナル伝達を阻害する方法は効果より副作用の上乗せのほうが大きいような印象があった。Tukysaの承認用途はサルベージなので多少バランスが悪くても許容されるところがあるが、今回は他にも治療法があるだろうから忍容性も重要なファクターになる。

尚、同社は共同創業者の一人で社長兼CEO兼会長だったClay Siegallが妻に対する家庭内暴力で今月上旬に逮捕され、CMOのR. Danseyが暫定CEO、主席独立取締役のF. Bakerが会長に就任した。

リンク: 同社のプレスリリース


イドルシア/JNJ、新規ERAの血圧治療試験が成功
(2022年5月23日発表)

スイスのイドルシアはACT-132577(aprocitentan)の第3相難治性高血圧症試験が成功したと発表した。amlodipine、valsartan、hydrochlorothiazideの三剤固定用量合剤で治療しても収縮期血圧が140 mmHg以上の730人を偽薬、12.5mg、25mgの3群に無作為化割付して4週後の血圧を比較したところ、両用量とも偽薬比有意に低下した。数値は未公表。

パート2では全員に32週間に亘って25mgを投与した後、再無作為化割付して4週後の血圧を比較したところ、偽薬スイッチ群は試験薬継続群比有意に上昇した。

各群の治療時発現有害事象発生率は19.4%、27.6%、36.7%、有害事象治験離脱率は0.8%、2.5%、2.0%だった。

aprocitentanはエンドテリン受容体アンタゴニスト(ERA)。浮腫/体液貯留がクラス・イフェクトで、本試験では発生率が30%と高かったが治験離脱は7人(1%未満)、深刻例は2人(どちらも25mg群)だった。パート1での発生率は各群2.1%、9.1%、18.4%だった。

ERAは癌や高血圧症にも開発されたが、成功したのは肺動脈高血圧症用途。代表作であるOpsumit(macitentan、和名オプスミット)を開発したアクテリオンはジョンソン・エンド・ジョンソンに買収されたが、一部事業はイドルシアとしてスピンアウトされた。aprocitentanはmacitentanの代謝物で、親が果たせなかった夢を寿命の長い息子が果たす格好だ。JNJが共同開発権と単独販売権を持っている。

リンク: イドルシアのプレスリリース


こちらのJAK阻害剤も円形脱毛症試験が成功
(2022年5月23日発表)

Concert Pharmaceuticals(Nasdaq:CNCE)はCTP-543(deuterated ruxolitinib)の第3相円形脱毛症試験が成功したと発表した。もう一本が第3四半期に成功したら23年上期に承認申請する考え。類薬ではイーライリリーがOlumiant(baricitinib)を欧米で円形脱毛症に適応拡大申請し、今月、CHMPの肯定的意見を得た。ファイザーなども開発中。

CTP-543は骨髄線維症などに承認されているJakafi/Jakavi/ジャカビ(ruxolitinib)の重水素化薬。今回のTHRIVE-AA1試験は年齢が18~65歳、SALT(Severity of alopecia Tool)が50以上(50%以上の毛髪を喪失)、現在の脱毛エピソードが6ヶ月以上10年以内の患者706人を偽薬、8mg、12mg群に無作為化割付して1日二回、24週間に亘って経口投与し、奏効率(SALTが20以下に低下)を比較した。結果は各群0.8%、29.6%、41.5%と両用量とも偽薬を有意に上回った。帯状疱疹は偽薬群はゼロ、試験薬二群は何れも1人。薬物関連深刻有害事象は8mg群で1人だけだった。

JAK阻害剤の第2相試験では、残念なことに、脱毛から年数の経った患者にはあまり効果が見られなかった。本試験は病歴自体は10年以上でも除外しなかったので、セラプティック・ウインドウが少しでも広がるかどうか、注目される。

リンク: 同社のプレスリリース


Biohaven社、trorilizoleは脊髄小脳失調症試験もフェール
(2022年5月23日発表)

Biohaven Pharmaceutical(NYSE:BHVN)はBHV-4157(troriluzole)の第2/3相脊髄小脳失調症試験がフェールしたと発表した。主評価項目であるf-SARA(modified functional Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)がベースラインの平均4.9から48週後に5.1に上昇し、偽薬群の5.2と大差なかった。

新興企業の例に漏れず、同社はサブグループ所見に希望を託す。被験者や患者全体の4~5割を占めるSCA3型では0.55の治療効果が見られ、名目p値は0.053だったとのこと。

同剤はALS治療薬riluzoleのプロドラッグ。20年に第3相全般不安障害試験と第2/3相強迫性障害試験がフェール、21年には軽中度アルツハイマー病の第2/3相試験がフェールしており、今回、4連敗となった。

同社はファイザーが買収する予定だが、片頭痛治療のCGRP受容体アンタゴニスト以外のtroriluzoleなどのパイプラインは社名と経営陣を引き継ぐ新会社にスピンアウトされる予定で、2代目Biohavenにも残念な結果になった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


血友病の遺伝子療法を承認申請
(2022年5月24日発表)

CSL(ASX:CSL)グループのCSLベーリングは米国でCSL222(etranacogene dezaparvovec)をB型血友病治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。EUでは既に申請受理されている。

アデノ随伴ウイルス5型をベクターとして、B型血友病で欠乏している血液凝固第IX因子(FIX)の亜型で活性が8~9倍高い、FIX-Paduaの遺伝子を導入する。重度患者54人に2x10^13 gc/kgを一回投与した試験では、FIX量が安定化した後の第7~18月のABR(出血率年率)が予防的投与を受けていたリード・イン期間と比べて64%低下した。

77歳の被験者が65週後に尿敗血症と心原性ショックで死亡したが試験薬関連ではないと判定された。深刻有害事象としては1名が肝細胞腫を発症したが、生検細胞の遺伝子を調べたところ、ベクターが組み込まれる確率は0.027%と低く、場所は区々で肝癌に関わるとは考えられていない箇所であったため、関連性は否定され、FDAも昨年4月に治験停止を解除した。

20年にオランダのuniQure biopharma(Nasdaq:QURE)からライセンスした。

リンク: CLSベーリングのプレスリリース


Biohaven社、点鼻用CGRP阻害剤を承認申請
(2022年5月23日発表)

Biohaven Pharmaceutical(NYSE:BHVN)は米国でBHV-3500(zavegepant)を片頭痛治療薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年第1四半期。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体アンタゴニストで、点鼻用であることが特徴。臨床試験では10mg群の2時間後疼痛解消成功率が24%と偽薬群の15%を有意に上回った。疼痛緩和成功率も59%対50%と上回ったが、15分後でも16%対8%と有意な差があった。有害事象は味覚異常(クラス・イフェクト)など。

16年にブリストル マイヤーズ・スクイブからライセンスした。Biohavenはファイザーが買収しCGRP受容体アンタゴニスト拮抗剤以外のパイプラインをスピンアウトする予定。

リンク: 同社のプレスリリース


リリーも抗IL23p19抗体を承認申請
(2022年5月24日発表)

イーライリリーはLY3074828(mirikizumab)の第3相潰瘍性大腸炎試験二本の結果をDDWで発表するとともに、第1四半期に欧米で承認申請したことを明らかにした。競合の激しい分野だが、他社が先行した乾癬用途よりも競争条件が良いと判断したのだろう。

mirikizumabはIL-23p19サブユニットを標的とする抗体医薬の一つ。今回のLUCENT-1試験は既存治療に不応不耐の中重度潰瘍性大腸炎を12週間治療し、臨床的寛解率を比較したところ、24.2%と偽薬群の13.3%を有意に上回った。臨床的応答率(63.5%対42.2%)や内視鏡的寛解率でも有意差があった。

LUCENT-2試験は12週間の治療で応答した患者を再無作為化割付して1年間投与した。臨床的寛解率は49.9%と偽薬群の25.1%を有意に上回った。寛解導入期に臨床的寛解を達成した患者は63.6%が寛解維持したが、偽薬群は36.9%に留まった。試験薬群の寛解達成者は98%がステロイドを中断できた。

最初の12週間である程度反応した患者は継続投与で更に改善する可能性がありそうだ。尚、二本の試験を元に12ヶ月治療して臨床的寛解に到達する確率を試算すると、試験薬は31.6%、偽薬は10.6%となった。

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、CD20/CD3二重特異性抗体を欧州で申請していた
(2022年5月27日発表)

ASCO(米国臨床腫瘍学会)が6月の年次総会の抄録を公開しメディア向けブリーフィングを行ったのを受けて、複数の企業が演題や概要をプレス発表した。ロシュはRG6026(glofitamab)の拡大第2相試験のヘッドラインと、欧州で既に承認申請したことを明らかにした。米国などでも年内申請予定。

glofitamabはB細胞のCD20とT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。今回の試験対象は難治・再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、メジアンで3治療歴を持ち3割強はCAR-T治療歴もあった。結果は、155人中61人、39%がCR(完全反応、独立評価委員会方式)、OR(総合反応)は51%だった。

クラス・イフェクトであるG3/4のサイトカイン放出症候群が3.9%で発生したが、G5はなかった。

類薬ではジェンマブがアッヴィと共同開発しているDuoBody-CD3xCD20(epcoritamab)は第1/2相試験の最初のコフォート(157人)でcORR(確認客観的反応)が63%だった。こちらの方が高いが、比較可能かどうかは明かではない。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認審査・委員会】


NX-1207の承認申請は受理されず
(2022年5月23日発表)

米国カリフォルニア州のNymox Pharmaceutical(Nasdaq: NYMX)はNX-1207(fexapotide triflutate)を良性前立腺肥大の治療薬としてFDAに承認申請していたが、受理されなかった。申請発表時のプレス・リリースで、申請結果に関するいかなる保証もフォワード・ルッキング・ステートメントも伴わないと釘を刺していたが、その通りになった。

同社によると長期安全性データの欠落が理由。FDAは第3相試験開始前や承認申請前のミーティングで1年間の追跡データがあれば十分と言ったが、方針変更した。

FDAが立場を変えた理由は不明。0017試験と0018試験は1年追跡データしかないが2~3年追跡したNX02-0020試験やNX02-0022試験の安全性データも提出済みとのことなので、後者二本に安全性シグナルが見つかったのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース(GlobeNewswire)


伝染性軟属腫用薬はCMOが足を引っ張り承認見送りに
(2022年5月24日発表)

米国ペンシルバニア州のVerrica Pharmaceuticals(Nasdaq:VRCA)はVP-102(cantharidin)を伝染性軟属腫の治療薬としてFDAに承認申請していたが、3回目の審査完了通知を受領した。バルクの生産委託先であるSterling Pharmaceuticalsが無菌眼科用薬の生産工程に関してFDAから改善を求められていることが影響したようだ。

2巡目の審査でも同様な指摘がありSterling社が対応したはずだったが、FDAは、2月の再調査を経て、是正要求をVAI(Voluntary Action Indicated)からOAI(Official Action Indicated)にステップアップした。FDAは、是正されるまで対象企業が係る医薬品の承認を見送ることができる。

Verricaは当該工場に監視員を派遣したり、最終工程の委託先に複数回の品質チェックを行わせるなどの対策を既に取っているが、別の委託先の探索も開始した。

伝染性軟属腫はポックスウイルス科のウイルスによる皮膚病で光沢の丘疹が現れる。主に小児が罹患する。カンタリジンはある種の昆虫が持つ成分で皮膚に水疱を起こす。毒をもって毒を制する訳だ。日本で承認されていたこともあるようだが、鳥居薬品が21年にVP-102の日本での輸入販売権を取得した。

リンク: Verrica社のプレスリリース

【承認】


キムリア、米国でも濾胞性リンパ腫に承認
(2022年5月28日発表)

ノバルティスはKymriah(tisagenlecleucel)を成人の再発・難治濾胞性リンパ腫の3次治療に用いる適応拡大がFDAに加速承認されたと発表した。EUでも今月、条件なしで承認されている。

第2相ELARA試験に基づくもので、完全反応率が68%、クラス・イフェクトであるサイトカイン放出症候群は概ね軽中度でG3以上は発生しなかった。

リンク: 同社のプレスリリース


IDH1阻害剤が一次治療に適応拡大
(2022年5月25日発表)

セルビエは、Tibsovo(ivosidenib)をIDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)変異のある未治療急性骨髄性白血病にazacitidineと併用することがFDAに承認されたと発表した。75歳以上または強化寛解導入療法不適の患者が適応になる。第3相AGILE試験ではEFS(治療がフェールせず生存)のハザードレシオが0.35、副次的評価項目の全生存も0.44(メジアン24ヶ月、azacitidineだけでは8ヶ月)だった。

20年にAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)から取得した腫瘍学ポートフォリオの一つ。IDH1阻害剤で、これまでに、IDH1変異を持つ再発/抵抗性や未治療の急性骨髄性白血病や、治療歴のあるIDH1変異型局所進行性/転移性胆管細胞腫に単剤投与することがFDAに承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


新作用機序の局所性乾癬治療薬が承認
(2022年5月24日発表)

Roivant Sciences(Nasdaq:ROIV)の子会社であるDermavant Sciencesは、FDAがVtama(tapinarof)を尋常性乾癬の治療薬として承認したと発表した。新作用機序の局所投与薬が米国で承認されたのは25年ぶり。

伝統的治療法だが癌の懸念を伴うコールタール療法と同様に、アリル炭化水素受容体(AhR)を調整し、表皮細胞の分化や防御システムを刺激する。1%クリーム製剤を一日一回、患部に塗布する。第3相試験ではPGA反応率が一本は35%、もう一本は40%となり、偽薬群(どちらも6%)を有意に上回った。PASI75達成率も36.1%対10.2%と47.6%対6.9%で二本とも有意な差があった。有害事象は毛包炎、上咽頭炎、接触性皮膚炎など。

GSKが09年に子会社化した皮膚科用薬会社、StiefelがWelichem BiotechからWBI-1001の中国周辺以外での開発商業化権を取得したが、GSKは18年にRoivantに導出した。日本はJTが20年に独占的開発商業化権を取得した。

リンク: 同社のプレスリリース


トレプロスチニルのドライパウダー製剤が承認
(2022年5月24日発表)

米国の上場PBC(株主価値だけでなく公益も追及する法人)であるUnited Therapeutics(Nasdaq:UTHR)は、FDAがTyvaso DPI(treprostinil)を肺動脈高血圧症とPH-ILD(間質性肺疾患に伴う肺高血圧症)の治療薬として承認したと発表した。同社のドライ・パウダー・インへイラーにセットして一日4回、吸入する。

プロスタグランディンI2であるtreprostinilは連続点滴皮注/静注用薬が02年に米国でRemodulinとして承認、09年には吸入用液がTyvasoとして承認された。この種の薬は作用が長続きしないのが弱点で、他の条件が同じなら、投与が簡便な製品のほうが好ましいだろう。

リンク: 同社のプレスリリース





今週は以上です。

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