2022年5月21日

第1051回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • 5-11歳のコミナティ追加免疫がEUA 
  • フルボキサミンのEUA申請は却下 
  • EU、コミナティの調達を3ヶ月先送り 
  • その他の領域: 
  • オプジーボとヤーボイ、膀胱癌一次治療併用試験がフェール 
  • アッヴィ、持続皮下注用パーキンソン病薬を承認申請 
  • CHMP、三種類の希少疾患の初の治療薬などを支持 
  • デュピクセント、好酸球性食道炎に適応拡大 
  • アザシチジンが若年性骨髄単球性白血病に承認 


【COVID-19関連】


5-11歳のコミナティ追加免疫がEUA
(2022年5月17日発表)

BioNTechとファイザーは、両社が共同で開発・販売しているCOVID-19ワクチン(Comirnaty)を5~11歳の追加免疫に用いることをFDAがEUA(非常時使用認可)したと発表した。初回免疫(10mcgを3週おいて二回筋注)から5ヶ月以上経った人に10mcgを筋注する。米国では既に800万人超が初回免疫を完了しているとのこと。

初回免疫完了から6ヶ月以上経った140人を組入れた臨床試験では、1ヶ月後の中和抗体幾何平均力価が野生株に対しては6倍、オミクロン株(n=30)に対しては36倍に増加した。新たな有害事象は見られなかった。

リンク: 両社のプレスリリース


フルボキサミンのEUA申請は却下

強迫性障害などの治療に用いられているSSRIのfluvoxamine(ブランド名Luvox)は、COVID-19治療薬としても期待されているが、FDAはEUA(非常時使用認可)しなかった。理由を示す覚書が公開されたが、臨床試験の主評価項目が適切でないことや、他の試験の成績が区々であることが主因のようだ。

同剤はブラジルで実施されたTOGETHER試験で入院リスクを抑制した。高リスク患者約1500人を偽薬群と100mg一日二回経口投与群に無作為化割付して10日間治療し、28日間の三次医療施設入院/ER長時間入室率を比較したところ、各群16%と11%、相対リスクは0.68となり、統計的に有意な差があった。

FDAによると、差があったのは専らER長時間入室。6時間以上滞在を長時間と判定したが、この閾値の臨床的な意義は明確でない。入院・死亡だけをカウントすると各群98人と75人、相対リスク0.78だが統計的に有意ではない。

COVID-19の難しいところは、入院すべきなのにベッド不足で入院できなかったり、治癒しても隔離のため退院できなかったり、病状と入退院がリンクしない事態が起こりうることだ。ERとなると様子を見たり、入院先を探したり、色々な攪乱要因がありそうだ。

ファイザーやMSDの抗ウイルス薬の臨床試験の主評価項目も上記と同じだが、ER長時間入室の定義は24時間以上であったので、話がだいぶ違う。

fluvoxamineのC大規模なOVID-19試験はSTOP COVID 2試験やCOVID-OUT試験が途中で無益中止となった。通算では一勝二敗。二勝三敗ならEUAされるかもしれないので、もう二本実施する余地もあるだろうが、既に複数の経口抗ウイルス薬が実用化されていることや、オミクロン株は重症化リスクが小さい分、従来より大規模な臨床試験が必要になることがボトルネックになり得る。

尚、EUAを申請したのはDr. David R Boulware(ミネソタ大学)と記されている。fluvoxamineの他の試験やメタアナリシスの著者だが、TOGETHER試験論文がLancet Global Health誌に刊行された時にCorrespondenceを寄せており、当該治験には直接関与していない模様だ。

リンク: FDAの覚書(pdfファイル)
リンク: ReisらのTOGETHR試験論文
リンク: BoulwareらのCorrespndence


EU、コミナティの調達を3ヶ月先送り
(2022年5月13日発表)

EUはComirnatyの納入スケジュールを加盟国のニーズに合わせるべく変更することでBioNTech及びファイザーと合意したと発表した。今年は6.5億回分を調達する契約だが、6~8月納入分を9~12月に先送りする。

理由は明記されていないが、おそらく、流行の波が下向きなことやオミクロン株は重症化リスクが小さいこと、そして、再追加接種の便益が明確ではなく、EUは米国ほど前向きではないことが影響しているのだろう。また、オミクロン株対応ワクチンが実用化されたらそちらを調達することが可能なので、秋までに承認される可能性も考慮したようだ。

かかりつけ医に尋ねたところ、感染者が減少しているので接種券が来てもしばらく待って、増え始めてからでも遅くないのではないかと言っていた。効果の持続性の観点からも、急がない方が良いのだろう。

リンク: EUのプレスリリース
リンク: 両社のプレスリリース

【新薬開発】


オプジーボとヤーボイ、膀胱癌一次治療併用試験がフェール
(2022年5月16日発表)

ブリストル マイヤーズ・スクイブは、Opdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を切除不能/転移尿路上皮腫の一次治療に用いた第3相試験、CheckMate-901がフェールしたと発表した。PD-L1陽性(≧1%)サブグループの全生存期間をcisplatinまたはcarboplatinをgemcitabineと併用する標準療法群と比較したが、ダメだった。

本試験は盛り沢山で、cisplatin不耐患者だけを対象とした全生存期間の解析も主評価項目。更に、cisplatin忍容患者を対象に化学療法にOpdivoを追加する効果を検討するサブスタディもあり、どちらも、続行する。

尿路上皮腫は抗PD-1/PD-L1抗体の得意分野と思いきや、便益は必ずしも明確でなく、切除不能/転移尿路上皮腫で単剤投与が本承認されている製品でも、延命またはそれに準じる効果が臨床試験で確認されたものはなく、フェールしたものなら複数ある。Yervoy併用で効果増強が期待されたが、案外な結果になった。

リンク: BMSのプレスリリース

【承認申請】


アッヴィ、持続皮下注用パーキンソン病薬を承認申請
(2022年5月20日発表)

アッヴィは米国でABBV-951(foslevodopa、foscarbidopa)を進行パーキンソン病の治療薬として承認申請した。レボドパとカルビドバのプロドラッグを24時間持続皮下注する。症状管理不良な130人を組入れた試験でオンタイム(効き目のある時間)が2.7時間増加し、経口レボドパ・カルビドパ製剤群の1.0時間増加を上回った。オフタイム(症状が出る時間)は2.7時間減少した(対照群は1時間減)。深刻有害事象の発現率は各8%と6%で大差ないが、有害事象による離脱率は21.6%と1.5%で上回った。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、三種類の希少疾患の初の治療薬などを支持
(2022年5月20日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、三種類の希少疾患用薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら1~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)のUpstaza(eladocagene exuparvovec)はAADC(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)欠損症の遺伝子療法。生後18か月以上の重症型患者が適応になる。欠乏しているドパミンやセロトニンの合成に必要な酵素の遺伝子を、アデノ随伴ウイルス2型ベクターを用いて、定位脳手術で送り込む。例外的環境条項に基づく承認が支持された。エビデンスは台湾で行われた臨床試験のようだ。

リンク: EMAのプレスリリース

サノフィ・グループのジェンザイムのXenpozyme(olipudase alfa)はASMD(酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症、通称ニーマン・ピック病)の酵素補充療法。A型(乳児期に発症する)またはA/B型に用いる。年齢制限はない。臨床試験で肺拡散能(%予測値)が改善、脾臓量が減少した。有害事象は感染症や点滴箇所反応、胃腸合併症など。現時点では精神運動症状を改善する効果は認められていない。

日本で今年3月に世界初承認、米国でも承認審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

Eiger BioPharmaceuticals(Nasdaq:EIGR)のZokinvy(lonafarnib)はハッチンソン・ギルフォード早老症候群やある種の早老ラミノパチーの治療薬。生後12ヶ月以上の患者に例外的条項に基づいて承認することが支持された。プログリンが蓄積して障害を与えるプロセスに係るファルネシルの転移酵素を阻害し、細胞の完璧性や機能を維持する。臨床試験では平均余命が文献比半年長かった。米国では2010年に承認。

活性成分はシェリング・プラウが肺癌などの治療薬として開発したことがあるが、第3相が無益中止となり、MSDと合併後の2010年にEigerに導出した。

リンク: EMAのプレスリリース

フランスのLFB(Laboratoire français du Fractionnement et des Biotechnologies)のCevenfacta (eptacog beta)はノボ ノルディスのNovoSeven(eptacog alfa)と同じような活性化第VII因子製剤。12歳以上の先天性血友病で第XIII因子製剤や第IV因子製剤にインヒビターを持つ、あるいは不応不耐の患者の出血治療や手術時の出血予防に用いる。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では以下が支持された。

イーライリリーのOlumiant(baricitinib):成人の重度円形脱毛症

アッヴィのRinvoq(upadacitinib):成人の既存薬不応不耐の中重度活性期炎症性大腸炎

ノバルティスのCosentyx(secukinumab):6歳以上で既存治療不応不耐な、活性期ERA(付着部関連関節炎)や活性期JPsA(若年性脊椎関節炎)などのJIA(若年性特発性関節炎)

Karyopharm Therapeutics(Nasdaq:KPTI)のNexpovio(selinexor、米名Xpovio):一次以上の治療歴のある成人の多発骨髄腫にbortezomib及びdexamethasoneと併用

【承認】


デュピクセント、好酸球性食道炎に適応拡大
(2022年5月20日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズとサノフィは、抗IL-4Rアルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)を12歳以上かつ体重40kg以上の好中球性食道炎の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。この適応取得は米国初。欧州でも承認審査中。

他の適応より高曝露の、300mg週一回皮注。臨床試験では64%の患者で嚥下障害などの症状が改善し(偽薬群は41%)、59%で食道上皮内好酸球数が減少した(同6%)。他の適応の多くと同じ300mg二週毎皮注群はトレンドに留まり、承認されていない。

優先審査を受け、審査期限は8月3日だったが2ヶ月半、前倒しになった。

リンク: 両社のプレスリリース

アザシチジンが若年性骨髄単球性白血病に承認
(2022年5月20日発表)

FDAはブリストル マイヤーズ・スクイブ・グループのセルジーンのVidaza(azacitidine)をJMML(若年性骨髄単球性白血病)の小児新患に用いる適応拡大を承認した。臨床試験で18人中9人が臨床的に応答した。

骨髄異形成症候群の初めての薬として承認されてから18年、まだまだ開発が続いていたんだ。

リンク: FDAのプレスリリース






今週は以上です。

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