2020年6月13日

第950回

【ニュース・ヘッドライン】

  • アルナイラム、原発性高シュウ酸尿症I型治療薬の第三相データを発表 
  • MSD、キイトルーダの膀胱癌化学療法併用一次治療試験がフェール 
  • FDA、ビエラ・バイオのNMOSD治療薬を承認 
  • オプジーボが米国でも食道がんに適応拡大 


【新薬開発】


アルナイラム、原発性高シュウ酸尿症I型治療薬の第三相データを発表
(2020年6月7日発表)

米国マサチューセッツ州ケンブリッジののRNA介入薬開発会社、アルナイラム(Nasdaq:ALNY)は、ALN-GO1(lumasiran)の第三相ILLUMINATE-A試験の概要をERA-EDTA国際会議でバーチャル発表した。原発性高シュウ酸尿症I型(PH1)で軽中度の腎障害を持つ患者39人を組入れた試験で、ALN-G01群は尿シュウ酸塩が顕著に減少、5割の患者で正常化した。

PH1はアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの欠損による常染色体性劣性遺伝疾患。シュウ酸が過剰になり腎臓などに障害を与える。罹患率は数万人に一人と推定されている。、ALN-G01はグリコール酸酸化酵素の遺伝子、HAO1を沈黙させるRNA介入薬。本試験では、3mg/kgを最初の3回は月一回、その後は3ヶ月毎に、皮注した。主評価項目の尿シュウ酸塩減少率(24時間蓄尿、第3~6月の平均値をベースラインと比較)は65.4%、偽薬調整後で53.5%となった。副次的評価項目の一つである、第6月の尿シュウ酸塩正常化(≦0.514 mmol/24hr/1.73m2)率は52%、偽薬群はゼロだった。有害事象は注射箇所反応など。重度以上の有害事象は見られなかった。

代理マーカーに基づく評価だが、事前にFDAの同意を得ている由なので、問題ないのだろう。

アルナイラムは4月に欧米で承認申請した。米国は優先審査で審査期限は12月3日、EUも加速審査を受ける。

サノフィが欧米外の地域でのオプト・イン・オプションを持っていたが行使しなかったため、アルナイラムが全権利を持っている。

リンク: 同社のプレスリリース

MSD,キイトルーダの膀胱癌化学療法併用一次治療試験がフェール
(2020年6月9日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)のKEYNOTE-361試験がフェールしたと発表した。進行/転移性尿路上皮腫の一次治療として化学療法(gemcitabineとcisplatinまたはcarboplatin)と併用する効果を検討したオープンレーベル試験で、共同主評価項目である全生存期間も、PFS(無進行生存期間)も、事前に設定された成功認定条件をクリアできなかった。モノセラピーの群も設定されたが、上位評価項目がフェールしたため、正式な解析は行われなかった。数値は何れも未公表。

プレスリリースの書きぶりだと、p値の閾値が通常より低く設定されたためフェールしたが0.05ならクリアできたと推測する余地が残っているように感じられる。この試験は米国でモノセラピーによる一次治療が加速承認された時の承認後コミットメントなので、特にモノセラピーの成績は気になるところだ。

米国では17年に尿路上皮腫の二次治療とcisplatin不適に対する一次治療に単剤投与することが承認されたが、後者に関しては、今回の361試験のモノセラピー群のうちPD-L1低発現サブグループの全生存期間が化学療法群より悪かったため、FDAは、一次治療における適応を限定、CPS(腫瘍と腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現スコア)が10以上または全ての白金薬に不適な患者という条件を追加した。

このような経緯から、モノセラピー群の最終解析結果がこの適応範囲に符合するものであったかどうかが注目される。

また、化学療法併用群のうちCPS≧10のサブグループ分析のデータも気になるところだ。

今回のプレスリリースでは情報が足りない。学会発表が待たれる。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認】


FDA、ビエラ・バイオのNMOSD治療薬を承認
(2020年6月11日発表)

FDAは、ビエラ・バイオ(Nasdaq:VIE)のUplizna(inebilizumab-cdon)をNMOSD(視神経脊髄炎関連疾患)治療薬として承認した。NMOSDは主として視神経や脊髄に損傷を与える稀だが深刻な中枢神経系の自己免疫疾患で、米国の患者数は4000~8000人と推定されている。Upliznaは抗CD19afucosylated抗体でrituximabなど他の抗CD19抗体と同様にB細胞系免疫細胞を抑制する。NMOSD患者の8割で見られる、AQP4(aquaporin-4)に対する免疫グロブリンGを持つ患者が適応になる。第三相試験では、症状増悪リスクを77%抑制した。警告は点滴箇所反応、低ガンマグロブリン血症、感染症、催奇性など。他の多くの免疫抑制剤と同様に、進行性多巣性白質脳症のリスクやB型肝炎や結核の再燃リスクも警告。

NMOSD治療薬は昨年、アレクシオン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALXN)のSolirisを抗AQP抗体陽性NMOSDに用いる適応拡大が日米欧で承認された。また、中外製薬が創製し欧米などではロシュが開発している抗IL-6受容体リサイクリング抗体、SA237/RG6168(satralizumab)も日米欧で承認審査中。

Upliznaはアストラゼネカ傘下のメディミューンが08年に買収したCellective Therapeuticsのパイプライン。ビエラ・バイオは18年にメディミューンから開発品8品目を携えてスピンアウトした。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ビエラ社のプレスリリース

オプジーボが米国でも食道がんに適応拡大
(2020年6月10日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を切除不能進行/難治/転移食道藩屏上皮腫に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。fluoropyrimidine及び白金薬による治療歴を持つ患者が適応になる。

小野薬品がアジア中心に実施したATTRACTION-3試験に基づく承認。240mg二週毎点滴静注した群の全生存期間はメジアン10.9ヶ月と、docetaxelまたはpaclitaxelを投与した群の8.4ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.77、p=0.0189だった。ORR(客観的反応率)は各19.3%と21.5%で有意差なし、PFS(無進行生存期間)は各1.7ヶ月と3.4ヶ月で、上位評価項目の解析がフェールしたため有意性の検証は行われなかった。

日本では今年2月に世界初承認。

リンク: BMSのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース(6/11付)







今週は以上です。

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