【ニュース・ヘッドライン】
- ジレニア、遅ればせながらフェーズIVコミットメント終了
- オプジーボ、小細胞性肺癌二次治療試験がフェール
- JNJ、S-ケタミンを欧州でも承認申請
- ノバルティス、SPMS用薬の承認申請受理
- FDA諮問委員会、救急用合成オピオイドの承認を支持
- G蛋白偏向MORアゴニストは委員の評価が分かれた
- ADA-SCIDの酵素補充療法が米国で承認
- イグザレルト、CAD/PADに適応拡大
- イグザレルト、TAVR試験が途中で打ち切りに
【新薬開発】
ジレニア、遅ればせながらフェーズIVコミットメント終了
(2018年10月10日発表)
ノバルティスは、再発寛解型多発硬化症治療薬Gilenya(fingolimod、和名はノバルティスがジレニア、田辺三菱はイムセラ)のASSESS試験のヘッドラインを発表した。承認用量である0.5mgを投与した群は年率再発率が0.153とCopaxone群の0.258を下回り、p=0.0138と有意な差があった。0.25mg群も数値上は下回ったが有意差はなかった。
ノバルティスはGilenyaが米国で2010年に承認された時にこの試験の結果を15年7月までに提出するコミットメントを行ったが、組入れが順調に進まず、3年遅れとなった。GilenyaもCopaxoneも標準療法なので、集客不振は半量投与群の設定がボトルネックとなったのだろう。
FDAが半量試験を求めたのは、不整脈や感染症などのリスクに鑑み、至適用量をもう一度検討させる意図と推測される。その意味では、今回の結果はノバルティスに都合の良いものであった。用量設定の妥当性と、競合薬に対する優位性が明確になり、FDAに対してもテバに対しても胸を張ることができそうだ。
本試験で用いられたCopaxoneの20mg製剤(一日一回皮注)は既にGE化したが、米国での需要は40mg製剤(週3回皮注)にシフトしている。40mgの効果が20mgより高い訳ではないので、今回の結果を40mg製剤に当てはめてもよいのではないか。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
オプジーボ、小細胞性肺癌二次治療試験がフェール
(2018年10月12日発表)
BMSは、Opdivo(nivolumab)のCM-331試験の結果を発表した。小細胞性肺癌の二次治療における延命効果をtopotecan(承認されている地域ではamrubicinも可)と比較したが、優越性を確認できなかった。
Opdivoは8月に米国で小細胞性肺癌の三次治療に用いることが承認された。加速承認なので、19年7月までに延命効果が既存の薬より優れていることを示すエビデンスを提出する必要があり、ちょっと困ったことになった。BMSだけでなく、最近気前よく加速承認しているFDAも、規律を示すために強く出るべきか、気長に待つか、悩まざるを得ないだろう。
小細胞性肺癌ではロシュのTecentriq(atezolizumab)の三剤併用試験が成功、今後、承認・普及していくだろう。一次治療で抗PD-L1抗体を用いた患者に二次治療で抗PD-1抗体を用いる意味があるかどうか、不明なので、BMSなど他の会社は、改めて薬効確認試験をロンチするか、Tecentriqのレジメンが承認されていない国でTecentriqと同様な二剤併用対照試験を行うか、適応拡大を断念するか、開発方針を練り直す必要がありそうだ。
普通の薬なら非劣性試験でもよいはずだが、抗癌剤はあまり見ない。深刻な副作用リスクがあるので薬効が非劣性であるだけでは同等と言い難いことが理由かもしれない。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認申請】
JNJ、S-ケタミンを欧州でも承認申請
(2018年10月10日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ54135419(esketamine)を抗鬱剤としてEUに承認申請したと発表した。麻酔薬ケタミンのS異性体で、NMDA受容体を非競合的、活性依存的に拮抗し、ドパミンの再取込を阻害する。一日二回、点鼻する。難治性患者向けとされ、EUでは、二種類の薬による治療歴を持つ患者の三次治療薬という位置付けのようだ。米国でも9月に承認申請。
リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)
ノバルティス、SPMS用薬の承認申請受理
(2018年10月8日発表)
ノバルティスは、BAF312(siponimod)を二次進行型多発性硬化症(SPMS)の治療薬として欧米で承認申請し、受理されたと発表した。SPMSは再発寛解型が進行して寛解期が無くなった状態。BAF312は同社のGilenya(fingolimod)と同じスフィンゴシン1燐酸(S1P)受容体アゴニストだが、免疫細胞などで発現するS1P1や神経細胞などのサバイバルに関与するS1P5に選択的で、S1P3作用が小さいため血管や筋細胞に対する毒性が小さい可能性がある。
臨床試験ではEDSSに基づく障害進行ハザードレシオが偽薬比0.79と有意な差があった。深刻な有害事象は18%と偽薬群の15%より多く発生した。血球、肝臓、心臓など様々な疾患が増加した。
米国は、ウルトラジェニクスから1.3億ドルで買収した優先審査バウチャーを使い、審査期限は19年3月となった。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA諮問委員会、救急用合成オピオイドの承認を支持
(2018年10月12日発表)
FDAの麻酔鎮痛薬製品諮問委員会は、AcelRx Pharmaceuticals(Nasdaq:ACRX)が承認申請したDsuvia(sufentanil舌下錠)を検討し、13人の委員中10人が便益が危険を上回ると判定した。審査期限は11月3日。
Dsuviaは、高力価合成オピオイドであるsufentanilをディスポーザブル・プリフィルド・シングルドース・アプリケータに収めたもの。救急医療ではオピオイドを静注や硬膜外投与し、戦場では筋注することもあるようだ。Dsuviaは効果発現まで15分、1時間後にピークと通常の経口オピオイドより早いため、代替的な選択肢になりうる。米軍が開発資金を助成した。
EUでは今年6月にDzuveo名で承認された。
リンク: AcelRxのプレスリリース
リンク: 同社HPのDsuviaの解説(アプリケータの写真付き)
G蛋白偏向MORアゴニストは委員の評価が分かれた
(2018年10月11日発表)
同委員会は、Trevena(Nasdaq:TRVN)のTRV130(oliceridine)に関しては、賛成7人、反対8人と票が分かれた。静注オピオイドが必要な中重度疼痛の成人の治療薬として承認申請されたが、実薬対照試験が実施されておらず効果や安全性を比較できないことがボトルネックになった模様だ。米国ではオピオイド乱用が深刻な社会問題になっており、効果や安全性面で特に優れている薬でないかぎり冷淡に受け止められてしまうようだ。
TRV130はMOR(ミュー・オピオイド受容体)アゴニストで、MORの細胞内シグナル伝達経路のうちG蛋白をベータ・アレスチンより優先的に刺激するため、オピオイドにつきものの呼吸抑制や胃腸障害が起きにくいと考えられる。作用のオンセット・オフセットが早いという特徴もある。臨床試験でこれらの長所が確認されれば承認の道が開けるのではないか。
リンク: Tevenaのプレスリリース
【承認】
ADA-SCIDの酵素補充療法が米国で承認
(2018年10月5日発表)
FDAはLeadiant BiosciencesのRevcovi(elapegademase-lvlr)をADA-SCID(アデノシン・デアミナーゼ欠損による重症免疫不全症)の成人・小児の治療薬として承認した。
ADA-SCIDはアデノシン・デアミナーゼの遺伝子異常によりデオキシアデノシンがデオキシイノシンに変換されずに細胞内に蓄積。リンパ球が障害を受け重度の免疫不全を生じる。Leadiant社は酵素補充療法のAdagen(pegademase bovine)を販売しているが、Revcoviはウシ小腸由来ではなく遺伝子組換え品。
同社は希少疾患用薬のスペシャリストで、昨年2月にSigma-Tau Pharmaceuticalsから社名変更した。
リンク: Leadiantのプレスリリース
イグザレルト、CAD/PADに適応拡大
(2018年10月12日発表)
バイエルは、Xa阻害剤Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)を慢性冠動脈疾患や末梢動脈疾患の再発予防に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。低量アスピリンと併用で、2.5
mgを一日二回服用する。COMPASS試験では、MACE(主要有害心血管イベント)のリスクがアスピリンだけの群より24%小さかった。主に心血管死と虚血性脳卒中が少なかった。大出血は増加した。
尚、この試験は抗血小板薬併用(Dual Antiplatelet Therapy)が必要な患者は除外しており、二剤併用同士の優劣は検討されていない。
リンク: バイエルのプレスリリース
【医薬品の安全性】
イグザレルト、TAVR試験が途中で打ち切りに
(2018年10月3日発表)
バイエルがXarelto(rivaroxaban)の未承認用途に関するヘルスケア・プロフェッショナル・レターを発出していたことが判明した。TAVR(経カテーテル的大動脈弁置換術)後の血栓性疾患予防効果をclopidogrelと比較したGALILEO試験で死亡率などに群間の偏りが生じたというもの。
この試験は10mgを一日一回投与して、全死亡や脳卒中、全身性塞栓、心筋梗塞、肺塞栓症、深静脈血栓症、症候性弁塞栓などをclopidogrel(75mg一日一回)と比較した。最初の90日間は両群ともアスピリン(75~100mgを一日一回)を併用した。Xarelto群は中間解析で全死亡(6.8%対3.3%)や血栓塞栓、出血などの発生率が高かったとのことである。
リンク: バイエルのDear Healthcare Professional Letter(アイルランドの医療用製品規制局のサイト、pdfファイル)
今週は以上です。
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