2018年8月19日

2018年8月19日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 月一回注射型HIV/AIDS治療レジメンの第三相が成功 
  • リジェネロンの抗NGF抗体も第三相が成功 
  • FDAがMRSA作用剤の承認申請を受理 
  • FDAがBPDCN用薬の承認申請を受理 
  • レンビマ、米国でも肝臓癌に承認 
  • オプジーボ、小細胞性肺癌の三次治療薬として承認 
  • アイリーアの12週毎投与が承認されたが... 


【新薬開発】


月一回注射型HIV/AIDS治療レジメンの第三相が成功
(2018年8月15日発表)

グラクソ・スミスクライン、塩野義製薬、ファイザーのHIV/AIDS領域における合弁会社であるヴィーヴヘルスケアは、塩野義が創製したインテグラーゼ阻害剤、S-265744(cabotegravir)と、ジョンソン・エンド・ジョンソンの非核酸系逆転写阻害剤、rilpivirineの併用レジメンの最初の第三相試験が成功したと発表した。

標準的な多剤併用療法が奏功した患者を組入れて月一回筋注したところ、48週後のウイルス探知不能率が標準的療法群と比べて非劣性だった。もう一本の試験も年内に開票の予定。

経口剤を毎日服用するのとどちらが良いか、患者によって異なるのではないかと思われるが、薬をきちんと飲まない患者や、感染リスクの高い未感染者の予防などには特に有効だろう。

リンク: ヴィーヴのプレスリリース

リジェネロンの抗NGF抗体も第三相が成功
(2018年8月16日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とテバ・ファーマシューティカル(NYSE:TEVA)は、抗NGF抗体REGN475(fasinumab)の第三相試験の薬効解析が成功したと発表した。膝や股関節の変形性関節炎患者を偽薬、1mg8週毎、1mg4週毎に皮注する群に無作為化割付して16週時点の疼痛緩和効果を検討したところ、WOMAC疼痛サブスケール改善が各1.56、2.25、2.78となり、両用法とも偽薬と比べて統計的に有意な差があった。

もう一つの薬効主評価項目であるWOMAC身体機能サブスケールも各1.37、2.1、2.57改善し、有意な差があった。

抗NGF抗体は一時は多くの製薬会社が第二相、第三相試験を行っていたが、安全性懸念が浮上し、治験部分停止・解除を繰り返す結果になった。動物試験で症候性神経系副作用が見られたことや、ファイザーのtanezumabの試験で5%程度の患者で関節炎の急速な悪化や無腐性骨壊死が見られたことが原因だ。その後、症例や発生メカニズムの検討が進められ、関節炎諮問委員会の意見などを踏まえてFDAが開発再開を認めた。

このような背景から、今回の試験も、16週では終わらず72週間追跡して安全性解析を行う。後期第二相試験では4週毎投与で9mgまでテストしたが、効果は1mg群と大差なく、関節症の発生率は偽薬群1%、1mg群2%に対して、3mg群は5%、6mg群7%、9mg群12%と用量依存的に高まった。今回の第三相でも、3mg4週毎群と6mg8週毎群は今年5月に独立データ監視委員会の勧告に基づいて中止された。今回の1mgは最後に残ったカードなのである。

関節炎が却って悪化するのでは患者は救われない。同じく第三相試験中のtanezumabも含めて、しっかりと安全性を確認してほしいものだ。

高リスク・プロジェクトであるためか、アルツハイマー病薬と同様なリスク・シェアリングが行われている。リジェネロンはテバと提携し、日本では田辺三菱製薬がMT-5547として第2/3相試験中。ファイザーはイーライリリーと共同開発している。"

リンク: 両社のプレスリリース


【承認申請】


FDAがMRSA作用剤の承認申請を受理
(2018年8月14日発表)

Motif Bio(Nasdaq:MTFB)は、MRSA作用性抗生物質であるMTF-100(iclaprim)の承認申請がFDAに受理されたことを発表した。優先審査を受け、審査期限は来年2月13日。急性細菌性皮膚皮膚構造感染症の治療に用いる静注用薬で、第三相試験では奏効率がvancomycinと非劣性だった。

スペクトラムが広く、グラム陽性・陰性を問わず、MRSAやVRSAにも活性を持つ。腎毒性が小さいため2~3割を占める腎臓病患者にも適している。一方、毒性試験のNOAELは臨床用量の0.5~2倍と安全性マージンが小さいので副作用症例をよく検討する必要がありそうだ。

01年にArpida社がロシュからインライセンスし08年に欧米で承認申請したが承認されなかった。Arpidaから権利を取得した会社を15年にMotif Bioが合併したが、こちらも一時は資金不足に苦しんだ。新規活性成分として承認されれば優先審査バウチャを獲得できるだろうから開発資金の一部を回収できるだろう。10年間の排他権が与えられ、その間はGE薬が承認されない。

リンク: Motifのプレスリリース

FDAがBPDCN用薬の承認申請を受理
(2018年8月13日発表)

Stemline Therapeutics(Nasdaq:STML)は、FDAがElzonris(tagraxofusp、開発コードSL-401)の承認審査を受理したと発表した。優先審査で審査期限は来年2月21日。BPDCN(芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍)という超希少疾患の治療に用いる。

BPDCN細胞で高発現するCD123(IL-3の受容体)を標的とする、IL-3と断片化ジフテリアを融合した蛋白で、CD123に結合して細胞内に侵入、ジフテリア毒が攻撃する。臨床試験では、初治療29例の総合反応率が90%、再発難治性13例でも69%だった。FDAからブレークスルーセラピー指定と希少疾患用薬指定を受けている。

リンク: Stemlineのプレスリリース


【承認】


レンビマ、米国でも肝臓癌に承認
(2018年8月17日発表)

エーザイとMSDは、VEGF受容体拮抗剤Lenvima(lenvatinib、和名レンビマ)を切除不能肝細胞腫の一次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。日本は3月に承認済み。臨床試験では全生存期間がバイエルのVEGF受容体拮抗剤、Nexavar(sorafenib)と非劣性だった。

VEGF受容体拮抗剤は数多いが肝細胞腫試験が成功したのはLenvimaが二例目ではないか。代表格であるファイザーのSutent(sunitinib)は効果も高いが副作用リスクも高く、減量が珍しくない。肝細胞腫試験がフェールしたのは忍容性(治験離脱)が原因かもしれない。

Lenvimaの特徴は用途毎に用量を細かく調整していること。甲状腺癌では24mg(腎臓や肝臓の重度疾患患者は12mg)、腎細胞腫のeverolimus併用療法は18mg(同10mg)、肝細胞腫は12mg(体重60kg未満は8mg)を一日一回服用する。カプセルは10mgと4mgの二種類なので組み合わせパズルのようだが、米国では一日服用量毎のパッケージが8種類用意されているので、間違えるリスクが小さく、減量も小刻みに可能だ。

さて、肝細胞腫における効果はNexavar並なので数年後にNexavarがGE化すると不利になるが、LenvimaにせよNexavarにせよ、近い将来に、PD-1/PD-L1阻害剤との併用が主流になるだろう。臨床初期の試験で反応率に相乗効果が見られたからだ。

リンク: エーザイのプレスリリース

オプジーボ、小細胞性肺癌の三次治療薬として承認
(2018年8月17日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)を転移性小細胞性肺癌の三次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。第1/2相のCheckMate-032試験の反応率と反応持続期間に基づく加速承認。盲検独立中央評価による反応率は12%でPD-L1発現との相関性は見られなかった。反応13例のうち12例は部分反応で完全反応は1例のみ。一方、深刻有害事象の発生率は45%だった。

リンク: BMSのプレスリリース

アイリーアの12週毎投与が承認されたが...
(2018年8月17日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)は、Eylea(aflibercept、和名アイリーア)の新用法がFDAに承認されたと発表した。つい先日、審査完了通知を受領したばかりなので奇妙な感じだが、レーベルの記述はもっと奇妙だ。

滲出型加齢性黄斑変性を治療する場合、最初の3回は4週毎、その後は8週毎に投与するが、2年目に入ったら12週毎に間隔をあけることが承認された。但し、8週毎より効果が落ちることも明記されているので、どちらを選ぶか悩ましい。現実の医療では何回か投与した後は定期的に網膜を検査して悪化するまで休薬する医師も多い。それでも、間を空けることが可能な期間は長いほうが安心だろう。

ノバルティスが年内に承認申請する類薬、RTH258(brolucizumab)は、12週毎投与。ジェネンテックも長期持続性インプラントを開発している。Eyleaが対抗するために必要な用法追加だったが、この内容では、承認されても価値は小さいだろう。

リンク: リジェネロンのプレスリリース
リンク: 同(審査完了通知受領について、8/13付)







今週は以上です。

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