2018年8月12日

2018年8月12日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA諮問委員会がParatekの抗生物質の承認を勧告 
  • Remoxyはスリーアウトに 
  • FDAもアミカスのファブリー病治療薬を承認 
  • FDA、一年間有効のIUDを承認 
  • 基礎体温法のアプリも承認 
  • FDAもポテリジオを承認 


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がParatekの抗生物質の承認を勧告
(2018年8月18日発表)

Paratek Pharmaceuticals(Nasdaq:PRTK)は、FDAの抗微生物薬諮問委員会がPTK 0796(omadacycline)の承認を勧告したと発表した。地域感染細菌性肺炎(CABP)は18人の委員のうち14人が、急性細菌性皮膚皮膚構造感染症(ABSSSI)は17人が、便益がリスクを上回ると判定した。

omadacyclineはテトラサイクリン系の抗生物質で、グラム陽性菌や陰性菌、嫌気性菌などスペクトラムが広く、テトラサイクリン抵抗菌にも活性を維持している。経口剤と注射用薬が用意されているので症状が軽快すれば在宅治療も可。CABP試験では奏効率がmoxifloxacinと比べて非劣性、ABSSSI試験でもlinezolid比で非劣性だった。CABP試験では死亡率が数値上やや高かったが、心毒性の兆候は見られず、文献データと比べるとomadacycline群が高いというよりはmoxifloxacin群が低かったようだ。

提携面では変遷を経ており、99年にグラクソ、03年にバイエル、05年にMSD、09年にノバルティスと導出/共同開発提携を結んだが、11年以降は単独開発に転じている。

リンク: Paratekのプレスリリース

Remoxyはスリーアウトに
(2018年8月6日発表)

Pain Therapeutics(Nasdaq:PTIE)は10年前にRemoxy ER(oxycodone)を乱用されにくいオキシコドン製剤として米国で承認申請したが、08年、11年に続いて三度目の審査完了通知を受領した。米国はオピオイド乱用が酷く、徐放製剤でも砕いて注射、吸引、吸入すれば即効性を得られることから、リクリエーション目的で使用して死亡する人が毎年何万人も発生する。この半分は処方薬の不適正使用だ。

トランプ大統領はアルコール中毒で苦しんだ兄の例を挙げて、オピオイド乱用と戦う姿勢を示している。オピオイド大手のPurdue社は、先ごろ、オピオイド誘発性便秘症治療薬であるSymproicの販売権を塩野義製薬に返上しているが、販売シナジーを追求するどころではない状況なのだろう。

Remoxy ERはDurect社のOradur技術を用いた長期作用性製剤で、厚いゲル状なので注射したりアルコールに溶かしたりするのが困難。但し、噛むと即効性が得られる模様なので、完璧ではなさそうだ。6月に開催された諮問委員会では、17人中14人が承認に反対した。承認すると安全性を誤認させてしまうので、乱用されないオピオイドの開発ではなく乱用防止に重点を置くべしという意見もあったようだ。

Pain社は、科学的評価ではなくイデオロギー的な反対を受けたことに不満を示す一方で、リストラ策を打ち出す考えを表明した。

リンク: Pain社のプレスリリース


【承認】


FDAもアミカスのファブリー病治療薬を承認
(2018年8月10日発表)

FDAは、アミカス・セラピューティクス(Nasdaq:FOLD)のGalafold(migalastat、和名ガラフォルド)をファブリー病の治療薬として加速承認した。この薬で修正可能なガラクトシダーぜ・アルファ遺伝子変異348種類の、何れかを持つ16歳以上の患者が適応になる。米国の場合、35~50%が該当する模様。

ファブリー病は希少疾患で、シャイアのReplagal(agalsidase alfa)やサノフィ子会社であるジェンザイムのFabrazyme(agalsidase beta)などの酵素補充療法が承認されているが、経口投与できる薬は初。ガラクトシダーゼ・アルファ欠乏による腎臓間質性毛細血管におけるGL-3の蓄積を改善するという、サロゲート・マーカーに基づく加速承認なので、アミリンは改めて臨床的効能を確認しなければならない。

EUでは16年に、日本でも今年3月に承認された。アミカスは米国でもEUと前後して承認申請する考えだったが、FDAが上記サロゲートマーカーに基づく加速承認に難色を示したため、胃腸症状改善効果を確認する試験の結果が19年に出るのを待つ姿勢に一度は転じた。しかし、17年7月に、FDAが申請を認めたことを公表、同年12月に申請し、優先審査を経て、今回、承認された。

FDAはなぜスタンスを変えたのか?おそらく、トランプ大統領の影響力だろう。17年2月の施政方針演説の中で、ポンペ病の娘とその父親であるJohn Crowleyと面談したエピソードに言及、FDA改革を表明したからだ。演説原稿には肩書が記されていなかったが、アミカスのCEOのことだろう。

ポンペ病の娘二人を助けるためにBMSを退職し、有望な研究者を探し出し、資金調達に奔走して、遂に06年、Myozyme(alglucosidase alfa)の米国承認を実現した逸話がMBAコースの教科書や映画になり、日本でも、『小さな命が呼ぶとき』というタイトルで上映された。

かって、米国の株式市場では、大統領選で共和党候補が優勢になるとメルク(MSD)が値上がりするトレンドがあったが、今日では、共和党候補も民主党候補も大手製薬会社に批判的で、同情的な候補がいても早々に撤退する。ITやネット系のベンチャーは民主党支持が多いようで、現政権にも批判の声が目立つが、バイオ系に関してはトランプ政権が心強い守護者になりそうだ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アミカスのプレスリリース

FDA、siRNA薬を初承認
(2018年8月10日発表)

FDAは、アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)のOnpattro(patisiran)を遺伝性トランスサイレチン調停アミロイドーシス(hATTR)患者の末梢多発性神経障害の治療薬として承認した。hATTRは米国の罹患者が3000人程度の希少疾患で、治療薬が承認されたのは初。欧州は7月にCHMPを通過。アルナイラムは日本などでも18年央以降に承認申請する予定。

siRNA(小分子介入RNA)と呼ばれる新しいタイプの薬が承認されたのも初。アルナイラムが特化している技術で、Onpattroはトランスサイレチンの遺伝子が肝臓で翻訳・生産されるのを妨げることによって、蓄積・線維化による神経障害を抑制する。第三相試験では、3週毎に0.3mg/kgを70分点滴静注して18ヶ月後のmNIS+7(神経障害評価スコア、10~100の患者を組み入れた)を観察したところ、偽薬群が28ポイント増加したのに対して、Onpattro群は6ポイント低下した。

深刻有害事象の発生率は36.5%で、下痢や心不全、起立性低血圧、肺炎、心室ブロックなど。偽薬群は40.3%だった。死亡率は4.7%(偽薬群7.8%)で、試験薬関連とみなされるものはなかった。点滴反応を防ぐためステロイド、アセトアミノフェン、H1/H2ブロッカーでプリトリートする。ビタミンAが減少するのでサプルメントする。

アルナイラムは年45万ドルで発売する計画。多くの健康保険組織に成果保証を行う考えで、効果が目標を下回った場合、リベートを支払う。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アルライナムのプレスリリース
リンク: 同(成果保証について)

FDA、一年間有効のIUDを承認
(2018年8月10日発表)

FDAはAnnoveraを承認した。新開発のプロゲスチンであるsegesterone acetateとethinyl estradiolを用いたIUD(子宮内ディバイス)で、3週間装着・1週間外すを繰り返す。最長で13サイクルまで使用可能。臨床試験では避妊成功率97%(Pearl Index2.98)だった。FDAは、静脈血栓塞栓のリスクや、CYP3A影響薬やタンポンが薬物動態に与える影響を市販後に確認するよう求めた。

承認申請したのは、IUDの代表的な製品であるMirena(levonorgestrel、和名ミレーナ)などの開発実績を持つ非営利組織、Population Council。販売権を持つTherapeuticsMD(Nasdaq:TXMD)は生産のスケールアップを行って19年第4四半期または20年第1四半期に本格発売する予定。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Population Councilのプレスリリース
リンク: TerapeuticsMDのプレスリリース

基礎体温法のアプリも承認
(2018年8月10日発表)

FDAは、避妊用もモバイルアプリを初めて承認した。毎日、起床時の基礎体温を入力すると危険日に警告が出る。

このようなものまで承認が必要なのか、不思議だが、人体に与えるリスクが低中度であるディバイスに係る新しい規定を適用して販売前審査を行ったとのことだ。

Natural Cycles Nordic ABのアプリで、価格は基礎体温計とセットで年79.99ドル、または、月9.99ドル。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Natural Cyclesの製品HP

FDAもポテリジオを承認
(2018年8月9日発表)

FDAは、協和発酵キリンのPoteligeo(mogamulizumab、和名ポテリジオ)を皮膚T細胞リンパ腫用薬として承認した。全身治療歴を有する成人の再発性もしくは難治性の菌状息肉腫(MF)及びセザリー症候群(SS)が適応になる。臨床試験ではメジアンPFS(無進行生存期間)が7.6ヶ月とMSDのZolinza(vorinostat)の3.1ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.53、統計的に有意だった。

これらの腫瘍で発現するCCR4を標的とする抗体で、Biowa子会社のポテリジェント技術でADCC活性を増強した。日本で12年にCCR4陽性成人T細胞白血病用薬として、14年には皮膚T細胞リンパ腫や末梢T細胞リンパ腫用薬として承認されているが、米国は今回が初承認。欧州でも米国と同じ適応で承認申請中。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 協和発酵キリンのプレスリリース(和文、pdf)







今週は以上です。

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