2018年7月1日

2018年7月1日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • セルジーン/Acceleron、MDS試験が成功 
  • テセントリク、小細胞性肺癌の一次治療試験が成功 
  • リムパーザ、卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功 
  • GBT社、鎌状赤血球症治療薬の加速承認申請を狙う 
  • アステラスが導入したばかりの薬が開発中止に 
  • ゾフルーザの承認申請をFDAが受理 
  • ファイザー、SMO阻害剤を承認申請 
  • CHMPがCAR-Tなどの承認を支持 
  • マリファナの成分を用いた抗癲癇薬が承認 
  • 複雑性尿路感染症治療薬が承認 
  • ゼルヤンツ、EUで乾癬性関節炎治療薬として承認 


【新薬開発】


セルジーン/Acceleron、MDS試験が成功
(2018年6月28日発表)

セルジーン(Nasdaq:ASDAQ: CELG) は08年以来、Acceleron Pharma(Nasdaq:XLRN)のACE-536(luspatercept)を共同開発してきたが、遂にMDS(骨髄異形成症候群)の第三相試験が成功した。8週間以上赤血球を輸血しなくて済んだ患者の比率が偽薬群を有意に上回った。具体的なデータは学会発表の予定。

ACE-536はactivin receptor type IIBとマウスの免疫グロブリンG2の融合蛋白で、TGFベータスーパーファミリーの作用をブロックする。今回の第三相は、低リスクまたは低中度リスクMDSで環状鉄芽球を持ち、貧血症でESA(エポエチンなど)に不応不耐不適の患者を組入れて、3週間毎に皮注する効果を検討したもの。

19年上期に欧米で承認申請する計画。輸血依存型ベータサラセミアでも第三相試験中。

リンク: 両社のプレスリリース

テセントリク、小細胞性肺癌の一次治療試験が成功
(2018年6月25日発表)

ロシュは、抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)を進展型小細胞性肺癌の一次治療に用いたIMpower133試験が成功したと発表した。carbopatin及びetoposideを併用する標準療法に追加してPFS(無進行生存期間)と全生存期間を標準療法と比較したところ、最初の中間解析で成功認定された。進展型小細胞性肺癌は予後が悪く治療の選択肢も限られているので、重要なエビデンスだ。

リンク: ロシュのプレスリリース

リムパーザ、卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功
(2018年6月27日発表)

アストラゼネカと開発販売パートナーのMSDは、Lynparza(olaparib、和名リムパーザ)のSOLO1試験が成功したと発表した。BRCA悪性変異を持つ末期卵巣癌で白金薬ベースの一次治療に完全/部分反応した患者を組入れて、300mg錠を一日二回服用する群と偽薬群のPFSを比較したもの。データは未発表。適応拡大に向けて当局と相談する計画。 

LynparzaはPARP阻害剤で卵巣癌の再発治療やBRCA悪性変異を持つ末期乳癌などに承認されている。

リンク: 両社のプレスリリース

GBT社、鎌状赤血球症治療薬の加速承認申請を狙う
(2018年6月27日発表)

米国のGlobal Blood Therapeutics(Nasdaq:GBT)は、GBT440(voxelotor)の第三相鎌状赤血球症試験のパートAが成功したと発表した。ヘモグロビン値改善効果が確認されたため、パートBを取りやめて承認申請する方向でFDAと相談を開始した。株価は下落したので、方針転換の先行きを危ぶんでいるのかもしれない。ヘモグロビンの改善が症状改善やクリーゼの防止につながると考えることができるかどうかがポイントになりそうだ。

鎌状赤血球症の患者154人を偽薬、900mg、1500mgの各群に割付て12週間治療し、HgBが1g/dL超増加した患者の比率を比較したところ、各群9%、38%、58%となり、両用量とも偽薬比有意に上回った。静脈閉塞性クリーゼも減少したが、追跡期間が短いこともあり、有意差は出なかった。

GBT440は赤血球の重合そして鎌状化を阻害する作用を持つ。米国でブレークスルーセラピーとファーストトラック、希少小児疾患用薬、希少疾患用薬の指定を受け、欧州でもPRIMEと希少疾患王約指定されている。

リンク: GBT社のプレスリリース

アステラスが導入したばかりの薬が開発中止に
(2018年6月27日発表)

Aquinox Pharmaceuticals(Nasdaq:AQXP)は、AQX-1125(rosiptor)の第三相間質性膀胱炎・膀胱痛症候群試験がフェールしたと発表した。開発を中止する。

PI3Kパスウェイに係わり炎症をダウンレギュレートする酵素、SHIP1を活性化する作用を持つ。小規模な第二相試験で、一部の評価項目でp値が0.01を下回ったが、多くは0.01~0.05に留まり、一部は0.05を上回った。第三相は偽薬、100mg、また200mgを一日一回経口投与して膀胱痛改善効果を検討したが有意差はなかった。

アステラス製薬は5月にアジア太平洋地域(中国とインドを除く)での権利を取得したことを発表したが、契約はもう発効したのだろうか?頭金2500万ドルは帰ってこないのだろうか?

リンク: Aquinox社のプレスリリース


【承認申請】


ゾフルーザの承認申請をFDAが受理
(2018年6月26日発表)

ロシュは、baloxavir marboxilを米国で12歳以上の合併症のないインフルエンザ感染症の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は12月24日。

インフルエンザウイルス複製の初期過程であるmRNAの切り出しに必要な、Cap依存性エンドヌクレアーゼを阻害する画期的な作用機序を持ち、代表的なインフルエンザ治療薬であるTamiflu(oseltamivir)に耐性を持つウイルスにも活性を維持。Tamifluは一日二回経口投与で標準的には5日間服用するが、baloxavir marboxilは1回服用で足りることが長所。第三相試験では、症状軽快までの時間が偽薬より有意に短く、Tamifluと非劣性だった。

塩野義製薬の開発品で日本では今年2月にゾフルーザ錠として承認された。ロシュは日本や台湾以外の国で共同開発権を持つ。糖尿病など高リスク因子を持つインフルエンザ患者を組入れた第三相も進行中。

リンク: ロシュのプレスリリース

ファイザー、SMO阻害剤を承認申請
(2018年6月27日発表)

ファイザーはPF-04449913(glasdegib)を米国で承認申請し受理されたと発表した。SMO阻害剤で、適応は急性骨髄性白血病の新患または高リスク骨髄異形成症候群。集中的化学療法不適の場合に用いる。低量cytarabineと併用する。申請の根拠となった第二相試験では全生存期間が8.8ヶ月とcytarabineだけの群の4.9ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.50、統計的に有意だった。深刻有害事象は熱性好中球減少症や肺炎が増加した。

リンク: ファイザーのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPがCAR-Tなどの承認を支持
(2018年6月29日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、6月の会合で、ノバルティスやギリアドのCAR-T療法などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

CAR-Tは、B細胞に特異的に発現するCD19に結合する抗体フラグメントと活性化共刺激伝達分子などの融合遺伝子を患者から採取したT細胞に導入し、リンパ枯渇処理を受けた患者に戻してやると、体内で増殖して癌化したB細胞を攻撃する。

開発はペンシルバニア大学の技術を導入したノバルティスとカイト社を買収したギリアド・サイエンスシズが先行しており、米国では夫々昨年8月と10月に承認。EUはギリアドのほうが先に承認申請したがCHMPは同時通過となった。日本はノバルティスが今年4月に再生医療等製品として申請。カイトは第一三共に導出した。

ノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel)は、再発性難治性のB細胞性急性リンパ性白血病及びびまん性巨細胞性B細胞性リンパ腫に用いる。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ギリアドのYescarta(axicabtagene ciloleucel)は、再発性難治性のびまん性巨細胞性B細胞性リンパ腫及びPMBCL(原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫)に用いる。

CAR-Tの泣き所はサイトカイン放出症候群だ。発生時の治療のデファクト・スタンダードは中外製薬/ロシュのActemra(tocilizumab)で、CHMPはこの適応拡大にも肯定的意見を出した。米国は昨年8月に承認。日本は適応拡大申請中。

6月通過の新薬も希少疾患用薬が多かった。サノフィが子会社化したAblynx社のCablivi(caplacizumab)は二価抗フォン・ヴィレブランド因子ナノ抗体で、後天性血栓性血小板減少性紫斑症の治療に用いる。第二相試験に基づく承認だが、既に第三相も成功しており、米国はこのデータで承認申請する予定。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: サノフィのプレスリリース

Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)のMepsevii(vestronidase alfa)は遺伝子組換え型ヒト・ベータ・グルクロニダーゼで、ムコ多糖症VII型の酵素補充療法。米国は昨年11月に承認。正味価格ベース年375000ドルで発売された。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Ultragenyxのプレスリリース

シャイアーが子会社化したバクスアルタのVeyvondiは遺伝子組換え型フォン・ヴィレブランド因子。重度先天性フォン・ヴィレブランド病の患者の出血治療や周術期の出血予防・治療に用いる。米国では15年に承認。遺伝子組換え型vWFの承認は初。

リンク: EMAのプレスリリース

プーマ・バイオテクノロジー(NYSE:PBYI)がファイザーからライセンスして開発した不可逆的汎erbB阻害剤、Nerlynx(neratinib)は、2月に否定的意見を受けたが、今回、肯定的意見に変わった。her2陽性早期乳癌の摘出術を受けHerceptinなどによるアジュバント療法も終えた患者に更に延長アジュバント療法として使うもので、臨床試験でホルモン受容体陽性患者に限定すれば臨床的に意味のある効果が見られたことを評価した。

ホルモン受容体陽性に限定されるなら、昨年7月に承認したFDAと異なる判断になる。何れにせよ、全ての患者に使うべき薬ではなさそうだ。

リンク: EMAのプレスリリース

リンク: EMAのプレスリリース(意見変更に関するQ&A)

適応拡大では、エーザイがMSDと共同開発販売しているLenvima(lenvatinib)を肝細胞腫の一次治療に用いることが支持された。Nexavar対照試験で全生存期間のハザードレシオが0.92と非劣性だった。

リンク: EMAのプレスリリース

BMSのOpdivo(nivolumab)を悪性黒色腫の完全切除後のアジュバント療法としてモノセラピーで用いることも支持された。リンパ節転移などリスク因子を持つ患者が対象になる。

リンク: EMAのプレスリリース

エーザイのInovelon(rufinamide、和名イノベロン)は41歳以上のレノックス・ガストー症候群の治療薬として追加投与することが支持された。通常は成人の適応を取ってから小児治験を行うが、レノックス・ガストー症候群が小さい時に発症することが多く、壮年適応が後になる珍しいパターンになった。

リンク: EMAのプレスリリース


【承認】


マリファナの成分を用いた抗癲癇薬が承認
(2018年6月25日発表)

FDAは、英国のGW Pharmaceuticals(Nasdaq:GWPH)のEpidiolex(cannabidiol)をレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群の治療薬として承認した。大麻に含まれるカンナビノイドの一つだが、テトラヒドロカンナビロールと異なり陶酔作用がない。大麻由来の医薬品やドラベ症候群治療薬の承認は米国初。麻薬取締省の麻薬指定審査の結果を待って発売する予定。欧州でも承認審査中。

リンク: FDAのプレスリリース

複雑性尿路感染症治療薬が承認
(2018年6月26日発表)

Achaogen(Nasdaq:AKAO)は、FDAがZemdri(plazomicin)を薬物耐性複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の治療薬として承認したと発表した。大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクター・クロアカ、プロテウス・ミラビリスによる感染症に用いる。Achaogenは菌血症でも申請したが、治験が目標症例数に到達しなかったせいか、審査完了となった。

腎臓や聴器に対する毒性や神経筋遮断、催奇性などが枠付き警告となった。

リンク: Achaogenのプレスリリース

ゼルヤンツ、EUで乾癬性関節炎治療薬として承認
(2018年6月28日発表)

ファイザーは、JAK阻害剤のXeljanz(tofacitinib)を乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。疾病装飾的抗リウマチ薬に十分反応しない患者に、MTX併用で5mgを一日二回、経口投与する。米国では昨年12月に承認された。

リンク: ファイザーのプレスリリース






今週は以上です。

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