【ニュース・ヘッドライン】
- Ionis、FDAがhATTR用薬の承認申請を受理
- アムジェン、欧州でも抗スクレロスチン抗体を承認申請
- FDA諮問委員会は経口テストステロンに厳しい評価
- FDA、アストラゼネカのPARP阻害剤を乳癌に適応拡大
- ロシュ、OcrevusがEUでも承認
- アストラゼネカ、協和発酵由来の喘息治療薬がEUでも承認
【承認申請】
Ionis、hATTR用薬の承認申請をFDAが受理
(2018年1月8日発表)
Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、FDAがIONIS-TTRRx(inotersen)の新薬承認申請を受理し、優先審査指定したと発表した。審査期限は7月6日。欧州でも昨年11月に承認申請済み。
hATTR(先天性トランスサイレチン調停アミロイドーシス)の治療薬で、トランスサイレチンの発現をアンチセンスすることによって、末梢神経や心臓などに蓄積して線維化が進行するのを抑制する。172例を組入れて15ヶ月間投与した試験では、病状評価スコアやQOLスコアの悪化が偽薬群より有意に小さかった。深刻な有害事象は血栓性血小板減少症や腎障害。早期に発見し介入するプロトコルを導入後は減少した由。
グラクソ・スミスクラインがインライセンス・オプションを保有していたが、血栓性血小板減少症リスクが表面化したためか行使を見送った。Ionisは販売パートナーを探索している。
Alnylam(Nasdaq:ALNY)も昨年12月にALN-TTR02(patisiran)をhATTR用薬として承認申請している。各々の臨床成績を横目で見比べるとpatisiranのほうに軍配が上がりそうだ。
リンク: Ionisのプレスリリース
アムジェン、欧州でも抗スクレロスチン抗体を承認申請
(2018年1月18日発表)
アムジェンとUCBは、EUでEvenity(romosozumab)を骨粗鬆症治療薬として承認した。骨粗鬆症の閉経後女性と男性で骨折リスクの高い患者に用いる。Wntなどのパスウェイに関わるスクレロスチンを標的とする抗体医薬で、造骨を促進し破骨を抑制することによって骨密度を改善、骨粗鬆症性骨折のリスクを削減する。臨床試験のデザインを見る限りでは、1年コースを想定しているように感じられる。
第三相試験のうち、ARCH試験では1年間の心血管深刻有害事象発生率が2.5%とアレンドロン酸群の1.9%を上回った。そのせいか、16年7月に承認申請された米国では、審査完了に留まった。
UCBが買収した英国のセルテックが創製、アムジェンは前臨床段階でインライセンスした。日本はアムジェンとアステラスの合弁会社が16年12月に製造販売承認申請した。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA諮問委員会は経口テストステロンに厳しい評価
(2018年1月10日発表)
FDAのBRUDAC(骨再生産泌尿器用薬諮問委員会)は、Lipocine(Nasdaq:LPCN)が承認申請したテストステロン補充療法用経口剤、Tlando(testosterone undecanoate)を検討し、19人の委員中13人が便益がリスクを上回るとは言えない(承認反対)と判定した。前日には類薬であるClarus Therapeutics社のJatenzo(testosterone undecanoate)も19人中10人が反対している。諮問委員会は決定権を持たないのでFDAが承認する可能性はゼロではないが、かなり低そうだ。
Clarusは14年に、Lipocineは15年に夫々承認申請したが第一巡の承認審査は審査完了に終わった。前者は諮問委員会で討議されたが21人中17人が反対した。問題は大きく二点ある模様だ。第一はテストステロン補充療法がアンチエイジングの名目で乱用されている現実。両社は性腺機能低下などによるテストステロン欠乏症の治療薬として承認申請しているが、経口剤が発売されればオフレーベル使用に拍車がかかる懸念がある。
第二は経口剤の薬物動態上の問題。脂溶性を高めることで肝臓による代謝を回避しているが、食中服用だと食物中の脂肪量により血清テストステロンが変動する。どちらも一日二回服用だが、朝食と夕食だと脂肪摂取量はかなり異なるのが普通だろう。また、治療の目的はテストステロンを正常レンジに上げることだが、少なからぬ患者でレンジを超過してしまう。テストステロンはゲル製剤なども存在するので、不完全な薬を敢えて使う必然性はない。
この二点の背景は、テストステロン補充療法には心血管リスクが高まる懸念があることだ。二剤の試験では血圧や心拍数、ヘマトクリットの上昇やHDL-Cの低下が見られた。このため、心血管アウトカム試験の実施を求める諮問委員もいた。
Clarusは未上場で財務状況などは不明だが、Lipocineは厳しい状況にあるため、株価が暴落した。
リンク: Lipocineのプレスリリース
【承認】
FDA、アストラゼネカのPARP阻害剤を乳癌に適応拡大
(2018年1月12日発表)
FDAはアストラゼネカのLynparza(olaparib、和名リムパーザ)を転移性乳癌の再発治療に適応拡大した。生殖細胞系BRCA有害変異を持ち、her2が陰性で化学療法歴(ホルモン受容体陽性は内分泌療法歴も)を持つ患者が適応になる。BRCA変異型卵巣癌の再発治療や地固め療法に承認されているPARP阻害剤で、PARP阻害剤が乳癌に承認されたのは初。
BRCAは遺伝子修復に係る遺伝子で、機能低下変異を持つ患者は卵巣癌や乳癌のリスクが高い。乳癌のうちBRCA変異型は5~10%。
MSDが開発販売提携しており、今回、達成報奨金をアストラゼネカに払うことになる。Lynparzaのコンパニオン診断はMyriad Genetic社の血液検査システム、BRACAnalysis CDxで、この適応拡大も承認された。
日本でも昨年11月に第二部会を通過したので、早晩承認されるだろう。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
ロシュ、OcrevusがEUでも承認
(2018年1月12日発表)
ロシュはOcrevus(ocrelizumab)がEUで活性期再発型および早期段階の一次進行型の多発性硬化症の治療薬として承認されたと発表した。CD20と標的とするヒト化抗体で、再発型の臨床試験では再発リスクと障害進行がRebif(interfeon β-1a)より小さく、一次進行型試験では障害進行が偽薬より小さかった。3月に承認された米国のレーベルには、乳癌のリスクが存在するかもしれないと記されている。
リンク: ロシュのプレスリリース
アストラゼネカ、協和発酵由来の喘息治療薬がEUでも承認
(2018年1月10日発表)
アストラゼネカは、Fasenra(benralizumab、和名ファセンラ)がEUで承認されたと発表した。好酸球性喘息症で高量吸入ステロイドと長期作用性ベータ2作用剤を併用しても喘息発作を十分に管理できない患者に追加する。
協和発酵がPOTELLIGENT技術を用いて開発した、好酸球のIL-5受容体アルファチェーンを標的とするヒト化抗体。皮注用薬で最初の3回は4週毎、その後は8週毎に投与する。米国では昨年11月に承認されている。日本は昨年11月に第二部会を通過したので早晩承認されるだろう。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
今週は以上です。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。