【ニュース・ヘッドライン】
- ESC:抗IL-1ベータ抗体が心筋梗塞リスクを削減
- ESC:CETP試験の心血管アウトカム試験が遂に成功したが
- ESC:イグザレルト、安定期アテローム硬化試験は成功
- 家族性カイロミクロン血症候群のアンチセンス薬が承認申請
- 低血圧ショック治療薬が承認申請
- バイエル、PEG化第VIII因子を承認申請
- ファイザー、ボシュリフの一次治療を欧米で適応拡大申請
- ロシュ、Gazyvaの適応拡大を米国でも承認申請
- CAR-Tの第一号が米国で承認
- カルバペネム耐性菌にも有効な複合抗生剤が承認
- ファイザーのマイロターグが米国で復活
- アヴェオのVEGFR阻害剤がやっと欧州で承認
- FDA、キイトルーダの骨髄腫試験の詳細を公表
【新薬開発】
ESC:抗IL-1ベータ抗体が心筋梗塞リスクを削減
(2017年8月27日発表)
ギャンブルには金持ちには勝てないという金言がある。千三つの新薬開発も、カネがあれば何でもできるとは言わないまでも、莫大な臨床試験予算を持つビッグファーマのほうが成功確率が高いのではないか。疑うものは、今年のESC欧州心臓学会を見ればよい。今回取り上げる三本の心血管アウトカム試験は、何れも、多くの患者を長期間フォローして治験の検出力を弓のようにギリギリ引き絞ったことが勝因で、NNT(一人を有害イベントから救うために治療すべき人数)自体は小さく、深刻な有害事象またはその懸念も見られた。
私の感想は、使うべきか、避けるべきか、それが問題だ。
それはそれとして、ノバルティスの抗IL-1ベータ抗体、Ilaris(canakinumab、和名イラリス)を高hsCRP心筋梗塞歴患者の再発予防に用いたCANTOS試験は大変な成果を上げた。炎症と免疫、血栓は互いに関係しているのでIlarisのような抗炎症免疫薬がアテローム硬化の進行緩和に有効であっても不思議はないが、キチッと立証されたのは今回が初めてだろう。
今後、抗IL-6抗体なども含めて様々な抗炎症薬スクリーニングが行われ、その中から、心筋梗塞予防効果が高く免疫抑制副作用が小さい、最もバランスが優れた薬が選抜されることになるのではないか。
また、今回の試験も、Ridkerらが主導したもう一つのランドマーク的試験、rosuvastatinのJUPITER試験も高hsCRP患者だけを組入れたが、低値患者には本当に無効なのか、hsCRPを用いて高リスク患者をスクリーニングする手法の特許を保有していない第三者に研究してもらいたいものだ。
本題に入ると、CANTOS試験は30日以上前に心筋梗塞を経験した、高感度CRP値が2mg/dL以上の患者10061人を偽薬、50mg、150mg、300mgの4群に無作為化割付して、メジアン3.7年間追跡した。用法は3ヶ月に一回、皮注。主評価項目は心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的卒中の複合評価項目。複数の群が設定されているため、多重性を補正するためにpの閾値は0.05より低くなっている。
尚、当初の計画では17200人を組入れるはずだったが開始後にノバルティスの要望を受けて組入れ規模を縮小した。17000人以上がスクリーニングを受けたが、セントラルラボの検査でhsCRP値が2mg/dLを下回ったり、結核菌感染歴などの理由で、4割がドロップした。実用性を考える上で重要な情報である。
当初の解析計画では、主評価項目イベント1400例、相対リスク削減20%という仮説に基づき、一つ以上の用量で有意差が出る検出力が90%だった。組入れは減ったが追跡期間1年延長の結果、イベント数が1400を超えたので、プロトコル変更後の検出力も90%程度と推測される。
各群の100人年当り主評価項目イベント発生率は4.50、4.11、3.86、3.90となった。150mgの偽薬比ハザードレシオ(HR)は0.85(95%信頼区間0.74-0.98)、p値は0.02075で閾値の0.02115をギリギリ下回った。300mgのHRは0.86(0.75-0.99)と150mgより多少劣る程度だったが、フェールした。効能は主として心筋梗塞の減少。心血管死は全用量とも、偽薬群より少なかったが有意ではなかった。全死亡も同様。
IlarisはIL-1やIL-6が関与する周期熱症候群やStill病、そしてある種の関節炎に承認されているが、免疫抑制作用を持つため、感染症や癌が懸念されるところである。CANTOS試験は長期試験なのでリスクを観察するには丁度良く、担当医の自発的報告ではなく密接な監視・診断が行われたものと推測する。この副作用分析で、驚くべき仮説が浮上した。三用量合計と偽薬群の比較で致死的な感染症・敗血症が有意に増えたが、癌は数値上少なく、癌による死亡は有意に少なかった(p=0.02)。特に肺癌が減った。
今回の試験だけでは何とも言えないが、300mg群の肺癌HRは0.33、p<0.0001、肺癌による死亡は0.23、p=0.0002と中々のものなので、改めて癌治療試験を行う価値があるかもしれない。
ノバルティスは心筋梗塞再発予防で適応拡大を申請する考え。09年に希少疾患用薬として発売した薬なので現状では年20万ドルと非常識な価格になってしまうが、承認されたら値下げするのではないか。CANTOSには日本の施設も参加した模様なので日本でも承認申請されるだろう。
ノバルティスは、先月、Xoma(Nasdaq:ZOMA)から抗IL-1ベータ・アロステリック抗体であるgevokizumabの権利をライセンスした。色々な治験がフェールし開発中止となった薬だが、潜在的なライバルの芽を摘んだのだろう。抗IL-1抗体は数多く臨床入りしたが、今現在生き残っているのはリジェネロン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:REGN)のArcalyst(rilonacept)位だ。
リンク: Ridkerらの治験論文(NEJM誌)
リンク: ノバルティスのプレスリリース
ESC:CETP試験の心血管アウトカム試験が遂に成功したが
(2017年8月29日発表)
MSDは6月にCETP阻害剤MK-0859(anacetrapib)の心血管アウトカム試験成功を発表した。他社のCETP阻害剤は全てフェールしており、プレスリリースのトーンが抑制的で脂肪細胞蓄積リスクにも言及していたためESCでのデータ発表が注目されたが、案の定、治験が成功したのは検出力が高く効果が小さくても有意差が出たからだった。
CETP阻害剤はコレステロール・エステル転送蛋白がコレステロール・エステルをHDL-CからLDL-Cに移送するのを妨げる。善玉コレステロールと呼ばれる血清HDL-Cを大きく増やす効果がある。HDL-Cだけを増やす薬の心血管アウトカム試験は全滅と言っても良い状態だが、anacetrapibとイーライリリーのevacetrapibはファイザーのtorcetrapibや日本たばこ/ロシュのdalcetrapibと異なりLDL-C値を大きく減らす効果も持つ。
LDL-C値低下幅と心血管リスク削減率は相関するという法則があるので、HDL-C矯正が無効でもLDL-C低下で補えると考えていたが、見込み違いだったのは、LDL-C低下作用が当初考えられていたほどではなかったことだ。
LDL-C値の検査方法といえば数年前に直接法とFriedewald法の優劣が議論されたことがあるが、CETP阻害剤についてはどちらも不適で、ベータ定量法を使うべきであることがanacetrapibのDEFINE試験のサブスタディで判明。DEFINE試験では10~12mg/dL、今回のサブスタディによると15mg/dL程度、LDL-C値が過小評価(低下作用は過大評価)されたようだ。偽薬群との群間差が11mg/dL程度ならば、リスク削減率が10%弱に留まっても驚きではない。
このHPS3/TIMI55/REVEAL試験はMSDのコレステロール治療薬の心血管アウトカム試験であるHPSやHPS2を主導したオックスフォード大学の臨床試験ユニットが、米国の血栓学共同治験グループであるTIMIなどと実施したグローバル試験。安定期心筋梗塞、脳血管疾患、末梢動脈性疾患、または糖尿病を併発する慢性心疾患の患者30449人を偽薬群とanacetrapib(100mgを一日一回、経口投与)群に無作為化割付して、メジアン4.1ヶ月フォローした。
主評価項目は冠動脈死、非致死的心筋梗塞、冠血行再建術の複合評価項目。解析計画は、偽薬群のイベント発生率が年1.8%、ハザードレシオ0.85という仮説でpが0.01を下回る検出力88%というもので、元々オーバーパワーだったのだが、イベント発生率が想定を上回ったため、更にオーバーパワーになった。
結果は、偽薬群のイベント発生率が11.8%、試験薬群は10.8%、率比(レート・レシオ)は0.91(95%信頼区間0.85-0.97)、p=0.004で、有意な差があった。心筋梗塞と冠血行再建術が有意に減少。冠動脈死、心血管死、全死亡も偽薬群より少なかったが有意ではなかった。副次的評価項目である冠動脈死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合評価項目は率比0.93、p=0.052でフェールしたが、脳卒中が増えなかったことは一安心。
両群のカプランマイヤー・カーブは最初の2年間は殆どオーバーラップしていて乖離したのはその後。evacetrapibの試験のメジアンフォロー期間は26ヶ月なので、フェールしたのは組入れ数だけでなく追跡期間も足りなかったことになる。但し、カプランマイヤー・カーブの右側部分はノイズの影響を受けやすいので、「CETP阻害剤の心血管リスク削減効果は2年経ってから発揮される」と結論するには早いだろう。
この試験ではランイン期間中にatorvastatinによる治療を行ったため、ベースライン時点のLDL-C値は61mg/dLと低かった。偽薬群は64mg/dLに若干上昇、anacetrapib群は38mg/dLに低下し26mg/dLの群間差が生じたが、上述のように、ベータ定量法を用いたサブスタディでは11mg/dLしか差が無かった。HDL-C(ベースライン値40mg/dL)は治療後に43mg/dL、104%の群間差が生じた。非HDL-Cコレステロールは17mg/dL、18%の差に留まった。
anacetrapibは血液中からは除去されるが脂肪細胞に結合したら殆ど消失しない由だ。今のところ有害影響は観察されていないとはいえ、気持ち悪い。MSDは薬効や副作用リスクを検討したうえで承認申請の当否を決定する考え。
リンク: 共同治験グループの治験論文(NEJM誌)
リンク: MSDのプレスリリース
ESC:イグザレルト、安定期アテローム硬化試験は成功
(2017年8月27日発表)
経口Xa阻害剤は薬物動態の個人差や食事影響が小さく、血栓カスケードが亢進している時だけ作用するので、血栓性疾患予防効果と出血リスクのバランスが良いはず、と期待されたが、それほどでもなかった。尤も、用途は多岐に亘り、併用薬の組み合わせも元々多いところに新薬も出てきているため、探索の余地は大きい。
用途がオーバーラップするワーファリンは、心筋梗塞と心原性脳梗塞の両方を予防しなければならない患者にclopidogrelやアスピリンと三剤併用すると出血リスクが高まる。
バイエルがジョンソン・エンド・ジョンソンと開発販売提携しているXa阻害剤、Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)も、急性冠症候群にアスピリンと併用しclopidogrelの三剤併用も可とした再発予防試験が成功したが、効果は小さく深刻な出血リスクも見られたことから、米国では適応拡大が承認されず、EUは承認されたが心臓バイオマーカー上昇例に限定された。
ESCで結果発表されたCOMPASS試験は、安定期アテローム性血管疾患の患者約27000人をアスピリン(100mg)、アスピリンとXarelto(2.5mg一日二回)、Xareltoのみ(5mg一日二回)の三群に無作為化割付して、平均23ヶ月追跡した(中間解析で成功認定されたため短い)。アスピリンとclopidogrelのような抗血小板薬を併用するDAT療法を受けている患者は除外条件とされた。
結果は、主評価項目発生率が各群5.4%、4.1%、4.9%となり、二剤併用群はアスピリン単剤群より有意に低かった。ハザードレシオは0.76(95%信頼区間0.66-0.86)、p<0.001。心血管死はハザードレシオ0.78、p=0.02で、心筋梗塞や虚血性脳卒中は数は少なかったが有意ではなかった。大出血は各群1.9%、3.1%、2.8%でXarelto併用群も単剤群も有意に増加した。
この結果は、急性冠症候群試験とよく似ている。通常の虚血性疾患予防薬と異なり心筋梗塞を防ぐ効果が弱く、出血リスクが泣き所だが、なぜか、心血管死が減少した。イベント数は決して多くないので注意が必要だが、もし作用機序が検証できるならば、検証してもらいたいものだ。
急性冠症候群試験と比べると再発予防効果はやや大きく、出血リスクの増加は大差ない。従って、今回の適応のほうが承認の確率が高いのではないか。
リンク: Eikelboomらの治験論文(NEJM誌)
リンク: バイエルのプレスリリース
【承認申請】
家族性カイロミクロン血症候群のアンチセンス薬が承認申請
(2017年8月31日発表)
Akcea Therapeutics(Nasdaq:AKCA)は、AKCEA-APOCIII-LRx(volanesorsen)を家族性カイロミクロン血症候群の治療薬として米国で承認申請した。欧州でも7月に承認申請済み。
世界で3000~5000人が罹患する希少疾患で、リポ蛋白リパーゼの遺伝子欠損によりカイロミクロンを代謝できず、トリグリセライドが増加、膵炎のリスクが高まる。
AkceaはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のスピンアウトで、脂質異常による深刻な心臓代謝性疾患の治療薬に特化している。volanesorsenはIonisが創製した核酸医薬で、肝臓でトリグリセライドのクリアランスを調停するApoC-IIIの遺伝子をアンチセンスする。トリグリセライドが7割程度減る。注射薬なので注射箇所反応が発生することがあり、または、血小板減少リスクもある。
リンク: Akceaのプレスリリース
低血圧ショック治療薬が承認申請
(2017年8月28日発表)
La Jolla Pharmaceuticals(Nasdaq:LJPC)は、LJPC-501を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年2月28日。合成ヒト・アンジオテンシンIIで、標準療法に反応しない血管拡張性ショック患者の治療薬として連続点滴静注する。第三相試験では、70%の患者で3時間以内の昇圧に成功した。偽薬群は23%だった。死亡リスクが22%小さかったが検出力不足で有意水準には達しなかった。
リンク: La Jollaのプレスリリース
バイエル、PEG化第VIII因子を承認申請
(2017年8月31日発表)
A型血友病のうち出血リスクが高い患者は、第VIII因子をルーチン投与して予防する。この用法に適した、通常の製剤(週3~4回投与)より効果が持続する製品が次々発売されているが、バイエルもPEG化第VIII因子、BAY 94-9027を米国で承認申請した。第三相試験では週二回投与で開始して出血予防良好なら5~7日毎に切り替える手法を検討した。
リンク: バイエルのプレスリリース
ファイザー、ボシュリフの一次治療を欧米で適応拡大申請
(2017年8月29日発表)
ファイザーは、Bosulif(bosutinib、和名ボシュリフ)を慢性骨髄性白血病の一次治療に用いる適応拡大申請が欧米で受理されたと発表した。米国の審査期限は今年12月。src/abl阻害剤で、現在はGleevec(imatinib)など他のabl阻害剤を既に用いた患者の二次治療薬として承認されている。
Bosulifといえば、iPS細胞研究所の井上教授がALSに有効な可能性を指摘、改めて注目されている。
リンク: ファイザーのプレスリリース
ロシュ、Gazyvaの適応拡大を米国でも承認申請
(2017年8月28日発表)
ロシュは、Gazyva(obinutuzumab)をCD20陽性濾胞性リンパ腫の一次治療に用いる適応拡大申請を米国で行い、受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は今年12月23日。
Rituxan(rituximab、和名リツキサン)と同様にCD20に結合する抗体医薬だが、翻訳後装飾でフコースが付与されないよう糖鎖が改変されており、ADCC活性が高い。現在は慢性リンパ性白血病や濾胞性リンパ腫の再発治療に承認されており、直接比較試験の多くでRituxanを上回る延命効果を示した。
今回の適応拡大申請はGALLIUM試験に基づくもの。化学療法と併用し、単剤による維持療法も行う群と、GazyvaではなくRituxanを用いる標準療法群のPFS(無進行生存期間)を比較したところ、ハザードレシオ0.68と有意に優れていた。
リンク: ロシュのプレスリリース
【承認】
CAR-Tの第一号が米国で承認
(2017年8月30日発表)
FDAは、ペンシルバニア大学発のCAR-T(キメラ抗原受容体発現T細胞)療法を承認した。ノバルティスが権利を取得し承認申請したKymriah(tisagenlecleucel)で、適応は、難治性または2回目以降の再発となった前駆B急性リンパ性白血病(ALL)の25歳以下の患者。承認の根拠となった第二相試験では、総合寛解率が83%だった。
FDAは初の遺伝子療法と呼んでいる。B細胞特異的に発現するCD19に結合する抗体の単鎖可変領域とTCRの共刺激伝達領域である4-1BB、そしてCD3ゼータ鎖をスペーサーで繋げた遺伝子を、レンチウイルスを用いて、患者から採取したT細胞に導入・培養したもので、患者の体内に戻すとT細胞が抗原提示不要でB細胞を攻撃する。
深刻な副作用は、サイトカイン放出症候群と神経学的イベント(脳症やせん妄など)が枠付き警告された。前者は中外のActemra(tocilizumab)が有効で、完全解消率69%となっている。今回、Actemraの適応拡大が承認されるとともに、REMS(リスク評価緩和戦略)の中で、Kymriahを使う医療施設はActemraも用意することが求められた。
治療後8週間は自動車運転など危険を伴う行為を行うべきではない。治療を受けた患者は二次性腫瘍や白血病再発を永遠にモニターする必要がある。
遺伝子導入・培養はニュージャージーの工場で行われる。上記治験には日本の施設も参加した模様なのでロジスティクス面は克服可能なのだろう。当面は米国でも治療を受けられる医療施設を段階的に増やしていく考えのようだ。今回の適応は米国で年600人と少ないが、年内にびまん性大細胞性巨大B細胞リンパ腫に適応拡大申請される予定。欧州でも年内申請予定となっている。
Kymriahの価格は47万5000ドル。反応率が高く、多くで効果が持続し、子供の癌は完治の可能性もあり、治癒的治療である骨髄移植は米国では80万ドルかかるのでフェアなプライシングと考えているようだ。公的医療制度を担うCMSとの間では、1ヶ月以内に応答した患者だけから費用を徴収するPay-for-Performanceディールが結ばれる模様。民間医療保険も倣うのではないか。前途のある若者、子供が何十万ドルの借金を背負って生きなくても良いように、工夫してもらいたいものだ。
ノバルティスはCAR-Tの開発でKite Pharma(Nasdaq:KITE)などとしのぎを削っているが、Kiteはギリアド・サイエンシズが119億ドルで買収することで合意した。抗PD-1/PD-L1抗体に続いてブームがヒートアップしている。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: ロシュのActemra適応拡大に関するプレスリリース
カルバペネム耐性菌にも有効な複合抗生剤が承認
(2017年8月29日発表)
FDAは、メディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)のVabomereを複雑尿道感染症の治療薬として承認した。meropenemとvaborbactamの合剤で、カルバペネム耐性菌のように新種のベータラクタマーゼを分泌するグラム陰性菌にも有効。8時間毎に3時間点滴静注する。piperacillinとtazobactamの合剤(Zosyn)と比較した第三相試験では、臨床的治癒率が98.4%対94.0%と有意に上回った。深刻有害事象はアレルギー反応と癲癇。
2013年に達成報奨金も含めて5億ドル弱で買収したRempex Pharmaceuticalsの開発品。メディスンズは熱帯病優先審査バウチャーを取得した。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: メディスンズ社のプレスリリース
ファイザーのマイロターグが米国で復活
(2017年9月1日発表)
FDAは、ファイザーのMylotarg(gemtuzumab ozogamicin、和名マイロターグ)を承認した。抗CD33抗体と細胞毒性を持つカリケアマイシンのADC(抗体薬物複合体)で、2000年にCD33陽性急性骨髄性白血病の再発治療薬として加速承認されたが、市販後薬効確認試験が相次いでフェールしたため、FDAの要請に基づきメーカーが自発的に承認を返上した。当時は市販後薬効確認試験をネグる新興製薬会社が少なくなかったため、FDAも諮問委員も、ルール通りに厳しいスタンスを取ったのである。
ファイザーは日本を除く多くの国で販売を中止したが、医師主導で用量を減らしたり、一度ではなく数回に分けて投与することで致死的肝静脈閉塞症のリスクを緩和する手法が開発され、複数の臨床試験が成功した。今回の承認もこの用法用量に基づくもので、新患に化学療法併用、高度集中療法不適の新患に単剤投与、再発患者に単剤投与、の三種類のエビデンスがある。
欧州でも承認審査中。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース
アヴェオのVEGFR阻害剤がやっと欧州で承認
(2017年8月28日発表)
アヴェオ・オンコロジー(Nasdaq:AVEO)のFotivda(tivozanib)が欧州で末期腎細胞腫用薬として承認された。一次治療、またはサイトカイン薬による治療歴を持つがVEGFR阻害剤は未経験の患者の二次治療に用いる。第二相離脱試験に基づくもの。米国では承認されず、18年に第三相三次治療試験の結果が出てから再挑戦する予定。
tivozanibは10年前にキリンからアジア以外の権利を取得したもの。開発が進んだ段階でアステラス製薬が欧米のサブライセンスを取得したが、米国で承認されずアステラスが主導した結腸直腸癌試験などがフェールしたことから権利を返還。欧州では新たな提携先であるEUSA Pharmaが販売する。
リンク: アヴェオのプレスリリース
【医薬品の安全性】
FDA、キイトルーダの骨髄腫試験の詳細を公表
(2017年8月31日発表)
MSDの抗PD-1抗体、Keytruda(pembrolizumab)は非小細胞性肺癌など様々な癌に単剤、あるいは化学療法併用で承認されている。開発中の癌や併用法は数多いが、そのうち、多発骨髄腫のdexamethasone(以下、DEX)・免疫調停薬併用第三相試験二本で死亡リスクが観察され、今年6月にMSDが新規組入れ停止、7月にはFDAが投与中止を決定した。今回、FDAは、骨髄腫に承認されていないことも含めて、改めて警告するとともに解析結果を公表した。
一本は183試験で、三次治療としてセルジーンのPomalyst(pomalidomide)及びDEXと三剤併用したところ、死亡者が29人とPomalyst・DEX二剤併用群の21人を上回った。ORR(客観的反応率)は34%で二剤併用の40%を下回り、深刻有害事象発生率は63%対46%で上回った。
もう一本の185試験は自家造血幹細胞移植不適の新患にセルジーンのRevlimid(lenalidomide)とDEXを併用するRdレジメンと三剤併用したところ、死亡者数が19人とRdレジメン群の9人を上回った。ORRは64%対62%で大差なく、深刻有害事象は54%対39%で上回った。
抗PD-1/PD-L1抗体は天然の免疫回避メカニズムを阻害することによって免疫賦活するが、自己免疫性疾患のリスクが高まりこれまでの抗癌剤とは異なった副作用が出る。Revlimidなどの作用機序も免疫強化と考えられており、併用すると副作用ばかり増強されてしまうのかもしれない。
リンク: FDAのアラート
今週は以上です。
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