2016年9月19日

2016年9月19日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 血糖治療薬のアウトカム試験がまた成功
  • GSK、坑IL-6抗体を欧州で承認申請
  • CHMPが三社の抗癌剤などに肯定的意見
  • スペクトラム、FDA諮問委員会が承認反対
  • EUが腎細胞腫用薬二製品を承認



【新薬開発】


血糖治療薬のアウトカム試験がまた成功
(2016年9月16日発表)

ノボ ノルディスクのNN9535(semaglutide)の心血管アウトカム試験が成功した。EASD(欧州糖尿病研究学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表された。

semaglutideはGLP-1作用剤で、最近増えてきた週一回皮注型。経口剤も開発中。このSUSTAIN 6試験はFDAのガイドラインに基づいて実施したもので、糖尿病薬を開発する会社は、承認前試験である程度の、承認後試験で万全な、心血管安全性を確認しなければならない。今回は承認前試験なのでリスクが1.8倍以上ではないことを確認する、精度の低い試験だが、ポストホック分析で優越性解析も成功した。

心血管疾患リスクの高い3297人をsemaglutide群(0.5mgまたは1.0mgを週一回皮注)と偽薬群に無作為化割付してメジアン2年間治療したところ、心血管疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合評価項目の発生率が試験薬群6.6%、偽薬群8.9%、ハザードレシオ0.74、95%信頼区間0.58~0.95となった。

販促に使えるほど強固なエビデンスではなく、また、失明を含む網膜症性合併症が有意に増えたので、もろ手をあげて喜ぶほどではない。もっと大規模長期の試験で再確認する必要があるだろう。

リンク: ノボのプレスリリース
リンク: Marsoらの治験論文(NEJM)

【承認申請】


GSK、坑IL-6抗体を欧州で承認申請
(2016年9月12日発表)

グラクソ・スミスクラインは、sirukumabをEUで販売許可申請したと発表した。想定適応症と用法は、中重度活性期リウマチ性関節炎で既存薬(バイオ薬を含む)に十分反応しない患者にMTXと併用する。MTX不適には単剤治療も可。

第三相試験の一つでは、50mgを4週間に一回、または100mgを2週間に一回皮注する用法を検討したところ、共同主評価項目であるHeijde-Sharpスコア(関節損傷の指標)も、ACR20も、偽薬比有意に改善した。用量間の差は小さいそうだ。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの抗IL-6完全ヒト化モノクローナル抗体、CNTO 136を共同開発しているもので、GSKは米州での独占商業化権を保有している。米国も年内に承認申請予定。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが三社の抗癌剤などに肯定的意見
(2016年9月16日発表)

EUの医薬品承認審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、9月の会議で、イーライリリーやファイザー、武田薬品の坑癌剤とアムジェンの二次性副甲状腺機能亢進治療薬に肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヶ月のうちにEU全域で承認されることになるだろう。

リンク: EMAのプレスリリース

まず、イーライリリーのLY3012207(olaratumab)は抗PDGFRアルファ完全ヒト抗体。治癒的放射線療法・摘出術の対象にならない軟組織肉腫にdoxorubicinと併用する。129例の第二相試験ではメジアン生存期間が26.5ヶ月とdoxorubicinだけの群の14.7ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.463、統計的に有意だった。主なグレード3以上の有害事象は好中球減少症、感染症、点滴反応。

条件付き承認なので薬効確認試験を別途行う必要がある。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: イーライリリーのプレスリリース

ファイザーのIbrance(palbociclib)はCDK4/6阻害剤。ホルモン受容体陽性、her2陰性の転移性乳癌にアロマターゼ阻害剤などと併用する。米国では15年に第二相試験のデータに基づき加速承認されたが、EUは第三相試験の結果が出るまで遅れた。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース

武田薬品のNinlaro(ixazomib)は経口プロテアソーム阻害剤。CHMPは当初、薬効が不十分と見なして5月に否定的意見を出したが、武田の異議申し立てを受けて腫瘍学のエキスパート・グループの意見を求め、安全性プロファイルや経口剤の利便性を考慮し、条件付き承認を支持した。米国では承認申請から4ヶ月で15年11月に承認された。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: EMAのQ&A集(pdfファイル)

最後に、アムジェンのParsabiv(etelcalcetide)。カルシウム感受受容体アゴニストで、慢性腎疾患透析期の患者の二次性副甲状腺機能亢進に用いる。透析後に静注する。症候性低カルシウム血症のリスクがある。米国は8月に審査完了通知を受領した。承認されなかった理由は公表されていない。

日本は1月にライセンシーの小野薬品が承認申請した。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: アムジェンのプレスリリース

適応拡大では、ジョンソン・エンド・ジョンソンのStelara(ustekinumab、和名ステラーラ)を難治性の中重度活性期クローン病に用いることが支持された。臨床試験ではCDAI100奏効率が用量により52~56%と偽薬群の29%を有意に上回った。IL-12/IL-23のp40部位に結合する完全ヒト化抗体で、現在の承認用途は乾癬と乾癬性関節炎。

リンク: EMAのプレスリリース

スペクトラム、FDA諮問委員会が承認反対
(2016年9月14日発表)

Spectrum Pharmaceuticals(Nasdaq:SPPI)はQapzola(apaziquone)を非浸潤性膀胱癌向けに米国で承認申請したが、腫瘍学薬諮問委員会は薬効が偽薬並みと断じ、全員一致で承認に反対した。久々の完敗だが、第三相試験が二本ともフェールしたのだからやむを得ない。

リンク: Spectrumのプレスリリース

【承認】


EUが腎細胞腫用薬二製品を承認
(2016年9月14日発表)

EUは、エグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)とエーザイが承認申請した夫々の会社のVEGF受容体拮抗剤を末期腎細胞腫用薬として承認した。どちらも、ファイザーのSutent(sunitinib)など一次治療に承認されているVEGF受容体拮抗剤による前治療歴を持つ患者に用いる。

エグゼリキシスのCabometyx錠(cabozantinib)は単剤投与。臨床試験では、第三者査読に基づくPFS(無進行生存期間)がメジアン7.4ヶ月と実薬(everolimus)群の3.8ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.58だった。メジアン生存期間は21.4ヶ月対16.5ヶ月、ハザードレシオ0.66だった。

活性成分は末期・転移性切除不能甲状腺髄様癌用薬Cometriqカプセルとして12年に初承認。今回のほうが対象患者も競合薬も多いせいか、欧米共に製剤と製品名を変更している。

リンク: エグゼリキシスのプレスリリース

エーザイのKisplyx(lenvatinib)はeverolimusと併用する。第二相試験ではPFSが14.6ヶ月とeverolimus群の5.5ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.40。メジアン生存期間は25.5ヶ月対15.4ヶ月でハザードレシオ0.59だった。この試験ではlenvatinib単剤投与群も設定されたが、PFSは7.4ヶ月でeverolimusを少し上回る程度だった。everolimusを基準に考えると、単剤ではCabometyxのほうが効果が高そうだが併用できるなら併用するのが一番良さそうだ。

活性成分は15年に進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺癌用薬Lenvimaとして承認された。製品名を変えたのは、EUが希少疾患指定を受けている用途と他の用途で製品名を変えるよう求めていることが理由である由。

リンク: エーザイのプレスリリース(9/15付、和文)




今週は以上です。

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