2016年9月11日

2016年9月11日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA、卵巣癌スクリーニングテストに注意を呼びかけ 
  • GSK、retigabineの販売を中止へ 
  • SGLT阻害剤の一型糖尿病試験が成功 
  • 画期的作用機序の緑内障治療薬が承認申請 
  • Keytruda、非小細胞性肺癌一次治療が12月にも承認へ 


【今週の話題】


FDA、卵巣癌スクリーニングテストに注意を呼びかけ
(2016年9月7日発表)

FDAは卵巣癌スクリーニングテストに関する警告を発出した。臨床試験データや医学会あるいはU.S. Preventive Services Task Forceの勧奨を検討した結果、無症状の女性の早期卵巣癌をスクリーニングする手法として正確でも信頼できるものでもないと結論した。偽陽性だと無駄に侵襲的検査を受けることになり、偽陰性だと患者が油断して発見が却って遅れるかもしれない。

乳癌や結腸癌、子宮頸がんに関しては有効なスクリーニング法が存在するが、卵巣癌は確立したものがない。Abcodia社は、ROCA(Risk of Ovarian Cancer Algorithm)を用いれば発症前に発見し生存確率を高めることが可能と主張しているが、FDAは根拠がないと一蹴している。

ROCAは様々なリスク因子を総合的に評価する手法のようで、Abcodia社のホームページを読むと、確かに、有効性が喧伝されている。学会が否定的ならあまり普及していないのだろうが、単に無益なだけならともかく、裏目に出るリスクがあるなら規制する権限を持つ官庁がキチンと対処すべきだろう。

リンク: FDAの安全性通知

GSK、retigabineの販売を中止へ
(2016年9月8日発表)

英国のPrescribing Advice for GPsによると、グラクソ・スミスクラインは抗癲癇薬Trobalt(retigabine/INN、米国ではPotiga、ezogabine/USAN)の販売を17年6月をもって中止すると発表した。FDAのサイトにはまだ出ていないが、おそらく他の国でも止めるのだろう。

ヴァレアント社が企業買収を通じて入手したニューロン特定的カリウムチャネル・オープナーで、ライセンシーであるGSKが2010年に米国で、翌年にはEUでも承認取得した。ところが、市販後に網膜異常や唇や爪の退色が高頻度で発生することが判明、サルベージセラピーに格下げされた。販売中止は商業上の理由だが、背景は安全性だ。

リンク: GSKのプレスリリース

【新薬開発】


SGLT阻害剤の一型糖尿病試験が成功
(2016年9月9日発表)

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)は、LX4211(sotagliflozin)の第三相一型糖尿病治療試験が成功したと発表した。他の一型糖尿病試験も進行中。更に、独占開発販売権を持つサノフィが年内に二型糖尿病の第三相を開始する予定。

SGLT阻害剤は血液から尿に移行した糖がSGLTによって血液中に戻るのを妨げる作用機序なので一型糖尿病にも有効であるはずだが、アストラゼネカもベーリンガー・インゲルハイムもジョンソン・エンド・ジョンソンも後回しにしてしまったような印象がある。ケトアシドーシスなど有害事象の増加を懸念しているのかもしれない。二型糖尿病と比べて少ない選択肢が増えるのか、増えないのか、当社および開発販売パートナーであるサノフィに真相解明を期待したい。

SGLT阻害剤の初期の開発品はLX4211のようにSGLT1も阻害するものだったが、胃腸副作用が目立った。承認されている製品は皆、SGLT2選択的である。LX4211の胃腸リスクはどの程度なのかも注目される。

リンク: Lexicon Pharmaceuticalsのプレスリリース

【承認申請】


画期的作用機序の緑内障治療薬が承認申請
(2016年9月6日発表)

カリフォルニア州のAerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)はRhopressa(netarsudil)を緑内障治療薬としてFDAに承認申請した。小柱網を標的とする画期的作用機序を持ち、上強膜静脈圧を緩和する。一日一回点眼する。

一本目の第三相試験はフェールし、timololに対する非劣性が確立しなかった。眼圧26mmHg以下のサブグループでは非劣性であったため、二本目の第三相の解析対象を25mmHg以下の患者だけに変更したところ、一日一回群も、一日二回点眼した群も、timolol比非劣性だった。一日一回でも二回でも効果は大差なく、有害事象が少ない一回のほうが良好だった。

第三相が一勝一敗なので、順調に承認されるかどうか、不透明だろう。尚、緑内障と診断される患者の75%が25mmHg以下である由。

リンク: Aerieのプレスリリース

Keytruda、非小細胞性肺癌一次治療が12月にも承認へ
(2016年9月7日発表)

MSDは、抗PD-1モノクローナル抗体Keytruda(pembrolizumab)を非小細胞性肺癌の一次治療薬として欧米で適応拡大申請したことを明らかにした。米国は優先審査で審査期限は12月24日。承認済みの二次治療と同様に、PD-L1強発現(同社独自の指標である tumor proportion scoreが50以上)が対象で単剤投与する。第三相試験のデータは未発表。

BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)は非小細胞性肺癌一次治療試験がフェールしたので、当面はKeytrudaがこの用途での優先使用薬になるのだろう。

抗癌剤は開発スピードを優先するあまり応答性予測因子の探求が後回しになる恨みがある。EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤も抗EGFR抗体も承認された後で一部の患者にしか有効でないことが判明し、適応が縮小された。抗PD-1抗体では、対象を絞り込まずに大きな市場を獲得しようとしたBMSと、敢えて絞り込んだMSDのどちらが最後に笑うのだろうか。

リンク: MSDのプレスリリース




今週は以上です。

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