2016年7月31日

2016年7月31日号


☆ サノフィの社名を長年に亘ってサノフィ・アベンティスと誤記していたことに今頃気付きました。お詫びして訂正いたします。 ☆

【ニュース・ヘッドライン】

  • MSD、エボラワクチンがブレークスルー・セラピー指定
  • Adaptimmune、開発品をEMAがPRIMEに採用
  • レブラミド、DLBCLメンテ試験はフェール
  • バイオマリン、CLN2病の酵素補充療法を承認申請
  • サノフィ、GLP-1受容体アゴニストが米国でついに承認


【今週の話題】


MSD、エボラワクチンがブレークスルー・セラピー指定
(2016年7月25日発表)

MSDは、開発中のエボラワクチンがFDAにブレークスルー・セラピー指定されたと発表した。6月にはEUの類似した制度であるPRIMEスキームにも採用されている。どちらも、初期段階の臨床試験でunmet medical needsに応える可能性を示したパイプラインの開発・実用化を後押しするもので、ブレークスルー・セラピー指定の場合、第三相試験の結果が出るのを待たずに承認申請に向かった例が少なくない。

エボラはギニアなどにおける流行は沈静化してきたようだが、過去の例でも数年おきに流行しており、油断はできない。寛解後にウイルスが再発見された症例もあり、他のウイルス性疾患と同様に、根絶ではなくどこかに隠れているだけの可能性がある。

MSDのV920ワクチンは遺伝子組換え型弱毒化生ワクチン。Public Health Agency of Canadaからライセンスを取得したNewLink Genetics(Nasdaq:NLNK)が開発し、ワクチン大手であるMSDにバトンタッチしたもの。ギニアの第三相で発症者の家族などハイリスクポピュレーションに接種したところ、中間解析でワクチン効率100%だった。

リンク: MSDのプレスリリース

Adaptimmune、開発品をEMAがPRIMEに採用
(2016年7月28日発表)

Adaptimmune(Nasdaq:ADAP)は、NY-ESO標的T細胞療法が欧州の薬品審査機関であるEMAのPRIMEスキームに採用されたと発表した。NY-ESO-1腫瘍抗原を標的とする自家CAR-T細胞療法で、CD4、CD8、親和性増強T細胞受容体をT細胞と組み合わせたもの。適応症は限定的で、NY-ESO-1抗原を発現する切除不能または転移性滑膜肉腫で、HLA-Aの0201、0205、または0206アレルを持ち、化学療法を既に受けた患者に用いる。

PRIMEの採否はEMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPが毎月の会議で決定している模様だ。5月の会議以来、NY-ESO標的T細胞療法を含めて8品目が採用された。領域は腫瘍学が多いが、CAR-Tのシェアが8品中3品と高いことが目立つ。

リンク: Adaptimmuneのプレスリリース

【新薬開発】


レブラミド、DLBCLメンテ試験はフェール
(2016年7月25日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)は、フランスの研究者共同治験グループであるLYSAが主導したREMARC試験についてアップデートした。主評価項目であるPFS(無進行生存期間)の解析が成功したが、全生存の中間解析で延命効果が見られなかったため、適応追加申請は行わないというもの。

この試験は、びらん性大細胞型B細胞リンパ腫の一次治療としてR=CHOPと呼ばれる多剤併用療法を施行し反応した患者を組み入れて、Revlimidによる維持療法の効果を偽薬と比較したもの。対象疾患と対照療法は先週取り上げたロシュのGazyva(obinutuzumab)のGOYA試験と似ており、R-CHOPに勝つのはハードルが高いことを示している。

Revlimidは多発骨髄腫やMDS(骨髄異形成症候群)に承認されている。非ホジキン型リンパ腫では、今回の試験のほかに、びらん性大細胞型B細胞リンパ腫のうちABCサブタイプだけを組み入れた試験や、濾胞性リンパ腫の一次治療や再発治療試験なども進行中。発売から10年経ったが用途開発は未だまだ進行中だ。

リンク: セルジーンのプレスリリース

【承認申請】


バイオマリン、CLN2病の酵素補充療法を承認申請
(2016年7月27日発表)

バイオマリン・ファーマスーティカル(Nasdaq:BMRN)は、Brineura(cerliponase alfa)を小児CLN2病の治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年1月27日。EUでもEMAに販売承認申請した。

CLN2病は、TPP1/CLN2遺伝子の変異が原因でトリペプチジルペプチダーゼが機能せず、ライソゾームで分解されるべきものが蓄積する急進行性神経変性疾患。典型的には2~4歳で発症し6歳までに歩行・会話能力を喪失する。罹患率は20万人に一人の希少疾患。

cerliponase alfaは遺伝子組換え型ヒト・トリペプチジルペプチダーゼ。第1/2相試験で24人を組み入れて300mgを二週間に一回、脳室内点滴投与したところ、48週間の運動言語機能の悪化(CLN2スケールで計測)が0.43単位と、自然歴データの2.1単位より小さかった。治療時発現深刻有害事象は過敏反応と点滴反応など。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

【承認】


サノフィ、GLP-1受容体アゴニストが米国でついに承認
(2016年7月28日発表)

FDAは、サノフィのAdlyxin(lixisenatide、和名リキスミア)を二型糖尿病薬として承認した。アストラゼネカのByetta(exenatide)と同様なexendin類縁体で、胃腸ホルモンのGLP-1と同様に、食欲や胃腸の食物移動を抑制し、食後の血糖値上昇時にインスリン分泌を刺激する。一日一回皮注。10mcgで開始して2週間後に20mcgに増量する。

主な有害事象は悪心嘔吐などの胃腸系副作用。重大な副作用は低血糖、急性膵炎、アナフィラキシーなど。癌原性試験で甲状腺C細胞腫瘍が見られたことも併せて、GLP-1作用剤のクラスイフェクトを持っている。

デンマークのZealand Pharmaからライセンスしたもの。承認がEUや日本より3年遅れたのは、承認申請用の試験でMACE(主要有害心臓イベント)のハザードレシオが十分に低くなかった(1.25、95%上限は2.35)ため。急性冠症候群安定期の患者を組み入れた心血管アウトカム試験で95%上限が1.168と良好な結果となったため、疑いが晴れて無事、承認となった。

リンク: FDAのリリース
リンク: サノフィのプレスリリース




今週は以上です。

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