2015年3月14日

海外医薬ニュース2015年3月15日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • CTI、骨髄線維症の第三相が成功
  • FDA諮問委員会が二重顎治療薬を支持
  • ブリディオンの米国承認がまた遅延
  • 小児神経芽細胞腫用薬が米国で承認
  • FDA、チャンピックスの警告強化


【新薬開発】


CTI、骨髄線維症の第三相が成功

(2015年3月9日発表)

CTIバイオファーマ(Nasdaq:CTIC)と開発パートナーのバクスター(NYSE:BAX)は、pacritinibの第三相骨髄線維症試験が成功したと発表した。詳細は学会で発表する予定。年内に米国で、欧州は来年、承認申請の予定。

骨髄線維症といえば11年に米国でインサイト/ノバルティスのJAK1/JAK2阻害剤、Jakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)が承認されている。pacritinibはJAK2とFLT3を阻害、JAK1を阻害しないので血小板減少症などの副作用が小さい可能性がある。

今回のPERSIST-1試験は、Jakafiの適応である中重度リスクの骨髄線維症、真性赤血球増多症性、本態性血小板血症の患者をpaclitinibを一日一回、経口投与する群とbest available therapy(BAT)の群に2対1で割付けて脾臓量削減効果を検討した。Jakafiが承認されている国ではJakafiがbest available therapyである筈だが、この試験では禁止された。一方で、Jakafiの第三相試験では除外された血小板数が著しく低下した患者も組入れた。

プレスリリースには記されていないが、同社がSECに提出した年次報告書(10-K)によると、脾臓量削減成功率は19.1%でBAT群の4.7%を有意に上回った。Jakafiの試験では29%対0%だったので、患者背景が異なるのかもしれないが、見劣りする。

Jakafiは血小板数減少の副作用があり、検査数値に応じて用量を調整する必要がある。paclitinibは著しく低下した患者にも有効であった模様なので、このサブグループには貴重な選択肢になりうるだろう。

paclitinibはもう一本、PERSIST-2試験が進行中。こちらはJakafiを含むBATとの比較なので、どの程度の患者がJakafiを服用しているのか明らかではないが、ある程度の直接比較ができるかもしれない。FDAの特別プロトコル評価(SPA)を受けており、その意味でも、こちらの試験の方が重要だろう。

リンク:CTIのプレスリリース

リンク:CTIの年次報告書(7頁に治験データが記載)

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会が二重顎治療薬を支持

(2015年3月9日発表)

Kythera Biopharmaceuticals(Nasdaq:KYTH)は、頤下脂肪(二重顎)治療薬として昨年5月に承認申請したATX-101(deoxycholic acid)がFDAの皮膚眼科用薬諮問委員会の支持を受けたと発表した。17人の委員全員が便益がリスクを上回ると判定した。承認されれば初の二重顎治療薬になる。

天然の食物脂肪分解物質であるデオキシコール酸を化学合成した薬で、脂肪領域に月一回、最大4回注射する。第三相試験では、医師評価による奏効率と患者評価による奏効率が何れも偽薬群を有意に上回った。

2010年にバイエルが北米以外の権利を取得したが、14年に返還、見返りにKytheraの株式と債権、北米以外の売上に関する達成報奨金を受け取る権利を確保した。

リンク:Kytheraのプレスリリース

ブリディオンの米国承認がまた遅延

(2015年3月13日発表)

MSDは、Bridion(sugammadex、和名ブリディオン)のFDA諮問委員会がキャンセルされ、審査完了通知を受け取る見込みになったと発表した。

rocuroniumなどで全身麻酔を施行した後の回復に用いる選択的筋弛緩剤結合剤で、欧州では08年、日本でも10年に承認され、特に日本で普及している模様だ。米国は07年に承認申請されたが過敏反応リスクが見られたためFDAがアレルギー感受性試験の実施を求めた。13年に結果が提出され、諮問委員会が予定されたが、試験実施施設の立入り調査結果を検討するために、キャンセルされた。MSDは追加試験を実施し昨年10月に提出、3月18日に諮問委員会開催が予定されたが、またキャンセルになってしまった。

今回も理由は治験施設の立入り調査を行うことだ。スケジュール的に審査期限の4月22日に間に合わないため、審査完了通知を受領する可能性が高まった。

他社の薬の安全性確認試験で治験医が副作用に関する虚偽報告を行った前例があることはあるが、考え難い。なぜこんなことになったのか気になるところだ。

リンク:MSDのプレスリリース

【承認】


小児神経芽細胞腫用薬が米国で承認

(2015年3月10日発表)

ユナイテッド・セラピューティクス(Nasdaq:UTHR)は、FDAがUnituxin(dinutuximab)を小児神経芽細胞腫用薬として承認したと発表した。高リスク患者に集学的一次治療(切除、化学療法、造血幹細胞移植、及び放射線療法)を施行し部分反応以上だった場合に、isotretinoinと併用する。

腫瘍細胞の表面のGD2糖脂質を標的とするキメラモノクローナル抗体で、臨床試験では3年無再発生存率が63%とisotretinoinだけを投与した群の46%を上回り、3年生存期間も73%対58%で上回った。重度神経痛などの神経毒性や点滴反応が枠付警告されている。

同社は希少小児疾患優先審査バウチャーを獲得した。優先審査指定されない薬でもこのバウチャーを使えば優先審査される。他社が購入して用いることも可能で、類似のバウチャーが6700万ドルで譲渡されたことがある。

リンク:FDAのリリース

リンク:ユナイテッド社のプレスリリース

リンク:同(バウチャー取得について)

【医薬品の安全性】


FDA、チャンピックスの警告強化

(2015年3月9日発表)

FDAはChantix(varenicline、和名チャンピックス)に関する安全性情報を発出し、飲酒や癲癇に関する警告を追加したと発表した。

Chantixは選択的ニコチン受容体部分作動剤で、禁煙の補助療法薬。喫煙は肺癌や膀胱癌、COPD、心筋梗塞などのリスク因子だが、その多くは禁煙によってリスクを緩和できる。06年の米国発売時は大きな期待を受けたが、異常行動例が大きく報道され、激性や鬱気分、行動異常、自殺思慮などに関する枠付警告が導入されたため、売上高が08年の8.4億ドルをピークに減少に転じた。製造物責任訴訟が提起され、ファイザーは数億ドルの和解金を負担することになった。

ファイザーは精神学的安全性に関する調査分析を行い、警告解除を求めたが、昨年10月の諮問委員会では、8000人の大規模試験の結果が15年第3四半期に出るまで解除すべきではないという意見が過半を占めた。

今回の安全性情報は自発的有害事象報告(FAERS)の分析に基づくもの。アルコールに対する耐容力を低下させ激性行動のリスクを高めたり、癲癇発作を起こしたりすることが稀に起きるようだ。前者は48例、後者は64例で、Chantixは13年だけで米国の120万人が服用したので、頻度は低い。

発端になったダラスの事件は、ガールフレンドの家で飲酒していたロック・ミュージシャンが突然隣家のドアの前で騒ぎ、ドア越しに住人に射殺されたというもの。報道によると、以前にも飲酒時に幻覚を起こしたことがある由であり、私は、服用中はタバコだけでなく飲酒も我慢した方が良いかもしれないと書いたことがある。

リンク:FDAの安全性情報

今週は以上です。

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