2020年4月5日

通算第940回

お知らせ:題名を『海外医薬ニュース』から変更しました。

【ニュース・ヘッドライン】

  • ノバルティス、ジャカビをCOVID-19肺炎に開発へ 
  • 米国製薬三社、COVID-19と戦う社員ボランティアを後押し 
  • COVID-19のPOC検査が続々と承認 
  • 抗体検査承認のフェイクニュースも 
  • JNJ、COVID-19ワクチンの開発候補を特定 
  • キイトルーダはMSI-H結腸直腸癌の一次治療にも有効 
  • アストラゼネカ、フォシーガのCKD試験を繰上げ完了へ 
  • ACC:イグザレルトのPAD再血行術後試験成功 
  • ACC:エリキュースの癌患者VTE治療試験が成功 
  • ACC:sGC刺激剤の第三相試験が成功 
  • BCMAを標的とするCAR-Tが承認申請 
  • 赤血球成熟剤がMDS性貧血に適応拡大 
  • FDA、アストラゼネカのイミフィンジを小細胞性肺癌に承認 
  • FDA、ラニチジンの市場回収を正式に要求 


【今週の話題】


ノバルティス、ジャカビをCOVID-19肺炎に開発へ
(2020年4月2日)

ノバルティスは、Jakavi(ruxolitinib、和名ジャカビ、米国名Jakafi)をCOVID-19肺炎の治療に充てる第三相試験とコンパッショネート・ユース・プログラムに着手すると発表した。COVID-19感染症では一部の患者の肺機能が急激に悪化する現象が見られる。炎症性サイトカインの著増を伴う免疫機構の過剰反応が関与している可能性があるため、中外製薬/ロシュのActemra(tocilizumab)などの抗IL-6/IL-6受容体抗体が注目されていて、複数の医薬品の臨床試験が始まった。

Jakaviの標的であるJAK1/2はIL-6受容体のダウンストリーム・シグナルに関与しており、阻害するとIL-12やガンマ・インターフェロン、GM-CSFなどの免疫炎症性サイトカインが減少する。ノバルティスによると、前臨床や第三者の臨床研究でCOVID-19によるサイトカイン・ストームの緩和に有効性が示唆されたようだ。

感染者が急増しているイタリアや米国などでは、ICUや人工呼吸器の不足が深刻になっている。日本もそうなるだろう。これらの抗IL-6療法が奏功すれば、患者の救命だけでなく医療崩壊を回避する一助になるかもしれない。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

米国製薬三社、COVID-19と戦う社員ボランティアを後押し
(2020年4月1日)

MSD、ファイザー、イーライリリーの三社は、COVID-19と戦う最前線を志願する社員を後押しすると発表した。製薬会社には多くの医師、看護師、薬剤師、ラボ技士などの有資格者が勤務している。現在もボランティアとして医療・検査施設で働いている社員がいるようだ。三社は、その間の基本給を維持することなどを発表した。まあ、成果報酬部分がないだけでもかなり所得が減るのだろうが。

イーライリリーは、インディアナポリスの本社のドライブスルーCOVID-19検査施設にも医療専門家社員を振り当てると発表した。この施設はコミュニティのために最前線で働く医療従事者やファースト・レスポンダーに対して無償で検査を行う。

COVID-19は新薬の臨床試験に大きな影響を与えており、既に幾つかの製薬会社が原則自粛を発表している(このレポートも何ヶ月かしたらネタが枯渇するかもしれない)。そんな時期だからこそ、人材再配置は一考に値する。

リンク: 三社のプレスリリース

COVID-19のPOC検査が続々と承認
(2020年4月1日発表)

COVID-19のウイルス検査が米国で続々とEUA(非常時使用認可)を受けている。大病院やラボで使うアッセイだけでなく、ポイント・オブ・ケア(POC)で用いる10~20分で結果が出る検査も承認された。

4月1日には初めての抗体検査がEUAを得た。Cellex社のqSARS-CoV-2 IgG/IgM Rapid Testで、血清、血漿、または全血を15-20分で検査する。IgMかつまたIgGを検出すると対応する線の色が変わる。コントロールラインの色が変わらなかったら、陽性でも陰性でも検査が無効になる。キットの有効性を検証するための陽性と陰性のサンプルも同梱されている。

取扱説明書によると、RT-PCRあるいは臨床的に判定された検体を検査したところ、陽性サンプル128件の感度は93.8%(95%信頼区間88.2~96.8%)、陰性250件の特異度は96.0%(92.8~97.8%)だった。

抗体検査なので、感染後数日経って抗体がある程度できた段階で検査する必要がある。迅速検査は一次スクリーニング用で、本筋は核酸検査で確認すべきである。その核酸検査も、それだけで診断を確定すべきではないというディスクレマーが付いているので、建前上は検査を過信すべきではないという結論になるが、非常時には贅沢を言っていられない。

リンク: qSARS-CoV-2 IgG/IgM Rapid Testの取扱説明書(pdfファイル)

核酸検査では、アボットのID NOW COVID-19が3月27日付でEUAを得ている。米国の主要なインフルエンザ、連鎖球菌A、RSVのPOC検査機器であるID NOWという等温増幅PCR用のアッセイで、陽性なら5分、陰性でも13分で結果が出る。一日に5万件の検査を想定して供給する予定。

取扱説明書によると、感度は検出下限の2倍の濃度の陽性サンプル20件で100%、5倍サンプル10件も100%、陰性サンプル30件の特異度も100%だった。95%下限は各83%、72%、88%。また、NCBIやGenbankにアップロードされた全ての2019-nCoVの核酸配列に適合していた。

同社は大規模医療施設やラボ向けのm2000 RealTime SARS-CoV-2 EUAも承認された。両方合わせて月500万件の検査ができるよう供給する計画。

中国ではPCRの感度が7割という報道もあり、感度がそれより低いとなると、いいのか悪いのか微妙だ。米国では検査アッセイの信頼性を確認するための当初の対照標本に欠陥があり大きな問題になったが、EUは今になって対照標本の配布が始まったばかりのようで、もしかしたら、これまでに偽陰性が多く発生していたかもしれない。まあ、人間は万能ではないので、目に見えないものは存在しない決めつけざるを得ないだろう。非常時には尚更だ。

リンク: アボットのプレスリリース(3/17付)
リンク: ID NOW COVID-19取扱説明書(pdfファイル)
リンク: FDAのEUAページ

抗体検査承認のフェイクニュースも
(2020年3月31日報道)

ロイターなどが3月31日にBodysphere社(未上場)の迅速検査がEUA承認されたと報じたが、フェイクニュースだったようで、出典であるBusiness Wireに掲載された同社のプレスリリースも含めて、撤回された。FDAのEUAページに出ていなかったので奇妙に感じてはいたが、真相はもっと奇妙だ。

ロイターのフォローアップ記事によると、BodysphereはFDAのウェブサイトを見て承認されたと誤解した、と説明しているようだ。ところが、メーカーである中国のSafecare Biotech側も、FDAに届出を行ったコンサルティング会社、LSI Internationalも、Bodyshere社と契約関係にはないと語った。

奇妙な話である。日本でも中国製の検査を発売すると発表した会社があったが、社名は公表されていない。純粋に営業機密を守るためなのかもしれないが、気味が悪い。

フェイクと分かる前にBodysphereのサイトで調べた内容を記しておくと、血液中のIgG、IgM抗体を検出するラテラルフローイムノアッセイで、2-10分で結果が出る(ロイターによるとSafecareは10-15分と言っている)。Bodyshereの撤回されたプレスリリースによると、臨床的感度は99%、臨床的特異度は91%だった。しかし、同社のホームページに掲示されていた臨床試験報告によると、浙江大学病院や浙江省疾病管理予防センターで行われた試験で、参照検査で陽性だった53検体に関する感度は84%(95%下限72%)、陰性171検体の特異度は91%(86%)だった。

リンク: COVID-19迅速検査の特徴(Bodysphere社、20年4月5日アクセス)

JNJ、COVID-19ワクチンの開発候補を特定
(2020年3月30日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、COVID-19ワクチンのリード候補と二種類のバックアップを特定したと発表した。9月までに臨床試験を開始して年末までにデータと取得、21年の早い段階で最初のバッチのEUA(非常時使用認可)を狙う。パンデミックの非常事態の間は、利益ゼロで供給する考え。世界で10億回分の供給を計画している。

JNJは米国立衛生研究所傘下のBARDA(生物医学先端研究開発局)の支援を得ているが、新たに、両者で10億ドル以上をワクチン開発に投じることも合意した。

ワクチン開発が上手く行くという保証はない。短期間・小規模治験で開発したワクチンを数億人、数十億人の単位で接種することを考えると、子宮頸がんワクチンのように、実用化後に稀だが因果関係を直ちに否定できない副反応が表面化する可能性もある。リスクヘッジのためにも、複数のメーカーが並行開発することが望ましいだろう。また、実用化後も市販後薬物監視を進める必要があるだろう。

リンク: JNJのプレスリリース


【新薬開発】


キイトルーダはMSI-H結腸直腸癌の一次治療にも有効
(2020年4月2日発表)

MSDは、抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の第三相KEYNOTE-177試験の主評価項目の一つが成功認定されたと発表した。未治療の切除不能・転移性結腸直腸癌でMSI-H(マイクロサテライト不安定性高)またはdMMR(DNAミスマッチ修復不全)の308人を組入れて、Keytruda単剤投与群(200mgを3週毎点滴静注、最大35サイクル)の効果を化学療法群(mFOLFOXまたはFOLFIRI、bevacizumabまたはcetuximab併用可)と比較した試験で、独立データ監視委員会がPFS(無進行生存期間)の中間解析で成功認定した。共同主評価項目である全生存の解析に向けて治験は続行する。

MSIは、一定の塩基配列が繰り返されていて遺伝子複製ミスが発生しやすい箇所のリピート回数を腫瘍細胞とそれ以外の細胞の遺伝子で比較することによって、ミスマッチ修復が機能しているかどうかを判定するもの。元々はリンチ症候群の患者の結腸直腸癌で観察された現象のようだ。dMMRは他のタイプも含むより広範なカテゴリー。結腸直腸癌の10-15%が該当するようだ。

複製ミスが多いと変な蛋白ができて免疫機構の注意を惹きやすくなるはずなので、免疫強化療法の応答予測因子として用いられている。KeytrudaはMSI-H/dMMRの固形癌の再発治療薬として承認されているが、結腸直腸がんについては一次治療にも普及していくことになりそうだ。

再発治療試験では薬効評価対象149人のうち、結腸直腸癌(90人)、内膜腫(14人)、胆管癌(11人)、胃・胃食道接合部癌(9人)、膵癌(6人)が多かった。結腸直腸癌以外のMSI-H/dMMR癌の一次治療にも開発が進められるのではないか。

リンク: MSDのプレスリリース

アストラゼネカ、フォシーガのCKD試験を繰上げ完了へ
(2020年3月20日発表)

アストラゼネカは、Farxiga(dapagliflozin、和名フォシーガ)の慢性腎疾患アウトカム試験、DAPA-CKDを繰上げ完了すると発表した。独立データ監視委員会がルーチンの薬効安全性中間評価に基づいて目的達成を認定、結果を学会や承認審査機関に報告するよう勧告したため。

この試験は、アルブミン尿を伴うステージ2~4の慢性腎疾患4245人をFarxiga群と偽薬群に二重盲検無作為化割付して、腎機能悪化(eGFRが半減以上、末期腎疾患、心血管または腎臓因による死亡)のリスクを比較した。

ルーチン評価による中止勧告というのはあまり聞かないが、治験プロトコルの中で、薬効関連の中止基準の一つとして、薬効・安全性データの総合評価に基づいて圧倒的効果による中止を勧告できると定めていた由だ。学会・論文発表時に妥当性が検討されることになるだろう。

Farxigaは腎臓で濾されたグルコースを血液中に戻す輸送体、SGLT2を阻害する血糖治療薬。利尿作用があり、駆出率低下を伴う心不全のアウトカム試験、DAPA-HFで、二型糖尿病を合併していない患者にも便益を示した。今回の試験も二型糖尿病ではない患者も組入れている。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ACC:イグザレルトのPAD再血行術後試験成功
(2020年3月28日発表)

バイエルとジョンソン・エンド・ジョンソンは、Xa阻害剤Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)のVOYAGER PAD試験の結果をACC(米国心臓学会)/WCC(世界心臓学会)バーチャル・カンファレンスとNew England Journal of Medicine誌で発表した。

50歳以上の症候性下肢PAD(末梢動脈疾患)で、下肢再血行術が成功してから10日以内の、出血リスクが高くない患者6564人を組入れて、アスピリンに偽薬またはXarelto(2.5mgを一日二回)を追加経口投与した無作為化割付二重盲検試験で、主要薬効評価項目の発生率(3年間のカプランマイヤー推定)は各19.9%と17.3%、ハザードレシオは0.85、p=0.009だった。

主要薬効評価項目を構成する個々のイベントの解析では、下肢再血行術後の急性下肢虚血はハザードレシオが0.67、95%信頼区間0.55~0.82と良好な結果になったが、血管因による主要切断、心筋梗塞、虚血性脳卒中の三項目についてはハザードレシオは0.9弱と好ましい方向だったが95%上限が1.12~1.19と1を上回っている。また、心血管死はハザードレシオ1.14、95%信頼区間0.93~1.40と、有意ではないが好ましくない方を向いている。

主要安全性評価項目である大出血発生率(TIMI基準、3年間カプランマイヤー推定)は1.87%と2.65%でハザードレシオ1.43、p=0.07、頭蓋内出血や致死的出血事故は有意な群間差はなかった。副次的安全性評価項目とされたISTH基準による大出血は有意に多かった。

リンク: Bonacaらの治験論文抄録(NEJM)
リンク: バイエルのプレスリリース

ACC:エリキュースの癌患者VTE治療試験が成功
(2020年3月28日発表)

BMSとファイザーは、Xa阻害剤Eliquis(apixaban、和名エリキュース)のCARAVAGGIO試験の結果をACC/WCCとNEJM誌で発表した。癌患者のVTE(静脈血栓塞栓)の治療における効果を実薬(低分子量ヘパリンのdalteparin)と比較したもので、6ヶ月間のVTE再発率は各5.6%と7.9%、ハザードレシオ0.63となり、非劣性解析のp値が0.001を下回り、成功した。大出血の発生率は各3.8%と4.0%、p=0.60だった。

リンク: Agnelliらの治験論文抄録(NEJM)

ACC:sGC刺激剤の第三相試験が成功
(2020年3月28日発表)

MSDは、バイエルに協業して開発しているsGC(可溶性グアニル酸シクラーゼ)刺激剤、BAY 1021189/MK-1242(vericiguat)の第三相心不全アウトカム試験の結果をACC/WCCとNEJM誌で発表した。承認申請に向かう予定。

このVICTORIA試験は、NYHAクラスII-IVの慢性心不全で駆出率が45%未満に低下、且つ心不全で入院又は静注利尿薬による治療を受けている5050人を組入れて、偽薬群とvericiguat(10mg一日一回経口投与)群の心血管死・心不全入院リスクを比較した。Duke大など日米欧中42ヶ国の施設が参加した。

結果は、ハザードレシオが0.90でp=0.019となり主目的を達成した。ハザードレシオはあまり低くないが、メジアン10.8ヶ月の追跡で主評価イベント発生率が各群38.5%と35.5%、Number-needed-to-treatは24となり、効果が小さいとは言い難い。但し、相対リスク削減率が小さくp値がそれほど小さくないので、ノイズやバイアスの影響を受けていないか、データセットの細部をあら捜しして確認しなければならない。

心不全は多剤併用が一般的で、新薬の臨床試験が成功し当局の承認を得るだけでは中々浸透しない。実際、今回の被験者のうち、ガイドライン通りの治療を受けていたのは60%だけだった。ノバルティスのEntresto(sacubitril valsartan)はアウトカム試験で心血管死を抑制したが、今回の被験者のうち服用していたのは15%のみだった。vericiguatは有意差があったのは心不全入院だけで、心血管死はトレンドに留まっているので、対象患者が若干違うものの、データの迫力がやや弱い。また、NT-proBNPが最も高い四分位サブグループにおける効果は曖昧だった。当試験は最大血圧が110 mmHg未満を除外条件としており、適応になるのは駆出低下心不全の1/4よりもっと少ないかもしれない。

尚、深刻有害事象や治験離脱など、忍容性指標は各群大差なかった。2.5mgで開始して5mg、10mgと漸増する用法が寄与したのかもしれない。

リンク: Armstrongらの治験論文抄録(NEJM誌)
リンク: 当発表に関するAHAの特集頁
リンク: MSDのプレスリリース


【承認申請】


BCMAを標的とするCAR-Tが承認申請
(2020年3月31日発表)

BMSとbluebird bio(Nasdaq:BLUE)は、bb2121(idecabtagene vicleucel)を成人多発骨髄腫の四次治療薬として米国で承認申請した。BCMAに結合するマウス抗体フラグメントとT細胞に活性化シグナルを送るCD3や4-1BBの一部をCD8アルファや膜貫通ドメインで繋いだキメラ抗原受容体-T細胞(CAR-T)療法で、bluebirdにとっては初めての承認申請。

CAR-Tとしては、ノバルティス(ペンシルバニア大のライセンス)のKymriah(tisagenlecleucel、和名キムリア)、ギリアドが子会社化したKite PharmaのYescarta(axicabtagene ciloleucel)、そしてJuno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)/BMSが昨年12月に米国で承認申請したJCAR017(lisocabtagene maraleucel)に続く4番手だが、これらのCD19標的型CAR-Tとは標的も適応も異なっている。

承認申請の根拠となる第二相KarMMA試験では、再発かつ難治性多発骨髄腫で三次以上の治療歴を持ち最終治療不応の140人を組入れて、128人に1.5億セル、3億セル、または4.5億セルを投与したところ、ORR(客観的反応率、独立第三者評価)が三群平均で73.4%、4.5億セルコフォートでは81.5%だった。メジアン反応持続期間は平均で10.6ヶ月。CAR-Tに付き物の副作用では、G3以上のサイトカイン放出シンドロームが7人、5.5%で発生し一人は致死的だった。G3以上の神経毒性の発生率は3.1%だった。

bluebirdは、作用の長期化を図るため、培養過程でPI3K阻害剤を使用することでメモリーT細胞的なフェノタイプの比率を高めたbb21217も開発している。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認】


赤血球成熟剤がMDS性貧血に適応拡大
(2020年4月3日発表)

ブリストル・マイヤーズ スクイブとAcceleron Pharma(Nasdaq:XLRN)は、Reblozyl(luspatercept-aamt)をMDS(骨髄異形成症候群)などの患者の難治性貧血の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。正式な適応は、very low to intermediate-riskの環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)、あるいは骨髄異形成/環状鉄芽球と血小板増多を伴う骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN-RS-T)で、ESA(赤血球造血刺激因子製剤)による治療がフェールし、8週間に2単位以上の赤血球輸血を必要とする成人。

Activin受容体IIB型の細胞外領域と免疫グロブリンG1型の固定領域を細胞融合した遺伝子組み換え薬で、TGFベータをブロックして赤血球の成熟を促す。昨年11月に米国でベータサラセミアに伴う輸血依存貧血症の治療薬として優先審査を経て承認。今回の適応は同時に承認申請されたが標準審査なのでラグが生じた。

BMSはセルジーン買収を通じて共同開発販売権を取得した。

リンク: BMSのプレスリリース

FDA、アストラゼネカのイミフィンジを小細胞性肺癌に承認
(2020年3月30日発表)

FDAは、アストラゼネカの抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab、和名イミフィンジ)を進展型小細胞性肺癌の治療に用いる適応拡大を承認した。化学療法(cisplatinまたはcarboplatinとetoposide)と三剤併用する。最初の4サイクルは化学療法と同様に3週毎に投与、その後はImfinziだけを4週毎に投与する。

第三相試験では、メジアン全生存期間が13.0ヶ月と化学療法(6サイクル)だけ施行した群の10.3ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.73、p=0.0047だった。PFS(無進行生存期間、担当医評価)はハザードレシオ0.78で統計的に有意だったが、メジアン値は5.1ヶ月と5.4ヶ月で少し短い。有害事象による治験離脱率は両群9.4%だった。

全生存のハザードレシオは、先に承認されたロシュのTecentriq(atezolizumab)と大差ない。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アストラゼネカのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、ラニチジンの市場回収を正式に要求
(2020年4月1日発表)

FDAは、Zantac(ranitidine)とGE品、OTC品のメーカーに対して市場回収を要求した。やや遅きに失した感がある。日本市場を含めて、既にかなりの企業が昨年末までに自主回収済みではないか。

Zantacは1981年にグラクソ(当時)が米国で発売したH2ブロッカー。年商が世界で初めて10億ドルを超え、ブロックバスターと呼ばれた。2019年の自主回収まで、人間でいえば就職から定年退職までの長期にわたり、胃潰瘍や胸やけの対症療法として広く用いられてきた。

市場回収の原因となったのはN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)の混入。FDAの今回の発表によると、製造段階では微量で一日当り摂取許容量を下回るが、通常の保管条件下でも時間経過とともに増加し、輸送や保管時に暴露する可能性のある程度の高温環境では顕著に増加する。このため、摂取許容量を超えてしまうリスクがある。

経時増加が確認されたため、FDAは従来のスタンスを見直し、ranitidineの服用を止めるよう勧告した。OTC薬の場合は速やかに、処方薬の場合は医師に相談の上で、他の治療法に切り替える。これまでのFDAの検査では、同じH2ブロッカーのPepcid(famotidine)やTagamet(cimetidine)、プロトンポンプ阻害剤のNexium(esomeprazole)やPrilpsec(omeprazole)、Prevacid(lansoprazole)からは検出されていないとのこと。

NDMA混入を最初に指摘したのはValisureという、自ら品質確認した薬を販売するオンラインファーマシーだ。Velisureは一部メーカーの一部の血圧治療薬や血糖治療薬についてもNDMA混入を指摘しており、今後の展開が注目される。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Valisureのホームページ





今週は以上です。

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