2016年12月11日

2016年12月11日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ASH:ロシュのGazyvaが一次治療でもリツキサンに勝つ 
  • WCLC:アストラゼネカ、タグリッソの直接比較試験が成功 
  • WCLC:ノバルティスのジカディアも直接比較試験が成功 
  • CTAD:イーライリリーの抗アミロイドベータ抗体は効果が限定的 
  • アストラゼネカ、抗PD-L1抗体を米国で承認申請 
  • Kite、CAR-Tのローリング承認申請を開始 
  • ギリアドが新たなC型肝炎治療薬を承認申請 
  • アトピー治療薬が欧州でも承認申請 
  • ロシュ、アバスチンがまた適応拡大 
  • アッヴィ、bcl-2阻害剤がEUでも承認 



【新薬開発】


ASH:ロシュのGazyvaが一次治療でもリツキサンに勝つ
(2016年12月5日発表)

ロシュは、ASH(米国血液学会)での学会発表に合わせてGazyva(obinutuzumab)の直接比較試験、GALLIUM試験の結果を公表した。CD20を標的とするフコース欠如ヒト化抗体であるGazyvaは、CD20を標的とする先輩格のキメラ抗体、Rituxan(rituximab、和名リツキサン)より優れた効果を過去の再発治療試験で示してきたが、今回、濾胞性非ホジキン型リンパ腫の一次治療薬としても上回ることが明らかになった。

この試験は、緩慢性非ホジキン型リンパ腫で初めて薬物治療を受ける1401人を組入れて、CHOP、CVP、またはbendamustineとRituxanを併用する標準療法と、Rituxanの代わりにGazyvaを用いる併用法のPFS(無進行生存期間)を比較したもの。主評価項目は被験者の8割を占める濾胞性非ホジキン型リンパ腫サブグループの治験医評価PFS。結果は、ハザードレシオ0.66、95%信頼区間0.51-0.85、3年PFS率80.0%対73.3%と、有意な差があった。

二次的評価項目の一つである第三者査読によるPFSもハザードレシオ0.71で有意差があった。全生存期間のハザードレシオは0.75だが未だ有意差は出ていない。G3以上の有害事象の発生率は74.6%対67.8%で上回り、骨髄抑制や点滴関連反応などが増加した。二次性新生物(4.7%対2.7%)や致死的有害事象(4.0%対3.4%)も増加した。

一次治療はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のRituxan対照CHOP併用試験が実施されたが、フェールしており、今回が初の成功となった。

リンク: ロシュのプレスリリース

WCLC:アストラゼネカ、タグリッソの直接比較試験が成功
(2016年12月6日発表)

アストラゼネカのTagrisso(osimertinib、和名タグリッソ)の第三相AURA3試験の結果がWCLC(世界肺癌会議)とNew England Journal of Medicine誌で発表された。EGFR活性化変異を持つ非小細胞性肺癌はEGFR阻害剤によく反応するが、T790M変異が発生して抵抗性を取得することがしばしば見られる。Tagrissoはこのような癌にも有効で、第二相試験の結果に基づいて15年に米国で、今年はEUや日本でも、承認された。

今回の第三相試験は、EGFR阻害剤治療歴を持つEGFR活性化変異陽性かつT790M陽性の非小細胞性肺癌患者をTagrisso群と白金薬ベースの二剤併用群に無作為化割付して治験医評価に基づくPFSを比較した。結果は、メジアン値が10.1ヶ月と白金レジメン群の4.4ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.30、pは0.001を下回った。脳転移を持つ患者でも好成績。グレード3以上の薬物関連有害事象発生率は6%対34%で少なかった。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

WCLC:ノバルティスのジカディアも直接比較試験が成功
(2016年12月6日発表)

非小細胞性肺癌では腫瘍の特徴に応じて最適な治療法を選択する手法が次々と登場している。ノバルティスのZykadia(ceritinib、和名ジカディア)もその一つで、数パーセントの患者で見られるALK遺伝子が別の遺伝子と融合してしまうALK再編成陽性の癌の二次治療薬として日米欧で承認されている。今回、一次治療試験の結果がWLCで発表された。

治験医評価PFSがメジアン16.6ヶ月と、Alimta(pemetrexed)と白金薬を併用した群の8.1ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.55、p値は0.001を下回った。脳転移のある患者でも好成績。全生存期間の解析は未だ成熟していないが良いトレンドが見られた由。

ALK阻害剤の第一号であるファイザーのXalkori(crizotinib、和名ザーコリ)もALK再編成陽性非扁平上皮性非小細胞性肺癌の直接比較試験でAlimta・白金薬併用群に対してハザードレシオ0.45という良い成績を上げている。今回の試験で、このタイプにはALK阻害剤が第一選択であることが再確認された。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

CTAD:イーライリリーの抗アミロイドベータ抗体は効果が限定的
(2016年12月8日発表)

イーライリリーの抗アミロイドベータ抗体、LY2062430(solanezumab)は12年に二本の第三相軽中度アルツハイマー病試験がフェールした。軽度患者には良さそうなデータが出たため、軽度アルツハイマー病でアミロイドベータ蓄積のある患者だけを対象に再挑戦したが、フェールした。今回、CTAD(アルツハイマー病臨床試験)学会とプレスリリースでデータが公表された。

主評価項目のADAS-cog14の悪化は偽薬群より11%小さかったが、p=0.095で有意ではなかった。前回の第三相試験のプール分析では34%小さかったが、期待外れの結果になった。二次的評価項目ではMMSE(悪化が13%小さい)やCDR-SB(15%小さい)、ADCS-iADL(14%小さい)などでp値が0.05を下回ったが、主評価項目がフェールしているので統計的に有意とは言えない。MMSEは医療現場では広く用いられているが、治療効果を測定する手段としては適切ではない。

そもそも、この試験は例えばAricept(donepezil)の第三相と比べて大規模・長期間なので検出力が高く、小さな差でも有意差が出てしまう。Ariceptの第三相軽中度アルツハイマー病試験の薬効評価項目の一つであったADAS-cogは偽薬群では半年で2ポイント悪化したがAricept群は1ポイント改善した。solanezumabのデータを無理やり当てはめると1.8ポイント悪化になるので、周りの人には、効いているのかいないのか差が分からないだろう。

アミロイドベータを標的とする抗体には様々な種類がある。solanezumabは可溶性モノマーを標的としており、この試験でも可溶性モノマーは減少したが、アミロイドベータのプラクは改善しなかった。プラクを攻撃すると血管原性浮腫のリスクが高まるので善し悪しだが、アミロイド仮説には未だ希望が少し残っていることになる。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認申請】


アストラゼネカ、抗PD-L1抗体を米国で承認申請
(2016年12月9日発表)

アストラゼネカは、MEDI4736(durvalumab)を米国で承認申請し受理されたと発表した。局所進行性/転移性の尿路上皮細胞腫で白金薬による治療歴を持つ患者の二次治療に用いる。優先審査を受け来年第2四半期に結論が出る見込み。

薬効のエビデンスは第1/2相の1108試験。10mg/kgを二週間に一回投与したところ、ORR(客観的反応率)は31%、PD-L1高発現型では46%だった。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

Kite、CAR-Tのローリング承認申請を開始
(2016年12月4日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は、KTE-C19(axicabtagene ciloleucel)のローリング承認申請を開始した。CD19に結合する抗体短鎖フラグメントをT細胞の活性化を刺激する分子と結合したCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法で、再発性難治性のアグレッシブなB細胞性非ホジキン型リンパ腫で自家幹細胞移植が適応にならない患者に用いる。

CAR-T療法はノバルティスやJuno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)/セルジーンなども開発しているが、承認申請は今回が初めて。来年にはノバルティスがCTL019を承認申請する見込みだ。

薬効のエビデンスはZUMA-1試験の第二相ポーションの中間解析で、化学療法難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫51人のORR(客観的反応率)は76%だった。但し、3ヶ月後の評価は39%に低下した模様であり、一般的な指標である確認ORRは39%と考えたほうがよさそうだ。

グレード3以上の有害事象発生率は、サイトカイン放出症候群が13%、神経学的毒性29%、その他に好中球減少症、貧血、血小板減少症、脳症など。治療時発現有害事象による死亡は3例だった。

リンク: Kiteのプレスリリース

ギリアドが新たなC型肝炎治療薬を承認申請
(2016年12月8日発表)

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)は抗ウイルス薬の新薬と合剤を次々と開発・発売している。今回はトリプルコンビ薬を米国で慢性C型肝炎の二次治療薬として承認申請した。直接作用性抗ウイルス薬(DAA)による治療歴を持つ、遺伝子型1型から6型までの患者が対象。

一次治療薬として今年欧米で承認されたEpclusaの配合成分であるNS5Bポリメラーゼ阻害剤のsofosbuvirと汎遺伝子型NS5A複製複合体阻害剤のvelpatasvirに、更に汎遺伝子型NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤のvoxilaprevirを加えたもの。第三相試験では、12週間の治療で奏効率(SVR12)が97%だった。

リンク: ギリアドのプレスリリース

アトピー治療薬が欧州でも承認申請
(2016年12月8日発表)

リジェネロン(Nadaq:REGN)とサノフィは、Dupixent(dupilumab)をEUに承認申請し受理されたと発表した。IL-4受容体のアルファ・サブユニットを標的とするトランスジェニックマウス抗体で、軽中度アトピー性皮膚炎の治療に用いる。米国では9月に申請受理されている。

二本の第三相試験では、グローバル評価(5段階)が0または1に改善した患者の比率が36~38%と偽薬群の8~10%を大きく上回った。有害事象は注射箇所反応や結膜炎など。皮注薬で、臨床試験では週一回と二週間に一回の投与頻度をテストしたが二週毎で十分のようだ。

サノフィの工場でcGMP問題が発生しており、承認が遅れる可能性もありそうだ。

リンク: サノフィのプレスリリース

【承認】


ロシュ、アバスチンがまた適応拡大
(2016年12月7日発表)

ロシュは、FDAがAvastin(bevacizumab)の適応拡大を承認したと発表した。これで6種類の癌に9種類の用法が認められたことになる。適応拡大は久しぶりだが、実際は、米国だけ遅れていた用途がやっと承認された。

難治性の白金薬感受性卵巣癌に、carboplatinとpaclitaxelまたはgemcitabineと三剤併用する。第三相は二本実施され、どちらもPFSが二剤併用と比べて有意に増加したが、全生存の解析は一本がフェール。もう一本は階層化の方法次第で有意差があったともなかったとも言える。結局、延命効果が確立しているとは言い難い。

リンク: ロシュのプレスリリース

アッヴィ、bcl-2阻害剤がEUでも承認
(2016年12月8日発表)

アッヴィは、Venclyxto(venetoclax、米国の製品名はVenclexta)がEUで承認されたと発表した。再発性難治性慢性リンパ性白血病の治療薬で、化学療法とB細胞受容体パスウェイ阻害剤(Rituxanなど)による治療歴を持つ患者が対象。但し、化学療法が効き難い17番染色体短腕(17p)欠損型やTP53変異型の場合はB細胞受容体パスウェイ阻害剤不応・不適だけで足りる。

第二相試験に基づく承認で、17p欠損型107人を組入れた試験ではORRが79%だった。

アッヴィとジェネンテックの共同研究の成果で、米国は両社で共同販売、生産と米国外はアッヴィが担当する。

リンク: アッヴィのプレスリリース




今週は以上です。

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