2017年11月19日

2017年11月19日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アルナイラム、hATTR治療薬を承認申請 
  • 大塚、米国でトルバプタンの適応拡大に再挑戦 
  • ムコ多糖症VII型の治療薬が米国で承認 
  • 日本発の抗体医薬が再び承認 
  • ポテリジェント抗体が米国で承認 
  • スーテント、腎癌アジュバント療法が承認 
  • センサー付き医薬品が承認 
  • FDA、フェブリクの心臓疾患死リスクを通知 


【承認申請】


アルナイラム、hATTR治療薬を承認申請
(2017年11月16日発表)

アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)は、ALN-TTR02(patisiran)のローリング承認申請を開始した。適応は遺伝性TTR調停アミロイドーシス(hATTR)の治療。同社初の承認申請で、RNA介入薬の承認申請も初。

臨床試験では、偽薬群は神経症状が悪化したがpatisiran群は若干改善した。深刻な有害事象は下痢、心不全、起立性低血圧、肺炎、心室ブロックなどで、下痢は試験薬関連有害事象とされた。死亡や有害事象による治験離脱の発生率は偽薬群より小さかった。

Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)の子会社であるAkcea Therapeutics(Nasdaq:AKCA)も前後してIONIS-TTRRx(inotersen)を欧州で承認申請、米国でもまもなく申請予定だが、夫々の臨床試験のデータを見比べると、効果も忍容性もアルナイラムに軍配が上がりそうだ。

ローリング承認申請は米国の制度で、承認申請に必要な三種類の書類のうち完成したものから逐次提出して審査を開始してもらうもの。今回も、前臨床とCMC(化学、生産、管理)を提出。年内に臨床データを提出して申請を完了する予定。

欧州で年内に、日本やブラジルでは来年、開発販売権を持つサノフィのジェンザイム部門が承認申請する見込み。

リンク: アルナイラムのプレスリリース

大塚、米国でトルバプタンの適応拡大に再挑戦
(2017年11月6日発表)

大塚製薬はバソプレシン2受容体拮抗剤のSamsca(tolvaptan、和名サムスカ)を三つの用途で販売している。心不全による体液貯留の治療、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群による低ナトリウム血の治療、そして常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進行抑制だ。このうち、ADPKDは14年に日本で、15年にはJinarc名でEUでも承認されたが、米国は審査完了通知を受領した。被験者の腎機能が元々それほど悪くなかったせいか臨床的な効用が明確ではなく、肝毒性も懸念されるためだ。

大塚は追加試験を実施、eGFR(推算糸球体濾過量)の低下が偽薬比有意に抑制されることを確認し、学会やNEJM誌で発表した。1年間の治療で偽薬群が3.61mL/分/1.73m2低下したのに対して、tolvaptan群は2.34mL/分/1.73m2の低下に留まり、統計的に有意な差があった。前回のTEMPO試験では各3.70mLと2.72mLだったので、tolvaptan群の成績が若干よかったことになる。ランイン期間中に投与して忍容した患者だけを組入れた工夫も寄与したかもしれない。

この結果を踏まえて米国で適応拡大申請し、受理された。審査期限は来年4月24日。

リンク: 大塚のプレスリリース

【承認】


ムコ多糖症VII型の治療薬が米国で承認
(2017年11月15日発表)

FDAはMepsevii(vestronidase alfa-vjbk)をムコ多糖症(MPS)VII型の治療薬として承認した。MPS VII型は患者数が世界で150人以下と推測される超希少疾患で、ベータグルクロニダーゼの欠乏によりグリコサミノグリカンが分解されず組織に蓄積、低身長や心弁異常、肝膵肥大など様々な症状をもたらす。

Mepseviiは希少疾患用薬の開発に特化した米国カリフォルニア州の医薬品会社、Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)の開発品。欠乏酵素を二週間に一回、補充する。臨床試験ではグリコサミノグリカンデルマタン硫酸の尿排泄量を主評価項目としたが、FDAは臨床的な効能とは見なさなかった模様で、プレスリリースには6分歩行テストの結果が記されている。第三相とEAP(早期アクセスプログラム)の症例では偽薬群を平均18メートル上回った。

主な有害事象は点滴箇所反応、下痢、ラッシュ、アナフィラキシーなど。

報道によると、Ultragenyxは年37.5万ドル程度の正味価格で発売する考えのようだ。超希少疾患なのでピーク年商は1億ドル行かない見込みだが、希少小児疾患優先審査証書(RPDPRB)を取得することができた。新薬開発を促すためのインセンティブで、次に承認申請する時に優先審査を受けることができる。審査が順調に進めば半年ほど早く承認取得できるので、激しい開発競争が繰り広げられている分野では大きな価値がある。譲渡も可能で、最近ではSareptaがギリアド・サイエンシズに1億2500万ドルで売却した。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Ultragenyxのプレスリリース

日本発の抗体医薬が再び承認
(2017年5月16日発表)

FDAはHemlibra(emicizumab-kxwh)を第8因子インヒビターを持つA型血友病患者の出血予防薬として承認した。審査期限は来年2月だったが、近年のFDAは重要な薬や特に問題のない薬は早く承認する傾向がある。

A型血友病は遺伝子組換え型第8因子で出血を治療し、頻繁に出血する場合はルーチン投与して予防する。薬に対する抗体(インヒビター)ができて無効になった場合は、ノボ ノルディスクの遺伝子組換え型活性化第7因子や活性化プロトロンビン複合体製剤(シャイアの血漿由来製剤、FEIBA)を使う。

Hemlibraは血液凝固第IX因子と第X因子の二重特異性抗体で、第VIII因子に代わって活性化第XI因子による第X因子の活性化を架橋する。最初の4回は3mg/kg、その後は1.5mg/kgを週一回、皮注する。ロシュグループの中外製薬が創製、米国ではジェネンテックが販売する。

臨床試験で血栓性微小血管障害症(TMA)による死亡があったためFDAの評価や対処法が注目されたが、症例に即した順当な内容だった。枠付き警告によると、Hemlibra療法を施行中に出血しFEIBAでレスキュー治療する時は、TMAや血栓塞栓症を防ぐために、100単位/kg/24時間超のペースで24時間超投与するべきではない、症状が現れたらFEIBAを止める。

価格は44万ドル(初年度は48万ドル)程度に設定されるようだ。FEIBAはもっと高いが、Hemlibraはインヒビターを持たない患者向けにも第三相が進行中であり、長期作用性第8因子と比べて著しく割高にならないようにしたのだろう。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース

ポテリジェント抗体が米国で承認
(2017年11月14日発表)

アストラゼネカはFasenra(benralizumab)が重度好酸球型喘息症の維持療法薬としてFDAに承認されたと発表した。好酸球などで発現するIL-5受容体のアルファチェーンを標的とする抗体。グラクソ・スミスクラインのNucala(mepolizumab)やテバ・ファーマスーティカルのCinqair(reslizumab)の類薬だ。

こちらも日本のBioWa(協和発酵キリン・グループ)が創製したPOTELLIGENT抗体で、糖鎖にフコースがなく抗体依存性細胞毒性が増強されている。日本や欧州でも承認審査中。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

スーテント、腎癌アジュバント療法が承認
(2017年11月16日発表)

FDAはファイザーのSutent(sunitinib、和名スーテント)を腎細胞腫の摘出術後アジュバント療法に用いる適応拡大を承認した。9月に開催された諮問委員会で賛否が真っ二つに分かれたことを考えると、審査期限まで2ヶ月残しての承認は意外だ。

根拠となったS-TRAC試験では、5年経っても再発したり死亡したりしなかった患者の比率が59%と偽薬群の51%より有意に高かった。この試験は延命効果の検出力を持たないが、5年生存率は81.4%対81.9%で大差ない。2019年の最終解析でもっと良い数字が出るか、注目される。

同様な用途ではSutentとバイエルのNexavar(sorafenib)を偽薬と夫々比較したASSURE試験はフェールした。Sutentは効く時も効かない時もある、なんてことはないだろうから、原因を解明してほしいものだ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース

センサー付き医薬品が承認
(2017年5月13日発表)

FDAはAbilify MyCiteを承認した。大塚の非定型向精神薬aripiprazoleの中にProteus Digital Health社のセンサーを埋め込んだ錠剤で、胃腸通過時に発するシグナルを体に張り付けたパッチ型ウェラブル端末が探知し、Wi-Fiとネット経由で情報をポータルサイトにアップロードする。医師や介護者が、患者の同意を得た上で、服薬状況を監視することができるようになる。

医薬品に本物であることを示すICタグを付けるとか、ウェラブルに血圧センサーを付けるとか、胃腸診断用カプセル型カメラとかはこれまでにもあったが、遂にセンサー付き錠剤が登場した。薬にもIoT時代の到来だ。尤も、大塚は直ぐに量販する考えはない模様。コストやニーズの面でまだ改良の余地があるのだろう。

非定型向精神薬は患者が飲みたがらないことがあり、急性治療用には経口剤だけでなく注射用が、安定期用には一日一回経口投与だけでなく1ヶ月以上持続する注射用製剤も商品化されている。センサー内包型は、患者のアドヒアランスを確認したり、臨床試験でデータの頑強性を検証する上で有益だろう。ちゃんと飲まないと、ばれる、というプレッシャーを与えることもできる。

但し、FDAのプレスリリースによると、実際に患者のコンプライアンス(アドヒアランス)が改善するかどうかは確認されていない。シグナルを探知できなかったり、遅れたりすることもあるのでリアルタイム監視には適さないと記されているので、頼りない印象だ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Proteusのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、フェブリクの心臓疾患死リスクを通知
(2017年11月15日発表)

FDAは、Uloric(febuxostat、和名フェブリク、欧州名Adenuric)の心臓疾患リスクに関する安全性通知を発出した。武田薬品が実施したallopurinol対照安全性確認試験の予備的解析で、心臓関連死の増加が見られた由。データは未発表。最終解析を受領・分析した上でフォローアップする考え。

Uloricはキサンチンオキシダーゼ阻害薬。尿酸の合成を阻害し、高尿酸血による痛風を治療する。帝人が創製し日本で販売、米国はライセンシーの武田が09年に発売、最初に承認された欧州ではイプセンやメラリーニが販売している。

心血管リスク自体は既知だ。承認前の臨床試験では重要な心血管イベントの発生率(1000人年当り)が13と対照群の4倍以上だった。このため、FDAは承認に際してレーベルに記載するとともに、武田薬品に安全性確認試験の実施を要求した。

6000人以上の痛風患者を組入れて、MACE(主要心臓有害事象:心臓関連死、非致死的心臓発作、非致死的卒中、緊急血行再建術)を観察した試験の結果が承認から8年経って判明。MACE全体は増加しなかったものの、心臓関連死亡と全死亡のリスクが増加していた。

リンク: FDAのプレスリリース








今週は以上です。

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