2014年12月28日

海外医薬ニュース2014年12月28日号



☆☆☆ 来週はお休みします。皆様、良いお年を! ☆☆☆

【ニュース・ヘッドライン】

  • バイオクリストの抗エボラウイルス薬の霊長類試験
  • LAL欠乏症治療薬の承認申請が受理
  • 第二のDMD治療薬のローリング承認申請
  • バクスター、VW病治療薬を承認申請
  • オプジーボが米国でも承認
  • ノボの体重管理薬が米国で承認
  • ラピアクタが米国でも承認


【今週の話題】


バイオクリストの抗エボラウイルス薬の霊長類試験

(2014年12月23日発表)

バイオクリスト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:BCRX)は、エボラウイルス疾患の治療薬候補として期待されているBCX4430の非ヒト霊長類試験の結果を公表した。最初の試験としては良好だ。

この試験は、ウイルスに感染させてから30~120分後に偽薬、16mg/kg、25mg/kgの何れかを一日二回、14日間筋注し、41日間生存率を比較したもの。偽薬群の生存はゼロだったが、16mg/kg群は6頭中4頭、25mg/kg群は6頭全てが生存し、抗ウイルス作用が確認された。

現実の医療では感染したばかりの患者を治療する機会は少ない。感染者の体液に暴露した人をケアすることはあるが、これは治療ではなく暴露後予防と呼ばれる。従って、次のステップとしては、感染の数日後に投与を開始する試験を行うことが望ましい(そんな時間は無いという反論が出るかもしれないが)。因みに、ZMappの試験では感染後5日経って発症した後に投与しても十分な効果があった。

今回の発表で朗報は、Marburgウイルスの試験(15mg/kg)と大差ない16mg/kgでも効果が見られたこと。in vitroの力価は半分で、必要量の安全性マージンは10~50倍と言われていたが、もし16mg/kgで足りるなら副作用が大きく増加する心配は小さいだろう。尤も、15mg/kgがヒトに安全というエビデンスは無いので、今後に持ち越された探求課題であることに変わりはないのだが。

エボラでキチンとした薬効確認臨床試験を行うのは難しく、それだけに、非ヒト霊長類の試験は重要な代替的エビデンスだ。安全性についてはワクチンを含めて臨床試験が進行中なので、ある程度のアイディアを掴めるだろう。重病人よりも健常者の方が副作用を発見しやすいので、治療薬候補に関しては暴露後予防の臨床試験も実施した方が良いだろう。

リンク:バイオクリストのプレスリリース

【承認申請】


LAL欠乏症治療薬の承認申請が受理

(2014年12月23日発表)

Synageva BioPharma(Nasdaq:GEVA、米国マサチューセッツ州)は、リソソーム酸リパーゼ(LAL)欠乏症治療薬SBC-102(sebelipase alfa)の承認申請がEUに受理されたと発表した。加速審査を受ける。米国でも今月、ローリング承認申請が完了しており、来年夏にも承認されることになるだろう。

LAL欠乏症は常染色体性劣性リソソーム貯蔵疾患で、脂肪が肝臓や血管壁などに蓄積、吸収不良や成長不全、肝臓障害、アテローム硬化などを発症する。新生児の100万人に二人が発症、6ヶ月以内に死亡することが多い。

SBC-102は遺伝子組換え型LALで、日米欧で希少疾患用薬指定を受けている。小児と成人患者66人を組入れて1mg/kgを二週間に一回点滴投与した試験では、20週後に肝機能検査値が正常化した患者が偽薬群比有意に多かった。肝脂肪やLDL-Cも有意に減少した。また、急速進行型幼児を組み入れた試験では、9人中6人が12ヶ月時点で生存していた。

リンク:Synagevaのプレスリリース(PR Newswire)

第二のDMD治療薬のローリング承認申請

(2014年12月23日発表)

PTCセラピューティクス(Nasdaq:PTCT)は、Translarna(ataluren、開発コードPTC124)のローリング承認申請を米国で開始したと発表した。進行中の第三相試験の結果を来年第4四半期に提出して完了する考え。ライバルのProsenta(バイオマリンが買収する予定)も10月にdrisapersenのローリング承認申請を開始しており、開発競争が最終段階に入ることになる。

両剤はナンセンス変異型DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の治療薬として開発されている。DMDは男子の劣性遺伝性疾患で筋細胞膜の維持に必要なジストロフィンを十分に作れない。ナンセンス変異型は遺伝子の一部に翻訳中止箇所を示す塩基配列(ストップコドン)を持っているため、不完全なジストロフィンが作られる。

両剤はmRNAが翻訳される過程を攪乱しストップコドンが見過ごされるように仕向ける。その結果、不完全だがある程度機能するジストロフィンが産生されるようになる。DMDのうちナンセンス変異型は欧州では13%、米国は20%、イスラエルは50%を占め、欧米合計で4000人が治療対象と推定されている。

両剤ともジストロフィンを増やす効果が確認されているが、検査方法の妥当性に議論の余地があるようだ。臨床的な効用も不明確で、dripersenの第三相も、Translarnaの後期第二相も、6分歩行試験の成績を偽薬比有意に改善することができなかった。前者はGSK、後者はジェンザイムが開発提携していたが、何れも解消した。

希望が消えかけたが、今年8月にEUがTranslarnaを条件付き承認。FDAも両社が承認申請することを認めた模様だ。承認されても効果が不確かなら患者をぬか喜びさせるだけだが、まずはTranslarnaの第三相試験の結果を待つとしよう。

リンク:PTC社のプレスリリース

バクスター、VW病治療薬を承認申請

(2014年12月22日発表)

バクスター・インターナショナル(NYSE:BAX)は、米国でBAX111をフォン・ヴィレブランド(VW)病の治療薬として承認申請したと発表した。VW病は常染色体性遺伝子疾患で、罹患率は1~2%と高いが多くは症状が軽い。BAX111は初めての高純度遺伝子組換え型VW因子で、臨床試験では22人の患者の出血治療に成功。インヒビターや塞栓性疾患は見られなかったが、重篤な治療関連有害事象が1例あった(心拍数上昇と胸部不快感)。

リンク:バクスターのプレスリリース

【承認】


オプジーボが米国でも承認

(2014年12月22日発表)

FDAは、小野薬品/BMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を切除不能・転移性の黒色腫のサルベージ療法として承認したと発表した。BMSのYervoy(ipilimumab)と、BRAF-V600変異を持つ腫瘍の場合はBRAF阻害剤による治療を既に受けた患者が対象になる。第三相試験の中間客観的反応率(ORR)データに基づく加速承認で、審査期限より3ヶ月早いクリスマスプレゼントとなった。

活性化したTセルが発現する抑制刺激受容体、PD-1に結合するIgG4型完全ヒト化抗体で、癌細胞がPD-L1を結合させてTセルを抑制するのを妨げる。免疫強化療法はこれまでにIL-1やアルファ・インターフェロンが実用化されており、ORRは低いものの、反応した患者は効果が長期間持続する特徴がある。抗PD-1抗体はORRが上記の解析で32%と比較的高く、また、悪性黒色腫や腎細胞腫以外にも様々な癌に効果がありそうなことが長所だ。

一方で、免疫関連の有害事象も見られ、過去の様々な癌の試験では致死的な肺炎が574人中5人で発生した。結腸、肝臓、腎臓などの免疫関連有害事象も見られた。

Opdivoは小野がトランスジェニック・マウス抗体技術を持つメダレックスと共同で創製、BMSがメダレックスを買収したため両社の共同開発プロジェクトとなった。日本韓国台湾以外はBMSが販売する。報道によると、米国では月12500ドルで販売される模様。9月に同じ適応症で承認された抗PD-1完全ヒト化抗体、Keytruda(pembrolizumab)とほぼ同じだ。用法は3mg/kgを二週間に一回投与で、日本の用法である2mg/kg、三週間に一回より多い。

リンク:FDAのリリース

リンク:BMSのプレスリリース

ノボの体重管理薬が米国で承認

(2014年12月23日発表)

FDAは、ノボ ノルディスクのSaxenda(liraglutide)を肥満症、及び、高血圧や二型糖尿病、高脂血症などの疾病因子を持つオーバーウエートの患者の治療薬として承認したと発表した。二型糖尿病薬として承認されているGLP-1作用剤、Victoza(和名ビクトーザ)の高用量版で、1.2mg/1.8mgではなく3mg。

臨床試験では1年間の体重減少が偽薬群比4.5%大きかった。また、5%以上の減量に成功した患者の比率が62%と偽薬群の34%を上回った。16週間治療して4%以上減らなかったら成功する見込みが小さいので打ち切る。低カロリーダイエットと運動療法を併用する。

主な有害事象は悪心嘔吐。深刻な有害事象は膵炎、胆嚢疾患、腎障害、自殺思慮。心拍数が上昇することがあり、持続する場合は中止する。また、他のGLP-1作用剤と同様に、癌原性試験で甲状腺C細胞腫瘍が見られたがヒトに対するリスクは確立していないことが枠付警告された。FDAは、進行中の試験で乳癌や心血管疾患のリスクを評価するよう求めた。

リンク:FDAのリリース

リンク:ノボ ノルディスクのプレスリリース

ラピアクタが米国でも承認

(2014年12月22日発表)

FDAは、バイオクリストのRapivab(peramivir、和名ラピアクタ)を非複雑インフルエンザの治療薬として承認したと発表した。発症48時間以内の患者に600mgを15~30分で点滴投与する。上部気道症状などが原因で経口剤や吸入用薬を使えない患者に用いることが想定されている。

Tamiflu(oseltamivir)と同様なノイラミニダーゼ阻害剤。日本では2010年に承認されたが、米国の開発は難航、臨床試験フェールが続いた。直近では重症入院患者の第三相試験を行ったが中間解析で無益性が認定され、一転して、非複雑インフルエンザの治療薬として承認申請されることとなった。

FDAによると、臨床試験では体温が12時間早く正常化し、症状軽快も21時間早まった。主な有害事象は下痢。稀だが深刻な有害事象としてはスティーブンス・ジョンソン症候群のような深刻な皮膚反応が見られた。他のノイラミニダーゼ阻害剤と同様に幻覚や錯乱、異常行動が見られたが、薬のせいなのか病気のせいなのかは明らかではない。

重篤患者に対する効能が明確ではないので、出番は少ないだろう。需要の中心は国家備蓄用途と推測されているようだ。

リンク:FDAのリリース

リンク:バイオクリストのプレスリリース

今週は以上です。

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2014年12月21日

海外医薬ニュース2014年12月21日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • GSK、帯状疱疹ワクチンの第三相が成功
  • ロシュ、二剤の第三相がフェール
  • ルンドベック、脳梗塞用薬の開発を中止
  • バイエル、A型血友病薬を米国でも承認申請
  • ジェネンテック、MEK阻害剤を承認申請
  • CHMPが幹細胞療法や体重管理薬などを支持
  • FDAがアッヴィの4剤併用抗HCV薬を承認
  • アストラゼネカ、PARP阻害剤が欧米で承認
  • MSDが買収する企業の抗生剤が米国で承認
  • アルコンの外耳炎用薬が米国で承認


【新薬開発】


GSK、帯状疱疹ワクチンの第三相が成功

(2014年12月18日発表)

グラクソ・スミスクラインは、帯状疱疹ワクチンHZ/suの第三相試験が良好な結果になったことを発表した。50歳以上の患者を組入れた試験で、帯状疱疹リスクを97.2%削減した。まだ進行中である模様であり、ヘルペス感染後疼痛を防ぐ効果があったのかは明らかではない。70歳以上を組入れた試験や免疫低下患者を組入れた試験も進行中。

帯状疱疹は潜伏している水痘ウイルスの再活動化が原因。加齢に伴い免疫力が低下すると発生しやすくなる。MSDの弱毒化生ワクチン、Zostavaxが06年に米国で発売されたが、生産が難しい模様で、数年前に供給不足になったことがある。

HZ/suはウイルスのgE抗原にAS01-Bアジュバントを添加したもの。AS01はAgenus(Nasdaq:AGEN)の植物由来の免疫刺激成分やMPL、リポゾームを含んでいる。

リンク:GSKのプレスリリース

ロシュ、二剤の第三相がフェール

(2014年12月19日発表)

ロシュは、抗癌剤とアルツハイマー病薬の第三相がフェールしたことを明らかにした。

まず、Kadcyla(ado-trastuzumab emtansine、和名カドサイラ)のher2陽性転移性乳癌一次治療試験がフェール。KadcylaはHerceptin(trastuzumab)の抗her2モノクローナル抗体に細胞毒を結合した抗体薬物複合体(ADC)で、二次治療試験でXeloda(capecitabine)とTykerb(lapatinib)の併用より優れた延命効果を示し、13年に日米欧で承認された。

今回の一次治療試験では、Kadcyla単剤群や抗2C4モノクローナル抗体Perjeta(pertuzumab、和名パージェタ)併用群のPFS(無進行生存期間)をHerceptinとタクサン系を併用する標準療法群と比較したが、どちらも有意な差は無かった。非劣性解析は成功したのでKadcylaの有用性が示されたことになるが、値段の違いを考えれば敢えて使う理由が無い。

不思議なのはPerjeta併用群だ。Perjetaは今回と同じ用途に承認されている。臨床試験ではHerceptinとTaxotere(docetaxel)の標準療法と比べてPerjetaも用いる三剤併用法は死亡リスクが34%小さかった。Kadcylaの効果がHerceptin・タクサン系併用と同じならば、Kadcyla・Perjeta併用レジメンの方が優れている筈だが、A+B+C>A+B、D=A+B、∴C+D>A+Bとはならなかった。

今回はTaxotere以外のタクサンも使用できたが、それが原因とも思えない。薬の相性の問題かもしれないし、治験のプロトコルや投薬実態に違いがあるのかもしれない。

リンク:ロシュのプレスリリース

もう一つは、抗アミロイド・ベータHuCAL完全ヒト化抗体、R1450(gantenerumab)の前駆アルツハイマー病試験。中間無益性解析で独立データ監視委員会が無益性を認定、中止が決まった。今年開始された、中度アルツハイマー病の大規模な第三相試験は続行される。

アミロイド仮説は若年性アルツハイマー病で見られる遺伝子変異が起源のようだが、どういう訳か、第三相試験は加齢性患者が対象になっている。多くの小分子薬や抗体医薬の第三相がフェールしたのだから、原点に回帰して、若年性患者の試験を行うべきだろう。それで駄目だったら研究資源を他のメカニズムに振り向けることができる。

リンク:ロシュのプレスリリース

ルンドベック、脳梗塞用薬の開発を中止

(2014年12月17日発表)

ルンドベックはドイツのPAION社からdesmoteplaseをライセンス、急性虚血性脳卒中の治療薬として第三相試験を二本実施したが、どちらもフェールし、この用途での開発を中止することを発表した。

ナミチスイコウモリが吸血時に分泌して血液が固まるのを防ぐプラスミノーゲン・アクティベータを元に創製した遺伝子組換え薬で、開発歴は長く、2000年にシエーリングがPAIONにライセンス、04年にフォレストが北米の権利を取得したがP2b試験がフェールしたため返還、05年にルンドベックがライセンスしたもの。

tPAより脳細胞毒性が小さい可能性があることと、新しい画像分析手法を用いれば治療対象を発症後9時間経った患者まで広げられそうなことが注目点だったが、駄目だった。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

【承認申請】


バイエル、A型血友病薬を米国でも承認申請

(2014年12月17日発表)

バイエルは、BAY 81-8973をA型血友病薬として米国で承認申請したと発表した。遺伝子組換え型の第VIII因子で、培養過程などでヒトや動物由来の蛋白を用いていないため、感染症のリスクが小さいことが期待される。Kogenateの後継薬という位置付けだ。欧州でも今月、承認申請済み。

リンク:バイエルのプレスリリース

ジェネンテック、MEK阻害剤を承認申請

(2014年12月14日発表)

ジェネンテックはエグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)からライセンスしたGDC-0973/XL518(cobimetinib)をBRAF-V600変異型悪性黒色腫用薬として米国で承認申請したと発表した。EUでも承認審査中。同社のZelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ)と併用する。

ZelborafはBRAF阻害剤、cobimetinibはMEK阻害剤で、成長因子受容体の細胞内シグナル伝達に関わる同じパスウェイを阻害する。同様な併用療法としては、GSKのbraf阻害剤Tafinlar(dabrafenib)とMEK阻害剤Mekinist(trametinib)の併用が米国で承認されている。

癌細胞の細胞内シグナル伝達因子は変異しやすいが、二つの標的を同時に狙えば片方が変異して効かなくなるリスクを削減できるかもしれない。MEK阻害剤はそれ自体にも穏やかな効果がある。また、braf阻害剤の副作用である皮膚扁平上皮細胞腫(多くは良性)のリスクも抑制できる可能性がある。

ジェネンテック/ロシュの一次治療併用試験では、PFSがメジアン11.3ヶ月とZelborof単剤群の6.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.6だった。グレード3以上の有害事象の発生率は65%対59%と高まり、肝臓酵素やCPKの上昇が併用群の方が多かった。

リンク:ジェネンテックのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが幹細胞療法や体重管理薬などを支持

(2014年12月19日発表)

EUの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは12月の会議で幹細胞療法やオレキシジェンの体重管理薬などに肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

Chiesi FarmaceuticiのHoloclarは、中重度の角膜輪部幹細胞欠乏症(LSCD)の治療法。患者自身から採取した角膜上皮細胞(幹細胞を含む)を培養したもの。幹細胞療法がEUで承認されれば初。

LSCDは火傷や化学物質による外傷によって幹細胞が損傷、痛みや症状が続き、視力が悪化する。EUの有病率は10万人に3.3人で希少疾患用薬指定を受けている。Holoclarは幹細胞による再生を促す。角膜移植と異なり拒絶反応や手術を回避できる。前向き試験のエビデンスが無いことから、条件付き承認となる予定。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:同(最初の幹細胞製品の承認推奨)

オレキシジェン(Nasdaq:OREX)のMysimba(naltrexoneとbupropionの合剤、米国名Contrave)は体重管理薬。活性成分はどちらも別の適応で承認されている。食欲を抑制し、エネルギー消費を促し、飽食感を増強する。肥満症(BMI30kg/m2以上)や、疾病リスク因子を持つ太り過ぎ(27~30kg/m2)の患者が、低カロリーダイエット及び運動療法と併せて服用する。16週間服用して体重が5%以上減少しなかったら打ち切る。

9月に承認された米国の用法は、12週間服用して5%以上減らなかったら止める。若干異なるのは、おそらく両地域の体重管理ガイドライン自体が異なっているのだろう。薬物療法は副作用もあるので週何キロという減量目標を達成できなかったら他の方法にスイッチすることが推奨されている。

体重管理薬は米国では12年にヴィーヴァス(Nasdaq:VVUS)のQsymia(phentermineとtopiramateの合剤)とアリーナ(Nasdaq:ARNA)/エーザイのBelviq(lorcaserin)が承認。オレキシジェン/武田薬品のContraveも今年9月に承認され、ニッチな市場で販売競争が行われている。EUはQsymiaもBelviqも承認しなかったため、オレキシジェンが先陣を切る。販売パートナーは決まっていないが、米国での反響が良ければ武田が権利を取得する可能性もありそうだ。

リンク:EMAのプレスリリース

イタリアのニューロン(SIX:NWRN)が開発し同じくイタリアのZambon社が承認申請したXadago(safinamide)も肯定的意見を獲得した。パーキンソン病の治療薬。05年に承認されたテバ/ルンドベックのAzilect(rasagiline)と同じMAO-B阻害剤で、ドパミンの再取込やグルタミン酸の放出を阻害する。Azilectは早期患者に単剤投与することが認められているが、Xadagoはレボドパを服用している中期・後期患者に追加投与する用法だけだ。

パーキンソン病にはレボドパが有効だが、長期間使ううちに有効時間(オン・タイム)が短くなる。Xadagoを追加投与した試験ではオン・タイムが30~50分長期化した。主な有害事象はジスキネジア、傾眠/不眠、眩暈、頭痛、悪心、起立性低血圧など。

早期患者向けが支持されなかったのは治療効果が穏やかであることや、新薬のニーズがそれほど切実ではないことが理由である模様。

米国でも5月に承認申請されたが、書類の目次の不備や添付文書がガイドラインに従っていないことから、受理されなかった。日本はMeiji Seikaファルマが開発販売権を保有。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:両社のプレスリリース

アクタヴィス(NYSE:ACT)が11月に6.75億ドルで買収したDurata社のXydalba(dalbavancin、米国名Dalvance)も肯定的意見を得た。グラム陽性菌による急性細菌性皮膚皮膚構造感染症に用いる。バンコマイシン系でMRSAにも活性を持ち、一週間置いて二回の点滴で足りることが特徴。今年5月に米国でも承認されている。

米国は04年、欧州は07年に承認申請されたが、試験の内容が良くなかった模様で再試験を実施。バンコマイシン(必要に応じてlinexolidも)と比べて効果が非劣性だった。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:Actavisのプレスリリース

適応拡大では、セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide、和名レブラミド)を多発骨髄腫で造血幹細胞移植が不適な患者の一次治療及び維持療法に用いることが支持された。MM-015試験では、MPという二剤併用レジメンよりもRevlimidも併用しコース完了後もRevlimidだけ続けるMPR-Rレジメンの方が効果が高かった。

リンク:セルジーンのプレスリリース



Revlimidのライバルである武田薬品/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib)は08年に一次治療の承認を受けている(維持療法は無い)が、今回、マントルセルリンパ腫の一次治療適応拡大が支持された。造血幹細胞移植不適患者が適応になる。VcR-CAPという5剤併用レジメンで、臨床試験ではR-CHOP5剤併用レジメンよりPFSがメジアン11ヶ月長く、ハザードレシオ0.63だった。

Swedish Orphan BiovitriumのXiapex(collagenase clostridium histolyticum、米国名Xiaflex)はデュピュイトラン拘縮に承認されているが、ペロニー病に用いる適応拡大が肯定的意見を得た。コラーゲン分解酵素で、ペニスに良性のしこりができることによる痛みや弯曲を治療する。

Auxilium(Nasdaq:AUXL)の開発品。AuxiliumはEndo International(Nasdaq:ENDP)と合併する予定。

【承認】


FDAがアッヴィの4剤併用抗HCV薬を承認

(2014年12月19日発表)

FDAは、Viekiraパックを遺伝子型I型HCVによる慢性C型肝炎の治療薬として承認したと発表した。平行開発された三種類の新薬とritonavirの併用レジメンで、患者によっては12週間の治療で完了する。また、患者によってはribavirinを併用しなくてもよいので、かっての標準療法であるインターフェロンもribavirinも要らない、経口剤だけの治療法になる。

4剤のうち3剤は合剤で、NS5A阻害剤ombitasvir、NS3/4A阻害剤paritaprevir、3A4阻害剤ritonavirを配合。二錠を一日一回服用する。もう一剤は非核酸系NS5Bポリメラーゼ阻害剤dasabuvirで一日二回服用する。

この二錠を12週間服用するが、遺伝子型Ia型や肝硬変、肝移植患者はribavirinも併用。Ia型且つ肝硬変合併は24週間服用する。奏効率は95~100%と高い。

値段も高い。米国では12週間分が83319ドルで販売される模様で、これは、一日一回一錠服用するだけで足りるギリアド(Nasdaq:GILD)のHarvoni(NS5Bポリメラーゼ阻害剤sofosbuvirとNS5A複製複合体阻害剤ledipasvirの合剤)の63000~94500ドル(患者特性に応じて服用期間と薬剤費が異なる)と良い勝負である。

尤も、新薬が三剤もあり、paritaprevirはEnanta(Nasdaq:ENTA)からのライセンス品であることを考えれば、競争を意識して価格を抑えたと言っても良いだろう。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:アッヴィのプレスリリース

アストラゼネカ、PARP阻害剤が欧米で承認

(2014年12月18日、19日発表)

アストラゼネカは、Lynparza(olaparib)が欧州と米国で相次いで承認されたことを発表した。06年にKuDOSを2億ドルで買収して入手、一度は開発中止の危機に陥ったが蘇った。米国の承認もウルトラCを使ったという印象だ。

Lynparzaはpoly ADP-ribose polymerase(PARP)阻害剤で、BRCA変異患者の卵巣癌に用いる。PARPとBRCAはどちらも遺伝子の修復に関わる蛋白で、BRCAに機能喪失変異を持つ人は乳癌や卵巣癌のリスクが持たない人より高い。癌細胞は活発に分裂するため遺伝子変異が起きやすいが、BRCA変異患者のPARPを阻害すると修復メカニズムが機能しなくなるため、癌細胞を抑制できる可能性がある。

第二相試験に基づく承認なのでエビデンスは明確ではなく、そのためか、欧州と米国では適応が若干異なっている。欧州は白金薬レジメンに反応した患者の維持療法として単剤投与する。BRCA変異は生殖細胞変異でも体細胞変異でも良い。米国も同じ適応で申請されたが、諮問委員会で13人の委員のうち11人が承認に反対した後に、変更された。BRCA生殖細胞変異型卵巣癌の4次治療として単剤投与する。米国は加速承認なので、進行中の第三相試験で効能を確認する必要がある。

FDAはMyriad Genetic LaboratoriesのBRCA血液検査もPMA(販売前申請)を優先審査で承認した。同社のラボで検査する。

欧州承認の根拠となった第二相試験はフェールしたが、BRCA生殖細胞変異患者の事後的分析ではPFSがメジアン11.2ヶ月と偽薬の4.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.18だった。主評価項目がフェールした後の事後的解析なので意義は曖昧だが、p値は0.00001を下回った。全生存の解析はハザードレシオ0.74、有意ではなかった。

米国承認の根拠となった第二相単群試験では客観的反応率が34%、反応持続期間はメジアン7.9ヶ月だった。

主な有害事象は悪心、嘔吐、疲労、貧血など。深刻な有害事象では骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病が見られたようだ。



リンク:アストラゼネカのプレスリリース(欧州承認、18日付)

リンク:FDAのリリース(米国承認、19日付)

リンク:アストラゼネカのプレスリリース(同)

リンク:Myriadのプレスリリース(同)

MSDが買収する企業の抗生剤が米国で承認

(2014年12月19日発表)

FDAは、Cubist(Nasdaq:CBST)のZerbaxaをグラム陰性菌による複雑尿道感染症と複雑腹腔内感染症の治療薬として承認したと発表した。アステラス製薬が創製・アウトライセンスしたセフェム系抗生剤ceftolozaneと、大鵬薬品が創製したベータ・ラクタマーゼ阻害剤tazobactamの静注用合剤で、後者の適応症ではmetronidazoleと併用する。臨床試験では効果が既存の薬と非劣性だった。院内感染細菌性肺炎でも第三相試験中。

CubistはMSDが84億ドルで買収を決めたばかり。合意直後に主力製品であるCubicinの特許裁判でGE薬メーカーに有利な判決が出る不運に見舞われ、20~30億ドル分払い過ぎとも言われているが、Zerbaxaは順調に承認された。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:Cubistのプレスリリース

アルコンの外耳炎用薬が米国で承認

(2014年12月17日発表)

FDAは、Xtoro(finafloxacin)を急性外耳炎治療薬として承認した。キノロン系抗菌剤の懸濁液。主な有害事象は耳の痒みや悪心。ノバルティスの子会社であるアルコンの製品。

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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2014年12月14日

海外医薬ニュース2014年12月14日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ASH:ノバルティス、CAR-Tのフォローアップデータ発表
  • ASH:アドセトリスの地固め療法が成功
  • 大塚・ルンドベック、OPC-34712のデータ発表
  • SABCS:アフィニトールの一次治療試験はフェール
  • SABCS:afatinibの乳癌試験がフェール
  • ガーダシル9が米国で承認
  • リリーの抗癌剤が適応拡大
  • アストラゼネカ、オピオイド誘導性便秘薬がEUで承認


【新薬開発】


ASH:ノバルティス、CAR-Tのフォローアップデータ発表

(2014年12月6日発表)

ノバルティスはASH(米国血液学会)でCTL019の小児急性リンパ芽球性白血病試験の追加データを発表した。再発性難治性の39例中36例、92%が完全寛解し、1年生存率は75%だった。

CTL019はペンシルバニア大学の研究者が開発したCAR-T(キメラ抗原受容体-Tセル)療法で、Bセル腫瘍の治療法として注目されている。Bセル特異的な抗原であるCD19とTセル受容体の細胞内シグナル伝達ドメインであるCD137及びCD3ゼータをリンカーで結んだ蛋白の遺伝子を、レンチウイルスを用いて患者から採取したTセルに導入、培養・活性化した上で患者に戻すと、Tセルが体内で増殖しBセルを攻撃する。ノバルティスはペン大とCAR-Tの研究開発商業化で提携しており、CTL019の権利を保有している。

副作用は、応答したすべての患者でサイトカイン放出症候群が発生、1/3は治療が必要だった。IL-6受容体拮抗剤(中外のアクテムラのことではないか)が有効である模様だ。

自家細胞療法ではデンドレオンのProvenge(sipuleucel-T)が2010年に米国で前立腺癌用薬として承認されたが、高価であることや、抗原提示細胞をex vivoで抗原に感作した後の培養が上手く行かないケースがあることなどから期待されたほど売れず、経営が破綻した。CTL019は培養しやすいのかどうか、何時頃商業化できるのか、気になるところだ。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

ASH:アドセトリスの地固め療法が成功

(2014年12月8日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)と武田薬品は、Adcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)のホジキンリンパ腫地固め療法試験が成功したと発表した。PFS(無進行生存期間)リスクを43%削減する良い内容で、標準療法になるのではないか。

Adcetrisは2011年に米国でホジキンリンパ腫の三次治療及び未分化大細胞性リンパ腫の二次治療向けに承認された抗体薬物複合体で、CD30に結合してリンパ球の内部に入り、タンパク質分解酵素によりリンカーが零落してMMAEが毒性を発揮する。今回の試験は自家造血幹細胞移植を受けたが再発リスクの高い患者を対象に、最長1年間投与した。結果は、試験薬群のメジアンPFSが43ヶ月、偽薬群は24ヶ月、ハザードレシオ0.57でp=0.001。2年無進行生存率は63%対51%でこちらもp=0.001だった。

偽薬群の患者は進行後にAdcetrisを用いることが可能であったせいか、全生存の中間解析は両群大差なかったようだ。最終解析は2016年の予定。主な有害事象は末梢神経症や好中球減少症など。尚、米国のレーベルでは致死的なPML(進行性多病巣性白質脳症)が枠付警告されている。1回100万円以上の薬なので費用も掛かる。

リンク:武田薬品のプレスリリース(pdfファイル、和文)

大塚・ルンドベック、OPC-34712のデータ発表

(2014年12月10日、11日発表)

大塚製薬と開発販売パートナーであるルンドベックは、OPC-34712(brexpiprazole)の第三相試験結果を学会発表した。鬱病アジャンクト治療試験(抗鬱剤に十分に反応しない患者に追加投与)は2mgを投与した試験が成功、1mgと3mgをテストした試験は後者が成功。統合失調症治療試験は0.25/2/4mgをテストした試験は2mgと4mgが成功、1/2/4mgの試験は4mgだけ成功。

承認を取得するためには二本の独立した試験で偽薬比有意な治療効果を確認する必要があるが、この二つの疾患は病状評価スコアの感受性があまりよくなく、治験がしばしばフェールする。今回の試験では二本成功したのは統合失調症の4mgだけであり、用量反応相関域も明確ではないが、成功しただけで立派だ。今年7月に米国で承認申請された。

OPC-34712は大塚/BMSのベストセラー非定型向精神薬Abilify(aripiprazole、和名エイビリファイ)の類縁体で、D2受容体に対する活性が低く、5-HT1A/2A受容体結合力が高い由。臨床的なプロファイルがどう異なるのかは不明だが、承認後に実際に使ってみて確かめることになるだろう。向精神薬は用量に関しても承認内容通りに使われるわけではなく、承認さえ取ってもらえればあとは自分たちで至適用量を調べる、というのが専門医の考え方だ。

リンク:両社のプレスリリース(鬱病試験、10日、pdfファイル、和文)

リンク:両社のプレスリリース(統合失調症試験、11日、pdfファイル、和文)

SABCS:アフィニトールの一次治療試験はフェール

(2014年12月12日発表)

ノバルティスはサン・アントニオ乳癌会議でAfinitor(everolimus)の第三相her2陽性末期乳癌一次治療試験の結果を発表した。第二相二次治療試験では良さそうな結果が出たのが、併用薬が異なるせいか、フェールした。

Afinitorは09年に腎細胞腫、12年には乳癌に承認されたが、乳癌の適応・用法はエストロゲン受容体陽性でher2陰性の再発癌にアロマターゼ阻害剤Aromasin(exemestane)と併用する。今回の試験は対象が異なるため、併用薬はpaclitaxelとHerceptin(trastuzumab、和名ハーセプチン)だった。

結果は、メジアンPFSが15.0ヶ月と偽薬を併用した群の14.5ヶ月と大差なく、ハザードレシオは0.89に留まった。事前に設定されたホルモン受容体陰性のサブグループ分析は各20.3ヶ月と13.1ヶ月となり、数値上は良さそうだが有意差は出なかった。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

SABCS:afatinibの乳癌試験がフェール

(2014年12月12日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはSABCSで、Gilotrif/Giotrif(afatinib)の乳癌適応拡大試験がフェールしたことを発表した。昨年4月に独立データ監視委員会が中止を勧告した。

GilotrifはEGFRとher2を不可逆的に阻害する小分子薬で、EGFR活性化変異型腺腫非小細胞性肺癌の一次治療薬として欧米で承認されている。今回の試験はher2阻害力に期待したもので、Herceptinレジメンを既に受けたher2陽性患者を組入れて、vinorelbineと併用する効果をHerceptin併用と比較した。中間解析で全生存期間が短く、忍容性も悪かったため中止となった。

ベーリンガーは乳癌におけるvinorelbine併用レジメンの開発を断念した。マルチキナーゼ阻害剤はデュアルアクション、トリプルアクションが期待されるが、副作用も多彩になるので良し悪しである。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

【承認】


ガーダシル9が米国で承認

(2014年12月10日発表)

FDAは、9種類のHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)型をカバーしたMSDのワクチン、Gardasil 9を承認したと発表した。06年に承認されたGardasilは4種類のHPV型(6、11、16、18)の抗原を含有しているが、新たに子宮頸癌の2割を占める5型(31、33、45、52、58)の抗原も入れることによって、子宮頸癌原因型の87%をカバーできるようになった。

接種対象となるのは9~26歳の女性と9~15歳の男性(性的感染するので根絶には男も接種した方が良い)。効能は、7種類のHPVによる子宮頸、外陰上皮、膣上皮、肛門の癌と6型、11型による

尖圭コンジローマ(性器いぼ)の予防。既にGardasilを接種した人はGardasil 9を接種すべきなのか?おそらく、ACIP(米国のワクチン勧奨委員会)が議論することになるだろう。

HPVワクチンは既にHPV感染している人に対する効果が明確ではないが、事前検査するわけではないので無駄打ちになっても表面化しない。ワクチンは治療薬より安価で忍容性も高く、個々人だけでなく社会全体を守るという意義もあるため、細かいことは気にしない傾向がある。接種後に稀に神経障害や失神が発生することはGardasilやCervarixが日本より先に発売された国でも騒ぎになったが、日本発売時には軽視された。

リンク:FDAのリリース

リリーの抗癌剤が適応拡大

(2014年12月12日発表)

FDAは、イーライリリーのCyramza(ramucirumab)を非小細胞性肺癌の二次治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。docetaxelと併用する。第三相試験では全生存期間がメジアン10.5ヶ月とdocetaxelと偽薬を併用した群の9.1ヶ月を1ヶ月強上回り、ハザードレシオは0.857、p=0.0235だった。グレード3以上の有害事象は好中球減少症(発熱性を含む)、疲労、白血球減少症、高血圧など。扁平上皮腫では肺出血が若干増加した。

CyramzaはVEGFR-2を標的とする完全ヒト化抗体で、抗VEGF抗体のAvastin(bevacizumab、和名アバスチン)に似ている。今回の試験の延命効果は決して大きくないが、扁平上皮腫はAvastinの効果が確認されておらず恐らく肺出血リスクが高いだろうから、このタイプに関しては意義がありそうだ。

Cyramzaは末期胃癌用薬として今年、欧米で承認された。

リンク:FDAのプレスリリース

アストラゼネカ、オピオイド誘導性便秘薬がEUで承認

(2014年12月9日発表)

アストラゼネカは、Moventig(naloxegol oxalate)がEUでオピオイド誘導性便秘の治療薬として承認されたと発表した。緩下剤に反応しない成人患者に、一日一回経口投与する。ネクター社(Nasdaq:NKTR)が開発したPEG化naloxoneで脳血管関門通過性が低いため末梢選択的にMuオピオイド受容体を阻害、オピオイド常用者の8割で発生する便秘副作用を中和する。米国でもMovantik名で9月に承認された。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

今週は以上です。

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2014年12月7日

海外医薬ニュース2014年12月7日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • バクスター、PEG化第VIII因子を承認申請
  • バイエルも第VIII因子新製剤を欧州で申請
  • アストラゼネカ、イレッサを米国で承認申請
  • FDA諮問委員会がアクタビスの抗菌剤を支持
  • ダクルインザは米国では審査完了
  • アムジェンの二重特異性抗体が米国で承認
  • ジャカビが真性赤血球増加症に承認
  • ベーリンガー、nintedanibが癌でも承認
  • イクスタンジ、EUでもプリキモ承認


【承認申請】


バクスター、PEG化第VIII因子を承認申請

(2014年12月1日発表)

バクスター・インターナショナル(NYSE:BAX)はBAX 855を米国でA型血友病治療薬として承認申請したと発表した。Advateの血液凝固第VIII因子をネクター(Nasdaq:NKTR)のポリエチレングリコール付与技術でPEG化し半減期を1.4~1.5倍に長期化したもので、12歳以上の第VIII因子補充療法経験者を組入れたルーチン予防試験では、週二回の投与で出血リスクを95%削減した。インヒビターの発生は見られなかった。

リンク:バクスターのプレスリリース

バイエルも第VIII因子新製剤を欧州で申請

(2014年12月4日発表)

Advateと並ぶ第VIII因子のベストセラー、Kogenateを販売するバイエルも複数の持効性製剤を開発しているが、まず、BAY 81-8973をEUでA型血友病の青少年・成人向けに承認申請した。Kogenateの後継品で、培養精製過程でヒトや動物由来の蛋白を用いていない。ルーチン予防試験では週3回の投与で出血リスクを96%削減、週2回投与群も93%削減、インヒビターの発生は見られなかった。

A型やB型の血友病で頻繁に出血する重度患者は、第VIII因子や第IX因子をルーチンに投与して予防するのが一般的になった。AdvateやKogenateのような既存の製剤は2~3日に一回、静注する必要があるが、バイオジェン・アイデックのEloctate(和名イロクテイト)を筆頭に、3~5日に一回で済む新薬が続々と申請・承認されている。

BAX 855やBAY 81-8973は既存勢力の反撃と言える。既存の製剤をベースにしているため、スイッチしやすいだろう。

中外製薬/ロシュも第IX因子と第X因子を架橋して後者を活性化するユニークな作用機序の二重特異性抗体、ACE910/RG6013を開発中。週一回皮注なので簡便だ。尤も、Eloctateも出血管理が良好な患者は週一回に減らせる可能性があるので、重要なのは、何割の患者が週一回で大丈夫なのかという直接比較試験のデータだろう。

リンク:バイエルのプレスリリース

アストラゼネカ、イレッサを米国で承認申請

(2014年12月2日発表)

EGFRチロシンキナーゼ阻害剤Iressa(gefitinib、和名イレッサ)は02年に日本で、03年には米国でも承認された。分子標的薬の第一号であり大きな注目を集めたが、その後の歩みは順調ではなかった。日本では間質性肺疾患が多発しメディアの攻撃を受けた。海外では薬効確認試験がフェールし、米国では05年に服用中の患者を除いて投与禁止となった。末期肺癌用薬なので事実上の承認取消である。その後、非小細胞性肺癌のうちEGFRが活性化変異しているタイプには有効であることが確立、09年にEUで初めて承認された。

アストラゼネカは、Iressaを米国でEGFR活性化変異型非小細胞性肺癌の一次治療薬として新薬承認申請し、受理されたと発表した。最初の承認申請から13年、長い回り道となったが、新薬開発に携わる全ての人々にとって重要な教訓だろう。その薬に最も応答するのはどのような患者なのか?腫瘍学では第二相試験に基づいて承認申請することが珍しくなくなったが、だからといって、大規模な試験を行ってファーマコジノミクスの臨床研究を疎かにしてはいけない。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がアクタビスの抗菌剤を支持

(2014年12月5日発表)

アクタビス(NYSE:ACT)は、FDA抗感染症薬諮問委員会がCAZ-104/CAZ-AVIを二つの適応症で承認することを支持したと発表した。院内感染肺炎も申請していた模様だが、支持されなかった。

CAZ-104/CAZ-AVIは米国では85年に承認された第三世代セフェム系抗生剤、ceftazidimeと、新開発のベータラクタマーゼ阻害剤avibactamの合剤で、前臨床でceftazidime耐性菌にも活性を示した。既に承認されている薬を使っているため、今回の承認申請はFDA法505(b)(2)に基づいて、ceftazidimeに関する過去のデータと合剤の第二相試験のデータを薬効・安全性のエビデンスとした。

第二相試験の対象はグラム陰性菌による複雑腹腔内感染症と複雑尿道感染症だが、ceftazidimeは下部気道感染症などにも承認されているため、アクタビスは院内細菌感染性肺炎の承認も求めたようだ。前者の二適応症については第三相試験が完了したところ。後者は第三相試験中。

これらの背景を考えると、今回の諮問委員会は、新薬開発・承認をスピードアップするためにどこまで譲歩できるかを問うたものと言えるだろう。

結果は、最初の二つの適応症については治療の選択肢が限られているあるいは代替手段がない場合に限定して、腹腔内感染症は12人の委員中11人が、尿道感染症は9人が、承認を支持した。一方、肺炎は、薬効確認試験が完了していないため、全員が反対した。腹腔内感染症試験で腎機能低下患者の死亡率が対照薬を投与した群より高かったことも影を落としたようだ。

avibactamはフォレスト社がアベンティスのスピンアウトであるNovexel社から北米の権利を取得したもの。フォレストは後にアクタビスと合併、Novexelはアストラゼネカに買収され、今日では北米ではアクタビスが、欧州などではアストラゼネカが開発している。この合剤はFDAから適合感染症製品指定を受けているため、様々な優遇策と、承認の暁には、優先審査バウチャーが供与されることになる。

リンク:アクタビスのプレスリリース

ダクルインザは米国では審査完了

(2014年11月26日発表)

BMSはDaklinza(daclatasvir、和名ダクルインザ)を慢性C型肝炎治療薬として承認申請し、日本やEUでは承認されたが、米国ではFDAから審査完了通知を受領した。

DaklinzaはNS5A複製複合体阻害剤で、NS3A/4プロテアーゼ阻害剤asunaprevir(和名スンベプラ)と一緒に平行開発・承認申請されたが、asunaprevirは米国では申請撤回となった。Ia型ウイルスに対する効果がやや弱いことが理由と推測される。FDAがDaklinzaを承認しなかったのは、asunaprevir以外の薬と併用した症例が少ないことが理由のようだ。そういえば、日本で承認された時も、この両剤の併用に限定されていた。

インターフェロンやribavirinを必要としないレジメンが続々と登場していることを考えれば、この二剤併用法の重要性は少なくともIa型に関しては低下した。日本のようにIb型が多い国以外では、他のプロテアーゼ阻害剤と併用試験を行って十分な有効性を示すことが肝要だろう。

リンク:BMSのプレスリリース

【承認】


アムジェンの二重特異性抗体が米国で承認

(2014年12月3日発表)

FDAは、アムジェンのBlincyto(blinatumomab)を前駆B急性リンパ性白血病用薬として承認した。承認申請の3ヶ月後、審査期限の5ヶ月前のスピード承認。再発性・難治性でフィラデルフィア染色体陰性の患者が適応になる。単群試験では32%の患者が完全寛解しメジアン6.7ヶ月持続した。致死的・命に係るサイトカイン放出症候群と脳症のリスクが枠付警告された。

12年にマイクロメット社を買収して入手した二重特異性抗体(BiTE抗体)で、BセルのCD19に結合する抗体可変領域と細胞傷害性Tセル(cTC)のCD3エプシロンに結合する抗体可変領域をプリペプチドで結合したもの。cTCは抗体受容体を持たないのでBiTE抗体で直接敵を教える。標的や、サイトカイン放出症候群のリスクがある点で、最近流行になりつつあるCAR-T(キメラ抗体受容体Tセル療法)と似ている。

Blincytoはアムジェンとアストラゼネカの日本における開発提携の対象。

リンク:FDAのリリース

リンク:アムジェンのプレスリリース

ジャカビが真性赤血球増加症に承認

(2014年12月4日発表)

FDAは、Jakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)を真性赤血球増加症(PV)に用いる適応拡大を承認したと発表した。PVは10万人に1~3人が罹患する希少疾患で、標準療法は瀉血、二次治療はヒドロキシウリア、Jakafiは三次療法で米国の対象患者は推定25000人。臨床試験では赤血球量管理成功・脾臓縮小奏効率が21%と、医師が選んだ治療法または支持療法のみを施行した群の1%を有意に上回った。日本でも適応拡大申請中。

JakafiはJAK1/2阻害剤で骨髄線維腫に承認されている。インサイト(Nasdaq:INCY)が開発、米国以外はノバルティスが開発販売。

リンク:FDAのリリース

リンク:インサイトのプレスリリース

ベーリンガー、nintedanibが癌でも承認

(2014年11月27日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはVEGFR阻害剤nintedaibを特発性肺線維症と癌の二領域で開発している。前者はOfevという名称で10月に米国で承認、11月にはEUのCHMPで承認支持を受けた。後者はEUだけで承認申請された模様だが、Vargatef名で承認されたことが発表された。適応は局所進行性、転移性、または局所再発性の腺腫非小細胞性肺癌の二次治療でdocetaxelを併用する。

第三相試験ではPFS(無増悪生存期間)がメジアン4.0ヶ月とdocetaxelだけの群の2.8ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.77、p=0.0193だった。全生存の解析もメジアン12.6ヶ月対10.3ヶ月、ハザードレシオ0.83、p=0.0359だった。サブグループ分析であるせいか、p値はあまり低くない。Alimtaを併用した第三相試験はフェールした。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

イクスタンジ、EUでもプリキモ承認

(2014年12月2日発表)

アステラス製薬はXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)の適応拡大がEUで承認されたと発表した。アンドロゲン枯渇療法に反応しなくなり化学療法もフェールした前立腺癌患者向けに承認されているが、新たに、化学療法が適応になる前の無症候性・軽度症候性患者に用いることが可能になった。米国でも9月に承認済み。

前立腺癌は進行が遅いことが多く、また、手術や放射線療法、抗アンドロゲン療法も有効だが、PSA値が再上昇し始めると次の治療手段を検討することが必要になり始める。高齢者が多いので副作用が比較的強い化学療法を施行するのは症状がある程度強くなってからになる。今回の承認で、状態がそれほど悪化していない患者に使うことができるようになったため、対象患者や治療期間が大きく増加する。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)が一足先に承認されているが、Xtandiはステロイド(prednisone)を併用しなくても良いので、出番が多そうだ。

リンク:アステラスのプレスリリース(和文)

今週は以上です。

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