2013年12月29日

海外医薬ニュース2013年12月29日




私事で恐縮ですが、今年は異動で就業環境に大きな変化があり、正直、海外医薬ニュースを続けるのは大変でした。何とか来年も続けたいと思いますので、ご声援お願いします。

来年が新薬の研究に情熱を傾ける人たちや、病気に苦しむ人たちに少しでも良い年になりますように。

【ニュース・ヘッドライン】




  • NK-1受容体拮抗剤の第三相が成功したが
  • TAK-875が開発中止
  • 武田、MLN0002のFDA審査期限延期
  • ノボの第XIII因子が米国でも承認
  • ルンドベックの抗鬱剤が欧州でも承認


【新薬開発】


NK-1受容体拮抗剤の第三相が成功したが

(2013年12月23日発表)

TESARO(Nasdaq:TSRO)は、Opko Health(AMEX:OPX)からライセンスしたNK-1受容体拮抗剤rolapitantの三本の第三相試験のうち最初の二本が成功したと発表した。中度と高度の催吐性を持つ化学療法を受ける癌患者を組入れた悪心嘔吐予防試験で、5-HT3受容体拮抗剤とdexamethasoneを併用してrolapitantを一回投与したところ、化学療法開始の24時間後から120時間後の間の悪心嘔吐が偽薬比有意に少なかった。

残念だったのは、二次的評価項目である最初の24時間、あるいは全期間では有意差が無く、トレンドに留まったこと。10年前に承認された類薬であるEmend(aprepitant、和名イメンド)の試験では全期間でも有意差があった。

NK-1受容体拮抗剤は遅発性悪心嘔吐の予防に有効と考えられており、rolapitantの試験結果は意外ではない。また、Emendは3日間経口投与するが、rolapitantは半減期が長いため一回で足り、また、薬物相互作用リスクが小さい。ただそれにしても、10年以上遅れて発売される薬のデータが先行品に見劣りするのでは情けない。

rolapitantは09年にシェリング・プラウから権利を取得したもの。TESAROはエーザイが買収したMGIの経営陣などが設立した会社で、そう言えば、同社が開発した5-HT3受容体拮抗剤Aloxi(palonosetron)も第三相試験のデータが先行品より見劣りした。

リンク:Tesaroのプレスリリース

TAK-875が開発中止

(2013年12月27日発表)

武田薬品は、GPR40部分作動剤TAK-875(fasiglifam)の開発中止を発表した。第三相試験中で、日本では今年5月に試験成功が発表されたが、肝安全性懸念が浮上したようだ。

GPR40は膵島細胞に発現する遊離脂肪酸受容体で、TAK-875は部分作動して血糖濃度依存的にインスリン分泌を刺激する。第二相試験では50mg一日一回の投与でHbA1cが偽薬比0.99%低下した。深刻な有害事象の発生率は1%で、肝機能検査値異常、心停止・腎不全、冠動脈頸動脈疾患が見られた。

第三相では独立肝安全性評価委員会が設置されたとのことなので、FDAのガイダンスに対応して、Hyの法則に該当する症例について薬物誘導性肝障害であるかどうか判定するプロトコルが採用されたのだろう。その結果、5年前に開発中止となったTAK-475(lapaquistat)と同様に、関連性を否定できない症例が見つかったのだろう。

1000人に一人といった低頻度で発生する肝毒性は第三相試験でないと確認できない。血圧、血糖値、コレステロール値を下げる薬は効果に関しては後期第二相試験で十分に確認することができるので、第三相試験の意義は稀に起きる副作用の発見である。その意味では、武田がきちんとした体制を取って発売前にリスクを検出したことは賞賛すべきだろう。

リンク:武田のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


武田、MLN0002のFDA審査期限延期

(2013年12月25日発表)

武田薬品は、FDAが炎症性腸疾患治療薬MLN0002(vedolizumab)の潰瘍性大腸炎用途における承認審査期限を来年2月18日から5月20日に延期したと発表した。武田が添付文書の記述などを改定したことが申請内容の主要な変更と見做された模様だ。クローン病は標準審査で日程的な余裕があり、期限は変更されていない。

MLN0002はアルファ4ベータ7インテグリンを標的とする抗体医薬型免疫抑制剤で、バイオジェン・アイデックのTysabri(natalizumab)と似ているが、アルファ4ベータ1には結合しないのでPML(進行性多病巣性白質脳症)という深刻な副作用リスクを持たない可能性があり、現実に、臨床試験では一例も発生しなかった。しかし、Tysabriも発生頻度は数千人に一人なので、エビデンスが十分とは言えない。迂闊に安全と認定してしまうと、医師や患者が油断して発見・対応が遅れてしまうリスクがある。

このため、私は、REMS(リスク評価緩和戦略)という適正使用担保策が導入され医師・薬剤師の事前登録やPMLの原因であるJCウイルスの事前検査などが課されると予想しているが、武田のリリースはREMSに言及していない。もし特別なREMSがなく添付文書の注意喚起だけで済むのだとしたら、販売面でポジティブだ。

リンク:武田のプレスリリース(和文)

【承認】


ノボの第XIII因子が米国でも承認

(2013年12月20日発表)

ノボ ノルディスクは、Tretten(catridecacog)が第XIII因子欠乏症患者の出血予防薬としてFDAに承認されたと発表した。欧州では昨年承認されたが、米国は生産問題などが原因で遅れていた。

第XIII因子は、血栓のフィブリンとクロスリンクして網状に変え、強固な凝固塊にする。第XIII因子欠乏症は世界で1000人強の超希少疾患で、一旦は止血するものの再出血しやすい。第XIII因子は酵素活性を持つAサブユニットとBサブユニットで構成されるが、第XIII因子欠乏症の殆どは前者を欠いている。そこで、遺伝子組換え型の第XIII因子AサブユニットであるTrettenを月1回、点滴静注して、補充する。

リンク:ノボのプレスリリース

ルンドベックの抗鬱剤が欧州でも承認

(2013年12月27日発表)

ルンドベックは、Brintellix(vortioxetine)がEUで鬱病に承認されたと発表した。米国でも9月に承認。抗鬱剤はSSRIが普及、難治性患者にはSNRIなどもあり、一次治療薬に反応しなくても二次治療薬でかなりの患者が寛解するようになった。それでも三次治療薬、四次治療薬を必要とする患者はいるが、開発が難しく商業的なポテンシャルも小さくなったので、製薬会社の開発意欲は高くない。その中で、第三相試験がフェールしても諦めずに開発を続けたルンドベックが、遂に、欧米で承認に漕ぎ着けたことは意義深い。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

今週は以上です。

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2013年12月23日

海外医薬ニュース2013年12月23日号




【ニュース・ヘッドライン】




  • BMSが代謝性疾患事業を売却
  • アクテリオンは旭化成に4億ドルを払うべし
  • C型慢性肝炎の治療はこの二剤で決まり
  • キュービスト、腹腔内感染試験も成功
  • オンノコバ、rigosertibの膵癌試験がフェール
  • KalydecoのR117H変異膿胞性線維症試験結果
  • ラピアクタが米国でも承認申請
  • ビクトーザが体重管理薬として承認申請
  • ランタスのバイオシミラーが米国でも承認申請
  • CHMPがエグゼリキシスの甲状腺癌用薬などの承認を支持
  • GSK、テラバンスのCOPD合剤が米国で承認
  • アクテリオンの肺動脈高血圧症治療薬が欧州で承認


【今週の話題】


BMSが代謝性疾患事業を売却

(2013年12月19日発表)

BMSは、代謝性疾患に係る提携資産をアストラゼネカに売却することで合意した。代価は一時金27億ドルと承認・販売目標達成報奨金14億ドル及び2025年までの売上ロイヤルティ。アストラゼネカが一部の資産を売却する場合は更に2.25億ドルを支払う。BMSで当該事業に係る4100人はアストラゼネカに転籍、研究開発や製造に係る従業員はBMSに残る。英国上場基準に則して算出された譲渡資産の公正価値は83億ドル、2012年の税前利益は4億ドルの赤字。

両社は07年に提携、BMSが創製したDPP-4阻害剤Onglyza(saxagliptin、和名オングリザ)やSGLT2阻害剤Forxiga(dapagliflozin)、BMSが買収したアミリンのアミリン誘導体Symlin(pramlintide acetate)、GLP-1作用剤Byetta(exenatide、和名バイエッタ)とその長期作用性製剤Bydureon、遺伝子組換え型レプチンmetreleptinなどを開発販売している。BMSと言えばドイツのメルクから導入したmetforminが大成功し糖尿病治療薬で大きなプレゼンスを持っていたが、少なくとも一旦は、姿を消すことになる。

重点領域を明確にして開発予算を集中的に投下する戦略がポピュラーになったが、各社の重点領域は殆ど同じなので、結果的に、開発競争は緩和しない。一流の研究体制を持つ企業同士なので競争は熾烈になるばかりである。その中でユニークなのがBMSの戦略で、Xa阻害剤でもファイザーと開発販売提携する一方、腫瘍学や自己免疫疾患では単独で独創的な新薬を次々と商品化している。

今回の戦線縮小も、開発や販売促進に費用が掛かりその割には他社製品と差別化しにくい分野ではなく、画期的新薬が続々と登場し高い価格が許容される高採算領域に特化することにより資本効率と利益成長力を強化する狙いだろう。他社の開発品を模倣し同じような製品を販売力に任せて拡販するme-too drug戦略と一線を画している。ビッグ・ファーマを目指す会社以外にとっては注視すべき戦略だ。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

アクテリオンは旭化成に4億ドルを払うべし

(2013年12月19日発表)

旭化成がスイスのアクテリオン社を提訴した損害賠償訴訟の控訴審は、原審を支持し、アクテリオンと経営陣に4.07億ドルを支払うよう命じた。アクテリオンは上告する考え。

旭化成は06年に脳血流改善剤エリル(fasudil)をCoTherix社にライセンスした。狭心症や肺動脈高血圧症の治療薬として開発されるはずだったが、アクテリオンがCoTherixを4.2億ドルで買収しライセンス返還したため、頓挫した。アクテリオンは安全性懸念を理由に挙げたが、旭化成は、アクテリオンの主力製品であるTracller(bosentan、和名トラクリア)の競合品の発売を阻止することが目的と見做し、契約違反で商事調停を求めると共に、アクテリオン及び3名のオフィサーに対して損害賠償を求めた。

ICCによる仲裁裁定はCoTherixの契約違反を認定し、0.91億ドルの賠償を課した。損害賠償請求裁判は第一審がアクテリオンに補償的賠償金、3人に懲罰的賠償金を課し、アクテリオンは2011年の決算で特別損失を計上した。今回、控訴審が原審を支持したことによって、ほぼ決着したと言ってよいだろう。企業を買収した後に開発プロジェクトの見直しを行うのはごく一般的であり、なぜこのような結果になったのか分からないが、おそらく、内部文書や内部告発が決め手になったのだろう。

リンク:アクテリオンのプレスリリース

【新薬開発】


C型慢性肝炎の治療はこの二剤で決まり

(2013年12月18日発表)

ギリアッド(Nasdaq:GILD)は二種類の抗HCV薬の合剤を用いた遺伝子型I型のC型慢性肝炎の第三相試験三本の結果を発表した。一日一回、一粒を12週間服用するだけで9割以上の患者が奏功、一次治療だけでなく二次治療でも奏効率9割、一次治療なら8週間の治療で終わらせることも可能、という大変良い内容だ。14年第1四半期に承認申請する予定。日本でも第三相試験が行われている。

以前取り上げたアッヴィの4剤併用試験は難治性の肝硬変合併患者は対象外だったが、ギリアッドの試験は2割程度、組入れており、価値が高い。インターフェロンもribavirinも要らない、二剤併用でこれだけの成果が上がるなら、4剤併用の必要はないだろう。I型C型慢性肝炎治療の決定版と言えそうだ。

ギリアッドは今月、米国でNS5Bポリメラーゼ阻害剤Sovaldi(sofosbuvir)の承認を取得した。WAC(問屋取得価格)が4週間分で28000ドルという大変高価な薬である。今回の合剤はNS5A複製複合体阻害剤GS 5885(ledipasvir)を配合したもので、sofosbuvirは400mg、ledipasvirは90mg。初めて治療を受けるナイーブ患者を対象とした一次治療試験二本と、二次治療(プロテアーゼ阻害剤を使う三剤併用療法を受けた患者も対象)一本が行われた。

一次治療におけるSVR12(治療終了後12週間経ってもウイルスが検出されなかった患者の比率)は、ION-1試験が12週間の治療で97.7%、ribavirinを併用した群が97.2%。ION-3試験は12週間で95.4%、8週間投与した群は99.1%、ribavirin併用で8週間投与した群は94.0%。二次治療のION-2試験は12週間で93.6%、ribavirin併用群は96.4%。各群大差なく、ribavirinは不要、一次治療は8週間で足りそうだ。

一部の試験では24週間コースの群も設けられているが、プロトコルを変更し12週間群の解析を先に行った。主な有害事象は疲労や頭痛。ribavirin併用群は悪心や不眠も増加した。貧血症の発生率は0.5%でribavirin併用群の9.2%より小さかった。

リンク:ギリアッドのプレスリリース

キュービスト、腹腔内感染試験も成功

(2013年12月16日発表)

キュービスト(Nasdaq:CBST)は、CXA-201(ceftolozaneとtazobactamの合剤)の第三相複雑腹腔内感染症試験の成功を発表した。metronidazole併用で、効果がmeropenemと非劣性だった。先に成功した複雑尿道感染症と合わせて、14年上期に米国で、欧州でも下期に承認申請する予定。

CXA-201は静注用複合セファロスポリンで、アステラス製薬から世界開発販売権を取得したグラム陰性緑膿菌に対する活性が既存のセフェム経抗生剤より高いceftolozaneとベータラクタマーゼ阻害剤tazobactamを配合。米国では認定感染症製品(QIDP)資格を持ち、承認後は5年間の特許期間補填を受けることができる。

この試験では、両群とも4~14日間治療したところ、細菌学的除菌成功率の差の95%信頼区間が-8.9%~0.5%となり、非劣性マージンの10%を下回った。この評価項目はFDAが求めたものだが、EUが求めた26~30日後の臨床的寛解率でも99%信頼区間が-4.2~4.3%となり、非劣性マージンの12.5%を下回った。主な有害事象は悪心嘔吐、下痢、発熱、不眠など。

リンク:キュービストのプレスリリース

オンノコバ、rigosertibの膵癌試験がフェール

(2013年12月17日発表)

オンコノバ(Nasdaq:ONTX)は、ESTYBON(rigosertib)の第2/3相転移性膵癌一次治療試験が中間解析で無益性認定となったことを発表した。rigosertibはPI-3やPLKを阻害する小分子薬。このadaptive試験ではgemcitabineと併用する効果を検討したが、治験を続行しても成功する可能性が低いため、打ち切られることになる。

難治性のMDS(骨髄異形成症候群)でも第三相試験中で、成否は今月中または14年第1四半期に判明する予定。rigosertibは日本ではシンバイオ製薬が、欧州ではバクスターがライセンスしている。

リンク:オンコノバのプレスリリース

KalydecoのR117H変異膿胞性線維症試験結果

(2013年12月19日発表)

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)は、Kalydeco(ivacaftor)の適応拡大試験の結果を発表した。フェールしたが、18歳以上のサブグループに限れば有意な呼吸能力改善効果が示唆されたため、FDAと相談する考え。

膿胞性線維症はCFTRという蛋白の機能不全が関与しているが、原因となる遺伝子変異は様々である。Kalydecoは2012年にG551D変異型向けに承認されたが、単剤、またはVX-661併用で他の型に対する効能も研究されている。今回の第三相試験はR117H変異型に対するもので、FDAのブレークスルー・セラピー指定を受けている。6歳以上の患者69人を組入れたが、%予測1秒量の変化に偽薬比有意な差は無かった。

しかし、このうち18歳以上の患者50人に関する事前に予定されていた解析では、変化幅で5ポイント、p=0.01、変化率で9.1%、p=0.008と効果の兆しが示唆された。通常なら、主評価項目がフェールした以上二次的評価項目やサブグループ分析は当てにならないと断じるところだが、難病だけに無視できない。データの細部に問題が無く、17歳以下の患者との違いを合理的に説明できるならば、承認の可能性があるだろう。

膿疱性線維症の患者は世界で7万人、うち米国は3万人で、このうち既に承認されているG551D変異型は4%、適応拡大試験が成功し承認審査中の非G551Dゲーティング変異型は1%、今回の18歳以上のR117H変異型も1%。VX-661併用で第三相試験が進行中のF508欠損ホモ接合型が49%なので、ここまで適応拡大すれば過半の患者に対応できるようになる。

リンク:ヴァーテックスのプレスリリース

【承認申請】


ラピアクタが米国でも承認申請

(2013年12月20日発表)

バイオクリスト(Nasdaq:BCRX)は、米国でBCX-1812(peramivir、和名ラピアクタ)を非複雑性インフルエンザの治療薬として承認申請した。この静注用ノイラミニダーゼ阻害剤は日本で09年に承認されたが米国での開発は難航し、経口剤や筋注用製剤の開発は中止、日本と同じ点滴静注で重篤入院患者の第三相試験が実施されたが中間解析で無益性が認定された。なぜ承認申請できたのか、良く分からない。

リンク:バイオクリストのプレスリリース

ビクトーザが体重管理薬として承認申請

(2013年12月20日発表)

ノボ ノルディスクは、二型糖尿病治療薬Victoza(liraglutide、和名ビクトーザ)の活性成分を体重管理薬として欧米で承認申請した。食欲やインスリン分泌を調整する腸ホルモンGLP-1のアミノ酸配列の一部を置換し脂肪酸を結合したもの。Victozaは最大で一日1.6mgまで投与されるが、体重管理試験では1.8mg又は3mgを投与した。用量間の差は小さいように感じられるので、承認されるのは二型糖尿病でも数多くの治験実績がある1.8mgだけかもしれない。

リンク:ノボのプレスリリース(pdfファイル)

ランタスのバイオシミラーが米国でも承認申請

(2013年12月20日発表)

二型糖尿病領域で提携しているイーライリリーとベーリンガー・インゲルハイムは、前者が開発したLY2963016を米国で承認申請したと発表した。サノフィ・アベンティスのベストセラー持効性インスリン、Lantus(insulin glargine、和名ランタス)と同じ活性成分を持つバイオ後続品だが、形の上ではFDA法505条(b)(2)に基づく承認申請なので、薬局における自動代替(処方箋に特定の製品名が記されていても薬剤師の判断で代替可能)の対象にはならない。

まあ、バイオ後続品として承認されても自動代替のハードルは高いだろうから、結果は大差ないだろう。EUでは今年7月に承認申請が受理された。

リンク:両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPがエグゼリキシスの甲状腺癌用薬などの承認を支持

(2013年12月19日発表)

CHMPは12月の会議でエグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)のCometriq(cabozantinib)などに肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヶ月以内にEUで承認されることになる。尚、CHMPは今回の会議から事前に議題を、事後には議事録も公開することになった。米国と同様に、域内国民に対する情報開示責任、説明責任を果たす狙いだ。日本も部会の議論の活発化と判断の根拠の開示、そして、伏字の制限が望まれる。

リンク:CHMPのプレスリリース

エグゼリキシスのCometriqはVEGF受容体やmet、RET、kit、flt3などを阻害するマルチ・キナーゼ阻害剤で、プログレッシブな切除不能の局所進行性・転移性甲状腺髄様腫(甲状腺癌の1割以下を占める)に承認申請された。第三相試験ではPFS(無増悪生存期間)が11.2ヶ月と偽薬群の4.0ヶ月を大きく上回った。下記のCHMPのリリースによると、RETに変異のない癌に対する効果が弱い可能性があるようだ。主な有害事象は下痢、手足症候群、体重食欲低下、悪心、疲労など。

EUで承認後はスエーディッシュ・オーファン(STO:SOBI)が2015年まで販売支援する。米国では11月に承認。前立腺癌でも第三相試験中。

リンク:EUのプレスリリース

リンク:エグゼリキシスのプレスリリース

ジョンソン・エンド・ジョンソンのSirturo(bedaquiline)は多剤耐性肺結核治療薬として条件付きの承認が肯定された。治験で死亡率が対照群より高かったためか、他に適切な治療法がない場合に限定された。この病気で今年、肯定的意見を受けたのは3剤目。第二相標準療法併用試験では24週陰転率が78%と標準療法群の58%を上回った。米国でも今月、同様な限定付きで承認されたが、死亡リスクが高まる可能性が枠付警告されている。

リンク:CHMPのプレスリリース

ノバルティスのアルコン子会社が高眼圧症と開放隅角緑内障の治療薬として承認申請したプロスタグランディンF2アルファ誘導体、Izba(travoprost)点眼液も肯定的意見を受けた。

リンク:CHMPのプレスリリース(pdfファイル)

Galderma InternationalのMirvaso(brimonidine)も、成人の酒さによる顔面紅斑の治療薬として肯定的意見を得た。8月に米国でも承認されている。

リンク:CHMPのプレスリリース(pdfファイル)

インドのPiramal Imaging社がアルツハイマー病の診断用薬として承認申請したNeuraceq(florbetaben)も肯定的意見を得た。米国で12年、欧州でも13年に承認されたイーライリリーのAmyvid(florbetapir)と同様に、PETでベータ・アミロイドの蓄積状況を調べるのに用いる。ベータ・アミロイド検査の有用性は明らかではないため、商業的なポテンシャルは不透明。Piramalは2012年にバイエルからPET検査用薬事業を買収した。

リンク:CHMPのプレスリリース(pdfファイル)

新製剤では、ロシュのRoActemra(tocilizumab、和名アクテムラ)の皮注用製剤が支持された。日本で今年3月に、米国でも10月に承認されている。既存の製剤は4週間に一回、静注するが、新製剤は週一回、自己注が可能。

リンク:ロシュのプレスリリース

一方、テバ製薬がアクティブ・バイオテック(Nasdaq Nordic:ACTI)からライセンスして再発寛解型多発性硬化症の維持療法薬として開発、承認申請したlaquinimodは、意見がまとまらなかった。1月の会議で再検討されるようだ。アクティブ・バイオテックがこのことを発表したのは、今回から議事録が公開されるので上場企業として適時開示したほうが良いと判断したからだろう。laquinimodの第三相試験は一勝一敗となり、今年3月に三本目の試験が始まった。

リンク:アクティブ・バイオテックのプレスリリース

【承認】


GSK、テラバンスのCOPD合剤が米国で承認

(2013年12月18日発表)

グラクソ・スミスクラインとテラバンス(Nasdaq:THRX)は、米国でAnoro(umeclidiniumとvilanterolの合剤)がCOPDの維持療法として承認されたと発表した。長期作用性ムスカリン拮抗剤と長期作用性ベータ2作用剤の合剤で、一日一回、吸入するだけで足りる。深刻な副作用は、逆説的な気道閉塞、心血管副作用、緑内障、尿滞留など。長期作用性ベータ2作用剤と喘息関連死のリスクに関する枠付警告が付せられた。

グラクソ・スミスクラインは喘息症・COPD維持療法薬Advair(fluticasoneとsalmeterolの合剤)が大成功したが、特許切れ期に入っていて、デンマークでノバルティスのサンド子会社のGE品が承認されたところ。AnoroはAdvairの穴を埋めるべき新薬の一つだが、Advairほどの成功は望めないだろう。

両社は呼吸器系新薬のパイプラインを持ち寄って共同開発している。今回の活性成分は何れもGSKのパイプラインなので、テラバンスは米国承認時に3000万ドル、発売時に3000万ドルを支払い、売上高の10%を得ることができる。

リンク:両社のプレスリリース

アクテリオンの肺動脈高血圧症治療薬が欧州で承認

(2013年12月20日発表)

アクテリオン(SIX:ATLN)は、Opsumit(macitentan)が肺動脈高血圧症の治療薬として欧州で承認されたと発表した。WHO機能分類II型とIII型の成人患者の長期療法として単剤または併用で使用する。Tracleer(bosentan、和名トラクリア)と同じ経口エンドテリンA/B受容体拮抗剤で、違いは、アウトカム試験のエビデンスを持っていること。尤も、効能の中心は6分歩行検査の悪化を遅らせることなので大差ないとも言える。肝機能検査値異常の発生率は高くなさそうだ。来年2月に先ずドイツで発売の予定。米国では10月に承認された。

リンク:アクテリオンのプレスリリース

今週は以上です。

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2013年12月15日

海外医薬ニュース2013年12月15日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • SABCS:I-SPY 2初の卒業はPARP阻害剤
  • アッヴィの4剤併用C型肝炎試験が再び大成功
  • アストラゼネカ、新規痛風治療薬の第三相が成功
  • tivozanibの試験がまたフェール
  • MSDがBACE1阻害剤の第三相を本格化
  • スペクトラム、belinostatを米国で承認申請
  • 経口I型ゴーシェ病治療薬が米国でも承認申請
  • バクスター、豚由来の第VIII因子を承認申請
  • Aloxiのコンビ薬が承認申請
  • オレキシジェンが体重管理薬の追加データ提出
  • FDA諮問委員会がBMSのSGLT2阻害剤と脂肪萎縮症治療薬を支持
  • FDA諮問委員会が武田の炎症性腸疾患治療薬を支持


【新薬開発】


SABCS:I-SPY 2初の卒業はPARP阻害剤

(2013年12月13日発表)

先週号でneratinibがI-SPY 2試験初の卒業生と書いたが、実際に治験を行っている研究者がSABCSサンアントニオ乳癌会議で行った発表によると、アッヴィAbbVie(NYSE:ABBV)のPARP阻害剤、ABT-888(veliparib)が最初の卒業生だった。

ABT-888はNCI米国立がん研究所が初の第0相試験を行ったことでも知られており、第二の『史上初』を獲得したことになる。他社のPARP阻害剤は第三相がフェールした。革新的な臨床開発方法が成果を生むことができるか、これからが本番だ。

I-SPY 2は複数の開発品を次から次へとテスト。特定のバイオマーカーを持つ癌に効果の兆しが見られたら症例を更に増やすことによって確認し、駄目なら打ち切る。ベイズ確率という手法を用いて標準療法より意味のある且つ有意な差があるかどうかを推定し、300人程度の第三相試験の成功確率が85%以上と判定されたら卒業して第三相に進む。対象はステージ2の早期乳癌。paclitaxel、doxorubicin、cyclophosphamideの標準的術前化学療法に試験薬を追加し、摘出術時に癌が消失したかどうかを調べる。

ABT-888は単剤ではなくcarboplatinとセットで試験された。白金薬で癌細胞のDNAに障害を与え、PARP阻害剤でDNA修復メカニズムを妨げるアイディアだろう。結果は、被験者の2~3割を占める、her2やエストロゲン受容体、プロゲスチン受容体が何れも陰性のトリプルネガティブ乳癌で顕著な効果を示した。二剤を追加した群はpCR(病理組織学的完全反応率)が52%と標準療法の26%を上回り、第三相で有意な差が出るベイズ予測確率は92%となった。

PARP阻害剤ではアストラゼネカのAZD2281(olaparib)が今年、EUで承認申請された。第三相白金薬感受性卵巣癌維持療法試験はフェールしたが、事後的サブグループ分析でBRCAに変異のある患者に延命効果が見られた。米国では承認申請されていない模様だが、おそらく、FDAが事後的分析であることを嫌ったのだろう。サノフィのBSI-201(iniparib)は転移性トリプルネガティブ乳癌の後期第二相試験で効果の兆しが見られたが、第三相はフェールした。

このように、PARP阻害剤の開発歴は楽観を許さない。ABT-888が第三相試験でどのような成果を上げるか、注目される。

リンク:SABCSのプレスリリース

アッヴィの4剤併用C型肝炎試験が再び大成功

(2013年12月10日発表)

アッヴィは、C型慢性肝炎の第三相二次治療試験が成功したと発表した。奏効率は先に発表された一次治療試験と大差ない。まだ数多くの第三相試験が進行中だが、14年第2四半期の承認申請に向けて着々と歩みを進めている。

この試験はABT-450(プロテアーゼ阻害剤)、ritonavir(ABT-450の代謝を妨げる3A4阻害剤)、ABT-267(NS5A複製複合体阻害剤)を配合したコンビ薬と、ABT-333(非核酸系ポリメラーゼ阻害剤)、そしてribavirinを、コンビ薬は一日一回、他の二剤は一日二回、12週間に亘って経口投与し、更に12週間経った段階でウイルスが検出されるかどうか(SVR12)を調べたもの。

被験者はインターフェロンとribavirinの二剤併用療法が奏功しなかった遺伝子型I型ウイルス感染者で、殆ど反応しなかったヌル・レスポンダーが49%を占めた。肝硬変を合併する患者は含まれていない(別の試験が進行中)。

結果は、SVR12が96%で、1a型(96%)にも1b型(97%)にも有効だった。二次治療試験としては大変良い成績だ。

他の試験は、肝硬変を合併する一次治療、二次治療の患者に同じ4剤を用いて12週間または24週間治療するもの、Ib型を対象に4剤併用とribavirin以外の3剤併用を比較する一次治療試験、二次治療試験、そしてIa型一次治療で4剤と3剤を比較する試験が進行中。

4剤併用という表現はritonavirを無視しているが、元々はHIV/AIDSの治療薬として開発されたもので、値段が高い。ribavirinはGE化したが決して安い薬ではない。新薬3剤と高価な2剤を併用するアッヴィのレジメンは効果だけでなく費用も高いだろう。

リンク:アッヴィのプレスリリース

アストラゼネカ、新規痛風治療薬の第三相が成功

(2013年12月13日発表)

アストラゼネカはRDEA594(lesinurad)の第三相試験が成功したと発表した。キサンチン酸化酵素阻害剤に不耐の痛風患者を組入れて尿酸管理奏効率を偽薬と比較したもの。この他にキサンチン酸化酵素阻害剤だけでは十分に管理できない患者を対象としたアドオン試験が3本進行中で、14年央に結果が出る見込み。

lesinuradは選択的URAT1阻害剤で、尿酸の排出を調節する腎臓近位管のトランスポーターを阻害する。allopurinolや武田のUloric(febuxostat)のようなキサンチン酸化酵素阻害剤は尿酸の合成を阻害するので、合成過剰ではなく排泄過少型の患者に適している可能性があり、また、併用でシナジーを生む可能性がある。やや心配なのは今回の第三相で、深刻例を含む血清クレアチニン上昇や腎有害事象が見られたこと。全4本の試験が完了すれば、リスクがどの程度なのか判明するだろう。

lesinuradは12年にArdea Biosciencesを12.6億ドルで買収して入手したもの。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

tivozanibの試験がまたフェール

(2013年12月13日発表)

アヴェオ・オンコロジー(Nasdaq:AVEO)は、開発パートナーのアステラス製薬が主導したtivozanibの第二相結腸直腸癌試験が中間解析で無益性認定されたことを明らかにした。oxaliplatinベースの一次治療を受ける患者を組入れてAvastinを併用する標準療法と比較したが、中間解析で治験を続行しても主目的を達成できる可能性は低いと判定された。

tivozanibはVEGF受容体阻害剤で、07年にキリンからアジア以外の権利を取得した。末期腎細胞腫の第三相活性薬対照試験が成功、米国で承認申請されたが、PFS(無増悪生存期間)のp値があまり低くないことや、延命効果が確認されずハザードレシオ自体はむしろ悪かったことから、承認されなかった。アステラスはEUでの承認申請を断念、腎細胞腫における追加試験の費用は負担しないことを決めた。

あと一本、トリプルネガティブ乳癌の第二相が進行中だが、もし成功したとしても、発売は早くて17年、VEGF受容体阻害剤の第一号発売の11年後となり、よほど効果や忍容性が優れていない限り、出番は無いだろう。難しい状態になった。

リンク:アヴェオのプレスリリース(pdfファイル)

MSDがBACE1阻害剤の第三相を本格化

(2013年12月10日発表)

MSDは、MK-8931(旧SCH 900931)のアルツハイマー病第二/三相試験を続行すると共に、新たに前アルツハイマー病の第三相試験を開始すると発表した。アミロイド・ベータの切り出しに係るベータ・セクレターゼを阻害する小分子薬で、同社が買収したシェリング・プラウとライガンド(Nasdaq:LGND)の共同研究の成果。

BACE阻害剤はイーライリリーやエーザイなど多数の製薬会社が開発しているが、イーライリリーのLY2886721は第二相で肝毒性が示唆され、開発中止となった。クラス・イフェクトではないと考えられているが、BACE阻害剤の前臨床では網膜や神経細胞などに影響する可能性が示唆されているようだ。そのせいか、MSDの第二/三相試験ではデータ安全性監視委員会が200例の中間安全性解析を行い、無事、プロトコル変更なく続行となった。

アミロイド・ベータを阻害する薬は抗体医薬もガンマ・セクレターゼ阻害剤も第三相がフェールした。却って悪化する可能性が浮上したコンパウンドもあるが、アミロイド仮説を支持する研究者たちは発症してから阻害しても遅い、もっと早期段階で治療を開始すべきと主張するようになった。この新仮説を検討するのが前アルツハイマー病の第三相だが、難点は、試験期間中にアルツハイマー病に進行する患者がどの程度いるか、判然としないこと。進行が遅いと治療効果を検出できない可能性があるため、結局、多くの症例を組入れて長期間試験する必要がある。

前例の少ない試験は結果を予測することが難しく、フェールする確率が高まる。前アルツハイマー病試験も二度、三度と実施してノウハウを蓄積する必要がありそうだ。

リンク:MSDのプレスリリース

【承認申請】


スペクトラム、belinostatを米国で承認申請

(2013年12月10日発表)

スペクトラム・ファーマシューティカルズ(NasdaqGS:SPPI)は、トポターゲット(OMX:TOPO)からライセンスしたPXD101(belinostat)を再発性・難治性末梢Tセルリンパ腫に米国で承認申請したと発表した。HDAC阻害剤で、129人を組入れた第二相単群試験ではORR(客観的反応率)が26%だった。

HDAC阻害剤は遺伝子の転写に係るヒストン・ジアセチラーゼを阻害し腫瘍の成長を妨げる。末梢Tセルリンパ腫ではアステラスが創製したIstodax(romidepsin)が09年に米国で承認、現在はセルジーンが販売している。

リンク:スペクトラムのプレスリリース

経口I型ゴーシェ病治療薬が米国でも承認申請

(2013年12月11日発表)

サノフィの子会社であるジェンザイムは、Cerdelga(開発名GENZ-112638、eliglustat tartrate)を米国でI型ゴーシェ病の治療薬として承認申請し、FDAに受理されたと発表した。EUでも10月に申請受理されている。

グルコシルセラミド合成酵素阻害剤で、Cerezymeのような酵素補充療法と異なり経口投与できることが特徴。第三相では初治療でも、酵素補充療法を受けている患者がスイッチする用法でも、効果が見られた。

リンク:ジェンザイムのプレスリリース

バクスター、豚由来の第VIII因子を承認申請

(2013年12月10日発表)

バクスターは、遺伝子組換え型ブタ第VIII因子を後天性A型血友病の治療薬として承認申請した。昨年、経営破たんしたInspirationからOBI-1の権利を取得したもので、第二/三相試験が成功している。インヒビターを持つ患者に使われることになりそうだ。

リンク:バクスターのプレスリリース

Aloxiのコンビ薬が承認申請

(2013年12月9日発表)

スイスのHelsinn社とエーザイは、NEPAを化学療法誘導性悪心嘔吐の予防薬として米国で承認申請したと発表した。5-HT3受容体拮抗剤のAloxi(palonosetron)とNK1拮抗剤netupitantを配合したカプセル剤。この二種類はしばしば併用されるので、利便性が増すことになる。エーザイは米国で共同販促する。

リンク:両社のプレスリリース(pdfファイル)

【承認審査・委員会】


オレキシジェンが体重管理薬の追加データ提出

(2013年12月11日発表)

オレキシジェン(Nasdaq:OREX)は、体重管理薬Contrave(bupropion徐放性剤とnaltrexone徐放性剤のコンビ薬)の心血管アウトカム試験の中間解析予備的報告書をFDAに追加提出したと発表した。もし安全性が確認されるようならば、来年6月までに承認される可能性がある。米国は武田薬品が販売権を持っていて、オレキシジェンは共同販促するオプションを持っている。

リンク:オレキシジェンのプレスリリース

FDA諮問委員会がBMSのSGLT2阻害剤と脂肪萎縮症治療薬を支持

(2013年12月12日発表)

BMSとアストラゼネカは、FDA諮問委員会がForxiga(dapagliflozin)を支持したと発表した。2年前の諮問委員会では心血管安全性や腫瘍リスクを懸念し反対する委員が多数を占めたが、今回は、便益がリスクを上回る(承認に値する)と答えた委員が14人中13人、心血管安全性に関する合理的な裏付けがあると答えたのが10人と、覆った。承認申請後に完了した試験のデータを追加提出し、症例数が人年ベースで1.5倍に増えたことが寄与したようだ。

EUで2012年に承認されたSGLT2阻害剤が米国でも発売に一歩近づいたことになるが、腫瘍の問題が残っているので、まだ不透明だ。また、承認されたとしても、安全性問題は販売の足枷になる。

二型糖尿病薬は心血管アウトカム試験が義務付けられたが、叩けば埃が出るのが常で、DPP-4阻害剤はアウトカム試験で心不全の懸念が浮上した。心臓疾患のある患者には使うべきではないと主張する医学者もいるようだ。インスリンやSU剤はどうなのかと言いたくなるが、新人が何かと口うるさく言われるのは止むを得ないのかもしれない。

リンク:両社のプレスリリース

BMSとアストラゼネカは代謝学領域で開発販売提携している。BMSが買収したアミリンはアムジェンから遺伝子組換え型レプチンのmetreleptinをライセンス、小児成人の脂肪萎縮症の治療薬として米国で承認申請。諮問委員会で討議され、全身性脂肪萎縮症は12人中11人が支持、部分性脂肪萎縮症を伴う高トリグリセライド血症や糖尿病に関しては10人が反対となった。

脂肪萎縮症は世界で数千人の希少疾患で、糖尿病などの代謝性疾患にも使われるなら市場性が広がるか、失望的な結果になった。metreleptinは日本で塩野義製薬が承認申請、今年3月に承認された。日本の患者は100人。

リンク:両社のプレスリリース

FDA諮問委員会が花粉症経口免疫寛容療法を支持

(2013年12月11日、12日発表)

FDAアレルゲン性製品諮問委員会はStallergenes(Euronext Paris:GENP)が承認申請したOralairとMSDが承認申請したGrastekを検討、何れも承認を支持した。

どちらもアレルギー性鼻結膜炎のアレルゲンを含有する舌下錠で、欧州で販売されている。Grastekはコペンハーゲン証券取引所上場のALK-Abelloから導入したものでチモシー用だが、ブタクサ用が別途承認審査中。Oralairはハルガヤ、カモガヤ、多年生ライ麦、チモシー、ケンタッキー青草の5種類に対応している。効果は穏やかで、抗ヒスタミンに反応しない患者に対する代替的療法というのが私の印象だ。シーズンの4ヶ月前から毎日服用する。

Oralairは11日の委員会に上程され、10~65歳の患者には10人中9人が支持した。5~9歳に関しては症例数が少ないため、5人が賛成、5人が反対と分かれた。Grastekは12日の委員会で討議され、9人全員が5~65歳の患者に承認することを支持した。Grastekは日本でも鳥居薬品が開発中。

リンク:Stallergenesのプレスリリース

リンク:MSDのプレスリリース

FDA諮問委員会が武田の炎症性腸疾患治療薬を支持

(2013年12月9日発表)

武田薬品は、FDA諮問委員会がEntyvio(vedolizumab)の承認を支持したと発表した。アルファ4ベータ7インテグリンを標的とするヒト化抗体で、リューコサイト社が97年にジェネンテックにライセンス、第二相で良好な結果が出たがライセンス返還となり、その後、リューコサイトがミレニアムと合併、最優先品目ではなくなったが、類薬のTysabriでPML(進行性多巣性白質脳症)の懸念が高まったため、リスクが小さい可能性のある薬として注目されるようになった。武田がミレニアムを買収、承認申請に漕ぎ着けたもの。

適応症は難治性の中重度クローン病と同じく炎症性大腸炎。後者は全諮問委員が支持したが、クローン病は導入試験が一勝一敗だったため、維持療法については大多数が支持したが導入療法は反対が上回った。維持療法は導入療法が奏功した患者に施行するので、導入に使えないなら維持にも使えないはずだが、奇妙な結果になった。

商業的に重要なのはTysabriとの差別化で、第一のポイントは、Tysabriはクローン病でしか承認されていないこと。炎症性大腸炎で支持されたことは価値がある。第二のポイントは、PMLリスク。Tysabriは厳重な誤用防止策が導入されており、もしEntyvioのPML安全性が認定され同様な策が免除されれば、大きなセールスポイントになる。

諮問委員は好意的に評価したが、こういうことは最悪の事態を想定して行うものなので、おそらく、Tysabriと同様なREMS(リスク評価緩和戦略)が課されることになるだろう。REMSの検討は時間が掛かるため、もし課された場合、優先審査対象である炎症性大腸炎での承認審査期限が来年2月18日から延期される可能性もあるだろう。

リンク:武田薬品のプレスリリース(英文)

今週は以上です。

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2013年12月8日

海外医薬ニュース2013年12月8日号




【ニュース・ヘッドライン】

  • ノバルティスのDAC阻害剤の第三相が成功
  • I-SPY 2試験で初の卒業生
  • ランタス新製剤の第三相が成功
  • 腎細胞腫は二次治療もVEGFR阻害剤?
  • イーライリリー、LY2216684の開発を中止
  • ZambonがEUでパーキンソン病薬を承認申請
  • ギリアッドの画期的抗HCV薬が米国で承認
  • XiaflexがPeyronie病に適応拡大
  • FDAがレノックス・ガストー症候群治療薬の皮膚毒性を警告


【新薬開発】


ノバルティスのDAC阻害剤の第三相が成功

(2013年12月6日発表)

ノバルティスは、LBH589(panobinostat)の第三相再発性難治性多発骨髄腫試験が成功したと発表した。データは後日、学会発表される予定。LBH589はクラスI、II、IVのジアセチラーゼを阻害する汎DAC阻害剤で、アルファ・チューブリンやp53などの遺伝子翻訳を阻害し、アポトーシスを誘導する。

今回の第三相は、bortezomib(武田のVelcade)とdexamethasoneを用いる標準療法にLBH589を追加する効用を検討したもので、主評価項目であるPFS(無増悪生存期間)が有意に延びたとのこと。ノバルティスは承認申請に向けて欧米の審査機関と相談する考え。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

I-SPY 2試験で初の卒業生

(2013年12月4日発表)

ロサンジェルスのプーマ・バイオテクノロジー(NYSE:PBYI)は、PB272(neratinib)がI-SPY 2試験を『卒業』したと発表した。PB272は11月に転移性乳癌で第三相入りしたところだが、早期乳癌のネオアジュバント(術前化学療法)でも第三相のI-SPY 3試験が始まることになる。

I-SPY 2試験は米国の20の医療機関がFDAやバイオマーカー・コンソーシアムの支援を得て実施しているステージ2早期乳癌の第二相試験で、8種類の新薬のpCR(病理組織学的完全反応:手術前の多剤併用療法で腫瘍が完全に消失)を検討する。事前に設定された10種類のバイオマーカーのうち一つ以上に該当するサブグループでベイズ推定によるpCRが標準療法より高ければ卒業して第三相に進み、全て駄目ならその薬はドロップする。

新しい開発手法なので不透明なところもあるが、数多い開発品の中から最も有望なものを素早くスクリーニングすることが期待されている。試験薬の提供者はアムジェン、ファイザーなど多数に亘り、一社だけではできないことを可能にした。治療成果とバイオマーカーを関連付けるのは有望な手法だが、これまでは結論が出るまで何年もかかり、EGFR阻害剤や抗EGFR抗体は市販後何年も経った段階でやっと最適な患者が見つかった。それまでは費用の面でも副作用の点でも患者のためにならない治療を行っていた訳で、こんなことを繰り返してはならない。

PB272はEGFR、her2、her4を阻害する小分子薬で、元々はワイスがHKI-272として開発していたものを2011年にプーマがライセンスした。I-SPY 2では、her2陽性でホルモン受容体陰性の患者に対して、標準療法だけよりも優れているベイズ予測確率が94.7%(p値では0.0053に相当)、第三相試験が成功する確率が78.1%だった。her2陽性患者全体でも良い数値が出た。

I-SPY 2試験が2010年に開始された当時は第三相試験の成功確率が85%以上なら卒業と報じられていたが、ハードルが引き下げられたのかもしれない。汎erbB阻害剤がher2陽性乳癌に適するというのは決して新しい発見ではない。初の卒業生が出たのは快挙だが、これらのことを考えると、医学的な意義は小さいのかもしれない。

リンク:プーマのプレスリリース

ランタス新製剤の第三相が成功

(2013年12月3日発表)

サノフィはLantus(insulin glargine、和名ランタス)の新製剤であるU300の第三相試験成功を発表した。14年上期に欧米などで承認申請する予定。日本の試験を含めて複数の試験が実施され、血糖管理効果がLantusと非劣性だった。夜間の低血糖リスクは一部の試験では有意に小さかったがノボ ノルディスクのTresiba(insulin degludec、和名トレシーバ)ほどではなく、EDITION III試験ではトレンドに留まった。

U300は薬物動態や薬力学を向上、血中濃度を長期間安定的にコントロールする。mL当り300単位とLantusの100単位より大きく、皮注量が少なくて済む。一日一回の投与頻度は同じ。将来、Lantusのバイオシミラーが発売される日に備えたとも言えそうだ。

リンク:サノフィのプレスリリース(pdfファイル)

腎細胞腫は二次治療もVEGFR阻害剤?

(2013年12月2日発表)

Journal of Clinical Oncology誌のホームページで、ファイザーのTorisel(temsirolimus、和名トーリセル)の直接比較試験の結果が論文刊行された。腎細胞腫でSutent(sunitinib、和名スーテント)による治療を既に受けた患者を組入れて、Toriselとsorafenib(バイエルのNexavar、和名ネクサバール)のPFS(無増悪生存期間)を比較したもの。

結果は両群同程度でToriselが優れるという仮説は棄却されたが、意外なことに、全生存の解析では有意に劣っていた。Toriselはメジアン12.3ヶ月、sorafenibは16.6ヶ月、ハザードレシオは1.31だった。

SutentとsorafenibはどちらもVEGFの受容体チロシンキナーゼを阻害する。常識的に考えれば二次治療には一次治療薬と異なった作用機序の薬を用いたほうが良さそうなもので、私自身、SutentとNexavarをシーケンシャルに用いるやり方に疑問を持っていたが、今回の試験結果は常識を覆す意外なものだった。

この試験はあくまで特定の二剤を比較したものに過ぎず、最適な二次治療薬を検討するならToriselではなく同じmTOR阻害剤のAfinitor(everolimus、和名アフィニトール)をテストすべきかもしれない。Afinitorは複数の腎細胞腫試験が成功していて薬効のエビデンスが強固だ。

VEGFR阻害剤もsorafenibではなくInlyta(axitinib、和名インライタ)をテストすべきだったかもしれない。同様な二次治療試験でsorafenibより効果が高かったからだ(尤も、一次治療でSutentを用いたサブグループに関しては大差なかったが)。

リンク:Hutsonらの治験論文(JCO誌)

イーライリリー、LY2216684の開発を中止

(2013年12月5日発表)

イーライリリーはLY2216684(edivoxetine)の第三相試験が全てフェールしたため開発を中止すると発表した。選択的ノルエピネフィリン再取込阻害剤で、第三相ではSSRIだけでは症状を十分に管理できない鬱病患者を組入れて、LY2216684で補完する効果を検討した。セレトニン・ノルエピネフィリン再取込阻害剤を服用するのと同じ効果になるのではないかと思っていたが、そうでもないようだ。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

【承認申請】


ZambonがEUでパーキンソン病薬を承認申請

(2013年12月5日発表)

イタリアのZambon社は、Newron Pharmaceuticalsからライセンスしたアルファ・アミノアミド誘導体、safinamideをパーキンソン病治療薬としてEUで承認申請したと発表した。早期、中期、進行患者に追加投与する。米国では14年第1四半期に承認申請する予定。

第三相入りしたのは04年なので、9年掛かったことになる。元々はスイスのセラノ(後にドイツのメルクが買収)が世界開発販売権を持っていたが、治験成果が区々であったせいか、12年に返還した。日本はMeiji Seikaファルマが権利を保有。

リンク:Zambonのプレスリリース

【承認】


ギリアッドの画期的抗HCV薬が米国で承認

(2013年12月6日発表)

FDAは、ギリアッド(Nasdaq:GILD)のSovaldi(sofosbuvir)をC型慢性肝炎の治療薬として承認した。特徴は、第一に、遺伝子型I型からIV型まで様々なウイルスに有効であること。第二に、治療期間をIII型は24週間、それ以外は12週間に短縮できること。第三に、I型以外はribavirinと併用する、インターフェロンを使わない治療法であること。FDAはI型に関しても、インターフェロン不耐・不適なら二剤併用24週間コースも可とした。

Sovaldiはヌクレオチド系のNS5Bポリメラーゼ阻害剤で、ファースト・イン・クラス。インターフェロン、ribavirinと三剤併用した試験で見られた主な有害事象は疲労、頭痛、悪心、不眠、貧血など。

ギリアッドは11年にファーマセット社を110億ドルで買収して入手した。コストが高いせいか価格も極めて高く、WAC(問屋取得価格)は12週間分が84000ドル、一日10万円だ。C型肝炎治療薬は発売後の売上高が急速に増加するが1~2年でピークを付ける傾向があり、稼げる時に稼いでおく作戦だろう。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:ギリアッドのプレスリリース

XiaflexがPeyronie病に適応拡大

(2013年12月6日発表)

FDAは、コラーゲン分解酵素製剤のXiaflex(collagenase clostridium histolyticum)をPeyronie病の治療に用いることを承認した。ペニスの皮下に瘢痕組織が蓄積し勃起時に曲率変形が起きる病気で、米国では年5000~6000人が注射薬や手術による治療を受ける模様。同剤は09年にデュピュイトラン拘縮(指から掌にかけての結合組織にコラーゲンが蓄積、指が曲がる)の治療薬として承認された。

Auxilium Pharmaceuticals(NasdaqGM: AUXL)の製品で、欧州アフリカの権利はSwedish Orphan Biovitriumが、カナダやオーストラリアなどの権利はスイスのアクテリオン社が、日本の権利は旭化成が持っている。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:Auxilliumのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDAがレノックス・ガストー症候群治療薬の皮膚毒性を警告

(2013年12月3日発表)

FDAはルンドベックのOnfi(clobazam、和名マイスタン)の稀だが深刻な皮膚有害事象に関する安全性情報を発した。レノックス・ガストー症候群の治療薬として11年に承認、欧州では癲癇治療薬として30年以上の使用歴があり日本でも2000年に発売されたが、FDAの自発的有害事象報告に米国で6例、海外で14例のスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死による入院例が報告され、一名は失明、一名は死亡した。Onfiを服用開始してから2ヶ月以内の発症が多く、原因薬の可能性があるとのこと。

日本でも10月に重大な副作用として添付文書に記載された。

リンク:FDAの安全性情報

今週は以上です。

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2013年12月1日

海外医薬ニュース2013年12月1日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • キュビスト、アステラスが創製した抗生剤の第三相が成功
  • オレキシジェン、体重管理薬の心血管アウトカム試験中間データをFDAに提出へ
  • Noxafilの新製剤が米国で承認
  • FDAがAvandiaの処方制限を緩和


【新薬開発】


キュビスト、アステラスが創製した抗生剤の第三相が成功

(2013年11月25日発表)

キュビスト(Nasdaq:CBST)は、静注用複合セファロスポリンの第三相複雑性尿道感染症(cUTI)治療試験が成功したと発表した。良く分からないのは、数値が二本の試験の統合解析であることだ。通常は二本の試験で薬効を確認する必要があるが、プレスリリースには個々の試験の首尾に関する記述はない。事前に医薬品審査機関の同意を得たのだろうか?

今回公表されたデータ自体は良好だ。この試験は治療効果を静注用levofloxacin(和名クラビット)と比較した非劣性試験。主評価項目は細菌学的除菌かつ臨床的治癒の奏効率。FDAの基準に即したものだ。副次的評価項目は細菌学的除菌奏効率。EMA(欧州薬品庁)の基準に則した。臨床的治癒の判定は、治療終了の5~9日後に行われた。再燃することがあるので、念を押したのである。

結果は、95%信頼区間が2.3~14.6%となり、下限が非劣性マージンの-10%を上回ったため、非劣性と認定された。0%を上回っているので奏効率が高いと考えてもよいだろう(統計学的には正しくない考え方かもしれないが)。治療時発現有害事象は34.7%で、levofloxacin群の34.4%とそれほど変わらなかった。抗生物質は稀に深刻な有害事象が発生するので、安全性については詳細なデータが明らかになるまで何とも言えないだろう。

CXA-201(ceftolozane、tazobactam合剤)はアステラス製薬からライセンスした多剤耐性緑膿菌にも優れた力価を持つセファロスポリンと、ベータ・ラクタマーゼ阻害剤を配合したもの。複雑性腹腔内感染症でも第三相試験が二本、進行中で今月中に開票の見込み。院内感染細菌感染症の第三相試験も予定されている。

この三適応症でFDAからQualified Infectious Disease Products指定を受けており、承認時に付与される新薬排他権期間が通常より5年分、上乗せされる。発売後はアステラスに売上高の一定割合(10%未満)のロイヤリティを払うことになる。

リンク:キュービストのプレスリリース

【承認審査・委員会】


オレキシジェン、体重管理薬の心血管アウトカム試験中間データをFDAに提出へ

(2013年11月25日発表)

オレキシジェン(Nasdaq:OREX)は、体重管理薬Contraveの心血管アウトカム試験の中間解析が良好な結果になったと発表した。このデータをFDAに提出し、順調なら来年6月に承認を取得する考え。販売は武田薬品が行い、オレキシジェンは共同販促する権利を留保している。

Contraveは鬱病や薬物依存の治療薬として承認されているbupropionと、アルコールやオピオイド依存の治療薬naltrexoneの夫々の徐放性製剤を合剤にしたもの。どちらもエネルギー消費を促したり空腹感を抑制したりする作用を持ち、また、naltrexoneは代償機構を抑制するのでシナジーがある。徐放性製剤を用いているのは作動のタイミングが重要であるためとのことだが、どちらの活性成分もジェネリック化しているので、特許対策という面もありそうだ。

2010年3月に米国で承認申請され、内分泌学代謝学薬諮問委員会では13対7で承認を支持する委員が反対を上回ったが、FDAは心血管疾患リスクが高まらないことを確認するよう求めた。このため、2012年6月にLIGHT試験を開始。第一のハードルは中間解析でハザードレシオの95%信頼区間上限が2を下回ること。今回、数値は公表されなかったが、この条件を満たしたとのことなので、承認に向けて一歩前進したことになる。

肥満症を治療する最大の目的は心筋梗塞など心血管疾患を防ぐことであり、本来なら、ハザードレシオは1を下回るべきである。従って、リスクが2倍より低いというだけでは足りず、おそらく、糖尿病治療薬と同様に、最終解析でリスクが1.3倍未満であることを確認しなければならないだろう。LIGHT試験は二重盲検が続行しており、おそらく、中間解析の数値は治験が終了するまで公表されないだろう。もし承認されたとしても不透明な状況は続くことになる。

体重管理薬は新興企業三社が開発、提携先を探していたが名乗りを上げたのは日本の二社だけだった。先に発売されたアリーナ/エーザイのBelviq(lorcaserin)もヴィーヴァスのQsymia(phentermineとtopiramateの合剤)も承認審査が長引き、発売後の売上も苦戦している。手を出さなかった欧米勢の方がFDAや米国市場を良く知っていたのである。日本企業が海外市場を理解するための方法は、一つは、海外医薬ニュースを読むことである。

もう一つは、現地の事情をよく知っている人間を現法ではなく本社のトップに迎え入れることだ。この意味で、武田薬品はよい選択をした。グラクソ・スミスクラインは人材が豊富で、世界の大手製薬会社の首脳に抜擢されたOBが数多くいる。販売が先か、それとも開発が先かは製薬会社に留まらず全ての企業が直面する課題だが、結局はどちらも重要なのだから、自分の弱点を強化すれば良い。研究所にグローバルスタンダードを導入し自分たちの価値観を医師や患者と一致させることができれば、本当のグローバル企業になれるだろう。

リンク:オレキシジェンのプレスリリース

【承認】


Noxafilの新製剤が米国で承認

(2013年11月26日発表)

MSDは、FDAがNoxafil(posaconazole)の遅延放出錠を承認したと発表した。造血幹細胞移植を受けた患者など、侵襲性のアスペルギルス感染症やカンジダ感染症のリスクが高い患者の予防に用いる。2006年に承認された経口懸濁液に次ぐ剤型で、静注用製剤も承認審査中。アゾール系の抗菌剤で、接合菌にも活性を持つことが特徴。

リンク:MSDのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDAがAvandiaの処方制限を緩和

(2013年11月25日発表)

FDAはグラクソ・スミスクラインの血糖治療薬、Avandia(rosiglitazone)の処方制限を緩和したと発表した。過去の一連の騒動が原因で売上高は激減しており、今更、回復はしないだろうが、PL訴訟には良い影響を与えるだろう。

Avandiaはグリタゾン系のインスリン抵抗性改善剤で、核転写因子であるPPARガンマを作動する。インスリン治療を受けている心血管疾患リスクの高い患者を組入れた試験で心毒性の懸念が浮上したが、当時は、インスリン抵抗性改善剤が二型糖尿病の根源的な治療法と持て囃されていたため、問題視されなかった。しかし、市販後に実施された長期投与試験で他の血糖治療薬より心筋梗塞が多く発生。症例数が少ないため統計学的な有意性はなかったが、全ての試験のメタアナリシスで有意差が出たことから、大騒ぎになった。

GSKにとって救いになったのが、EUの要請で実施した心血管アウトカム試験、RECORD試験のデータだ。標準療法であるmetforminやSU剤を投与した群と比べて、特に悪くはなかった。EUの要請で行われた試験なのでFDAはデザインに不満があったようだが、後から言っても遅い。その後、FDAは、全ての血糖治療薬に心血管アウトカム試験を求める姿勢に転じた。

結果的に無実の罪となった訳でGSKは気の毒だったが、社会を守るためには已むを得なかった。グリタゾンは第一号が心不全リスクで販売中止、第二号は心筋梗塞疑惑で殆ど使われなくなり、第三号は膀胱癌懸念が表面化した。他にも様々な化合物や、PPARアルファも作動する数多くのグリタザール系が開発されたが、その殆どが齧歯動物の癌原性試験でリスクを示し、また、臨床試験で心筋梗塞懸念や腎毒性が浮上したことから、開発中止となった。多彩な作用を持つ化合物は多彩な副作用も齎すという好例である。

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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